真の体系的理解を導く添削指導とは マクロな視点で添削できる人を見つけましょう
「なぜ全体像を把握せよ」と言われるか、考えたことはありますか?あなたは本当に全体像を把握できていますか?
今回は、刑事訴訟法の添削例を挙げてみました。令状に関する問題です。これは、予備試験・司法試験の過去問ではなく市販問題集を添削したものなのでご注意ください。
よく「全体像を把握する」ことの大事さが解かれますが、一体それが何を意味するのかよく分かっていない人が多いのではないかと思います。基礎基本が大事と言われるものの、何が基礎基本なのか未だわかっていない人が多いのと同じです。
お伝えします。
「全体像を把握する」とは、同一科目内で学んだ内容の共通点・相違点・つながり、異なる科目をまたいでみたときの共通点・相違点・つながりを理解しているということです。「民法の答案はどう書いたらいいですか?」「憲法の論文が苦手なんですけど、どう書いたらいいですか?」という質問をする受験生は、まだ全体像が把握できていないんだろうと推測されます。
以下の添削例は、刑訴法の添削例ですが、憲法の違憲審査基準との共通性が指摘されています。ABprojectの添削指導は、科目の枠にとらわれず「法学の基礎基本」という共通性にこだわった指導を行っているため、時に何法の添削指導だかわからなくなる時があります(笑)。しかしながら、独自の指導スタイルが科目に左右されない安定した起案力を養成していきます。
まず、1で立てた場所の特定性に関する規範を「捜索対象たる身体」の特定性についても引用したのは、よくないと思いました。場所に対する捜索と身体に対する捜索では、それによる法的利益の侵害が大きく異なることに配慮できていないからです。裁判官は、捜査機関による捜査の範囲を限定しようとしているわけですから、より重い法的利益の侵害が起こり得るなら、より厳しい基準で適法性を審査すべきです(ここは、憲法の違憲審査基準の議論と共通する部分だと思います。)。
規範は、基本書を読むなどして勉強していただければわかると思います。あてはめについては、特段問題がないように思いますが、令状の記載を具体的にさせればさせるほど、捜査の範囲は限定されるという点に注意すべきだと思います。つまり、本件は、覚せい剤事犯で甲宅には甲とその内妻が居住し、また複数の人物が出入りしているという問題設定であるところ、「同所に在所する人」は全員証拠隠滅を図る可能性のある人物と言えます。本答案の見解だと、それらの人物をみすみす見逃さなければならなくなるという問題が生じてきます。人権保障と実体的真実の発見(刑訴法1条)という対立利益の調和を意識した論述は、捜査法のポイントです。ちなみに、設問2では、令状の記載を修正しない場合と修正する場合のいずれをも想定した設定になっていますが、こういう場合は、出題者がいずれの可能性も許容していることが多いです。絶対とは言えませんが、覚えておくとヒントになることが多いです。