会社法改正! 株主提案権の濫用防止を目指して!~その2~
長かったので分けました!
・第六回法制審議会
○坂本関係官 それでは,3ページの「第2 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置」について御説明いたします。
「1 株主が提案することができる議案の数の制限」につきましては,第一読会における議論等を踏まえ,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置として,取締役会設置会社において,株主が同一の株主総会に提案することができる議案の数を一定数に制限することを前提に,役員等の選任又は解任に関する議案及び定款変更議案の数の数え方について,どのように考えるかを問うものです。
ここでは,株主が設定された制限を超えた数の議案を提出した場合には,会社法第305条第1項の請求に対する拒絶事由を構成するという考え方を前提にしております。すなわち,仮に,提案することができる議案の数を10とした場合,株主が10を超える議案を提案したときは,会社は10の議案についてのみその内容の適法性を検討し,その中で適法な議案を採用すれば足り,それ以外の議案については拒絶することができることになります。10の議案の選択方法としては,会社と株主とのやり取りの中で,当該株主に特定させる方法が考えられますが,仮に,株主が特定しない場合や株主による特定が不明確である場合には,会社が任意に決定することも許されるものと考えております。
なお,部会資料8におきましては,提案することができる議案の具体的な数を仮のものとして10とさせていただいておりますが,議案の数を何個に設定するかという点については,引き続き検討する必要があるものと考えております。
本文の(1)は,役員等の選任又は解任に関する議案の数の数え方について,どのように考えるかを問うものであり,A案とB案,二つの考え方を記載しております。
A案は,第一読会でも御議論いただいたものですが,役員等の選任又は解任に関する議案については,株主が提案することができる議案の数の制限の例外とし,議案の数として数えないものとするというものでございます。
B案は,役員等の選任又は解任に関する議案についても,株主が提案することができる議案の数の制限の例外とはせず,選任又は解任される役員等の人数にかかわらず,1議案として数えるというものでございます。
株主総会における審議の時間等が無駄に割かれ,株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり,株式会社における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加したりするなどといった株主提案権の濫用事例において懸念される弊害は,役員等の選任又は解任に関する議案であっても他の議案と同様に生じ得ることから,役員等の選任又は解任に関する議案についても議案の数の制限の例外とはせず,候補者の人数にかかわらず1議案として数えるものとするという案でございます。なお,役員等の選任議案と解任議案とは別の議案として扱い,それぞれ1議案として数えるものとすることを前提としております。
本文の(2)は,株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を1議案として提案した場合における当該定款変更議案の数え方について,その内容において関連する事項ごとに区分して数えるものとすることを御提案するものでございます。
定款変更議案の数え方につきましては,現在の株主総会の実務を前提とすれば,関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案であっても,株主が当該議案を分けて提案しない限りは,形式的には1議案として扱うことが多いものと思われます。しかし,株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を1議案として提案した場合に,これを1議案として数えるものとすると,先ほど申し上げたような株主提案権の濫用事例において懸念される弊害が生じることとなり,株主が提案することができる議案の数を制限する趣旨に反する結果となるため,内容において関連性のある事項ごとに複数の議案が存在すると捉えることで,議案の数の制限を及ぼすべきであると考えております。内容において関連性のある事項であるか否かについては,個別の事情を考慮した上で総合的に判断することになるものと考えております。典型的な具体例につきましては,補足説明の3に記載してございます。
なお,このような基準に基づいて定款変更議案を数えることとする場合には,内容において関連性のある事項であるか否かの判断が難しい場合に,会社としてどのように対応すべきかということが問題となり得ますが,先ほど申し上げましたとおり,議案の数の制限は拒絶事由であると考えておりますので,判断が難しい場合には,会社としては,内容において関連性があるものとして扱うことが望ましいと考えられます。仮に,定款変更議案を含めて10の議案が株主より提案され,会社が当該定款変更議案を1議案として数えて10の議案全てを採用した場合に,当該定款変更議案が内容において関連しない複数の事項を含んでいることが後に判明したときには,会社は実質的には10を超える数の議案を採用したこととなりますが,この場合には,会社が10を超える議案について拒絶せずに採用したと整理することができるため,実質的に10を超える議案を採用したとしても,特段の問題は生じないものと考えております。
補足説明の4では,複数の株主による株主提案権の共同行使がされた場合の考え方について言及しております。株主が株主提案権を単独で行使する場合であっても,他の株主と共同して行使する場合であっても,各株主が提案することができる議案の数は合計で10を超えることができないということを前提にしております。
続きまして,本文「2不適切な内容の提案の制限」についてですが,こちらは,第一読会における議論等を踏まえ,株主が株主提案を行った場合において,会社が当該株主提案を拒絶することができる事由を再度整理したものでございます。
①及び②の拒絶事由につきましては,第一読会で御提案させていただいたものと同様の内容となっております。なお,第一読会において,「専ら」という要件は厳格過ぎるため,「主として」などのより緩やかな要件にすることも考えられるとの御指摘を頂きました。しかし,「主として」という要件は不明確であり,どのような場合に要件を充足することになるのかという判断が難しく,また,株主提案権の重要性に鑑みれば,拒絶事由の要件を緩めることについては慎重に考えるべきであることから,「専ら」という要件を維持する方向で考えております。
また,①の拒絶事由につきましては,第一読会において,株主により摘示された事実が真実である場合であっても,会社は当該株主提案を拒絶することができるのか,という点についても検討すべきであるとの御指摘を頂きました。これにつきましては,仮に,株主より摘示された事実が真実である場合であっても,①の拒絶事由に該当するような株主提案を認めることは,株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の制度趣旨に反するものと考えられるため,仮に,株主により摘示された事実が真実であっても,①の拒絶事由に該当する限り,会社は当該株主提案を拒絶することができるものと整理しております。
③の拒絶事由は,第一読会において,株主提案が権利の濫用に該当し得る場合をより広く規定すべきであるとの御指摘を頂いたことを受け,今回新たに追加させていただいたもので,株主が専ら当該株主又は第三者の不正な利益を図る目的で株主提案を行った場合には,会社は当該株主提案を拒絶することができるものとすることを御提案するものでございます。株主が専ら当該株主又は第三者の不正な利益を図る目的で株主提案を行った場合には,正当な権利行使ということができず,株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の制度趣旨に反するのみならず,株主提案権の濫用事例において懸念される弊害を生じさせるおそれがあるため,このような対応の株主提案を制限することを御提案するものでございます。
なお,③についてはブラケットを付しておりますが,これは,③のような拒絶事由の要否につきましては,事務当局内部でも様々な意見があったところでございますので,拒絶事由の内容のみならず,要否も含めて御議論いただきたいという趣旨でございます。
④の拒絶事由につきましては,第一読会において,主観的な要件と客観的な要件とを択一的に御提案させていただいたものですが,第一読会における議論等を踏まえ,株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがある場合には,当該株主提案を行うことができないものとする,という客観的な要件とすることを御提案するものでございます。
○中東幹事 1の(1)のA案,B案については,現在のところA案がよいと思っておりますが,その観点から,1点質問させていただきたいと思っております。
4ページの3の直前の,「なお」の段落でございますが,議案の数え方について,B案を前提として,例えばですが,取締役,監査役,会計監査人,それぞれについて臨時株主総会で解任した上で選任を提案するという場合には,幾つの議案として数えるという御趣旨でしょうか。
○竹林幹事 B案を前提といたしますと,解任議案,選任議案というくくりでそれぞれ1議案と考えておりまして,取締役,監査役とか,そういう役職ごとに一つずつ数えるということは,念頭には置いておりません。
○中東幹事 ありがとうございました。
そうであれば,B案ですと,もしブラケットに入る数が10であれば,10か9か8になるという話でございますね。他方で,今お聞きした例では,議案として2と数えようということですが,議題としては6なので,そのような整理でよいのかとも思えます。元々,役員等の選解任については,1候補者で1議案という理解が原則にあって,それをどうやって勘定し直していくかという話をしていたわけです。その意味では,余りに技巧的なことは避けて,A案にしたほうがすっきりするのではないかと思っております。
○古本委員 ありがとうございます。
1の(1)の役員等の選任,解任議案の数え方については,私どもとしては,A案かB案かと問われれば,B案が妥当と考えております。
それから,(2)の定款変更議案の数え方でございますけれども,内容において関連する事項ごとに区分して数えるということですが,やはり,何が関連する事項かという判断は,どこまでいっても難しいのではないかなという気もいたします。経団連内部で議論した時に,電力会社の方から話があったのですが,例えば,原子力発電というキーワードを使って,本来は互いに独立した議案と言えるような,複数の定款変更議案が出された場合に,会社としてこのような提案をどう数えるのかという,非常に微妙なケースが出てくるのではないかということです。数え方に疑義が生じた場合には,御説明にもありましたが,実務としてはどうしても保守的に数えるということにならざるを得ないと思います。
今回,提案個数の上限については議論の対象ではないようですが,株主総会を会社と株主との間の意味のある対話促進のための場であると捉えるのであれば,やはり今,暫定的に記載されている10個というのは,前回も申し上げましたけれども,ちょっと多過ぎると思います。アメリカと同様1個とするか,せいぜい3個とすべきであるということを,再度申し上げておきたいと思います。
それから,株主が提案できる数の上限をどう設定するかということにつきましては,提案の期限と行使要件,つまり,現行の総会8週間前というのを繰り上げるのか,それから,1パーセント又は300個の議決権という要件のうちの300個の方の要件を削除するのかといったことも,併せて考慮すべきだろうと思っております。中間試案では,こうした点にも言及していただいて,広くパブリックコメントを求めていただきたいと思います。
また,上限個数について,先ほどの御説明でも,上限を超える部分については,会社は拒絶できると,こういう構成になっておりますが,実務といたしましては,明確に,上限個数を提案可能な上限の絶対値として,仮に,それを超えるような提案があった場合には,全て不適法,一切取り合わなくてよいという,分かりやすい形にしていただきたいと思います。提案株主と話をして適法とすべきものを選ぶとか,会社が任意に選択するということになりますと,実務上はトラブルの元になりかねないのではないかと考えます。
それから,2の不適切な内容の提案の制限でございます。拒絶事由を明文で設けることに賛成でありまして,③の不正な利益を図る目的での提案についても,加えていただければと思います。
御説明にありました「専ら」という言葉については,改めて考えてみますと,提案者の目的というのは,提案者の主観にかかるものであり,それを専ら,つまり100パーセント不正なものであるということを要件とすると,会社の側で100パーセントそういう不正な目的だと判断できる場合にのみ拒絶できるということになってしまうのではないか,そうなると要件として厳格過ぎるのではないかと思います。したがって,「専ら」という要件は,削除ないし緩和してもよいのではないかと思います。具体的には,①であれば,名誉を侵害し侮辱する目的,②は人を困惑させる目的,③は不正な利益を図る目的と,皆,不当不正な目的での株主提案ですので,それが100パーセントそういう目的であるというまでの判断が会社側でつかない場合でも,そのような不正不当な目的が含まれている,若しくは,それが大半であるというところまで,会社が合理的に判断できるとなった場合には,そのような提案を拒絶できるという形にすべきではないかと考えます。それがもし難しいということになりますと,①から③が本当に実務で拒絶事由として援用できるのかという懸念が生じてしいます。
なお,④は,キャッチオールの規定なのか,私もよく分からないのですが,例えば,これはどのような提案を念頭に記載されているものなのか,もし事務局の方で具体的な想定事例などがあれば,御教示いただければと思います。
それから,資料には記載がありませんが,実務で問題となっている株主提案の大半が,業務執行に係る事項を定款変更の形で提案されたというケースですので,これをストレートに禁ずるということも,併せて御検討いただきたいと思います。
○竹林幹事 ④でございますけれども,①,②,③では判断がなかなか難しいものが入ってくるということでございます。そして,ここで,株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるというのは,例えば,定款変更議案で,1個の議案に不必要に多数の事項を盛り込んでいるような事例で,それら全てを審議していると,時間的にも過大な負担がかかるというような場合を,一応念頭には置いておりますけれども,ほかにどういう事例があるかというのは,具体的な事例が事例が発生したときに御判断いただいていくことになるかと思います。
○前田委員 役員等の選解任議案の数え方としては,私も,中東幹事がおっしゃいましたように,A案の方が考え方として明快なのではないかというように思います。つまり,役員等の選解任は数の制限にはなじまないし,また制限の必要性も必ずしも高くない,したがって,たとえ候補者が十数人いて,議案が十数個あっても,完全に数の規律の外に置くという考え方は,分かりやすいと思います。
これに対して,B案は,候補者が十数人あっても,議案を1個と数えるということですけれども,そのとき,決議はやはり十数個存在するはずであって,その決議の瑕疵などもそれぞれ十数個の決議ごとに考えることになるはずです。決議が十数個あるのに,なぜ議案だけ1個になるのか,B案は中途半端で説明しにくくないかと思います。
それから,定款変更議案については,内容において関連する事項ごとに数えるという考え方に賛成です。こういう数え方についてまで明文で書くのか,それともこういう解釈をここで確認した上で明文にはしないのかについては,更に検討すべきことになると思いますけれども,考え方に賛成です。
それから,最後の不適切な内容の提案の制限として,③の場合は加えていただくのがよいと思います。例えば,会社から金品をせしめるというような,不当な個人的目的の提案も,これで拒絶することできるようになって,権利濫用のケースを広くカバーできるようになるのではないかと思います。
○北村委員 発言の機会を与えていただき,ありがとうございます。
まず,役員選解任議案について,先ほど中東幹事と前田委員はA案がいいとおっしゃったのですが,私はB案の方がいいと思っています。確かに前田委員の御指摘のように,議案の数と提案議案制限の際の数え方を分けますと制度として複雑化するというのは,そのとおりでありますが,1人の株主によって無駄に時間が割かれて,実質的な株主総会運営ができないようになるのを防ごうという趣旨であれば,選任議案,解任議案が出されますと,それぞれについて議案説明と採決をする時間がかかりますので,そこは割り切って考えてはどうでしょうか。つまり,候補者が何人いても一つの議案と考えて,提案の上限がたとえば10個であれば10の中の1つに数えることに合理性があると思っております。
次に,定款変更議案について関連性のあるものは1つと数えるというところでございますけれども,補足説明では,論理必然的に,こちらを立てればあちらが立たないというようなものが関連性の例として挙げられております。ただ,個別の事情を考慮した上で総合的に判断するとも書かれております。この問題は,関連性があるとして1つにくくる範囲が広いほど,実質的な提案数が増えることになります。そして,広い範囲を1つにくくったとして,結局それは関連性がなかったとしても,拒絶できたかもしれないが拒絶しなかったというだけで問題はないという御説明だったと思います。確かにそうだとは言えるのですけれども,その場合,会社としては,ある株主には広くくくって,ある株主には狭くくくったとか,そういうことにならないようにしなければいけない。そうすると,かなり保守的に,少しでも関連すれば1つにくくって,実質的にたくさんの提案を認めることになりかねません。つまり,会社としては,関連性がないことを理由に提案を拒絶するのは自由だけれども,株主を不平等に扱ってはいけないという別の縛りがあるので,関連性を狭く解するのに消極的になるということが考えられるのではないか。そうすると,少しドラスティックですけれども,論理必然的なものは一つとするけれども,そうではないものは別々の議案と考えてもいいのではないかと思う次第でございます。
最後の不適切な内容の提案の制限ですけれども,濫用的なものを全て書き尽くすことはできないわけで,どこまで実効性があるか分からないですが,こういう濫用防止規定を設けるということが,一定のプレッシャーを提案者に与えるという点では,意味がないことではないと思います。
○沖委員 ありがとうございます。
意見が二つと質問が二つございます。よろしくお願いいたします。
まず,意見の方ですけれども,役員の選解任議案に関する議案の数え方ですが,これは,私も北村委員と同じ意見でありまして,B案がいいと思います。その理由としまして,平成24年5月31日に高裁の決定があった事案ですけれども,全部で63個の株主提案が出されて,そのうち58議案が審理の対象になったという事件があります。そのうち,33議案が取締役の選任,解任,選任に対する反対議案などを複雑に組み合わせたものを出しているわけです。ですから,こういった提案に対応するためには,やはり別枠ということでしょうけれども,選解任に関する議案も一つの議案として数えて,制限を加えることは必要だろうということです。
意見の二つ目は,数の制限を超えた場合の議案の扱いです。今回の部会資料で,まず提案株主が議案を特定すると。株主が特定しない場合や不明確な場合には,会社が任意に決定するとあります。これは,提案株主の提案権はなるべく尊重しようという趣旨は理解できるんですけれども,実際,限られた時間の中で,このやり取りをしていたときに,紛争が起きる可能性もあるかと思うんですね。ですから,第一読会では,数の制限を超える株主提案については不適法で全体としては無効にするという提案がされておりまして,これらの提案のうち,どちらがいいかは,今後も継続して検討していく必要があるのではないかと思います。
以上が意見です。
質問ですけれども,まず,第1点目は,定款変更議案の数え方です。こちら,内容において関連する事項ごとに区分して数えるということで,定款変更議案でも,これが多数出された場合に,数の制限を合理的にかけるということは必要だと思いますので,今回の提案は大変意味があると思います。そこで,内容において関連する事項ごとに区分して数えるとした場合に,当然株主提案については別議案で,認められたものは別議案で個別に採決をしていくということになるかと思いますが,他方で,会社提案の定款変更議案については,これは,ほとんどの会社で全体を1個として扱っているんだと思うんですね。分けているものは少数だと思います。そうしますと,その会社提案の扱いについては,特に先ほどのような定款変更議案の扱いは,これは株主提案の数を合理的に制限するための考え方にすぎないのであって,会社提案を処理するときは一切影響を及ぼさないという理解でいいのかどうかというのが1点。
あともう一つの質問は,数で制限をした場合に,その数を超える株主提案が出た場合には,会社の判断で任意に適法として上程することは認められるのか,それとも,それは不適法なので,基本的には認められないという理解でよいのかという2点ですね。よろしくお願いいたします。
○竹林幹事 まず,一つ目の点ですけれども,ここで御提案差し上げているのは,飽くまで株主提案に数の制限を設けるという前提で,株主の方が出す定款変更議案の数え方というのを,直接的に念頭に置いての御提案ということになります。仮に,そういった法文が設けられた場合に,それが会社提案にどのような解釈上の影響を与えるかということはあり得るかもしれませんけれども,ここで念頭に置いておりますのは,先ほど申し上げましたように株主提案についての数え方ということでございます。
続きまして,二つ目の点ですけれども,拒絶事由と申し上げているのは,仮に,数を超えるものを扱うという,結果的に超えていても,違法の問題を生じさせないということを念頭に置いておりますので,会社の方で判断が難しかったときに多めに採るということは可能という前提で御提案差し上げております。
○中東幹事 先ほどの数の数え方,役員等の議案の数の数え方について,北村委員,沖委員から御批判を頂きましたので,反論させていただきたいと思います。
両委員がおっしゃることも分かるのですが,1人がどれだけの時間をとるのか,あるいは多くの議案が出されたときに,一定の枠で1個の単位にしようという,その発想はいいと思うのですけれども,最終的にブラケットの中に幾つという数字を入れるかの話になるのかもと思っています。B案で10と入れても,その中に役員等の選解任議案が多く入ってくれば,8として外に出すのと同じことになりそうですので,結局のところ,A案を採ってブラケットの中を幾つにするかの話と似たようなことになるのかもと思います。
北村委員がおっしゃった,内容において関連性がある事項について,こちらは賛成でございます。論理必然的なものは1個として数えるべきであるという点で,古本委員の御懸念については,共有するものがございます。ただ,論理必然的にというと,まだ抽象的ですので,実際に効果的に運用できるかという疑問が残ります。補足説明の例を読ませていただきましても,もしこの議案をばらばらにしてしまって,本来なら一括して可決または否決しないといけないのに,一部の議案は可決,残りの議案は否決という形になると違法な状態が,つまり会社法が予定していないような状態が生じるということが,この内容において関連性がある事項だと理解いたしました。その意味で,そういったものはセットとして1議案とするということかと思っておりますので,論理必然的とは,切り離してしまうとすると,およそ会社法で許されないような定款の内容になるという場合であると思います。立法技術的な問題もあろうかとは思いますけれども,そういう形で,明確に書いていただくと,より実務的には安心できるのではないかと思っております。
○小林委員 どうもありがとうございます。
株主が提案できる議案の数の制限でございますが,数の制限について,10という数字は仮置きということでございますけれども,第一読会では,他の株主から賛同を得られないような精度の低い株主提案も多くなるのではないかという懸念を申し上げて,せいぜい3個から5個ぐらいと申し上げていますが,今回の提案について,すんなり読むと,B案の方がよさそうに見えますが,よくよく考えてみると,例えば,B案の役員選解任をそれぞれ1と数えるということだけで言えば,B案の方でまとめた場合,Bマイナス1か2で,A案の方はAプラス1か2というぐらいの違いしか,実はなさそうですので,あんまり本質的な差ではないのではないかなというように思います。
そうすると,やはり数の問題そのものに帰着するような気がするので,そういう意味では,これは,10個を前提とした議論としか見えないので,いかがなものかと,私の個人的な印象としては思いましたので,そういう前提の議論ではないと考えたときに,どちらが本当にいいのかは,先ほど御意見がいろいろあった,実際に役員選解任をどう考えるかというのは非常に難しい問題だと思いますので,もう少し議論を深めていただく必要があるのかなと思います。
もう一つ,一定の議案数の制限を置いたとして,それを超えた場合の選択方法については,やはり株主に特定させるのが1番目で,会社側がその後は,駄目だったら任意ということでございますが,先ほどちょっとお話もありましたように,元々こういう議案が出されたときは,株主とのコミュニケーションが非常になかなか取れなくて,そのやり取り自体が今でも大変だということになりますと,こういう規定になったときに,非常に難しい運用を迫られるということははっきりしていますので,やはり先ほども御指摘がありましたように,議案数,数の基準で超えた場合には,やはり全部無効にできるという形にしておいていただかないと,実際にはなかなか会社側としてはワークしにくいのではないかと思っております。
定款変更議案につきましては,内容の関連性に着目して区分するという考え方には賛成でございますが,やはりその判断基準については非常に難しいところもございますので,これだけで確定させるということではなく,もう少し議論を深めていただきたいと考えます。
それから,不適切な内容の提案の制限につきましては,部会資料では,「専ら」とか「著しく」という文言が維持されていますが,項目が①から④まであるということは結構だと思いますが,商工会議所でもう一度検討したところ,これらの文言によって,「専ら」,「著しく」という制限は,やはり権利内容的に見て,捉える射程が少し狭くて厳しいのではないかという意見が大勢でした。できれば,やはり「専ら」とか「著しく」という文言を削除するなどの扱いを検討していただきたいというのが,要望でございます。内心の専らということについては,やはり会社側としてはなかなか立証するのは難しいので,これで拒絶するというのは実質的にはできづらいのではないかということが,一番懸念としてあるということです。
会員企業が個別の事例として挙げられておりましたけれども,株主提案に関する招集通知の記載のところで,通常その提案の内容とか理由をそのまま記載することが求められているわけですが,その内容が,実は名誉毀損に現実に当たりそうな場合に,招集通知に結果的に記載せざるを得ない状況となると,会社そのものが共同被告で名誉毀損で訴えられる可能性があるのではないかということで,深刻に検討された会社があったそうで,そういう場合にどうすればよいのかという話がございました。そういう意味では,「専ら」をとっていただくと,大分話が軽くなるのかもしれませんけれども,こういうときに,名誉毀損のリスクを負わない,あるいは制度的な担保を考えてほしいというような要望がございましたので,紹介しておきます。
部会資料にはございませんが,第一読会で申し上げましたとおり,古本委員からも御指摘ございましたが,議決権の300個以上の行使要件についてはやはり見直していただきたいということと,株主提案権の行使の前倒しについても,これは検討の俎上には上げていただきたいということは重ねて,これはお願いでございます。
○野村委員 最初にまず,役員の選解任の件について申し上げようと思ったことは,今小林委員の方から最初にお話がありまして,余り違いがないのではないかなとちょっと思っておりましたので,この辺は,結局のところ,数が多くもし提案できるんであれば,数えても数えなくてもいいよねという話になると思いますけれども,数がもっとかなり厳格に3個とかってなってきますと,かなりクルーシャルな問題になりますので,そこはちょっと,前提を踏まえた上で議論したほうがいいかなと思います。
もう一つは,同一性のある,例えば,定款変更などにおいて,内容において関連性のある事項という立法の御提案でありますけれども,やはり,先ほど北村委員の方からもお話がありましたように,論理的にもこれは関連性があると,こっちを削るならこれも絶対削らなければいけないといったものは明確なんですけれども,やはりつながっているようでつながっていないというものが圧倒的多数を占めると思うんですね。そこの部分はきっと,恐らく今の立法と,それから今日の御解説だと,コンサバティブになるべく決議取消しにならない方向で,たくさんの御提案の方を受け入れるという方向になっていくというように思いますので,もう一段,何かそこで数を,定款変更の中でたくさん出せるということを少し制限できるような工夫というのも,もう一段考えられないものかなということを,ちょっとアイデアはまた追って御提案させていただければと思いますけれども,やはりちょっとこのままでは,この説明ではほとんど骨抜きになりかねないのではないかなというような気が,ちょっといたしております。
それで,一番伺いたかったのは,実はこの最後の内容の提案の制限のところなんですけれども,これについても,先ほどちょっと北村委員とのやり取りの中で,例の株主総会参考書類のところに,株主提案に係る理由の記載に関連する93条の問題があって,この中に,例えば,権利侵害であるとか名誉毀損とか,そういったようなものが出ていると。これ,同じものではないかと言われたんですが,ちょっと私の理解が違っているのかどうか分かりませんけれども,6ページにあります不適切な内容の提案というのは,この提案内容から見てそういった目的が推断される場合を指すのではないかなと理解していまして,単に動機において,何か困らせてやろうとか,これに絡めて名誉毀損の道具にしてやろうとかという目的を持っているものを,ここで提案内容として排除しようとしているわけではないと思いますので,そうだとしますと,やはり提案理由の方で今度は傷つけてやろうという利用するのとは,違った利用の場面が想定されているのではないかなというような感じがします。そのことを前提とした上で,ここでお話ししたかったことは,飽くまでもここは内容の制限という,そういうくくりで理解してよいものなのかどうか。つまり,提案内容から,そういった目的が推断される場合ということを想定しているのか,それとも,提案をきっかけとして,そういった動機を実現しようとしていることを防止しようとしているのかという点についてだけ,ちょっと御確認をさせていただければと思います。
○竹林幹事 今,野村委員から御指摘いただいた例につきましては,飽くまで提案そのものの内容といったらよろしいんでしょうか,その提案そのものの内容が専ら人の名誉を侵害するものであるということであって,提案の内容自体は別に名誉侵害になっていないけれども,それをきっかけとした何かを防止するということを想定しているものではございません。
○野村委員 1点。そうなりますと,よく考えてみると,ここは逆に,会社法施行規則の方の理由のところが,必ずしも十分ではなかったのではないかなということがうかがわれまして,逆に,困惑するような理由をかけてくることも拒まなければいけなかったのではないかなと思いますので,そこは,改めて御検討いただければと思います。
○藤田委員 何点か申し上げたいと思います。まず1のA案,B案の選択ですが,私の前のお二人の委員が言われたこととほとんど同じです。何人かの委員の方がB案は不自然だと言われたのですが,自然さという点では,どちらも余り差はないような気がします。確かに議案の数と提案の数が違うのは不自然といえば不自然かもしれませんが,提案していても提案していないとみなすというのも,同じぐらい不自然だと思います。ですから,理論的には別にどちらでなくてはならないというような話ではないと思います。選任議案は,普通は選任される人ごとに議案を数えていますけれども,それをそのまま適用すると非常におかしな結果になるので,それを何とかしたいというわけで,その手法としてはどちらの案も十分あり得ると思います。
むしろ実質的により影響があるのは,提案数の上限をどう考えるかで,これも小林委員や野村委員も言われたように,たとえば提案の上限が3というときに,B案をとるのはさすがに抵抗があります。そういう話だとすると,A案,B案のどっちが正しいという議論を抽象的な形でして,それから提案数を決めるという手順で議論することはやめたほうがいいと思います。両者は同時に考えないといけないと思います。
次に,2番目の議案の数え方ですが,そもそもここで書かれている提案の意味が十分分からなかった点があります。つまりこういうふうな文言の条文を書くという御趣旨なのか,それとも,条文を作るわけではないが,提案の上限数を設けるというときには,こういう発想を前提としていますという説明なのか,ちょっとよく分からなかったのです。考え方としては,関連性があるのはまとめて考えるという発想――それをどのぐらい厳格に考えるかはともかく――は,動かしようがないと思います。もしそうしないのであれば,提案議案数の制限は実質的に無意味になるので,古本委員がおっしゃられたように,定款に書ける事項を限定していくしかないと思います。逆に定款には何でも書けるという前提を採る限りは,定款変更議案としてまとめれば一議案というふうな数え方をするとすれば,この規制は全く意味がなくなります。ですから,何らかのくくりで議案数を数えるしかないのは確かだと思います。
論理必然的に両立し得ないようなものは異なる議案と数えるという基準だけでいいかと言われると,やはりそこまで限定してしまうと,提案数の上限の限定の趣旨が余りにも没却されるような気がします。柔軟にすると曖昧になり,リスクを会社に負わせることになる結果,保守的に運用されることになるかもしれませんが,しかし,会社がリスクを負いたくないから保守的にする可能性があるからといって,論理的に両立し得ない場合だけしか別のものとは数えないとまで限定する必要もないような気がしています。議案の数え方については,幾つか異なった考え方がありそうですが,基本的にこういうくくりを設けること自体には賛成で,そこから先の考え方の整理を今後もう少し考えたいと思います。条文にするかどうかも,今決められることではなくて,整理がある程度つくようになってから,条文化できる内容かどうかを考えればいいような気がしています
なお提案株主によってくくりの大きさを会社が違えて扱ったりするという不公平なやり方も生じ得るという指摘がありました。確かに,そういうことが生じる可能性はあると思いますが,しかし根本的に考えますと,それは提案の上限数を提案拒絶事由としてしまっている以上は避けられない問題です。つまり,ある人の提案については上限数以上のものを拒絶し,別の人については上限数以上でも提案を認めるとする扱いを会社がする可能性は常にあって,それと比べると,議案の数え方を提案者によって変えるという話は,どちらかというと小さい問題です。恣意的な拒絶の仕方をした場合に不公正な手続による取消事由になり得るという一般的な規制の問題にするにとどめざるを得ないと思います。
3番目に,不適切な内容の提案の制限の③については,これを入れるなというつもりはありませんが,この条項は役に立たないだろうなという感触を持っています。そもそも,これを満たす場合のイメージがわかないのですね。あえていえば,例えば誰かからお金をもらって提案をするというのがこれに当たるのでしょうが,それ以外は何があるのだろうかという気がします。売名的な動機がある場合ですら,専ら不正な利益を得る目的とまで言えるかどうかも分からない。そうなると,この条項を入れることで,拒絶できる場合がどれだけ増えるかはよく分かりませんし,また,この拒絶事由を加えることで拒絶できる場合についての基本的な考え方が明らかになるというものではありません。ですから積極的にこれを入れたいと思うわけでもないですが,何か弊害があるわけでもないので反対もしないという,そういうスタンスです。
むしろ,④が一番重要な考え方を示すものではないかと思いますけれども,前回も確認したことですけれども,④にいう,「総会の適切な運営」というのは,準備段階も含めたものであるということと,これは提案が採択された場合に会社に損害が発生するという意味において提案の内容が不適切であるということを問題にしているのではなくて,飽くまでそのような議案を検討することが運営との関係での弊害があるかどうかを考慮しているという趣旨の拒絶事由だということが重要です。
最後に,どなたがおっしゃったかちょっと正確に覚えていませんが,300個という少数株主権の基準です。最新の部会資料に書かれていないということは検討事項から落ちている,この要件を見直すことはしないという提案になっているように読めます。最終的に見直しについて賛成するか,反対するかは留保しておきたいと思いますが,アジェンダから落としてしまう前に,もう少し情報が欲しいと思います。情報が欲しいのは,まず第1に,典型的に濫用的な提案と言われているもののうち,どのぐらいこの300個という要件に依存して提案されているかということです。1パーセント要件を満たしている人によって相当数の提案が,なされているのであれば,この要件を削除することは,それほど意味がないということになりますし,逆に濫用的提案のほとんど全てが300個の要件で提案してきているというのであれば,これを削除することの意味は大きく変わってきます。
確認したいことの第2点は,昭和56年改正のときにこれが導入された時点におけるこの300個の意味は,経済的な価値の点で,現在も同じようなものと考えてよいか,それとも,根本的に違ってきているのかということです。3番目に,1パーセントという要件と300個の間には,平均してどのぐらい隔たりがあるのかということです。こういうふうに並列的な要件が規定されているのは,片方を満たすことがあれば,片方を満たすこともある場合に,どちらか満たせばよろしいとするケースが多いと思います。これに対して1%の要件が300個の要件よりもほぼ例外なくはるかに厳しいというなら,こういう要件の書き方としてはかなり異例なことなので,その辺りも確認すべきかと思います。そういったデータを踏まえて慎重に判断すべきではないかと思っています。
○竹林幹事 必ずしも御質問を頂いたというわけではなかったのかなとも思いますけれども,まず,私どもで御提案差し上げました内容において関連するということにつきましては,余りこれまで定款変更議案の数の数え方というものが表に出てきていなかったのかなと思いまして,どういった形で御議論いただけるのかという,今現在の考え方といいますか,そういったものを確認させていただきたかったという趣旨もございます。ここに書いてあるくらいが,ある程度皆様共通の認識でいらっしゃるということであれば,あえて明文化するということは必要ないかもしれませんし,ここでの議論等も踏まえまして,また条文化の要否等について検討させていただきたいと考えております。
また,不適切な内容の提案の④につきましては,前回もお答えさせていただいたとおり,藤田委員から本日も御指摘いただいたとおりの考え方に立っております。最後,300個要件のところでございますが,実際にどういう形で300個とパーセンテージの関係を把握するのか,難しいと思っておりまして,引き続き検討させていただきたいとは思っておりますが,第一読会で席上配布させていただきました資料の中に,個数等については書いてございまして,場合によっては,その個数と,それが何パーセントかというのも,書いてございます。少なくてもそういったものを見ていますと,300個で利用されているということがあるとは認識しているのですけれども,もう少し何か調べられることがあるかどうかを含めまして,検討させていただきたいと思います。
○田中幹事
まず,先ほど来議論されている選任・解任議案の数の数え方についてですが,多くの方がおっしゃるように,現実には議案の数そのものをどう決めるかが重要なので,それに沿って調整されていくものですから,本質的には余り重要ではないかと思いますが,しかし,理論的に申しますと,例えば,1回で提案できる議案の個数の上限を5としたとしますと,仮に,株主が既に5個定款変更議案を出しているとします。そのときに,もう1個定款変更議案を出すのは違法なわけですね。これに対して,株主がもう一つ,今度は役員選任議案を出してきた場合には,B案(役員選任議案は全体で1個と数える)であれば,それも違法であるわけです。定款変更議案であろうが,役員選任議案だろうが,合計で5個を超えれば違法になる。ところが,A案(役員選任議案は提案数に含めない)だと,違法でなくなるわけですね。ですから,役員選任議案何人の候補者を出そうが,あるいは取締役と監査役と会計監査人の選任議案を出して,更に解任議案を出そうが,全然ウエイトが置かれないということになるわけでして,これが筋が通っているのかということが問題だと思います。
役員の選解任議案は,候補者の数だけ議案がありますので,定款変更議案とかほかの議案と同じようなウエイトの置き方はできないということは争いないわけですけれども,問題は,同じようなウエイトは置けないとしても,一切ウエイトは置かないのか,それとも,実際に役員選任議案でも株主のための検討時間を取るわけですから,ウエイトゼロというのはおかしいではないかというところが議論の中心です。これは,ブラケットの数をどうしようが,つまり,提案個数の上限をどう設定しようが,起きる問題であります。私自身は,ウエイトゼロはおかしいと思いますから,B案に賛成ということでございます。
それから,実際にはブラケットの中の数をどうするかの方が,皆さん御関心があると思いまして,それについては引き続き審議ということで,今回は具体的な提案はないというお話しのようですが,具体的な提案がやがてなされるであろうことを予期して申し上げておけば,私も,10は少し多いのではないかと思います。真剣な株主提案をしようとする提案株主にとっては,提案する議案が10もないといけないというのは,ちょっと状況として考えられない,多くても5というのが,私は適当ではないかと思っています。それから,定款変更議案の個数の数え方については,確かに現在の御提案ですと,中身が不明確なので会社は保守的な対応にならざるを得ないのではないかというのは,そのとおりかと思いますが,仮にそうであっても,これまで何十個という数の定款変更議案として提案してきたものを,全部一つの定款変更議案に押し込めた場合は,会社はこの条項に基づいて拒絶ができるということになるかと思いますので,意味のないものではないと思います。さらに,この条項を明確にする努力は必要かもしれませんが,現在提案されている条項であっても,これを会社法に入れることには一定の意味があるのではないかと思います。
それから,不適切な内容の提案の制限についてですが,私は,この提案の中では,特に④を入れるということが非常に重要だと思っております。④は,客観的要件の下で不適切な提案として拒絶できるということを規定しておりまして,これは,現在の権利濫用の法理ですと,権利濫用について主観的目的を重視するような判例となっていることから,④に規定されているような事情があっても,現行法のもとでこれが権利濫用に当たるのか必ずしも明確でないと思います。それについて,④のような条項があれば,株主提案を拒絶できるということで,ここに意味があると思います。そして,先ほどの御解答にもありましたが,この提案は,一つの定款変更議案の中で,定款条項という形で延々と株主の主義主張を述べるような提案が過去にありましたので,このような議案を念頭に置くと,この④の条項によって拒絶できるということになりますから,これを入れることに意味があると思います。この④が入るのであれば,例えば①や②に関しては,現在の提案のような限定的なものでもいいのではないかと思います。
他の委員,幹事の方から,提案目的に付された「主として」という限定が不明確なので,いっそ限定句は全部とったほうがいいのではないかという御意見もありましたけれども,特に個人株主が株主提案する場合は,何らかの形で経営陣に対して悪感情を持っていることがむしろ普通でありまして,そういうエネルギーがないと個人株主は株主提案をしないと思いますので,何の限定句もなく,とにかく会社を困らせる目的があれば駄目というのは,ちょっと私には支持し難いです。「主要な」目的というのは,例えば,不公正発行についての判例法理でも使われているわけですから,条文に「主要な」という限定句を入れることも,必ずしもおかしくないと思います。ただもし,「主要な」とか「主として」という表現を条文に書くのが難しいのであれば,私は,「専ら」と限定してもよいのではないかと考えております。
○加藤幹事 1点,不適切な内容の提案の制限について質問いたします。御提案は,株主提案の個々の提案について,それぞれについてこの要件が満たされるかどうかということを判断するという前提で作られているのか,それとも,東京高判の平成27年5月19日のように,一括して全て濫用であると評価する余地もあるのでしょうか。
○竹林幹事 私どもは,基本的にはやはり個々に見ていくんだろうと考えておりました。ただ,その数が多かった場合とかについて,それがどういうような意味合いを持っていて,全体として専ら困惑させる目的の提案になっているというような解釈の余地がないのかと言われると,ちょっとよく検討しないといけないのかなとは思っております。ただ,先ほども申し上げましたように,④などはまた違った観点から一つの定款変更議案の中にたくさんのものが盛り込まれているというようなこともあったりしますので,それは全体的に見てどうかというようなこともあるのかと思います。もしまたこの辺りにつきましてお考え等あれば教えていただければと思います。
○三瓶委員 ありがとうございます。
私は,定款変更議案の内容について申し上げたいと思います。 先ほど,古本委員が最後におっしゃった業務執行に関わる事項について定款に定めることについては,ある程度の制限を考えてほしい,これは,正にそうだと思っています。実際に議決権行使をする立場で,ガバナンス改革の中で,取締役会に監督責任をより強く感じて持ってもらうという一連の流れの中で,株主提案で個々の細かいことについて,どんどん制限を加えていくというのは,全体からすると相矛盾することだと思っています。
実際に,定款変更議案がたくさん出てきていますけれども,それ,同じ株主から出ている提案でも,我々から見て相矛盾するというようなものがあります。なので,そういう点からすると,まず,業務執行に関わる定款変更議案については,どうにかうまく,言い方が難しいんですけれども,もう少し内容として提案しにくいというか,それは提案すべき内容ではないというようなことを,どうにか盛り込めないかなということと,同時に,定款変更するときには,やはり一株主からは一つにすると。そうすることで,一つの定款変更議案の中で相矛盾していないものをよくよく考えてみて出さなければいけなくなるわけですね。そうしないと,通りにくいわけですね。そういうことを考えた上で株主提案する。
そういうことを考えると,上限についても10は要らなくて,もう少し絞って3辺りかなと思いますけれども,よくよく考えられた,練り上げた定款変更議案で,そこに必要なことは複数入っているかもしれませんけれども,それを含めて3ぐらいにするということが,トータルで見たときに,きちんと精査すべき株主提案になると思います。是非そういう方向になっていって,今の一連のガバナンス改革というのが意味あるものになっていったらと思います。
○齊藤幹事 ありがとうございます。
最後の不適切な内容の提案の④につきまして,まだ私自身がよく理解しきれていないところがあるかもしれないのですが,この読み方についてコメントをさせていただく次第です。適切な運営が妨げられることによって,株主の共同の利益が著しく害されると読むということと,それから,提案の内容には踏み込まないということ,これがこれまでに確認されてきたように思うのですけれども,「適切な」と「著しく」という評価を含む言葉が入っているので,このようなものに該当するものは不適切だろうということについては,余り議論の余地がないのかもしれないのですが,実際にそれを判断できるのかというところが,まだ整理がつかないところがあります。というのは,既に問題視されている先例があるような場合には,同様の事案がこれに該当するだろうという点については,多くの方の意見が一致するように思います。しかし,それは,実際には内容まで見ているので,濫用的であるという結論を導くことに躊躇を覚えないですむという側面があるように思いますので,全く内容に踏み込まずに,適切な運営が妨げられるのかを判断するとすれば,その要素は,単に時間が掛かるとか,手間が掛かるというところに尽きていくことになる。そうすると,例えば,「時間が掛かりますので」という理由で,時間というのは株主それぞれにとって大事なものでもありますから,その御提案は御遠慮ください,ということになりかねないのではないかと。実際には,上場会社であれば保守的に運用されるだろうという期待の下に,こういう提案が取り上げられているのかもしれないのですが,そのような前提がない場合も想定して制度は作る必要があるのではないかと感じました。
○松井(智)幹事 これ,大したことではないという話なのですが,先ほどのA案,B案について一言だけ。
A案をとっている方というのは,決議の瑕疵に関する議案というものについての学説があるので,ここで議案という言葉を使ってしまうと,いろいろと解釈論上難しいという話だと思います。B案の方は,議事進行において,議案ごとに説明と討議をするといったような議事進行であるとかいったようなことを念頭に,どちらがきちんとした手続でいけるかといったようなことをお考えなのだと思うので,ちょっとここで,議案という概念を使って条文を書くのかどうかということを考えていただければ,多分A案についての懸念の部分というのは,大部分解消するのかなということであります。
あと,先ほど矛盾したような株主提案についてという話がありましたけれども,そういう行き当たりばったり的な議案をどんどん出してくるというのであれば,④のような話に引っ掛けることができるのではないかという,そういう感想を持ったということと,業務執行制限なんですけれども,これ,業務執行を制限する議案が出てくるのが困るのは非常によく分かるのですが,そうすると,多分究極的には定款に株主が書くことができる事項というところに踏み込んで,多分議論をするのだろうなと思って,株主提案権のところで整理し切るのはちょっと難しいのかなと考えたということです。
続きはあした!!