会社法改正! 条文を理解するためには、その背景を知る必要がある!~その3~
長かったので再度分割です。。。
・第八回法制審議会
○坂本関係官 それでは,8ページの「第2 株主提案権」について御説明いたします。 「1 提案することができる議案の数」につきましては,当部会において,株主が提案することができる議案の数を幾つまでとするかという論点と,役員等の選任又は解任に関する議案の数をどのように数えるかという論点は,相互に関連する問題であり,別々に議論すべきでないという御指摘があったことから,本中間試案のたたき台においては,両論点に関して考えられる組合せとして,A案からC案までの3案を掲げております。A案は,提案することができる議案の数を5とした上で,役員等の選任又は解任に関する議案については,議案の数の制限の例外とするというものです。B案は,提案することができる議案の数を10とした上で,役員等の選任又は解任に関する議案については,選任又は解任される役員等の人数にかかわらず,選任議案をまとめて1議案,解任議案をまとめて1議案として数えるというものです。C案は,提案することができる議案の数を10とした上で,役員等の選任又は解任に関する議案については,提案することができる議案の数の制限の例外とするというものです。
また,1の(注)では,定款変更議案の数え方について言及しております。当部会においては,株主が一つの議案として提出しようとする定款変更議案であっても,その内容において関連する事項ごとに区分して数えるという方向性については,おおむね御賛同いただいているものと理解しております。もっとも,これを明文の規定として定めるべきかどうかについては,その関連性の判断基準を具体的にどのように考えるかを整理した上で検討すべきであるという御指摘もあったことから,この点については,なお検討するものとしております。
「2内容による提案の制限」につきましては,当部会における議論等を踏まえ,会社が株主提案を拒絶することができる事由を列挙したものでございます。こちらは,第6回会議で御提案した内容から変更はございません。
続きまして,9ページの第2の補足説明「2株主提案権の行使要件及び行使期限」についてですが,当部会においては,株主提案権の行使要件について,300個以上の議決権という要件の廃止又は引上げを行うべきであるとの御意見があり,また,この点については,昭和56年当時と現在との投資単位の異同や実際の提案株主が有していた議決権の状況等を確認した上で検討すべきであるという御指摘を頂きました。
そこで,投資単位について比較をしてみたところ,昭和56年当時の東京証券取引所市場第一部に置ける投資単位は,当時の物価で約41万円であり,これは,現在の貨幣価値に引き直した場合,計算に用いる物価指数によって計算結果に一定の幅は生じるものの,約36万円から52万円となります。これに対して,平成28年の平均的な投資単位は約26万円であるとされております。したがって,現在の貨幣価値に引き直して考えた場合,投資単位は昭和56年当時と比べると減少はしているものの,それほど大幅な減少とまでは言えず,また,平成28年時点においても,300個要件によって株主提案権を行使するためには,約7800万円の投資が必要ということになるため,各個人株主にとってはなお高額であり,現在において株主提案権を行使することができる株主の範囲が広くなり過ぎているという評価をすることは難しいものと考えます。
また,平成24年7月から平成28年6月までに開催された株主総会における株主提案に係る提案株主の議決権割合について見てみると,1%未満,つまり,議決権300個以上の要件のみを満たす株主による株主提案の件数は,株主提案全体の約4割を占めているという調査結果がございます。このように,仮に議決権300個以上という要件の廃止又は引上げを行う場合には,最大で約4割以上の株主提案が認められないこととなる可能性がございます。したがって,300個以上の議決権という要件の廃止又は引上げを行うこととした場合には,個人株主による株主提案権の行使を過度に制限してしまうことになるおそれがあるものと考えております。
また,当部会においては,株主提案権の行使期限についても,8週間前という現行の行使期限を前倒しすべきであるとの御指摘がございました。もっとも,株主は,株主提案権の行使時に株主総会の日を正確に知らないのが通常ですので,現行の行使期限を更に前倒しした場合には,株主提案権を行使する株主にとっては,株主総会における会社提案の内容や行使期限の具体的な時点を予測すること,会社の状況を見極めた上で,その状況に応じて株主提案権を行使することが一層困難になるおそれがあるものと考えられます。
当部会においては,仮に提案することができる議案の数や内容による提案の制限について規律を設けるものとする場合には,それらに加えて,行使要件及び行使期限を見直すまでの必要はないという御指摘もされております。さらに,平成28年7月から平成29年6月までの間の株主総会で,株主提案が提出された上場会社は51社程度にとどまっており,依然としてその数は少ないことからしても,株主提案権の行使要件及び行使期限の見直しについては,慎重な検討が必要であると考えております。
御説明は以上となります。
○古本委員 ありがとうございます。
まず1点目の「提案することができる議案の数」については,以前から申し上げておりますように,提案個数の上限を考えるに当たっては,濫用か否かというところについてなかなか判断が難しいところもありますので,株主総会で株主提案にどれぐらい時間を要することになっているのかといったことも考慮して検討するべきだと考えます。その意味で,経団連としては,1個ないし3個を上限とすべきだということを申し上げてきたところであり,部会資料の選択肢において,5,10,10となっているところを,例えば,3,5,10というような3案としていただければと思います。
それから,役員選解任議案をゼロとするか,1とするかということは,株主提案の上限数をここで御提示されているような10とすると余り差が出ないので,上限の個数とこの役員の選解任議案をゼロとするか1とするかという選択肢を組み合わせるか,若しくは,上限を10個とする場合に役員の選解任議案を1とするかゼロとするかという選択肢ではなくて,例えば,上限を5個とする選択肢についても役員の選解任議案を1とするかゼロとするかという選択肢を入れることを検討していただければと思います。
次に,2番の「内容による提案の制限」については,これも前回の会合で議論になりましたが,部会資料では「専ら」何々の目的という文言となっております。しかし,目的という提案株主の主観的なものにつきまして,この①から③のそれぞれの要件に該当すると会社側が判断するのは難しいのではないかと思います。現実的には,本当は不当な目的の提案であっても,正当な目的であるかのような外形を装って提案がなされるというのが実態ですので,「専ら」という要件が入ると,当該株主提案が100%不適切な目的で提案されていると会社サイドで判断して拒絶するということは,現実的には難しくなってくると思います。したがいまして,中間試案には,「主として何々の目的で」とする文言も選択肢に加えた上で,国民の意見を聞いていただきたいと思います。
また,株主提案は,現実的には大半が定款変更議案の形でなされています。かつ,そのほとんどが業務執行に関する提案となっています。また,こうした議案は,ほぼ例外なく否決されておりまして,賛成比率はほとんどの場合で1桁%となっております。株主総会は,当たり前ですけれども,臨時株主総会を除くと年に1回しか開催されませんので,業務執行に関する決定を行うには適さない機関であるということは明らかです。仮に日常的な業務執行に関する事項が定款に定められるようなことになると,当然ながら機動的で柔軟な経営判断,企業経営に支障が出てくることにもなりかねません。したがいまして,専ら業務執行の範囲に属する事項については,定款に定めることを提案できないとすべきであり,少なくとも中間試案には,このことを記載した上で,広く意見を聞くことにしていただきたいと思います。
それから,資料の補足説明に記載されている株主提案権の行使要件については,これも何度も申し上げて恐縮ですけれども,資料の10ページの下の方に,要は,議決権300個の要件を引き上げる,又は廃止しますと,株主数の多い大規模な会社においては,個人株主による株主提案権の行使が過度に制限されてしまう,したがって,この要件を維持すべきであると,こういう趣旨のことが書かれております。しかしながら,1%又は300個という今の行使要件が,300個というものがあるために極端に緩和されているということであれば,300個の要件は見直してしかるべきではないかと思います。現状は,会社の規模に照らして,議決権保有比率が極端に小さい株主にも提案権の行使が認められており,このことが会社,ひいては株主全体の利益に合致しなくなっている実態もあるということを,是非御理解いただきたいと思います。
前々回の部会で,藤田委員から,300個要件と1%要件というのはどういう関係にあるのか,どのぐらい乖離しているのかという御発言がありましたので,これに関連して,今日,机上配布の形で資料をお配りさせていただいています。
資料1と書いてあるA4横の表になっている資料は,1枚目の1ページ目,2ページ目に経団連の主要企業のうち,近年株主提案がなされた会社について,ヒアリングをした結果をまとめたものです。2枚目は,資料版の商事法務からピックアップして作ったものです。これを御覧いただくと,一番左から3番目に提案株主の議決権比率が書いてあり,その隣に提案個数等が書いてあります。その隣は提案内容を記載しております。御覧いただくと,ほとんどの提案株主の議決権保有比率は1%どころか0.0何%といったレベルがほとんどであり,100分の1%にも満たないケースもかなりあります。それから,もう一つの棒グラフの資料は,2017年6月総会において,株主提案を受け
た企業にとって,議決権の1%が株式何個に相当しているかというものを示したものであり,1%と300個との間には,著しい乖離が見られるということは明らかだと思います。
それから,近年,実際に可決された株主提案について見てみますと,大株主が提案したケースがほとんどといいますか全てのようです。昨年の実績を見ますと,可決されたのは,大株主からの提案2件のみと認識しております。それ以外の株主提案についての賛成率は,先ほどの表にも書いておりますが,一部の例外を除きますと,みんな1桁%,多くても10%台となっています。また,先ほどの資料1の一番右端に,株主総会全体に占める株主提案に係る時間の割合というので,実績がざっと書いていますけれども,中には50%,半分ぐらいの時間が株主提案に費やされたと,割かざるを得なかったという会社も見受けられました。このように,およそ実現困難な提案のために,会社のマンパワーと時間的リソースが割かれているということは,提案を受けた会社にとって多大な負担となっておりまして,他の株主との対話の機会を損なうことにもなりかねない状況にあります。
したがいまして,300個以上の議決権という要件をやはり廃止するか,又は引き上げることを更に検討いただきたいと思っておりまして,少なくとも中間試案におきましては,これを一つの選択肢として提示して,広く意見を聞くべきであろうと思います。
それから,最後に,提案権の行使期限についてですけれども,これも,先ほどの補足説明の10ページ目の下の二つのパラグラフにありますけれども,行使期限を早めると,総会の日を正確に知ることができないために,株主は提案権を行使することが一層困難になると指摘されております。しかし,2週間ほど前倒しにしたとしても現行制度の下における状況と大きく変わるものではないのではないかと思っております。仮にこれが非常に大きな懸念となって前倒しができないということであれば,行使期限を例えば「基準日から2週間後まで」といったような決め方とすることも考えられるのではないかと思います。
この提案権の行使期限は,先ほどの議論にもありましたが,総会資料の早期提供を可能にするために,これがネックになってくるということもありますので,少なくとも中間試案におきましては,一つの選択肢として提示されるべきであると思います。
○小林委員 ありがとうございます。
今,古本委員からの御発言と内容がほぼ重なりますが,まず,株主提案権の提案することができる議案の数は,実際の株主提案制度の場合,実質的な検討をするためのリソース,あるいは株主そのものとコミュニケーションということを考えますと,今提示されている内容では多いと感じております。元々3個から5個ぐらいが限界ではないかという意見もさせていただきましたので,私どもとしては,A案の数え方で3個という選択肢をもう一つ増やしていただきたいというのが,一つのお願いでございます。
それから,内容の提案の制限につきましては,「専ら」,「著しく」というような文言が入っておりますが,権利内容として捉える射程がかなり狭くなっており,現実にこれを会社側で立証せよと言われても,非常に厳しく,極めて制限的だということがございますので,本来であれば,「専ら」とか「著しく」という言葉は削除した選択肢を示していただきたいと考えています。ただ,そこまではということであれば,「専ら」については「主として」,「著しく」については「特に」というように置換した選択肢を示していただけるといいのではないかと考えております。
もう一つ,株主提案権の行使要件,行使期限についてですけれども,株主総会の適正な運営について,実証的なところは今御説明もありましたが,提案の制度とか,実際の議事との関係,あるいは実際の可決可能性ということを十分に考えていただきたいということもございますので,300個要件については廃止,又は引上げということを,中間試案の選択肢として考えていただきたいと思っております。
行使期限については,元々やはり現在の株主総会実務でも,提案が現実に出てきたときは,非常にタイトな日程でございますので,今の制度の中であっても,行使期限の前倒しをしていただきたいと思っておりますが,今回言われている電子提供措置の開始日とか,招集通知の送付期限が現行の,例えば総会2週間前より早くすることについて,そのような提案をする場合には,株主提案の行使期限も前倒しすることも,併せて検討するぐらいのことは,少なくとも中間試案では示していただきたいと考えております。
○田中幹事 これまでの御意見と共通するところが多いのですけれども,まず,提案個数に関しましては,議案の数と役員の選解任議案の取扱いは論理的に分けて考えるべきだというのは,前回申し上げたとおりなのですが,そのように考えるのであれば,10個のところで,役員選解任議案は除くのと,1個の議案として数えるという選択肢があるのであれば,A案に関しても,その二つの選択肢を示すという方が,論理的にも筋が通っているのではないかと思います。A案についてだけ,除くという選択肢しかないと,何かやはりその個数とこの問題がリンクしているかのように思われてしまうように思います。そしてまた,実際的に考えても,役員選任議案を1個と数えた上で,5個ということが過度に制限的であると,私は思っておりません。そういう選択肢は十分考えられると思いますし,十分パブリックコメントに付す価値があるのではないかと思います。
この問題に関しては,やはり一提案株主の提案によって,総会の検討時間が割かれるという観点から,それほどのコストをかけて決定を要求できる権利と考えるわけですので,ある程度そこは制限的にしてもいいのではないかと。そしてまた,制限した結果として,例えば,会社支配権が交代するような事態で,提案権が制限されているために交代が起こらないということがどの程度あるかと考えると,それほどないのではないか。少なくとも5個あれば,基本的には十分であるような気がしますし,また,どうしても制限される場合は,臨時総会を招集するという権利,一定の大株主に対しては常に開かれていることから考えても,もう少し積極的に制限を考えてもいいのではないかと,私は考えております。
それから,株主提案権の行使要件及び行使期限のことなのですけれども,私も,部会の検討を踏まえて,やはりパブリックコメントに付す,少なくとも期限とか行使要件についてどう考えるかという形での提案はあっていいのではないかと,部会でもそういった議論は有力になされていたわけですし,それから,私個人としても,少なくとも行使期限に関しては,招集通知の早期発送などのボトルネックになっているという点もありますので,ちょっと濫用の防止とは別に,少しこの期限をもう少し長くするということにメリットがあると考えています。株主が期限が分からなくなるという点については,先ほど古本委員からも御提案がありましたけれども,決算期,あるいは決算期の何日か後と,総会日の10週,あるいは12週前のいずれか遅いときを期限とするとか,そういう形で考えると。現在の実務を前提にすれば,決算日と総会日の12週前ぐらいが,どちらが遅いか微妙なぐらいの期限だと思うのですけれども,それを一つの方向感にするとか,これは一案にすぎないですけれども,ちょっとその点に関しても考えていただいてはどうかと。
それから,行使要件,個数に関しても,現在の株主の提案権を一種の既得権のように考えれば,今ある提案の4割ぐらいが提案できなくなるのは問題だということになるかもしれませんけれども,総会の審議の充実ということを考えたときに,確かに両刃の剣的な部分はあるかもしれませんけれども,審議事項をある程度絞った上で,充実した検討ができるようにするという観点から,現在の,今ある株主の権利を既得とするのではなく,もう少し白紙の状態で考えるということもあり得るかと思いますので,この点に関しても,パブリックコメントに付すという方向で,是非検討していただければと思います。
○梅野幹事 発言の機会を頂戴して,ありがとうございます。
今,田中先生初め,いろいろ御発言いただいたこと,十分に理解しつつ,この場において様々な意見を出すこと自体も意義があると思いますので,一言申し上げさせていただきますが,私の方で,第2回部会において,株主提案権の提案することができる議案の数については,株主提案権の行使という重要な権利について数を制限しなければいけないかどうか,慎重に検討すべきであるということを申し上げました。その点については,引き続き同じような問題意識を持っておりまして,当部会においては,必ずしもそういった意見は非常に少数だったというように理解はしておりますけれども,このような問題,制限すべきかどうかについては,パブリックコメントで広く一般の意見を募ることにも意義があるのかなというように考えております。
そういった意味で,このD案として現行法の規律を見直さないものとするといったような選択肢を掲げていただくことができないのかということについて,お願いしたいということを考えています。御検討いただければ幸いです。
○藤田委員 飽くまで,どの案を支持するかという観点ではなく,パブリックコメントの付し方という観点から少しお話しさせていただきます。実は,この資料を受け取って,今日来るまでは提示された案でいいと思っていたのですけれども,改めて本日配布された古本委員の資料を拝読しますと,この補足説明でパブリックコメントに付していいのだろうかという疑問が少し出てきました。補足説明の書き方だと,例えば,300株の持株要件の要件を廃止したり,引き上げたりすると,非常に多くの株主の権利を制約すると聞こえてしまうのですけれども,そういう要件に基づいてどのような提案がなされているかという資料を拝見すると,ちょっと考えた方がいいような気もしてきます。また,300個と1%の乖離が,一番少ないところで3分の1ぐらいで,両者が逆転することはまずないとすると,こういう要件の立て方に合理性があるかという疑問があると言えばある,これらのデータも踏まえますと,今の補足説明の書き方は,ちょっと幾ら何でも一方的な気がします。古本委員提出のデータも,どういうふうなサンプルをとられているかがよく分からないものですから,精査する必要があるかもしれませんが,ちょっと書き方を,やや中立的にした上で,パブコメに付していただければと思います。
提案としてあえて入れる必要までとは思いませんが,行使期限と提案の要件についても,見直すべき必要があるかどうかについて検討する余地があるといった補注などでも付けるということぐらいはした方がいいかなと,改めて今日の資料を拝読してから思いました。
○竹林幹事 梅野幹事に御質問なのですが,先ほど現状を見直さないという御意見を,数という点に着目して頂いていたと思うのですけれども,現状を見直さないという御意見の背景にあるものは,行使要件ですとか行使期限の見直しということについても,基本的には見直すべきではないという御主張と理解してよろしいのでしょうか。
○梅野幹事 私が先ほど申し上げたのは,飽くまでも議決権の数に関するものにとどまります。
○松井(智)幹事 頂いた資料を拝見いたしますと,議決権,議決,決議の趨勢に影響を及ぼすような提案がなされているとは,確かに言い難いと思いまして,そうすると,300個要件は分が悪いなという感じはいたしますけれども,他方において,ちょっとこの資料を見ますと,提案の個数が多ければ,株主提案に係る時間の割合が増えているかでありますとか,提案株主の人数が多ければ提案個数が増えているかとか,そういうことを見ますと,必ずしもそういうわけではどうもないようで,実態としては,議事進行権の裁量をうまく使われて,それほど問題がない範囲に収まっているものというのも,かなりあるかのように見受けられます。
あと,例えば,C社のように,確かに経営マターについて提案するのはいかがなものかという部分はありますけれども,一つの案件について否決をされまして,その次の年にまた同じ案件を更に多くの株主が出してきているというようなことがある場合に,その審議にかける時間をより多く割くといったような,コミュニケーションの場として実際経営陣も使っているのではないかというふうな印象も抱きまして,時間と資源を使って決定を要求できる権利と考えますと,数という点では,確かに300個というのは少ないと思いますけれども,株主の属性というか,どういう人がどういう連携を取ってこういった提案をしてくるのかといったことを考えて,コミュニケーションを活性化するという点で使っているという実態がもしあるのであれば,そこまでもう絶対排斥と言わなくてもいいのかなと,ちょっと別の視点から意見を述べてみました。
○沖委員 ありがとうございます。
梅野幹事の御指摘と全く問題意識は同じでありますけれども,重要な問題についてはなるべく選択肢を示して,パブリックコメントに付すことが望ましいと思います。それにつきましては,2の「内容による提案の制限」の2「株主提案権の行使要件及び行使期限」,この二つの論点につきましては,やはり濫用的な株主提案の論点と関連はしておりますけれども,この二つの問題はそれとは分けて,そもそも株主提案権に会社がどのようにすれば適切に対応できるかという基本的な重要な問題ですので,これについては見直しをするかしないかは選択肢を明記して,パブリックコメントをすることが適切ではないかと思います。
ここに二つ問題がありまして,行使要件の方ですと,部会で藤田委員から,この300個という要件を持った株主が,濫用的なものをどれだけ提案しているかということを精査する必要があるという御指摘がありまして,今日も古本委員の方から,それに関する資料の提示がございました。こういった点は,やはり今後も検討すべきだろうと思います。また,電子提供制度の採用に伴いまして,招集通知の発送期限が前倒しになるということですと,やはりその意味からも,会社が株主提案権について判断をする,その時間的制約はタイトになってきますので,やはり見直しの検討の必要性はあるかと思います。
こういった点も踏まえまして,パブリックコメントの中間試案では,選択肢を示していただくことを検討していただきたいと思います。
○齊藤幹事 ありがとうございます。
古本委員から御提案がございました業務執行に関わる定款変更議案を排除するという御提案ですが,確かに,取締役会設置会社の株主総会権限あるいは定款自治の限界は真剣に議論しなければならないテーマですが,改正提案に挙げるということは,それは,一応実現可能で,実際に賛成が多かったらそのとおりに改正されていくことが前提であると思います。先ほどの点につきましては,現在の会社法の体系に大きく関わることでありますが,学界でも意見が分かれるところだと思いますし,この場でもその点に関する議論は十分なされていなかったように思いますので,中間試案に上げるほど議論は熟していないのではないかと思いました。
○三瓶委員 すみません,簡単に。
いろいろ皆さんの御意見を伺っているうちに,私の考えが余りまとまらない部分もあったのでちゅうちょしたのですが,この選択肢A,B,Cの中で,5,10,10というところは,先ほどからいろいろな意見がありますが,やはり明確にどういうふうに考えるのかという選択肢を示すという意味では,3,5,10のようなはっきりと差があるというか,そういったものを示すのが,一ついいのかなと思いました。
あと,議論が出てきた可決可能性のところなのですけれども,二つちょっと見方がありまして,今のところ出てきている株主提案のほとんどが,内容に問題があるというようなことが多いです。ですから,最終的に可決されていない,かなり賛成比率が低いという状況ですが,あまり可決可能性のところを今の段階で見てしまうと,例えば,今の株主保有構造を考えたときに,持ち合い比率がそれなりにまだあるということからすると,非常にいい内容のものが出てきたとしても,可決されにくいということが現実に起こってくる可能性があります。なので,可決可能性が一つの判断基準になるというのは,ちょっと注意しなければいけないなと思います。
300個と1%というところの話ですけれども,なかなかここは難しくて,300個ということを,例えば撤廃してしまうということになると,非常に,1%のハードルが高い会社にとってみれば,なかなか株主提案ができないことになるので,これは,今のところは明確に300個というのを見直すというのが合理的かどうかは分からないというか,慎重な方がいいだろうと思います。
ただ,先ほど3,5,10という話をしたとおり,一つ一つの提案の内容がもう少ししっかりしたものになって,十分な検討に値するようなものに誘導していくためには,上限は絞るけれども,本当に通したければ,内容をよくよく考えて提出するようにというような意味合いからも,むしろ上限を,提案できる議案の数として絞ることというのは,十分に選択肢としてあるのではないかと思います。
○竹林幹事 今,300個要件の見直しと行使期限の前倒しについて,いろいろ御意見を頂いたところでございます。 そして,今回提案することができる議案の数を制限するかどうかにつきましては,いろいろ御意見いただいているところ,こちらは確かに濫用的なものについては制限していくべきだろうという御意見を広く頂いている,多く賛同いただいているところかと存じます。また,内容の制限につきましても,要件自体についてはいろいろ御意見がまだ残っているかと思いますが,制限していくというような御意見が多いのかなと伺っているところでございます。もちろん行使要件の引上げですとか行使期限の見直しの趣旨が違うというのは十分承知はしているのですけれども,数の制限と内容の制限に加えて,更に株主権が行使しにくくなるというのは,国民の皆様に理解を得るという点でかなり難しい面が残るのではないかと考えておりまして,まさしく中長期的にといいますか,300個要件それ自体がいいのか,あるいは8週間という期限そのものがいいのかということについては,問題意識は持ってはいるのですけれども,今回併せてやるということについては,全体として,難しい点があろうかと考えております。
本日頂いた御意見も踏まえまして,どのように記載するのが適当かということについては,引き続き検討させていただきたいとは思いますけれども,特にこれらの要件につきましては,私どもとしては慎重に考えた方がよいと考えていることを御理解いただければと思っております。
・法制審議会第14回
株主提案権につきましては,定款変更議案の数の数え方について,改めて御議論いただきたいと考えております。
先日の部会においては,定款変更議案の数の数え方についての具体的な判断基準として,例えば,いずれか一方の提案が他方の提案を論理的に前提とする関係にあり,分けて審議すべきでないと考えられる場合にのみ,関連性が認められるものとして,一つの議案として数えるものとする考え方や,そのような場合のみならず,株主が通知した提案の理由の内容も踏まえ,いずれか一方の提案が他方の提案と密接に関連すると合理的に認められる場合についても,関連性があるものとして,一の議案として数えるものとする考え方等について,どのように考えるかを御議論いただきました。
一つ目の考え方については,二つ目の考え方に比べて,解釈の余地が小さいため,明確性という観点から,一定の評価を示す意見もありましたが,一方の提案が他方の提案を論理的な前提としている場合のみならず,一方の提案が可決され,かつ,他方の提案が否決された場合において,整合性を欠くこととなるようなときについても,両提案の間に関連性を認めるべきであるという御指摘も頂きました。 他方で,二つ目の考え方につきましては,判断基準として不明確であり,会社が関連性の有無を判断することが難しいことなどを指摘する御意見もございましたが,一つ目のような考え方では関連性が認められる範囲が狭過ぎるとすると,二つ目の考え方のように考えるほかないのではないかというような御意見もあったところでございます。
そこで,以上のような具体的な判断基準についての御指摘等を踏まえ,考えられる定款変更議案の数の数え方について,A案及びB案として,二つの考え方を掲げております。A案は,複数の事項をその内容とする定款変更議案については,当該複数の事項ごとに別個に可決又は否決されたとすれば,整合性を欠くこととなるおそれがあるときは,まとめて一の議案として,その数を数えるものとするという数え方でございます。いずれか一方の提案が可決され,かつ,他方の提案が否決された場合において,整合性を欠くこととなるおそれがあるときは,両提案の間に関連性を認め,両提案をまとめて一の議案として数えることを想定しております。 なお,A案の数え方には,更に提案の内容のみに着目して,整合性を欠くこととなるおそれがあるかどうかを判断するものとする考え方であるA-1案と,提案の内容のみならず,提案の理由の内容も踏まえて,整合性を欠くこととなるおそれがあるかどうかを判断するものとする考え方であるA-2案とがあり得ると考えております。
B案は,定款変更議案については,その内容において密接に関連する事項ごとに区分して,その数を数えるものとするという数え方でございます。株主が通知した提案の理由の内容も踏まえ,いずれか一方の提案が他方の提案とその内容において密接に関連すると合理的に認められる場合には,両提案の間に関連性を認め,両提案をまとめて一の議案として数えることを想定しております。
これらの考え方について御議論いただくに当たっては,具体的な定款変更の事例を前提として,それぞれの数え方による場合に,各事例における帰結にどのような差異を生ずることになるのかという点を踏まえて御議論いただくことが有益であると考えられますので,部会資料8ページの補足説明2では,具体的な定款変更の事例を三つ掲げた上で,各事例について,これらの考え方によった場合のあり得る結論について記載しております。
こちらも御参考にしていただきつつ,どのような数え方が適切であるかについて御議論いただければと考えております。
○古本委員 ありがとうございます。
「定款変更議案の数の数え方」につきましては,これまでの部会のときにも申し上げておりますが,A案,B案ということでいいますと,B案では,文言の解釈余地が広くなり過ぎて,判断基準として適切に機能するかどうか疑問があると思います。
また,A案の中に,今回はA-1案,A-2案と2案を提示していただいておりますが,実際の株主提案におきましては,提案理由が相当に不明確であったりして,提案の趣旨を理解するのがなかなか難しいという場合も少なくないと会員企業から聞いております。そうなりますと,A-2案であっても,ここに書いてあるようなクリアカットな例では分かりやすいかもしれませんが,実際に株主からの提案があった場合には,必ずしもうまく機能しない懸念があります。
そういうことからいたしますと,やや消去法的な結論になりますが,私どもとしては,部会資料にある三つの案の中では,A-1案が一番クリアで,望ましいと考えます。
ただ,現実的には,仮に,A-1案を採用したとしましても,総会前の多忙な時期に,提案された株主と議案の数について議論になるのではないかという懸念も残ります。濫用的な株主提案権の行使を十分に抑止するという目的からは,こういった議案の数え方ももちろん大事だというのは認識しておりますけれども,むしろ,業務執行事項に関する定款変更は提案できないとすることの方がはるかに有効であると思います。
経団連といたしましては,業務執行事項に関する定款変更議案の制限,これに加えまして,株主提案権の行使要件である,300個以上の議決権の撤廃ないし引上げ,これを強く要望しているということを改めて申し上げたいと思います。
○小林委員 どうもありがとうございます。
株主提案権の数え方につきまして,商工会議所内部でも検討いたしました。実務的な立場からは,できるだけ裁量の余地が小さい,解釈の幅が小さい内容であることが望ましいと考えています。
結果的に,株主との間での争いが起こりにくい基準にしていただきたいと思います。A-2案については,濫用的な提案の懸念のほか,今回の法務省提案の事例のように,理路整然とした株主提案が行われるとは,なかなか言えません。理由は非常に曖昧となる場合がございますので,そのような理由で分けると争いの原因になりかねない懸念がございます。したがって,A-2案を除いて,B案とA-1案で比較すれば,裁量の余地が少ないA-1案の方が望ましいと考えます。
数え方の議論の前提として,数が幾つかという議論も当然あります。元々,事務当局からの10個という御提案に対しては,商工会議所としては3個,せいぜい多くても5個という意見を申し上げております。そもそも,株主提案の数が多過ぎれば,数え方の基準があっても,余りワークしないのではないかと考えております。数そのものについても制限的に考えていただきたいと改めて申し上げます。
○沖委員 ありがとうございます。
A案とB案ですが,これはそれぞれ理由はあると思います。ただ,解釈基準として考えた場合に,B案におきましては,やはり,密接に関連するという密接性の判断のところで,提案株主と会社の間で価値観の対立に発展するおそれがあると思います。また,裁判で適用する解釈基準ということから見ましても,密接関連性というところがどうしても,やはり基準として,ちょっと難しいのではないかと思いますので,ここはA案ということにならざるを得ないのではないかと考えております。
そこで,A-1案とA-2案,つまり提案の理由を踏まえるかどうかということですけれども,これは,複数の事項が整合性,複数の事項について,一方だけで可決又は否決された場合に,整合性を欠くかという要件を判断するに当たって,やはり理由を踏まえないと,判断できない場合があると思われますので,そういう場合には,提案の理由を踏まえる必要があるということでは,A-2案になるということではないかと思います。
ただ,その場合の整合性というのは,提案で,株主が主観的な位置付けをしたことによる整合性でなくて,飽くまで論理としての整合性で判断するという意味で,提案の理由を踏まえるということになると思います。
そこで,A案についてですが,整合性を欠くおそれがあるという場合の,このおそれが必要かどうかというところが非常に問題だと思います。実際の株主提案の行使事例を見ておりますと,業務執行に様々な規制をする株主提案が出されています。その中には,役員の報酬であるとか,人事であるとか,実に様々なものが含まれております。そこでもし,整合性を欠くおそれがあるという,この基準を採用しますと,一旦業務執行への提案について,何か一つのものを提案すれば,その整合性からいって,ほかのものも提案しないといけないということになることが十分考えられます。そこで,おそれという基準を適用しますと,1個の議案として見る範囲が広範になり過ぎるおそれがあるのだと思います。もう一つ,A案とB案の違いが,広い狭い,あるいは解釈の明確性以外に,もう一つ違いがありますのは,A案では整合性を要求するわけですけれども,整合性がある場合は,実は提案としては,複数ではなくて,1個として出さないといけない。議案としては,一方だけでは整合性がないということであれば,必ず両方出さなければならないというふうにも考えられるわけでありますけれども,そうすると,整合性を欠くおそれがあるという要件を適用しますと,提案する株主の側としても,整合性を欠くおそれがあるものは必ず提案として出さないといけないし,1個として出さないといけないということにもなってくるかと思います。
そうしますと,やはりおそれという要件は,過度に広過ぎるおそれがあるということになるかと思いますので,このおそれの部分は削除する方が適切ではないかと考えております。
○竹林幹事 沖委員から御指摘いただきました「おそれ」という文言について,何と申し上げたらいいか,なかなか難しいのですが,ここでは程度を問題としているわけではございませんで,可能性といたしまして,可決,否決のパターンが,可決・可決,否決・否決,可決・否決,否決・可決になるときに,どれか一つのパターンで整合性を欠くことになる,ほかのパターンだと整合性を欠かない,可決・可決,否決・否決だと欠かないのですけれども,そういう可能性がありますので,そういう組合せの中で,欠くこととなるおそれがあるという使い方をしておりまして,程度を問題としている趣旨ではございません。
○北村委員 ありがとうございます。
提案の数の制限との関連で,複数の提案を一くくりにするという問題が出てきたのは,1人で多くの提案をするということが提案権の濫用である,あるいは,濫用といわなくても,不適切であるということが元々の発想だったと理解しております。そういう提案をする人たちが,仮に,B案が採用されたときに,どういう行動を採るかといいますと,恐らく,できるだけ複数の提案に関連性を持たせた提案理由を会社に通知してくるということになりそうです。
提案理由を株主総会参考書類に記載するのは,株主提案に説得力を持たせるためなのですけれども,提案議案数制限がある中で実質的に多くの提案をすることができるように提案理由を工夫するということが起こりますと,規制の本来の趣旨とは違う使われ方がされることになります。
部会資料23の8ページにあります③の例で,これはB案によりますと,一つの議案と数えるということです。こういうことであれば,③以外にも幾らでもこのような例ができそうで,法学部の学生に,どういう提案であれば一つにくくれるかを考えさせても面白いかなと思いましたけれども,やはりB案では広過ぎるという問題がありますし,当然,会社としては,複数の議案に関連があるかどうか,実質的に判断できないという問題が出てまいります。
そうすると,A案が適切だと思いますけれども,先ほど沖委員が指摘されたことと,私も認識は共通するわけでございますけれども,A-1案でありますと,例えば,8ページの②のような,提案理由を考慮すれば,明らかに2つの提案を両立させなければいけないような事案に対応しにくいということになります。一方で,先ほどから御指摘がありますように,提案理由まで考慮して複数の提案の整合性を判断することにしますと,B案を採用するのと同じような問題が出てくると思います。
したがって,私は,最終的にA-2案に賛成ではございますけれども,A-2案にある「提案の理由の内容も踏まえて」というところは,提案理由から見れば,客観的に明確に,整合性を欠く場合に限るべきだと思います。主観ではなくて,客観的に明確に,提案理由から見れば,二つを両立させないといけないという場合を一つと考える,こういう謙抑的なA-2案というのが私の考えでございます。
○田中幹事 今回の御提案で,それぞれの案がどのような関係にあるかが具体例によって明らかになったことで,大変有り難く思っております。その点に関し,その上で申し上げれば,今回の株主提案権の制限が,余りに多くの株主提案,あるいは名誉を毀損するような形の提案がなされることで,真剣な議案の検討も妨げられると。そういう事例が散発的ながら起きているという中で,株主総会の意思決定を適切に行えるようにするために,提案権を制限するということであって,株主提案権自体を,少なくとも真剣な株主提案権自体を制限するものではないというふうに考えてきました。
そういう点からすると,複数の定款条項であっても,変更提案であっても,それが密接に関係していて,ある目的を達成するために複数の定款条項の変更が必要になるという場合には,当然一緒に提案するということになるのではないかと。このような観点からしますと,B案でいいのではないかと考えております。
B案にしますと,今まで50個ぐらい定款変更議案を出してきたものを,全部1個にまとめるという形で提案してくるだろうということは,もちろんあるわけですけれども,やってくるということと,最終的にそれが受け入れられるかどうかは別でありまして,密接に関連しているがために,一緒に提案することが合理的であるという制約によって,おのずから制限が課されるであろうと考えております。
それから,B案ですと,どうしても不明確なケースが出てくるのではないかということも,そのとおりかと思いますが,しかし,今回の提案自体が,濫用的な株主権行使を制限するということであって,株主提案自体を使いにくくすることではないと理解しておりますので,不明確な部分がある場合は,裁判で争われるか,あるいは会社としては,法的な確実性の観点から,不明確な場合はそのまま提案を認めるという対応にならざるを得ないことも,またやむを得ないのではないかと考えております。
最近の株主提案の事例を見ますと,濫用的な提案があるということもさりながら,近年,株主提案について,かなりの賛成が集まるという事例が出てきていると,そういう現象があります。そして,そのような提案の相当数は,例えば,役員の個別報酬開示のような定款変更議案であります。このような状況にあって,会社法が株主提案権を制限するような改正を提案するということが,株主,株式市場に対して,どのように受け止められるかということも考える必要があると思っております。このタイミングは,もしかすると,最悪のタイミングになるおそれもあると考えております。
ここで,今回の改正は,一度に50個も100個も提案して,ほかの株主にとって迷惑を掛けるような提案を制約するのであって,機関投資家その他の株主の相当数の賛成がなされて,会社の経営に影響を与え得ると,そういうような株主提案を制限する意図は全くないのであるということを明確にする必要があると考えております。このようなことも含めて,私としてはB案に賛成したいと思います。
○三瓶委員 ありがとうございます。
結論から申し上げると,私は,A案かなというふうに思っています。
まず,多くの方もおっしゃっていましたけれども,B案については,「密接に関連」というところについて,本当に決議における必要かつ十分な条件ということを備えているかどうか。これを判断するのが難しいであろうということから,まず落としています。A-1案とA-2案なんですけれども,例えば,株主として提案権を行使するときに,しかも,今議論されている上限を設けたときに,どういうことをしたいのかというと,手元にある提案のうち,できるだけ多くの提案を上げたいというふうに思うわけですね。同時に,せっかく提案するからには,その決議は可決するように持って行きたいというふうに考えるのが通常だと思います。そこで,両方を達成しようとしたときに,提案の数が多ければ,一つの議案に複数盛り込むようなことが起こり得るということだと思います。
ここで,複数の提案内容がイコール的な理由でつながっているということが,A-2案であると思います。けれども,それは提案する側からすると,理由がつながっているのかもしれないんですけれども,提案株主ではない株主が議決権行使をする場面で考えたときには,必ずしも提案の理由の内容が整合的になっていないかもしれない。
例えば,今回,事例で①から③を挙げていただきましたけれども,その中の②というのが,A-1案とA-2案の判断が異なるケースだと思いますけれども,ここで,内容だけでいうと,事業目的に貸金業と不動産管理業を追加するというのが一つ,内容ですね。ただ,そこに理由として,D社というのが出てきます。このD社というのが,正にそういうことをなりわいとしているんでしょうけれども,提案する側からすると,この二つの業を加えることとD社というのが密接に関わっているんだけれども,議決権行使する側からすると,この貸金業と不動産管理業を追加するときに,D社にさせなくてもいい,又は,D社に何らかの固有の問題がある場合には,ここについては違うんだということで,ここは切り離して考えた方がいいかもしれません。なので,この株主提案議案について議決権行使をする側にとっては,それは必ずしも必要かつ十分ということにならない可能性があるということです。
それからすると,A-1案では,議案を二つ提出しなければいけないわけですけれども,そのときに,その二つの議案について,どれだけ関連性があって,両方とも可決してもらいたいかというのは,議案説明で明確に記載してもらうということが,多くの株主に諮って検討してもらうときの最も公平な手段ではないかと思います。
このような例が2018年にも1件ありました。それは会社提案の定款変更でしたけれども,全く異なることが二つ,同じ定款変更議案に入っていました。一方は賛成したくて,一方は反対であるときに,反対の部分の理由が非常に強かったので,我々は反対しました。
しかし,これは正直言って,ある種のコンプロマイズをしたわけで,本当はそれぞれについて,賛否を明確に表明したいわけです。ですから,そういったことが起こり得るような議案の提出で,多くの株主に議決権行使の際に妥協させるというような要素を多く含むものは好ましくないというふうに考えます。
それと,ちょっとこれは脱線かもしれませんが,そもそもそういう意味では,今ここで議論しているのは,相互に関連するものは一つにまとめるか,まとめないかというような感じで議論されていますけれども,むしろ提案する側の方に,よくよく考えてもらうという意味では,独立して矛盾なく成立し得る事項というのは一つにまとめるべきではないという,そういった,議決権行使をする側からして,それぞれについて明確な賛否を表明しやすいようにという一つの目的というか,意義をどこかで伝えられるといいなと思っています。
○野村委員 まず,結論的に申し上げますと,B案のくくり方も,田中幹事がおっしゃられたような形で,一定の合理性はあるとは思うんですけれども,やはりちょっと漠然とし過ぎている感もあるように思いますので,A案をベースにしながら,前回の会議,前々回だったでしょうか,藤田委員の方から示された提案の可能性というものを考えますと,やはり何らかの形で,A-2案のような形のくくり方が合理的なのではないかなというふうに感じている次第であります。
ただ,そのようになりますと,提案理由というのは確かに,先ほど来から出ていますように,漠然としていて,不明確であり,どういうことなのかよく分からないという場合がありますので,この場合については,そのリスクを提案者の方の側に負っていただかなければいけないと思います。そこで,A-2案のくくり方を採用する場合には,明確な理由が示されていない場合には,複数の議案として扱われるような形にすることが必要なのではないかなとは思っております。
ただ,それとの関係で,少し疑問に思うというか,ちょっと,私自身だけが分からないのかもしれないんですけれども,恐らく,このくくり方の問題というので,会社側の方が提案のくくり方が,最初,株主の側から示されたものが大き過ぎて,数の中に収まらないのではないかと思って,対応するときには一応,株主,提案者との間にコミュニケーションを取るんだとは思います。その結果,会社がやはり多いというふうに考えて,そのくくりを小さくし,上限を超えていますという扱いをするという選択肢をした場合は,当該提案者と会社との間のトラブルというものが生じてはいますけれども,提案が扱われませんでしたので,株主総会での決議はなされませんので,株主総会の決議の効力には跳ねてこないという可能性があるのではないかなとは思います。
それに対して,会社側の方が,その交渉の過程の中で,このくくりでしようがないという形で,ある程度理解を示した上で,提案を採用し,株主提案を数の中に収まっているという形で示し,それが株主総会で審議された結果,極めて例外かもしれませんけれども,可決されたということになった場合には,他の株主の方の側から,それを不満とする株主が,数え方がおかしいのではないかということで,上限を超えているということから,株主総会の決議を争ってくる可能性があるのではないかと思います。
この点で,会社側が同意をした上で,株主提案として招集通知に記載しているという行為がどう評価されるのかが,ちょっとよく分からないということと,それから,そのような形の紛争を惹起することが合理的なのかどうかということもちょっと,やや分かりにくいところがあるものですから,その辺りのところを御教示いただければ有り難いなと思います。
○竹林幹事 野村委員から御指摘いただいた点ですけれども,私どもは,数を超えた場合に無効にするのは難しくて,拒否事由にしていますと申し上げていますが,今御指摘いただいたような点も考慮しまして,超えていても,それは拒否することができるものを拒否しなかったという扱いにするので,総会の決議の無効等にはならないというような考え方を採っております。
ただ,拒否することはできるけれども,この人についてはたくさん採り,この人についてはぎりぎりしか採らないというような場合には,株主間の平等をどう考えるかという別の問題はあり得ると考えております。
○前田委員 どうもありがとうございます。
既に議論がありますように,A案の基準が,確かに明確性の点では優れているとは思うのですけれども,A案の基準には当たらないけれども,提案内容を合理的に解釈すれば,まとめて一つと見るべき場合が,やはり残るのだと思います。
具体的には,事例③のようなケースで,先ほど北村委員の御指摘されたような,単なる作文としてではなくて,真剣に株主が,この提案理由を示して,こういう提案をしてきたときに,これを議案2個と数えてしまうのは,個数上限を最終的に幾つに設定するのかにも関わるとは思いますけれども,提案権行使を抑え過ぎることにならないかという懸念があります。
他方,B案は,基準として不明確だという御指摘はそのとおりであり,明文規定を置く意味も乏しくなってしまうと思います。そこで例えば,折衷案として,もし明文規定を置くのであれば,B案をベースに,A案の場合をその例示として定めておくということも考えられるのではないかと思います。
一方だけ可決されると整合性を欠くこととなる場合,その他の密接に関連する場合というような,文言はまた詰めて考える必要がありますけれども,A案よりは柔軟に,一つと解釈することができる場合を認める余地は残すような基準にしておいた方がいいのではないかというように思います。
○梅野幹事 ありがとうございます。
この点,以前御発言があったかと思いますが,この提案権に関する議案の数のくくり方の論点というのは,実際上は,提案権の個数をどう考えるかという点と,やはり密接に関連していると考えています。
日弁連としては,役員選任議案を除いて,10を超えることはできないという中間試案のB-2案に賛成しております。そういった観点からすると,また,濫用的行使を制限するという今回の目的に鑑みると,A-1案というのは少し狭過ぎるかと思う一方,B案かA-2案かというのは,なかなか悩ましい選択だといった議論をしてまいりました。確かにB案というのは,判断基準として曖昧ではございますけれども,密接関連性といった要件を使われている場面というのは他でもあると思いますし,裁判例の集積等を待つという考え方もあり得ると思います。
逆に,A-2案であっても,整合性という規範的概念が入りますので,提案理由をどのような形で提示するかによって,やはり幅があり得るものだろうと思います。そういった意味では,B案と比較すれば,より明確性があるように見えるものの,実際には,なかなか難しい問題が,生じるのではないかと考えております。
結局のところ,提案権の個数をどうするかということも念頭に入れた上,決めていくというアプローチを採らざるを得ないのかと考えている次第でございます。
○中東幹事 私は三瓶委員がおっしゃったことに賛成でして,その点から若干補足させていただければと思います。
最終的には,梅野幹事がおっしゃいましたように,数の問題といってしまえば数の問題なので,そう強い意見ではございませんが,やはり議決権を行使する株主として意思決定をするのが株主総会ですので,そこではどう扱われるかという観点から考えるべきかと思います。
その点で,②の事例は,よく考えていただいたとは思うのですが,吸収合併そのものは,株主提案という形ではなされませんので,会社提案として扱い方を考えますと,全部で1つのもの,つまり吸収合併と,(a)の貸金業追加と(b)の不動産管理業の追加,これらは1つのものということが,はっきり分かると思います。もしも吸収合併が将来あることを予定して,株主がこういう事業目的を追加しておきたいということになると,合併そのものにイニシアチブを持てない株主が,目的の二つの追加を提案するという話になります。そうなりますと,議決権を行使する株主としては,合併があるかどうか分からないけれども,その合併に備えて目的を二つ追加しようという話になりますので,提案者の気持ちと議決権を行使する人の気持ちがずれてしまう可能性があると思います。
そういう意味で,三瓶委員がおっしゃったように,提案者が幾ら理由を言っても,複数の受け取り方があって,その提案者と総会で議決権行使する株主との間で違うということになると,やはりA-1案の方が明確であろうと考えています。
○藤田委員 ありがとうございます。
今回の提案のA案というのは,前回私が申し上げたことをかなり大幅に取り入れていただいておりますので,基本的にA案に賛成という立場での発言になります。まずB案は,さすがに余りにも曖昧で,基準にならないというのが最大の問題点だと思います。コーポレート・ガバナンスの強化に関する提案だと称して,いろいろな定款変更議案を出してきたときに,常にこれを一つとしてカウントしなければいけないかと言われると,ちょっと行き過ぎで,趣旨の違う提案を濫用的に一つの定款変更議案だと出してくることを防ぐための基準になっていないと思います。
次に,A案の中だと,沖委員あるいは小林委員の言われたように,理由を勘案しないと論理整合性を判断できないケースというのはあり得るから,およそ理由はカウントしてはいけないというふうなルールにはしにくいと思います。そして,理由をカウントすると,曖昧だという批判が少なからずあったことについては,どのくらい,どういう形でカウントするかということ次第だと思います。まず株主側が議案ごとに区分して提案をしなければいけないというルールの下で,株主があえて一つの提案だと言ってきた場合に,理由を勘案すれば,ばらばらに決議すれば明らかに論理的,客観的に整合性を欠くといえない限り一つとはカウントしてもらえないという基準だと考えると,そこまで曖昧にならないような気もします。株主の主観的な希望として,是非とも複数のものを一体として賛成してほしい,つまみ食い的に取り入れてもらっては困ると幾ら思っていても,それだけだと一つではないという基準であれば,それほど曖昧にならないように思います。
提案理由が曖昧で分かりません,そんな提案が多いのですというふうな御意見がありましたが,提案理由が曖昧で分からなければ,一体として扱う必要ないだけだと思います。提案理由が論理的に独立に可決,否決することができるのであれば別提案という発想なので,曖昧な提案理由を幾ら書かれたって,一つとして扱う必要はないというだけだと思います。
A案が厳し過ぎるかということは,結局,最終的に,どのぐらいの制限,数の制限になるかに依存することだと思います。A案,B案の対立が利いてくるのは,飽くまで定款変更議案として出されるものの範囲で,それで,しかもそれが,3とか5とかいう制限の中ですと,相当深刻ですけれども,今,比較的有力と思われている10という提案上限数で議論するのであれば,A案を採ることが,B案を採った場合に比べて証券市場に悪いインパクトを与える提案になっているとまでは思わないと思います。
最後ちょっと,提案の数え方との関係で,やや違った点で御質問させていただきたいと思います。株主提案をする株主の側として,幾つかの内容を含んだ提案を一つのものとして出す際に,それがばらばらに決議しても論理不整合とまではいえない,したがって複数としてカウントしてくれていいけれども,一体として審議してほしい,一括してイエスかノーを決めてほしいという議案の提出の仕方というのは許されるのでしょうか。つまり今議論しているのは,飽くまで提案上限数との関係での議案のカウントの仕方に関するルールなので,今言ったような議案の提出を妨げるルールではないと理解しているのですけれども,この点はいかがでしょうか。
○竹林幹事 今御質問いただいた点につきましては,条件付けをするような形にしていただければ,より明確だとは思いますけれども,否定されるものではないのではないかと考えております。
第2 株主提案権
1 株主が提案することができる議案の数の制限
(1) 定款の変更に関する議案の数の数え方
次のような規律を設けるものとすることについて,どのように考えるか。
① 定款の変更に関する議案の数については,[内容において関連する事項ごとに]区分して数えるものとする。
(2) 株主が提案することができる議案の数
上記(1)における提案を踏まえ,試案第1部第2の1本文について,どのように考えるか。
(補足説明)
1 定款の変更に関する議案の数の数え方
(1) 本文1(1)①について
試案第1部第2の(1の注)について,パブリックコメントにおいては,定款の変更に関する議案の数については,内容において関連する事項ごとに区分して数える旨の明文の規定を設けるものとすることに賛成する意見が多数であった。
他方で,パブリックコメントにおいては,このような明文の規定を設けた場合であっても,判断基準が不明確であるため,実務上の運用が困難であるという意見や,ガイドライン等によって判断基準を明確にすべきであるという意見もあった。これらの意見は,仮に,このような明文の規定を設けた場合であっても,複数の事項がその内容において関連するか否かについての判断には一定の解釈の余地があり得ることから,提案株主と株式会社との間で関連性の有無について意見が分かれる事態が想定され,そのようなときは,紛争に発展するおそれもあり,株式会社としては紛争を避けるために関連性を保守的に判断せざるを得なくなるなど,実務上の運用が難しいことを懸念するものと考えられる。
そこで,パブリックコメントの結果を踏まえ,定款の変更に関する議案の数については一定の関連性がある事項ごとに区分して数える旨の明文の規定を設けることが考えられるが,他方で,上記のような懸念を払拭するためには関連性の有無についての判断基準をより明確にすることも含めて具体的な判断基準についての考え方を改めて検討する必要があるものと考えられる。
具体的な判断基準についての考え方次第では,規定の文言を調整する必要が生ずることとなる可能性もあるため,本文1(1)①の(注)において,その旨を付記した上で,本文1(1)①において,定款の変更に関する議案の数の数え方について明文の規定を設けることについて,どのように考えるかを論点として掲げている。
定款の変更に関する議案の数の数え方についての具体的な判断基準としては,例えば,(ⅰ)いずれか一方の提案が他方の提案を論理的に前提とする関係にあり,分けて審議すべきでないと考えられる場合にのみ関連性があるものとして一の議案として数えるものとする考え方,(ⅱ)上記(ⅰ)の場合のみならず,株主が通知した提案の理由の内容も踏まえ,いずれか一方の提案が他方の提案と密接に関連すると合理的に認められる場合についても関連性があるものとして一の議案として数えるものとする考え方等が考えられる。
(ⅰ)の考え方による場合には,判断基準としては(ⅱ)の考え方に比べて明確であり,株式会社として客観的に判断しやすいと思われるが,他方で,例えば,仮に,事業目的に目的を複数個追加する旨の定款の変更に関する議案が提出された場合に,(いずれかの目的が他の目的を論理的に前提とする関係にあるような場合を除き,)それらの目的ごとに区分して複数の議案として数えることとなるなど,関連性があると判断される場合が限定され過ぎるのではないかという懸念があるものと考えられる。(ⅱ)の考え方による場合には,仮に,事業目的に目的を複数個追加する旨の定款の変更に関する議案が提出された場合であっても,株主が通知した提案の理由の内容も踏まえると,それぞれの目的が密接に関連していると合理的に認められるときは,関連性があるものとして一の議案として数えることとなる。もっとも,「密接に関連すると合理的に認められる」か否かの判断は一定の評価を伴うものであるため,(ⅰ)の考え方と比べて,株式会社として客観的に判断することが難しくなるという懸念があるものと考えられる。このように,上記のいずれの考え方についても長短があると考えられることから,株主提案権の行使の実態に即し,上記の考え方以外の考え方も含め,どのように考えることが適切かについて検討する必要がある。
(2) 本文1(1)②について
パブリックコメントにおいては,後記1(2)のように株主が提案することができる議案の数の制限を設けるものとすることを前提とした場合において,株主が提案しようとする定款の変更に関する議案に複数の事項が含まれていることが疑われるときは,株式会社において当該議案の数を幾つと数えるべきかを判断することとなり,その前提として提案株主の認識を知るために提案株主との間で何らかのコミュニケーションを取る必要が生じて手続が煩雑となるといった手続的な負担が生じ得る上,その議案の数について,提案株主との間で認識に齟齬が生じたときは,どのように数えるべきかをめぐって紛争に発展するおそれもあるという懸念が示された。
このような懸念は,定款の変更に関する議案の数について株式会社側が判断することが前提となっていることもその要因の一つであると考えられる。そうであるとすれば,定款の変更に関する議案について,株式会社側ではなく,提案株主側で自らの認識を前提として議案ごとに区分して提案しけなればならないものとし,株式会社としては,当該提案株主による区分に従って形式的に議案の数を数えることができるものとすることにより,株式会社が当該提案株主の認識を改めて確認する手順を不要とすることができれば,上記のような懸念は一定程度回避することができるものと考えられる。この場合には,株式会社としては,当該提案株主による区分に従って,それぞれを一の議案として株主総会に諮り,各議案について審議及び採決をすれば足りることとなる。なお,仮に,提案株主が複数の事項を含む定款の変更に関する議案を提案しようとする場合において,当該複数の事項について区分せずに提案したときは,株式会社としては,株主がそれらを一の議案として提案してきたものとして,当該議案を一の議案として取り扱うこともできるし,本文1(1)①のとおり,一定の関連性がある事項ごとに区分して取り扱うこともできるものと考えられる。
そこで,本文1(1)②においては,取締役会設置会社において,定款の変更に関する議案について会社法第305条第1項本文の請求を行う場合には,株主は,議案ごとに区分して当該請求をしなければならないことを明記することについて,どのように考えるかを論点として掲げている。
なお,株主が膨大な数の事項を一の定款の変更に関する議案として提案するような事態も生じ得るが,株式会社としては,本文1(1)①のとおり,一定の関連性がある事項ごとに区分して取り扱うことができる場合には,そのように取り扱えば足りるし,仮に,(本部会資料において提案している後記2②の内容の拒絶事由を設けるものとすることを前提とすれば,)それが濫用的な株主提案権の行使と評価されるような場合には,後記2②の拒絶事由に該当するものとして,株式会社は当該提案を拒絶することができるものと考えられる。
そして,関連性のない複数の事項を含む定款の変更に関する議案ではあるものの,後記2②の内容の拒絶事由には該当しない場合であっても,株式会社としては,当該議案を一の議案として扱った上で,一括して審議すれば足りること,提案株主による説明が不必要に長くなるような場合には,議長は議事整理権に基づいて提案株主による説明を制限することが可能であることなどを考慮すれば,当該議案について割かれる株主総会における審議時間が許容できない程に長くなることは余り想定されないものと考えられる。
2 株主が提案することができる議案の数(本文1(2))
試案第1部第2の1本文については,パブリックコメントにおいて,団体からの意見が分かれたが,提示した4案の中においては,A1案に賛成する意見とB2案に賛成する意見が比較的多かった。もっとも,そもそも株主が提案することができる議案の数の制限を設けること自体に反対する意見や,提案することができる議案の数を5未満(1ないし3)とすべきであるという意見もあった。なお,個人からの意見としては,株主が提案することができる議案の数の制限を設けること自体に反対する意見が圧倒的多数であった。
提案することができる議案の数を5未満(1ないし3)とすべきであるという意見やA1案に賛成する意見は,株主総会における限られた審議時間が特定の株主による提案に関する議論のみに費やされるべきでないこと,提案することができる議案の数を限定することにより提案の内容がより合理的なものとなると考えられること,米国においては株主が提案することができる議案の数が1とされていることなどを理由として挙げている。
他方で,そもそも株主が提案することができる議案の数の制限を設けること自体に反対する意見やB2案に賛成する意見は,株主提案権の濫用的な行使と評価される事例はごく例外的な事例であって提案することができる議案の数を制限する必要性を基礎付けるような立法事実が存在しないこと,株主提案権の重要性に鑑みれば,株主が提案することができる議案の数を制限するとしても必要最小限の制限とすべきであること,機関設計の変更や報酬体系等の株式会社の事業に関する根本的事項を変更するための株主提案を行う場合には,5以上の議案を提案する必要があり得ることなどを理由として挙げている。
そして,前記1のとおり,本文1(1)において,パブリックコメントの結果を踏まえ,定款の変更に関する議案の数の数え方について改めて問題提起するとともに,定款の変更に関する議案について会社法第305条第1項本文の請求を行う場合には,株主は,議案ごとに区分して当該請求をしなければならないことを明記することを新たに論点として掲げている。これらについてどのように考えるかによっては,株主が提案することができる議案の数の具体的な上限や役員等の選解任に関する議案の数の数え方についての考え方にも影響があり得る。
そこで,本文1(2)においては,本文1(1)に掲げた論点についての考え方及びパブリックコメントの結果を踏まえ,株主が提案することができる議案の数について,どのように考えるかを論点として掲げている。
3 株主が提案した議案の数が上限を超えている場合の取扱いについて
パブリックコメントにおいては,株主が提案した議案の数が上限を超えている場合の取扱いが不明確であるという意見があった。
これについては,株主が提案した議案の数が上限を超えている場合には,株式会社は,当該上限を超える数に相当する数の議案を拒絶した上で,当該上限までの数の議案についてのみ内容の適法性を検討し,その中から適法な議案のみを採用すれば足りるものとし,当該上限を超える数に相当する数の議案についてのみ拒絶することができるものとすることが考えられる。この考え方によったとしても,株式会社としては,当該上限までの数の議案についてのみ内容の適法性を検討すれば足りることとなるため,現行法の下において株主が膨大な数の議案を提案した場合と比べて,議案の内容の適法性について検討する時間やコストについて大幅に削減することができることとなる。当該上限までの数の議案(内容の適法性を検討する対象となる議案)を選択する具体的な方法としては,株式会社がその判断で決定するものとすることが考えられる。株式会社による決定については,例えば,各議案についての賛否を記載する欄に記載がない議決権行使書面が提出された場合における各議案についての賛成,反対又は棄権のいずれかの意思の表示があったものとする取扱いの内容(会社法施行規則第63条第3号ニ,第66条第1項第2号)や,書面による議決権の行使又は電磁的方法による議決権の行使によって,一の株主が同一の議案につき重複して議決権を行使した場合において,当該同一の議案に対する議決権の行使の内容が異なるものであるときにおける当該株主の議決権の行使の取扱いに関する事項(会社法施行規則第63条第3号ヘ,同条第4号ロ)のように,合理的な方法であれば,株式会社がその取扱いを決定することができるものとすることが考えられる(実務上,当該取扱いについては株式取扱規則等で定めておくものとすることが考えられる。)。
この考え方に対しては,パブリックコメントにおいて,株主が提案した議案の数が上限を超えている場合において,上限を超える数に相当する数の議案についてのみ株式会社が拒絶することができるものとするときは,議案の選定作業は煩雑であること,提案株主とコミュニケーションを取ることは実務上困難を伴うことが多いこと,提案株主と株式会社との間に議案の選定方法をめぐって紛争が生ずる懸念もあることなどを理由として,上限を超える数の議案が提案された場合には,当該株主が提案した議案については全て不適法又は無効として拒絶することができるものとすべきであるという意見もあった。
もっとも,上限を超える数の議案が提案された場合に,当該上限を超える数に相当する数の議案についてのみならず,当該株主が提案した議案全てについて不適法又は無効として拒絶することができるものとすることは,株主提案権の重要性に鑑みれば,適切でないものと考えられる。また,上記のように,株式会社がその取扱いを決定することができるものとすれば,議案の選定作業は煩雑とまではいえないと考えられる。
2 内容による提案の制限
会社法第304条本文及び第305条第1項から第3項までの規定は,次のいずれかに該当する場合には,適用しないものとすることで,どうか。
① 会社法第304条本文の規定による議案の提出又は同法第305条第1項本文の規定による請求(以下「株主提案」という。)が専ら人の名誉を侵害し,人を侮辱し,若しくは困惑させ,又は当該株主若しくは第三者の不正な利益を図ることを目的とする場合
② 株主提案により株主総会の適切な運営が著しく妨げられ,株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合
(補足説明)
1 本文2①について
本文2①の内容は,表現ぶりを若干変更したが,試案第1部第2の2①から③までと同様の内容である。試案第1部第2の2①から③までについて,パブリックコメントにおいては,明文の規定としてこれらの拒絶事由を設けることに賛成する意見が多数であった。
なお,「専ら」という要件については,厳格で立証が困難であるため,株式会社がこの拒絶事由を根拠に株主提案を拒絶するという判断にちゅうちょし,拒絶事由の実効性が失われるとして,削除し,又は「主として」という要件に変更すべきであるとする意見も寄せられた。しかし,株主提案権の重要性に鑑みれば,拒絶事由の要件を緩めることについては慎重に考えるべきであるとも考えられ,また,パブリックコメントにおいて,「主として」という要件ではやや不明確であり,濫用的でない株主提案権の行使をも制限してしまうおそれがあるという意見や,株主提案権を過度に制限することにならないよう,「専ら」という厳格な要件を用いることは望ましいという意見もあった。
そこで,パブリックコメントの結果も踏まえ,本文2①のような規律を設けることを提案している。
2 本文2②について
試案第1部第2の2④(「株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるとき」)についても,パブリックコメントにおいては,明文の規定としてこのような拒絶事由を設けることに賛成する意見が多数であった。他方で,具体的にどのような場合にこの拒絶事由に該当するかが不明確であり,株式会社による恣意的な解釈によって過度に株主提案権が制限されてしまうおそれがあるという懸念を指摘する意見もあった。
試案第1部第2の2④は,単に株主総会の適切な運営が妨げられるのみでは足りず,その結果として,株主の共同の利益が「著しく」害されるおそれがある場合にのみ株主提案を拒絶することができるものとしていたため,株式会社による恣意的な解釈がされないように一定の限定が加えられていたものと考えられる。もっとも,「株主総会の適切な運営が妨げられ」るか否かの方が「株主の共同の利益が害される」か否かよりも客観的な判断に馴染むとも思われるため,「株主総会の適切な運営が妨げられ」るか否かに限定を加えた方が株式会社による恣意的な解釈の余地は狭くなると考えられる。他方で,株主提案によって株主の共同の利益が「著しく」害されるおそれまではない場合であっても,株主総会の適切な運営が「著しく」妨げられ,その結果として,株主の共同の利益が害されるおそれがあるときは,株式会社は当該提案を拒絶することができるものとして差し支えないとも考えられる。そして,株主総会の適切な運営が著しく妨げられることに加え,その結果として,「株主の共同の利益」が害されるおそれがあることも要件として明示することにより,単に株式会社側の都合上望ましくないような提案を拒絶することはできないことがより明確となり,株式会社による恣意的な解釈がされる余地がより限定的となるものと考えられる。
そこで,本文2②においては,試案第1部第2の2④の拒絶事由を「株主提案により株主総会の適切な運営が著しく妨げられ,株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合」に変更して提案している。なお,「株主総会の適切な運営」には,株主総会の当日の運営のみならず,株主総会の準備も含まれることを前提としている。そして,株主総会の準備には,株式会社による株主総会の準備のみならず,当該株式会社の株主による株主総会の準備(議案の検討等)も含まれるものと考えられる。すなわち,この拒絶事由に該当し得ると思われる具体例としては,不必要に多数又は長大な内容の条項を含む定款の変更に関する議案が提案されたことにより,株主総会の当日において当該議案の検討に多大な時間が掛かり,他の株主による株主総会の場における質問時間や他の議案の審議時間が大幅に削られるような場合のみならず,株式会社に通常の株主総会の準備においては生じないような規模の膨大な時間的又は人的コストが生ずるような場合や,提案株主以外の株主が当該定款の変更に関する議案を検討するために通常の株主総会の準備においては生じないような時間を割く必要等が生じ,他の議案の検討時間が削られる可能性等があるような場合が考えられる。このような場合には,株主総会の当日の運営や,株式会社による株主総会の準備,当該株式会社の株主による株主総会の準備(議案の検討等)が著しく妨げられると評価することができ,ひいては株主全体に不利益が生ずると考えられるため,「株主の共同の利益が害されるおそれ」があると評価されることとなると考えられる。
3 株主提案権の行使要件
(1) 持株要件の見直し
300個以上の議決権という持株要件の見直しはしないものとすることで,どうか。
(補足説明)
試案第1部(第2の後注)の株主提案権の行使要件のうち300個以上の議決権という持株要件について,パブリックコメントにおいては,削除又は引上げといった見直しはすべきでないという意見が多数であった。これらの意見は,300個以上の議決権という持株要件の削除又は引上げは,300個以上の議決権という絶対的な基準が設けられた趣旨に反し,個人株主による株主提案権の行使を過度に制限してしまうおそれがあること,提案することができる議案の数の制限や内容による提案の制限の導入によって株主提案権の濫用的な行使は一定程度排除することができると考えられるため,重ねて持株要件を見直す必要性は乏しいこと,持株要件の見直しを基礎付けるだけの立法事実が存在しないことなどを理由として挙げている。
なお,300個以上の議決権という持株要件の削除又は引上げをすべきであるという意見もあった。これらの意見は,300個の議決権と100分の1の議決権の価値が著しくかい離していること,1%を大きく下回る議決権しか有しない株主からの提案に対する賛成割合は低いにもかかわらず,そのような提案のために株主総会の審議時間の相当割合を占めることにより,株主総会の適切な運営が妨げられていることなどを理由として挙げている。
そこで,パブリックコメントの結果を踏まえ,本文3(1)においては,300個以上の議決権という持株要件の見直しはしないものとすることを提案している。
(2) 行使期限の見直し
行使期限の見直しはしないものとすることで,どうか。
(補足説明)
試案第1部(第2の後注)の株主提案権の行使期限について,パブリックコメントにおいては,前倒しに反対する意見(後ろ倒しすべきであるという意見も含む。)が相対的に多かった。これらの意見は,現行法における株主提案権の行使期限を前提としても株式会社の準備期間が必ずしも短過ぎるとはいえず,行使期限の見直しを基礎付けるような立法事実が認められないこと,行使期限の前倒しによって株主が株主提案権を行使するか否か及びその内容の検討についての十分な検討期間を確保することができなくなること,さらに,今回の会社法改正により株主総会資料の電子提供制度が活用されれば印刷及び郵送の作業の時間が短縮されるため,前倒しは不要であることなどを理由として挙げている。
これに対し,株主提案権の行使期限を前倒しすべきであるという意見は,株主総会の招集通知の早期発送や発送前開示に取り組む上場企業が増加している中で,現行法における行使期限を前提とすると,提案株主が株主提案権の行使要件を満たしているか否かについての確認,提案内容の検討及び取締役会としての意見の作成等の各種準備作業のための十分な期間を確保することができないこと,株主提案権が行使期限直前に行使され得ることが株主総会の招集通知の早期発送を妨げる要因の一つとなっていることなどを理由として挙げている。
また,今回の会社法改正により株主総会資料の電子提供措置の開始時期や株主総会の招集通知の発送期限が前倒しされる場合には,その前倒しの期間に応じて株主提案権の行使期限も前倒し(についての検討を)すべきであるという意見もあった。もっとも,仮に,株主総会資料の電子提供制度が導入され,株主総会の招集通知の発送期限が1週間ないし2週間前倒しされた場合であっても,それは,電子提供制度の導入によって,実務上1週間ないし2週間掛かるとされている株主総会資料の印刷や郵送の期間が短縮されることを前提としたものである。このように考えると,仮に,株主総会資料の電子提供制度が導入され,株主総会の招集通知の発送期限が1週間ないし2週間前倒しされた場合であっても,実際に株主提案がされた後,株式会社において提案株主が株主提案権の行使要件を満たしているかについての確認,提案内容の検討及び取締役会としての意見の作成等の各種準備作業を完了しなければならない時点までの準備期間は,現在と実質的に変わらないものともいえるため,株主総会資料の電子提供措置の開始時期や株主総会の招集通知の発送期限が前倒しされることと株主提案権の行使期限を前倒しすることとは論理必然の関係にないものと考えられる。
そこで,パブリックコメントの結果を踏まえ,本文3(2)においては,株主提案権の行使期限の見直しはしないものとすることを提案している。
・要綱案
1 株主が提案することができる議案の数の制限
取締役会設置会社の株主が第305条第1項の規定による請求をする場合において,当該株主が提出しようとする議案の数が10を超えるときは,同項から第3項までの規定は,10を超える数に相当することとなる数の議案については,適用しないものとする。この場合において,当該株主が提出しようとする次に掲げる議案の数については,①から④までに定めるところによるものとする。
① 取締役,会計参与,監査役又は会計監査人(以下1において「役員等」という。)の選任に関する議案 当該議案の数にかかわらず,これを一の議案とみなす。
② 役員等の解任に関する議案 当該議案の数にかかわらず,これを一の議案とみなす。
③ 会計監査人を再任しないことに関する議案 当該議案の数にかかわらず,これを一の議案とみなす。
④定款の変更に関する二以上の議案 当該二以上の議案について異なる議決がされたとすれば当該議決の内容が相互に矛盾する可能性がある場合には,これらを一の議案とみなす。
(注)取締役会設置会社の株主が第305条第1項の規定による請求をする場合において,当該株主が提出しようとする議案の数が10を超えるときにおける10を超える数に相当することとなる数の議案は,取締役がこれを定めるものとする。ただし,当該株主が当該請求と併せて当該株主が提出しようとする二以上の議案の全部又は一部につき議案相互間の優先順位を定めている場合には,取締役は,当該優先順位に従い,これを定めるものとする。
2 目的等による議案の提案の制限
第304条及び第305条第1項から第3項までの規定は,次のいずれかに該当する場合には,適用しないものとする。
① 株主が,専ら人の名誉を侵害し,人を侮辱し,若しくは困惑させ,又は自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で,第304条の規定による議案の提出又は第305条第1項の規定による請求をする場合
② 第304条の規定による議案の提出又は第305条第1項の規定による請求により株主総会の適切な運営が著しく妨げられ,株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合
会社法改正! 株主提案権の濫用防止を目指して!~その2~
長かったので分けました!
・第六回法制審議会
○坂本関係官 それでは,3ページの「第2 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置」について御説明いたします。
「1 株主が提案することができる議案の数の制限」につきましては,第一読会における議論等を踏まえ,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置として,取締役会設置会社において,株主が同一の株主総会に提案することができる議案の数を一定数に制限することを前提に,役員等の選任又は解任に関する議案及び定款変更議案の数の数え方について,どのように考えるかを問うものです。
ここでは,株主が設定された制限を超えた数の議案を提出した場合には,会社法第305条第1項の請求に対する拒絶事由を構成するという考え方を前提にしております。すなわち,仮に,提案することができる議案の数を10とした場合,株主が10を超える議案を提案したときは,会社は10の議案についてのみその内容の適法性を検討し,その中で適法な議案を採用すれば足り,それ以外の議案については拒絶することができることになります。10の議案の選択方法としては,会社と株主とのやり取りの中で,当該株主に特定させる方法が考えられますが,仮に,株主が特定しない場合や株主による特定が不明確である場合には,会社が任意に決定することも許されるものと考えております。
なお,部会資料8におきましては,提案することができる議案の具体的な数を仮のものとして10とさせていただいておりますが,議案の数を何個に設定するかという点については,引き続き検討する必要があるものと考えております。
本文の(1)は,役員等の選任又は解任に関する議案の数の数え方について,どのように考えるかを問うものであり,A案とB案,二つの考え方を記載しております。
A案は,第一読会でも御議論いただいたものですが,役員等の選任又は解任に関する議案については,株主が提案することができる議案の数の制限の例外とし,議案の数として数えないものとするというものでございます。
B案は,役員等の選任又は解任に関する議案についても,株主が提案することができる議案の数の制限の例外とはせず,選任又は解任される役員等の人数にかかわらず,1議案として数えるというものでございます。
株主総会における審議の時間等が無駄に割かれ,株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり,株式会社における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加したりするなどといった株主提案権の濫用事例において懸念される弊害は,役員等の選任又は解任に関する議案であっても他の議案と同様に生じ得ることから,役員等の選任又は解任に関する議案についても議案の数の制限の例外とはせず,候補者の人数にかかわらず1議案として数えるものとするという案でございます。なお,役員等の選任議案と解任議案とは別の議案として扱い,それぞれ1議案として数えるものとすることを前提としております。
本文の(2)は,株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を1議案として提案した場合における当該定款変更議案の数え方について,その内容において関連する事項ごとに区分して数えるものとすることを御提案するものでございます。
定款変更議案の数え方につきましては,現在の株主総会の実務を前提とすれば,関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案であっても,株主が当該議案を分けて提案しない限りは,形式的には1議案として扱うことが多いものと思われます。しかし,株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を1議案として提案した場合に,これを1議案として数えるものとすると,先ほど申し上げたような株主提案権の濫用事例において懸念される弊害が生じることとなり,株主が提案することができる議案の数を制限する趣旨に反する結果となるため,内容において関連性のある事項ごとに複数の議案が存在すると捉えることで,議案の数の制限を及ぼすべきであると考えております。内容において関連性のある事項であるか否かについては,個別の事情を考慮した上で総合的に判断することになるものと考えております。典型的な具体例につきましては,補足説明の3に記載してございます。
なお,このような基準に基づいて定款変更議案を数えることとする場合には,内容において関連性のある事項であるか否かの判断が難しい場合に,会社としてどのように対応すべきかということが問題となり得ますが,先ほど申し上げましたとおり,議案の数の制限は拒絶事由であると考えておりますので,判断が難しい場合には,会社としては,内容において関連性があるものとして扱うことが望ましいと考えられます。仮に,定款変更議案を含めて10の議案が株主より提案され,会社が当該定款変更議案を1議案として数えて10の議案全てを採用した場合に,当該定款変更議案が内容において関連しない複数の事項を含んでいることが後に判明したときには,会社は実質的には10を超える数の議案を採用したこととなりますが,この場合には,会社が10を超える議案について拒絶せずに採用したと整理することができるため,実質的に10を超える議案を採用したとしても,特段の問題は生じないものと考えております。
補足説明の4では,複数の株主による株主提案権の共同行使がされた場合の考え方について言及しております。株主が株主提案権を単独で行使する場合であっても,他の株主と共同して行使する場合であっても,各株主が提案することができる議案の数は合計で10を超えることができないということを前提にしております。
続きまして,本文「2不適切な内容の提案の制限」についてですが,こちらは,第一読会における議論等を踏まえ,株主が株主提案を行った場合において,会社が当該株主提案を拒絶することができる事由を再度整理したものでございます。
①及び②の拒絶事由につきましては,第一読会で御提案させていただいたものと同様の内容となっております。なお,第一読会において,「専ら」という要件は厳格過ぎるため,「主として」などのより緩やかな要件にすることも考えられるとの御指摘を頂きました。しかし,「主として」という要件は不明確であり,どのような場合に要件を充足することになるのかという判断が難しく,また,株主提案権の重要性に鑑みれば,拒絶事由の要件を緩めることについては慎重に考えるべきであることから,「専ら」という要件を維持する方向で考えております。
また,①の拒絶事由につきましては,第一読会において,株主により摘示された事実が真実である場合であっても,会社は当該株主提案を拒絶することができるのか,という点についても検討すべきであるとの御指摘を頂きました。これにつきましては,仮に,株主より摘示された事実が真実である場合であっても,①の拒絶事由に該当するような株主提案を認めることは,株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の制度趣旨に反するものと考えられるため,仮に,株主により摘示された事実が真実であっても,①の拒絶事由に該当する限り,会社は当該株主提案を拒絶することができるものと整理しております。
③の拒絶事由は,第一読会において,株主提案が権利の濫用に該当し得る場合をより広く規定すべきであるとの御指摘を頂いたことを受け,今回新たに追加させていただいたもので,株主が専ら当該株主又は第三者の不正な利益を図る目的で株主提案を行った場合には,会社は当該株主提案を拒絶することができるものとすることを御提案するものでございます。株主が専ら当該株主又は第三者の不正な利益を図る目的で株主提案を行った場合には,正当な権利行使ということができず,株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の制度趣旨に反するのみならず,株主提案権の濫用事例において懸念される弊害を生じさせるおそれがあるため,このような対応の株主提案を制限することを御提案するものでございます。
なお,③についてはブラケットを付しておりますが,これは,③のような拒絶事由の要否につきましては,事務当局内部でも様々な意見があったところでございますので,拒絶事由の内容のみならず,要否も含めて御議論いただきたいという趣旨でございます。
④の拒絶事由につきましては,第一読会において,主観的な要件と客観的な要件とを択一的に御提案させていただいたものですが,第一読会における議論等を踏まえ,株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがある場合には,当該株主提案を行うことができないものとする,という客観的な要件とすることを御提案するものでございます。
○中東幹事 1の(1)のA案,B案については,現在のところA案がよいと思っておりますが,その観点から,1点質問させていただきたいと思っております。
4ページの3の直前の,「なお」の段落でございますが,議案の数え方について,B案を前提として,例えばですが,取締役,監査役,会計監査人,それぞれについて臨時株主総会で解任した上で選任を提案するという場合には,幾つの議案として数えるという御趣旨でしょうか。
○竹林幹事 B案を前提といたしますと,解任議案,選任議案というくくりでそれぞれ1議案と考えておりまして,取締役,監査役とか,そういう役職ごとに一つずつ数えるということは,念頭には置いておりません。
○中東幹事 ありがとうございました。
そうであれば,B案ですと,もしブラケットに入る数が10であれば,10か9か8になるという話でございますね。他方で,今お聞きした例では,議案として2と数えようということですが,議題としては6なので,そのような整理でよいのかとも思えます。元々,役員等の選解任については,1候補者で1議案という理解が原則にあって,それをどうやって勘定し直していくかという話をしていたわけです。その意味では,余りに技巧的なことは避けて,A案にしたほうがすっきりするのではないかと思っております。
○古本委員 ありがとうございます。
1の(1)の役員等の選任,解任議案の数え方については,私どもとしては,A案かB案かと問われれば,B案が妥当と考えております。
それから,(2)の定款変更議案の数え方でございますけれども,内容において関連する事項ごとに区分して数えるということですが,やはり,何が関連する事項かという判断は,どこまでいっても難しいのではないかなという気もいたします。経団連内部で議論した時に,電力会社の方から話があったのですが,例えば,原子力発電というキーワードを使って,本来は互いに独立した議案と言えるような,複数の定款変更議案が出された場合に,会社としてこのような提案をどう数えるのかという,非常に微妙なケースが出てくるのではないかということです。数え方に疑義が生じた場合には,御説明にもありましたが,実務としてはどうしても保守的に数えるということにならざるを得ないと思います。
今回,提案個数の上限については議論の対象ではないようですが,株主総会を会社と株主との間の意味のある対話促進のための場であると捉えるのであれば,やはり今,暫定的に記載されている10個というのは,前回も申し上げましたけれども,ちょっと多過ぎると思います。アメリカと同様1個とするか,せいぜい3個とすべきであるということを,再度申し上げておきたいと思います。
それから,株主が提案できる数の上限をどう設定するかということにつきましては,提案の期限と行使要件,つまり,現行の総会8週間前というのを繰り上げるのか,それから,1パーセント又は300個の議決権という要件のうちの300個の方の要件を削除するのかといったことも,併せて考慮すべきだろうと思っております。中間試案では,こうした点にも言及していただいて,広くパブリックコメントを求めていただきたいと思います。
また,上限個数について,先ほどの御説明でも,上限を超える部分については,会社は拒絶できると,こういう構成になっておりますが,実務といたしましては,明確に,上限個数を提案可能な上限の絶対値として,仮に,それを超えるような提案があった場合には,全て不適法,一切取り合わなくてよいという,分かりやすい形にしていただきたいと思います。提案株主と話をして適法とすべきものを選ぶとか,会社が任意に選択するということになりますと,実務上はトラブルの元になりかねないのではないかと考えます。
それから,2の不適切な内容の提案の制限でございます。拒絶事由を明文で設けることに賛成でありまして,③の不正な利益を図る目的での提案についても,加えていただければと思います。
御説明にありました「専ら」という言葉については,改めて考えてみますと,提案者の目的というのは,提案者の主観にかかるものであり,それを専ら,つまり100パーセント不正なものであるということを要件とすると,会社の側で100パーセントそういう不正な目的だと判断できる場合にのみ拒絶できるということになってしまうのではないか,そうなると要件として厳格過ぎるのではないかと思います。したがって,「専ら」という要件は,削除ないし緩和してもよいのではないかと思います。具体的には,①であれば,名誉を侵害し侮辱する目的,②は人を困惑させる目的,③は不正な利益を図る目的と,皆,不当不正な目的での株主提案ですので,それが100パーセントそういう目的であるというまでの判断が会社側でつかない場合でも,そのような不正不当な目的が含まれている,若しくは,それが大半であるというところまで,会社が合理的に判断できるとなった場合には,そのような提案を拒絶できるという形にすべきではないかと考えます。それがもし難しいということになりますと,①から③が本当に実務で拒絶事由として援用できるのかという懸念が生じてしいます。
なお,④は,キャッチオールの規定なのか,私もよく分からないのですが,例えば,これはどのような提案を念頭に記載されているものなのか,もし事務局の方で具体的な想定事例などがあれば,御教示いただければと思います。
それから,資料には記載がありませんが,実務で問題となっている株主提案の大半が,業務執行に係る事項を定款変更の形で提案されたというケースですので,これをストレートに禁ずるということも,併せて御検討いただきたいと思います。
○竹林幹事 ④でございますけれども,①,②,③では判断がなかなか難しいものが入ってくるということでございます。そして,ここで,株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるというのは,例えば,定款変更議案で,1個の議案に不必要に多数の事項を盛り込んでいるような事例で,それら全てを審議していると,時間的にも過大な負担がかかるというような場合を,一応念頭には置いておりますけれども,ほかにどういう事例があるかというのは,具体的な事例が事例が発生したときに御判断いただいていくことになるかと思います。
○前田委員 役員等の選解任議案の数え方としては,私も,中東幹事がおっしゃいましたように,A案の方が考え方として明快なのではないかというように思います。つまり,役員等の選解任は数の制限にはなじまないし,また制限の必要性も必ずしも高くない,したがって,たとえ候補者が十数人いて,議案が十数個あっても,完全に数の規律の外に置くという考え方は,分かりやすいと思います。
これに対して,B案は,候補者が十数人あっても,議案を1個と数えるということですけれども,そのとき,決議はやはり十数個存在するはずであって,その決議の瑕疵などもそれぞれ十数個の決議ごとに考えることになるはずです。決議が十数個あるのに,なぜ議案だけ1個になるのか,B案は中途半端で説明しにくくないかと思います。
それから,定款変更議案については,内容において関連する事項ごとに数えるという考え方に賛成です。こういう数え方についてまで明文で書くのか,それともこういう解釈をここで確認した上で明文にはしないのかについては,更に検討すべきことになると思いますけれども,考え方に賛成です。
それから,最後の不適切な内容の提案の制限として,③の場合は加えていただくのがよいと思います。例えば,会社から金品をせしめるというような,不当な個人的目的の提案も,これで拒絶することできるようになって,権利濫用のケースを広くカバーできるようになるのではないかと思います。
○北村委員 発言の機会を与えていただき,ありがとうございます。
まず,役員選解任議案について,先ほど中東幹事と前田委員はA案がいいとおっしゃったのですが,私はB案の方がいいと思っています。確かに前田委員の御指摘のように,議案の数と提案議案制限の際の数え方を分けますと制度として複雑化するというのは,そのとおりでありますが,1人の株主によって無駄に時間が割かれて,実質的な株主総会運営ができないようになるのを防ごうという趣旨であれば,選任議案,解任議案が出されますと,それぞれについて議案説明と採決をする時間がかかりますので,そこは割り切って考えてはどうでしょうか。つまり,候補者が何人いても一つの議案と考えて,提案の上限がたとえば10個であれば10の中の1つに数えることに合理性があると思っております。
次に,定款変更議案について関連性のあるものは1つと数えるというところでございますけれども,補足説明では,論理必然的に,こちらを立てればあちらが立たないというようなものが関連性の例として挙げられております。ただ,個別の事情を考慮した上で総合的に判断するとも書かれております。この問題は,関連性があるとして1つにくくる範囲が広いほど,実質的な提案数が増えることになります。そして,広い範囲を1つにくくったとして,結局それは関連性がなかったとしても,拒絶できたかもしれないが拒絶しなかったというだけで問題はないという御説明だったと思います。確かにそうだとは言えるのですけれども,その場合,会社としては,ある株主には広くくくって,ある株主には狭くくくったとか,そういうことにならないようにしなければいけない。そうすると,かなり保守的に,少しでも関連すれば1つにくくって,実質的にたくさんの提案を認めることになりかねません。つまり,会社としては,関連性がないことを理由に提案を拒絶するのは自由だけれども,株主を不平等に扱ってはいけないという別の縛りがあるので,関連性を狭く解するのに消極的になるということが考えられるのではないか。そうすると,少しドラスティックですけれども,論理必然的なものは一つとするけれども,そうではないものは別々の議案と考えてもいいのではないかと思う次第でございます。
最後の不適切な内容の提案の制限ですけれども,濫用的なものを全て書き尽くすことはできないわけで,どこまで実効性があるか分からないですが,こういう濫用防止規定を設けるということが,一定のプレッシャーを提案者に与えるという点では,意味がないことではないと思います。
○沖委員 ありがとうございます。
意見が二つと質問が二つございます。よろしくお願いいたします。
まず,意見の方ですけれども,役員の選解任議案に関する議案の数え方ですが,これは,私も北村委員と同じ意見でありまして,B案がいいと思います。その理由としまして,平成24年5月31日に高裁の決定があった事案ですけれども,全部で63個の株主提案が出されて,そのうち58議案が審理の対象になったという事件があります。そのうち,33議案が取締役の選任,解任,選任に対する反対議案などを複雑に組み合わせたものを出しているわけです。ですから,こういった提案に対応するためには,やはり別枠ということでしょうけれども,選解任に関する議案も一つの議案として数えて,制限を加えることは必要だろうということです。
意見の二つ目は,数の制限を超えた場合の議案の扱いです。今回の部会資料で,まず提案株主が議案を特定すると。株主が特定しない場合や不明確な場合には,会社が任意に決定するとあります。これは,提案株主の提案権はなるべく尊重しようという趣旨は理解できるんですけれども,実際,限られた時間の中で,このやり取りをしていたときに,紛争が起きる可能性もあるかと思うんですね。ですから,第一読会では,数の制限を超える株主提案については不適法で全体としては無効にするという提案がされておりまして,これらの提案のうち,どちらがいいかは,今後も継続して検討していく必要があるのではないかと思います。
以上が意見です。
質問ですけれども,まず,第1点目は,定款変更議案の数え方です。こちら,内容において関連する事項ごとに区分して数えるということで,定款変更議案でも,これが多数出された場合に,数の制限を合理的にかけるということは必要だと思いますので,今回の提案は大変意味があると思います。そこで,内容において関連する事項ごとに区分して数えるとした場合に,当然株主提案については別議案で,認められたものは別議案で個別に採決をしていくということになるかと思いますが,他方で,会社提案の定款変更議案については,これは,ほとんどの会社で全体を1個として扱っているんだと思うんですね。分けているものは少数だと思います。そうしますと,その会社提案の扱いについては,特に先ほどのような定款変更議案の扱いは,これは株主提案の数を合理的に制限するための考え方にすぎないのであって,会社提案を処理するときは一切影響を及ぼさないという理解でいいのかどうかというのが1点。
あともう一つの質問は,数で制限をした場合に,その数を超える株主提案が出た場合には,会社の判断で任意に適法として上程することは認められるのか,それとも,それは不適法なので,基本的には認められないという理解でよいのかという2点ですね。よろしくお願いいたします。
○竹林幹事 まず,一つ目の点ですけれども,ここで御提案差し上げているのは,飽くまで株主提案に数の制限を設けるという前提で,株主の方が出す定款変更議案の数え方というのを,直接的に念頭に置いての御提案ということになります。仮に,そういった法文が設けられた場合に,それが会社提案にどのような解釈上の影響を与えるかということはあり得るかもしれませんけれども,ここで念頭に置いておりますのは,先ほど申し上げましたように株主提案についての数え方ということでございます。
続きまして,二つ目の点ですけれども,拒絶事由と申し上げているのは,仮に,数を超えるものを扱うという,結果的に超えていても,違法の問題を生じさせないということを念頭に置いておりますので,会社の方で判断が難しかったときに多めに採るということは可能という前提で御提案差し上げております。
○中東幹事 先ほどの数の数え方,役員等の議案の数の数え方について,北村委員,沖委員から御批判を頂きましたので,反論させていただきたいと思います。
両委員がおっしゃることも分かるのですが,1人がどれだけの時間をとるのか,あるいは多くの議案が出されたときに,一定の枠で1個の単位にしようという,その発想はいいと思うのですけれども,最終的にブラケットの中に幾つという数字を入れるかの話になるのかもと思っています。B案で10と入れても,その中に役員等の選解任議案が多く入ってくれば,8として外に出すのと同じことになりそうですので,結局のところ,A案を採ってブラケットの中を幾つにするかの話と似たようなことになるのかもと思います。
北村委員がおっしゃった,内容において関連性がある事項について,こちらは賛成でございます。論理必然的なものは1個として数えるべきであるという点で,古本委員の御懸念については,共有するものがございます。ただ,論理必然的にというと,まだ抽象的ですので,実際に効果的に運用できるかという疑問が残ります。補足説明の例を読ませていただきましても,もしこの議案をばらばらにしてしまって,本来なら一括して可決または否決しないといけないのに,一部の議案は可決,残りの議案は否決という形になると違法な状態が,つまり会社法が予定していないような状態が生じるということが,この内容において関連性がある事項だと理解いたしました。その意味で,そういったものはセットとして1議案とするということかと思っておりますので,論理必然的とは,切り離してしまうとすると,およそ会社法で許されないような定款の内容になるという場合であると思います。立法技術的な問題もあろうかとは思いますけれども,そういう形で,明確に書いていただくと,より実務的には安心できるのではないかと思っております。
○小林委員 どうもありがとうございます。
株主が提案できる議案の数の制限でございますが,数の制限について,10という数字は仮置きということでございますけれども,第一読会では,他の株主から賛同を得られないような精度の低い株主提案も多くなるのではないかという懸念を申し上げて,せいぜい3個から5個ぐらいと申し上げていますが,今回の提案について,すんなり読むと,B案の方がよさそうに見えますが,よくよく考えてみると,例えば,B案の役員選解任をそれぞれ1と数えるということだけで言えば,B案の方でまとめた場合,Bマイナス1か2で,A案の方はAプラス1か2というぐらいの違いしか,実はなさそうですので,あんまり本質的な差ではないのではないかなというように思います。
そうすると,やはり数の問題そのものに帰着するような気がするので,そういう意味では,これは,10個を前提とした議論としか見えないので,いかがなものかと,私の個人的な印象としては思いましたので,そういう前提の議論ではないと考えたときに,どちらが本当にいいのかは,先ほど御意見がいろいろあった,実際に役員選解任をどう考えるかというのは非常に難しい問題だと思いますので,もう少し議論を深めていただく必要があるのかなと思います。
もう一つ,一定の議案数の制限を置いたとして,それを超えた場合の選択方法については,やはり株主に特定させるのが1番目で,会社側がその後は,駄目だったら任意ということでございますが,先ほどちょっとお話もありましたように,元々こういう議案が出されたときは,株主とのコミュニケーションが非常になかなか取れなくて,そのやり取り自体が今でも大変だということになりますと,こういう規定になったときに,非常に難しい運用を迫られるということははっきりしていますので,やはり先ほども御指摘がありましたように,議案数,数の基準で超えた場合には,やはり全部無効にできるという形にしておいていただかないと,実際にはなかなか会社側としてはワークしにくいのではないかと思っております。
定款変更議案につきましては,内容の関連性に着目して区分するという考え方には賛成でございますが,やはりその判断基準については非常に難しいところもございますので,これだけで確定させるということではなく,もう少し議論を深めていただきたいと考えます。
それから,不適切な内容の提案の制限につきましては,部会資料では,「専ら」とか「著しく」という文言が維持されていますが,項目が①から④まであるということは結構だと思いますが,商工会議所でもう一度検討したところ,これらの文言によって,「専ら」,「著しく」という制限は,やはり権利内容的に見て,捉える射程が少し狭くて厳しいのではないかという意見が大勢でした。できれば,やはり「専ら」とか「著しく」という文言を削除するなどの扱いを検討していただきたいというのが,要望でございます。内心の専らということについては,やはり会社側としてはなかなか立証するのは難しいので,これで拒絶するというのは実質的にはできづらいのではないかということが,一番懸念としてあるということです。
会員企業が個別の事例として挙げられておりましたけれども,株主提案に関する招集通知の記載のところで,通常その提案の内容とか理由をそのまま記載することが求められているわけですが,その内容が,実は名誉毀損に現実に当たりそうな場合に,招集通知に結果的に記載せざるを得ない状況となると,会社そのものが共同被告で名誉毀損で訴えられる可能性があるのではないかということで,深刻に検討された会社があったそうで,そういう場合にどうすればよいのかという話がございました。そういう意味では,「専ら」をとっていただくと,大分話が軽くなるのかもしれませんけれども,こういうときに,名誉毀損のリスクを負わない,あるいは制度的な担保を考えてほしいというような要望がございましたので,紹介しておきます。
部会資料にはございませんが,第一読会で申し上げましたとおり,古本委員からも御指摘ございましたが,議決権の300個以上の行使要件についてはやはり見直していただきたいということと,株主提案権の行使の前倒しについても,これは検討の俎上には上げていただきたいということは重ねて,これはお願いでございます。
○野村委員 最初にまず,役員の選解任の件について申し上げようと思ったことは,今小林委員の方から最初にお話がありまして,余り違いがないのではないかなとちょっと思っておりましたので,この辺は,結局のところ,数が多くもし提案できるんであれば,数えても数えなくてもいいよねという話になると思いますけれども,数がもっとかなり厳格に3個とかってなってきますと,かなりクルーシャルな問題になりますので,そこはちょっと,前提を踏まえた上で議論したほうがいいかなと思います。
もう一つは,同一性のある,例えば,定款変更などにおいて,内容において関連性のある事項という立法の御提案でありますけれども,やはり,先ほど北村委員の方からもお話がありましたように,論理的にもこれは関連性があると,こっちを削るならこれも絶対削らなければいけないといったものは明確なんですけれども,やはりつながっているようでつながっていないというものが圧倒的多数を占めると思うんですね。そこの部分はきっと,恐らく今の立法と,それから今日の御解説だと,コンサバティブになるべく決議取消しにならない方向で,たくさんの御提案の方を受け入れるという方向になっていくというように思いますので,もう一段,何かそこで数を,定款変更の中でたくさん出せるということを少し制限できるような工夫というのも,もう一段考えられないものかなということを,ちょっとアイデアはまた追って御提案させていただければと思いますけれども,やはりちょっとこのままでは,この説明ではほとんど骨抜きになりかねないのではないかなというような気が,ちょっといたしております。
それで,一番伺いたかったのは,実はこの最後の内容の提案の制限のところなんですけれども,これについても,先ほどちょっと北村委員とのやり取りの中で,例の株主総会参考書類のところに,株主提案に係る理由の記載に関連する93条の問題があって,この中に,例えば,権利侵害であるとか名誉毀損とか,そういったようなものが出ていると。これ,同じものではないかと言われたんですが,ちょっと私の理解が違っているのかどうか分かりませんけれども,6ページにあります不適切な内容の提案というのは,この提案内容から見てそういった目的が推断される場合を指すのではないかなと理解していまして,単に動機において,何か困らせてやろうとか,これに絡めて名誉毀損の道具にしてやろうとかという目的を持っているものを,ここで提案内容として排除しようとしているわけではないと思いますので,そうだとしますと,やはり提案理由の方で今度は傷つけてやろうという利用するのとは,違った利用の場面が想定されているのではないかなというような感じがします。そのことを前提とした上で,ここでお話ししたかったことは,飽くまでもここは内容の制限という,そういうくくりで理解してよいものなのかどうか。つまり,提案内容から,そういった目的が推断される場合ということを想定しているのか,それとも,提案をきっかけとして,そういった動機を実現しようとしていることを防止しようとしているのかという点についてだけ,ちょっと御確認をさせていただければと思います。
○竹林幹事 今,野村委員から御指摘いただいた例につきましては,飽くまで提案そのものの内容といったらよろしいんでしょうか,その提案そのものの内容が専ら人の名誉を侵害するものであるということであって,提案の内容自体は別に名誉侵害になっていないけれども,それをきっかけとした何かを防止するということを想定しているものではございません。
○野村委員 1点。そうなりますと,よく考えてみると,ここは逆に,会社法施行規則の方の理由のところが,必ずしも十分ではなかったのではないかなということがうかがわれまして,逆に,困惑するような理由をかけてくることも拒まなければいけなかったのではないかなと思いますので,そこは,改めて御検討いただければと思います。
○藤田委員 何点か申し上げたいと思います。まず1のA案,B案の選択ですが,私の前のお二人の委員が言われたこととほとんど同じです。何人かの委員の方がB案は不自然だと言われたのですが,自然さという点では,どちらも余り差はないような気がします。確かに議案の数と提案の数が違うのは不自然といえば不自然かもしれませんが,提案していても提案していないとみなすというのも,同じぐらい不自然だと思います。ですから,理論的には別にどちらでなくてはならないというような話ではないと思います。選任議案は,普通は選任される人ごとに議案を数えていますけれども,それをそのまま適用すると非常におかしな結果になるので,それを何とかしたいというわけで,その手法としてはどちらの案も十分あり得ると思います。
むしろ実質的により影響があるのは,提案数の上限をどう考えるかで,これも小林委員や野村委員も言われたように,たとえば提案の上限が3というときに,B案をとるのはさすがに抵抗があります。そういう話だとすると,A案,B案のどっちが正しいという議論を抽象的な形でして,それから提案数を決めるという手順で議論することはやめたほうがいいと思います。両者は同時に考えないといけないと思います。
次に,2番目の議案の数え方ですが,そもそもここで書かれている提案の意味が十分分からなかった点があります。つまりこういうふうな文言の条文を書くという御趣旨なのか,それとも,条文を作るわけではないが,提案の上限数を設けるというときには,こういう発想を前提としていますという説明なのか,ちょっとよく分からなかったのです。考え方としては,関連性があるのはまとめて考えるという発想――それをどのぐらい厳格に考えるかはともかく――は,動かしようがないと思います。もしそうしないのであれば,提案議案数の制限は実質的に無意味になるので,古本委員がおっしゃられたように,定款に書ける事項を限定していくしかないと思います。逆に定款には何でも書けるという前提を採る限りは,定款変更議案としてまとめれば一議案というふうな数え方をするとすれば,この規制は全く意味がなくなります。ですから,何らかのくくりで議案数を数えるしかないのは確かだと思います。
論理必然的に両立し得ないようなものは異なる議案と数えるという基準だけでいいかと言われると,やはりそこまで限定してしまうと,提案数の上限の限定の趣旨が余りにも没却されるような気がします。柔軟にすると曖昧になり,リスクを会社に負わせることになる結果,保守的に運用されることになるかもしれませんが,しかし,会社がリスクを負いたくないから保守的にする可能性があるからといって,論理的に両立し得ない場合だけしか別のものとは数えないとまで限定する必要もないような気がしています。議案の数え方については,幾つか異なった考え方がありそうですが,基本的にこういうくくりを設けること自体には賛成で,そこから先の考え方の整理を今後もう少し考えたいと思います。条文にするかどうかも,今決められることではなくて,整理がある程度つくようになってから,条文化できる内容かどうかを考えればいいような気がしています
なお提案株主によってくくりの大きさを会社が違えて扱ったりするという不公平なやり方も生じ得るという指摘がありました。確かに,そういうことが生じる可能性はあると思いますが,しかし根本的に考えますと,それは提案の上限数を提案拒絶事由としてしまっている以上は避けられない問題です。つまり,ある人の提案については上限数以上のものを拒絶し,別の人については上限数以上でも提案を認めるとする扱いを会社がする可能性は常にあって,それと比べると,議案の数え方を提案者によって変えるという話は,どちらかというと小さい問題です。恣意的な拒絶の仕方をした場合に不公正な手続による取消事由になり得るという一般的な規制の問題にするにとどめざるを得ないと思います。
3番目に,不適切な内容の提案の制限の③については,これを入れるなというつもりはありませんが,この条項は役に立たないだろうなという感触を持っています。そもそも,これを満たす場合のイメージがわかないのですね。あえていえば,例えば誰かからお金をもらって提案をするというのがこれに当たるのでしょうが,それ以外は何があるのだろうかという気がします。売名的な動機がある場合ですら,専ら不正な利益を得る目的とまで言えるかどうかも分からない。そうなると,この条項を入れることで,拒絶できる場合がどれだけ増えるかはよく分かりませんし,また,この拒絶事由を加えることで拒絶できる場合についての基本的な考え方が明らかになるというものではありません。ですから積極的にこれを入れたいと思うわけでもないですが,何か弊害があるわけでもないので反対もしないという,そういうスタンスです。
むしろ,④が一番重要な考え方を示すものではないかと思いますけれども,前回も確認したことですけれども,④にいう,「総会の適切な運営」というのは,準備段階も含めたものであるということと,これは提案が採択された場合に会社に損害が発生するという意味において提案の内容が不適切であるということを問題にしているのではなくて,飽くまでそのような議案を検討することが運営との関係での弊害があるかどうかを考慮しているという趣旨の拒絶事由だということが重要です。
最後に,どなたがおっしゃったかちょっと正確に覚えていませんが,300個という少数株主権の基準です。最新の部会資料に書かれていないということは検討事項から落ちている,この要件を見直すことはしないという提案になっているように読めます。最終的に見直しについて賛成するか,反対するかは留保しておきたいと思いますが,アジェンダから落としてしまう前に,もう少し情報が欲しいと思います。情報が欲しいのは,まず第1に,典型的に濫用的な提案と言われているもののうち,どのぐらいこの300個という要件に依存して提案されているかということです。1パーセント要件を満たしている人によって相当数の提案が,なされているのであれば,この要件を削除することは,それほど意味がないということになりますし,逆に濫用的提案のほとんど全てが300個の要件で提案してきているというのであれば,これを削除することの意味は大きく変わってきます。
確認したいことの第2点は,昭和56年改正のときにこれが導入された時点におけるこの300個の意味は,経済的な価値の点で,現在も同じようなものと考えてよいか,それとも,根本的に違ってきているのかということです。3番目に,1パーセントという要件と300個の間には,平均してどのぐらい隔たりがあるのかということです。こういうふうに並列的な要件が規定されているのは,片方を満たすことがあれば,片方を満たすこともある場合に,どちらか満たせばよろしいとするケースが多いと思います。これに対して1%の要件が300個の要件よりもほぼ例外なくはるかに厳しいというなら,こういう要件の書き方としてはかなり異例なことなので,その辺りも確認すべきかと思います。そういったデータを踏まえて慎重に判断すべきではないかと思っています。
○竹林幹事 必ずしも御質問を頂いたというわけではなかったのかなとも思いますけれども,まず,私どもで御提案差し上げました内容において関連するということにつきましては,余りこれまで定款変更議案の数の数え方というものが表に出てきていなかったのかなと思いまして,どういった形で御議論いただけるのかという,今現在の考え方といいますか,そういったものを確認させていただきたかったという趣旨もございます。ここに書いてあるくらいが,ある程度皆様共通の認識でいらっしゃるということであれば,あえて明文化するということは必要ないかもしれませんし,ここでの議論等も踏まえまして,また条文化の要否等について検討させていただきたいと考えております。
また,不適切な内容の提案の④につきましては,前回もお答えさせていただいたとおり,藤田委員から本日も御指摘いただいたとおりの考え方に立っております。最後,300個要件のところでございますが,実際にどういう形で300個とパーセンテージの関係を把握するのか,難しいと思っておりまして,引き続き検討させていただきたいとは思っておりますが,第一読会で席上配布させていただきました資料の中に,個数等については書いてございまして,場合によっては,その個数と,それが何パーセントかというのも,書いてございます。少なくてもそういったものを見ていますと,300個で利用されているということがあるとは認識しているのですけれども,もう少し何か調べられることがあるかどうかを含めまして,検討させていただきたいと思います。
○田中幹事
まず,先ほど来議論されている選任・解任議案の数の数え方についてですが,多くの方がおっしゃるように,現実には議案の数そのものをどう決めるかが重要なので,それに沿って調整されていくものですから,本質的には余り重要ではないかと思いますが,しかし,理論的に申しますと,例えば,1回で提案できる議案の個数の上限を5としたとしますと,仮に,株主が既に5個定款変更議案を出しているとします。そのときに,もう1個定款変更議案を出すのは違法なわけですね。これに対して,株主がもう一つ,今度は役員選任議案を出してきた場合には,B案(役員選任議案は全体で1個と数える)であれば,それも違法であるわけです。定款変更議案であろうが,役員選任議案だろうが,合計で5個を超えれば違法になる。ところが,A案(役員選任議案は提案数に含めない)だと,違法でなくなるわけですね。ですから,役員選任議案何人の候補者を出そうが,あるいは取締役と監査役と会計監査人の選任議案を出して,更に解任議案を出そうが,全然ウエイトが置かれないということになるわけでして,これが筋が通っているのかということが問題だと思います。
役員の選解任議案は,候補者の数だけ議案がありますので,定款変更議案とかほかの議案と同じようなウエイトの置き方はできないということは争いないわけですけれども,問題は,同じようなウエイトは置けないとしても,一切ウエイトは置かないのか,それとも,実際に役員選任議案でも株主のための検討時間を取るわけですから,ウエイトゼロというのはおかしいではないかというところが議論の中心です。これは,ブラケットの数をどうしようが,つまり,提案個数の上限をどう設定しようが,起きる問題であります。私自身は,ウエイトゼロはおかしいと思いますから,B案に賛成ということでございます。
それから,実際にはブラケットの中の数をどうするかの方が,皆さん御関心があると思いまして,それについては引き続き審議ということで,今回は具体的な提案はないというお話しのようですが,具体的な提案がやがてなされるであろうことを予期して申し上げておけば,私も,10は少し多いのではないかと思います。真剣な株主提案をしようとする提案株主にとっては,提案する議案が10もないといけないというのは,ちょっと状況として考えられない,多くても5というのが,私は適当ではないかと思っています。それから,定款変更議案の個数の数え方については,確かに現在の御提案ですと,中身が不明確なので会社は保守的な対応にならざるを得ないのではないかというのは,そのとおりかと思いますが,仮にそうであっても,これまで何十個という数の定款変更議案として提案してきたものを,全部一つの定款変更議案に押し込めた場合は,会社はこの条項に基づいて拒絶ができるということになるかと思いますので,意味のないものではないと思います。さらに,この条項を明確にする努力は必要かもしれませんが,現在提案されている条項であっても,これを会社法に入れることには一定の意味があるのではないかと思います。
それから,不適切な内容の提案の制限についてですが,私は,この提案の中では,特に④を入れるということが非常に重要だと思っております。④は,客観的要件の下で不適切な提案として拒絶できるということを規定しておりまして,これは,現在の権利濫用の法理ですと,権利濫用について主観的目的を重視するような判例となっていることから,④に規定されているような事情があっても,現行法のもとでこれが権利濫用に当たるのか必ずしも明確でないと思います。それについて,④のような条項があれば,株主提案を拒絶できるということで,ここに意味があると思います。そして,先ほどの御解答にもありましたが,この提案は,一つの定款変更議案の中で,定款条項という形で延々と株主の主義主張を述べるような提案が過去にありましたので,このような議案を念頭に置くと,この④の条項によって拒絶できるということになりますから,これを入れることに意味があると思います。この④が入るのであれば,例えば①や②に関しては,現在の提案のような限定的なものでもいいのではないかと思います。
他の委員,幹事の方から,提案目的に付された「主として」という限定が不明確なので,いっそ限定句は全部とったほうがいいのではないかという御意見もありましたけれども,特に個人株主が株主提案する場合は,何らかの形で経営陣に対して悪感情を持っていることがむしろ普通でありまして,そういうエネルギーがないと個人株主は株主提案をしないと思いますので,何の限定句もなく,とにかく会社を困らせる目的があれば駄目というのは,ちょっと私には支持し難いです。「主要な」目的というのは,例えば,不公正発行についての判例法理でも使われているわけですから,条文に「主要な」という限定句を入れることも,必ずしもおかしくないと思います。ただもし,「主要な」とか「主として」という表現を条文に書くのが難しいのであれば,私は,「専ら」と限定してもよいのではないかと考えております。
○加藤幹事 1点,不適切な内容の提案の制限について質問いたします。御提案は,株主提案の個々の提案について,それぞれについてこの要件が満たされるかどうかということを判断するという前提で作られているのか,それとも,東京高判の平成27年5月19日のように,一括して全て濫用であると評価する余地もあるのでしょうか。
○竹林幹事 私どもは,基本的にはやはり個々に見ていくんだろうと考えておりました。ただ,その数が多かった場合とかについて,それがどういうような意味合いを持っていて,全体として専ら困惑させる目的の提案になっているというような解釈の余地がないのかと言われると,ちょっとよく検討しないといけないのかなとは思っております。ただ,先ほども申し上げましたように,④などはまた違った観点から一つの定款変更議案の中にたくさんのものが盛り込まれているというようなこともあったりしますので,それは全体的に見てどうかというようなこともあるのかと思います。もしまたこの辺りにつきましてお考え等あれば教えていただければと思います。
○三瓶委員 ありがとうございます。
私は,定款変更議案の内容について申し上げたいと思います。 先ほど,古本委員が最後におっしゃった業務執行に関わる事項について定款に定めることについては,ある程度の制限を考えてほしい,これは,正にそうだと思っています。実際に議決権行使をする立場で,ガバナンス改革の中で,取締役会に監督責任をより強く感じて持ってもらうという一連の流れの中で,株主提案で個々の細かいことについて,どんどん制限を加えていくというのは,全体からすると相矛盾することだと思っています。
実際に,定款変更議案がたくさん出てきていますけれども,それ,同じ株主から出ている提案でも,我々から見て相矛盾するというようなものがあります。なので,そういう点からすると,まず,業務執行に関わる定款変更議案については,どうにかうまく,言い方が難しいんですけれども,もう少し内容として提案しにくいというか,それは提案すべき内容ではないというようなことを,どうにか盛り込めないかなということと,同時に,定款変更するときには,やはり一株主からは一つにすると。そうすることで,一つの定款変更議案の中で相矛盾していないものをよくよく考えてみて出さなければいけなくなるわけですね。そうしないと,通りにくいわけですね。そういうことを考えた上で株主提案する。
そういうことを考えると,上限についても10は要らなくて,もう少し絞って3辺りかなと思いますけれども,よくよく考えられた,練り上げた定款変更議案で,そこに必要なことは複数入っているかもしれませんけれども,それを含めて3ぐらいにするということが,トータルで見たときに,きちんと精査すべき株主提案になると思います。是非そういう方向になっていって,今の一連のガバナンス改革というのが意味あるものになっていったらと思います。
○齊藤幹事 ありがとうございます。
最後の不適切な内容の提案の④につきまして,まだ私自身がよく理解しきれていないところがあるかもしれないのですが,この読み方についてコメントをさせていただく次第です。適切な運営が妨げられることによって,株主の共同の利益が著しく害されると読むということと,それから,提案の内容には踏み込まないということ,これがこれまでに確認されてきたように思うのですけれども,「適切な」と「著しく」という評価を含む言葉が入っているので,このようなものに該当するものは不適切だろうということについては,余り議論の余地がないのかもしれないのですが,実際にそれを判断できるのかというところが,まだ整理がつかないところがあります。というのは,既に問題視されている先例があるような場合には,同様の事案がこれに該当するだろうという点については,多くの方の意見が一致するように思います。しかし,それは,実際には内容まで見ているので,濫用的であるという結論を導くことに躊躇を覚えないですむという側面があるように思いますので,全く内容に踏み込まずに,適切な運営が妨げられるのかを判断するとすれば,その要素は,単に時間が掛かるとか,手間が掛かるというところに尽きていくことになる。そうすると,例えば,「時間が掛かりますので」という理由で,時間というのは株主それぞれにとって大事なものでもありますから,その御提案は御遠慮ください,ということになりかねないのではないかと。実際には,上場会社であれば保守的に運用されるだろうという期待の下に,こういう提案が取り上げられているのかもしれないのですが,そのような前提がない場合も想定して制度は作る必要があるのではないかと感じました。
○松井(智)幹事 これ,大したことではないという話なのですが,先ほどのA案,B案について一言だけ。
A案をとっている方というのは,決議の瑕疵に関する議案というものについての学説があるので,ここで議案という言葉を使ってしまうと,いろいろと解釈論上難しいという話だと思います。B案の方は,議事進行において,議案ごとに説明と討議をするといったような議事進行であるとかいったようなことを念頭に,どちらがきちんとした手続でいけるかといったようなことをお考えなのだと思うので,ちょっとここで,議案という概念を使って条文を書くのかどうかということを考えていただければ,多分A案についての懸念の部分というのは,大部分解消するのかなということであります。
あと,先ほど矛盾したような株主提案についてという話がありましたけれども,そういう行き当たりばったり的な議案をどんどん出してくるというのであれば,④のような話に引っ掛けることができるのではないかという,そういう感想を持ったということと,業務執行制限なんですけれども,これ,業務執行を制限する議案が出てくるのが困るのは非常によく分かるのですが,そうすると,多分究極的には定款に株主が書くことができる事項というところに踏み込んで,多分議論をするのだろうなと思って,株主提案権のところで整理し切るのはちょっと難しいのかなと考えたということです。
続きはあした!!
会社法改正!! 法制審議会の議事録読んでみた・・・。
株主提案権の濫用防止が主な目的でした・・・
ABprojectは、ココナラというサイトを中心に法律学習系のサービスを提供しています。
今回掲載する法制審議会の議事録(株主提案権の議論に関するものを抜粋)もサービス提供のご依頼をきっかけに読んでみたというものです(そのご依頼は、頓挫してしまいましたが・・・。ドタキャンは本当にやめてください!!)。
株主提案権の濫用を防止するために旧会社法303条~305条の内容が議論されています。
改正の経緯を知ると、単に文面を知っているだけよりも深く条文の意味を理解できます。
個人的な感覚としては「立体的に」見えるようになる気がします。
これは、大事なポイントです。
例えば、論証を張り付けているだけ(論点主義)の答案と問題の個別事情に合わせた具体的な検討ができている答案かは、「立体的に」見えているかどうかの差だと感じます。
「多角的に」見えているという表現もできるかもしれません。
いずれにしても、一度読んでみてください。
条文の一字一句に「こだわり」があることがわかると思います!!
・第一回法制審議会
(P1)
また,近年,株主提案権が濫用的に行使される事例が見られるようになったことを受けて,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備を検討すべきではないかという指摘もあります。
(P5)
「2 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備」では,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置を整備することを検討してはどうかとさせていただいております。
近年,一人の株主により膨大な数の議案が提案されるなど,株主提案権が濫用的に行使され,これにより株主総会における審議の時間等が無駄に割かれ,株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり,株式会社における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加することが弊害として指摘されているところでございます。このような濫用的な行使に対しては,一般条項である権利濫用の禁止では対処することが難しいという指摘もあるところです。株主が提案することができる議案の数を制限することや,株主による不適切な内容の議案の提案を制限することを検討するのがよいのではないかと思われます。
(P9:小林委員)
「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置」ということでございますが,こちらについては基本的には賛成でございますが,いろいろな現実的な株主総会等での運営上,言わば他の一般的な株主から見まして,むしろ,建設的な対話が阻害されるような提案については,一定の制限が必要であると考えさせていただいております。そのほか,濫用的な場面とは必ずしも言えないかもしれませんけれども,単元株の考え方が大分変わってきているということもありますので,株主提案権の行使要件について,あるいは株主提案を行った方とのいわゆるコミュニケーションの問題というようなこともございますので,この行使期限の考え方等についても併せて検討していただけると,大変有り難いと考えているところでございます。⇒行使期限の話は、濫用のケースと区別する
(P16:古本委員)
2点目の「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備」でございますけれども,株主提案権が濫用的に行使されますと,先ほど御紹介があったとおり,本来,株主総会で議論するのにふさわしくないような議案につきましても会社の負担で総会資料に掲載せざるを得なくなるという問題がございます。また,総会の場でも,そのための時間を確保しなければならなくなりますし,提案が多数なされた場合は,ほかの株主との対話の機会が阻害されるということにもなりかねません。以上のことから,株主提案権の濫用的な行使を制限するということに賛成でございます。
資料には,提案個数の制限と不適切な内容の提案の制限について書かれておりますが,提案権の行使要件と行使期限の前倒しについても御検討いただきたいと思っております。行使要件のうち,300個の議決権という絶対数基準が現行法ではございますけれども,これは会社の規模,発行株式数と関連しない基準でありまして,これを維持することには疑問を感じているということでございます。
(P23:柳澤委員)
2点目ですが,「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備」ということについて簡単にコメントさせていただきます。こちらに関しましては,権利濫用になるのか否か,判断するのに容易でない面があるというように捉えておりますが,基本的に提案できる議案の数ですとか,内容について制限を導入することが望ましいと考えております。近年の行使事例におきましては,些末な内容を含む議案や,一人の株主が膨大な数の議案を提案するような状況が見受けられますけれども,実務上,会社側で株主提案権の濫用的な行使になるのか否か,判断するのは難しいのではないかと認識しています。そのため,こうした状況に何らかの歯止めがかからない限り,株主総会参考書類等の印刷や発送費用の増大といったコスト面での負荷はもとより,ほかの株主の実質的な議論の時間が少なくなるといった意思決定機能上の弊害というリスクも,生じ得る可能性があると思います。
仮に制限措置を検討するとした場合ですが,実現可能性が高いと考えられるものとしては部会資料にも記載がありますとおり,提案できる議案の数を制限することや,不適切な内容の提案を制限することが挙げられるかと思います。今後の個別議論に際しましては,具体的に議案数の制限を幾つまでとするのがよいのか,また,不適切な内容に対応するために,株主提案の拒絶事由を設けるべきか否か,設けるとした場合にどのような文言となるのか,こういった点も課題だと認識しております。
・第二回法制審議会
まず,第1の「株主提案権の濫用的な行使の制限の要否」におきましては,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置を整備するものとすることでどうかとしております。株主提案権の制度の趣旨は,株主の疎外感を払拭し,経営者と株主とのコミュニケーションを良くしようとするものですが,近時,株式会社を困惑させる目的で議案が提案されたり,一人の株主により膨大な数の議案が提案されるなど,株主提案権が濫用的に行使される事例が見られます。株主提案権が濫用的に行使されることにより,株主総会における審議の時間等が無駄に割かれ,株主総会の意思決定機関としての機能が害されることや,株式会社における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加することが弊害として指摘されております。
裁判例では,一定の場合には株主提案権の行使が権利濫用に該当することが認められておりますが,実務上株主提案権が行使された場合に,株式会社がその株主提案権の行使が権利濫用に該当すると判断することは難しいと指摘されております。
そこで,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置といたしまして,第2で御議論いただきますように,株主が提案することができる議案の数を制限することや,株主による不適切な内容の議案の提案を制限することを提案しております。
まず,第2の「1株主が提案することができる議案の数の制限」におきまして,「取締役会設置会社においては,会社法第305条第1項の議案(役員及び会計監査人の選任又は解任に関する議案を除く。)の数は,[10]を超えることはできないものとすることで,どうか。」としております。10にブラケットを付けている趣旨といたしましては,制限される議案の数につきましては仮のものとして現段階では提案させていただくものでございます。
本文では,役員等の選任又は解任に関する議案については,議案要領通知請求権に基づき,株主が同一の株主総会に提案することができる議案の数の制限の例外にすることを提案しております。役員等の選解任議案は1候補1議案と解されていることから,役員等の員数に応じて株主が提案することができるようにしておくことが合理的であり,議案の数の制限の例外とする必要があるのではないかと考えております。
また,本文では,株主が同一の株主総会に提案することができる議案の数は10を超えることができないことを提案しております。この提案は,近時,提案数が多いとされている電力会社に対する運動型株主の提案に係る議案の数も多くて10程度にとどまっていることや,株主が同一の株主総会に議案を何十も提案する必要があることがまれであることなどを踏まえたものでございます。
本文の(注1)は,株主が提案することができる議案の数を制限する場合におきましても,株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を一つの議案として提案したときにおける定款変更議案の数え方についてどのように考えるかを問うものでございます。
定款変更議案の数え方につきましては,現在の株主総会の実務を前提といたしますと,関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案であっても,株主が当該議案を分けて提案しなければ,形式的には議案の数は一つであると考えられるように思われます。しかし,株主がこのような定款変更議案を提案した場合には,定款変更の内容の固まりごとに複数の議案が存在すると考えることもでき,そのように考える場合におきましては,定款変更の内容の固まりごとに複数の議案に数の制限が及ぶとも考えられます。
ただし,そのような取扱いが会社提案に係る定款変更議案に及ぼす影響など,現在の株主総会の実務に与える影響を踏まえまして,定款変更議案の数の考え方につきましては御議論いただければと考えております。
続きまして,第2の「2不適切な内容の提案の制限」では,「会社法第304条及び第305条の規定は,次のいずれかに該当する場合には,適用しないものとすることで,どうか。」としております。
①といたしまして,「株主が専ら人の名誉を侵害し,又は人を侮辱する目的で同法第304条の規定による議案の提出及び同法第305条の規定による請求(以下第2の2において『株主提案』という。)を行ったとき。」,②といたしまして,「株主が専ら人を困惑させる目的で株主提案を行ったとき。」,③といたしまして,ここでは二つの案を提案させていただいておりますが,「[株主が株主総会の適切な運営を妨げ,株主の共同の利益を害する目的で株主提案を行ったとき。/株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるとき。]」としております。
なお,補足説明で記載いたしましたとおり,議案の数の制限と同様の理由によりまして,議題提案権については不適切な内容の制限をしないこととしております。
続きまして,本文の①から③までの事由についてそれぞれ御説明させていただきます。本文の①は,株主が専ら人の名誉を侵害し,又は人を侮辱する目的で株主提案を行った場合に,当該株主提案を行うことができないものとすることを提案しております。株主が専ら人の名誉を侵害し,又は人を侮辱する目的で株主提案を行った場合には,正当な権利行使とは言えませんので,このような株主提案を制限することが考えられます。
また,本文②は,専ら人を困惑させる目的で株主提案を行った場合に,当該株主提案を行うことはできないものとすることを提案しております。人の名誉侵害や侮辱に至らない場合でありましても,株主が人を専ら困惑させる目的で株主提案を行ったときは,株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の制度の趣旨に反するのみならず,第1で申し上げましたように,株主総会における審議の時間等が無駄に割かれることになることなどもありますので,嫌がらせ的に株主提案権制度を利用することを防止するために,このような株主提案を制限することが考えられます。
最後の本文③は,(注)に記載いたしましたとおり,株主が株主総会の適切な運営を妨げ,株主の共同の利益を害する目的で株主提案を行った場合に,当該株主提案を行うことができないものとすること,又は株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがある場合に,当該株主提案を行うことはできないものとすることのいずれかを択一的に提案するものでございます。
株主提案権は,株主総会において行使されるものとして,株主総会の適切な運営との関係において制約を受けると考えられますことから,株主が株主総会の適切な運営を妨げる目的で株主提案を行った場合や,株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられるおそれがある場合などにつきましては,先ほど申し上げた株主提案権の制度の趣旨に反するだけではなく,株主総会の審議時間が無駄に割かれるなどの弊害も生ずることとなり,結果として株主の共同の利益が害されることになりますので,このような株主提案を制限することが考えられます。
本文③におきまして,株主の共同の利益を害する目的を要求する場合と当該目的を要求しない場合というように二つの案を提案させていただいている趣旨でございますが,株主が株主総会の適切な運営を妨げ,株主の共同の利益を害する目的で株主提案を行ったときという要件とした場合につきましては,株式会社側において株主の主観的意図の有無を判断し,立証することが困難であるという御指摘等も考えられることも踏まえまして,株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるという要件も併せて提案するものでございます。
○古本委員
まず,第1点目の「株主提案権の濫用的な行使の制限の要否」でございますけれども,前回も申し上げましたが,これを制限するための措置を整備することに賛成でございます。こういった権利が濫用的に行使されますと,会社においては,提案についての対応の検討,それから招集通知の印刷,郵送,こういったところで,無用の手間とコスト負担を余儀なくされます。また,総会当日におきましては,株主提案に関する趣旨の説明,会社からの反対の意思表明など,必要以上に時間を取られまして,ほかの株主の発言の機会を制約することになってしまいます。会社と株主との建設的な対話の場の一つとしての株主総会の運営に悪影響を及ぼすことにもなりますので,株主提案権の濫用的な行使,これは制限すべきであると考えてございます。
第2の「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置」のうちの議案の数の制限でございます。部会資料では役員選任議案等を除いて10個までとすることが提案されております。まず,この数としての10個についてですけれども,やはり実務の感覚からはいかにも多いということを申し上げざるを得ないと思います。
元々数の面のみで濫用か否かを判断するということは非常に難しいと考えてございまして,判例上も10個を超えれば濫用であるというふうになっているわけではないと理解してございます。つまり,10という数字が必ずしも濫用か否かのメルクマールになるというわけではないということからいたしますと,10という数字が座りが良いのかもしれませんが,ほかの数字を考えてもおかしくはないのではないかと思う次第でございます。
後で出てまいりますけれども,行使要件が現行法では非常に緩く設定されていると考えておるわけでございます。これとの絡みで,やはり一人10個までとなりますと,同じ株主グループでも二人,三人とこの要件を満たせば,別々の主張という形をとって20個,30個といった数の提案が可能になってしまうという問題がございます。取締役会という株主から信任を受けた機関,これが提案する議案の数が役員選任議案を除きますと,通常は,一つか二つということになっておりますので,これとの比較で見ましても1株主に必ず10個まで保障するというところまで本当に必要なのだろうかという思いがございます。
今申し上げましたように,濫用という観点からだけでは,数において上限設定をするのは難しいと思いますので,一人の株主が総会の時間を独占する,そういうことによる弊害の防止という視点も加味してこの上限の数を検討いただいてもよろしいのではないかと思います。
仮に10個の提案がなされたといたしまして,1議案当たり趣旨説明が5分,会社の反対意見表明,質疑で10分といたしますと,全部で150分掛かるということになります。総会実務では,総会の場では,できるだけ多くの株主に発言の機会を確保するという趣旨から,質問につきましても一人1問ですとか,3問までといったような制限を設ける会社が多いのではないかと思います。これと同じような考え方から,株主提案の上限個数につきましても一人につき1個ないし3個というような数にすることで十分ではないかと考えます。
次に,「役員選任議案を除いて」という部分ですけれども,部会資料に記載のとおりにいたしますと,仮に役員選任議案で10個提案したといたしましても,それは0個というふうにカウントされるということで,あと10個,結局,20個提案できるということになってしまいます。役員選任議案については,全くカウントしないというのはやはり妙な気がいたしますし,先ほど申し上げた総会時間の独占の回避という視点から見ますと,役員選任議案もほかの議案と同じことになりますので,合理的な制限が設けられてしかるべきではないかと思います。
それから,(注1)の記載になりますが,株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を一つの議案として提案したとき,この定款変更議案の数え方でございますけれども,資料の3ページ目の(補足説明)の2にありますように,内容の固まりごとに判断するということにつきましては,異論はございません。ただ,会社側が定款変更を提案するといったときの議案の数え方との関連もございますので,この定款変更議案につきましては業務執行の範囲に属する事項については提案できないとすることも併せて御検討いただきたいと考えてございます。
それから,第2のうちのもう一つの「不適切な内容の提案の制限」でございますけれども,これは,記載されている御提案に賛成でございます。③につきましては,先ほど御説明いただいたとおり,やはり株主の主観に属する提案の目的を立証するということは困難を伴うと思われますので,後の方の文言の,「株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるとき」とする方が望ましいと考えます。
○梅野幹事 少し違う観点からと申しますか,むしろ反対の方向から,まずは論点等を明確にするために発言させていただきます。
濫用的と言えるような事例をどう評価するか。株主提案権の行使を制限する立法事実として十分なのかというところについては,いろいろな意見があり得るだろうと思います。部会資料3の8ページにございますとおり,平成27年7月から28年6月総会において,約3,500社と言われる上場会社のうち,50の会社で提案権行使がされたというように理解しております。それにつきましては,今日配布された『資料版商事法務』の資料においても同様の記載がされているところかと思います。
このうち何社かについては,支配権争いに伴う株主からの提案権の行使であり,何社かについては,電力会社における運動型株主によるものであり,あるいはこれらの中には,定款変更等で不適切な内容と思われるものも含まれていると思います。このような事実をどう評価するかという問題だと思います。
特に数・議案数の観点から制限すべきかについては,より慎重に検討する必要があるのではないかと思います。私が何か事実を見落としているのがあれば御教示いただきたいと思いますが,2013年以降の商事法務の『株主総会白書』というのを見てきたのですけれども,提案数は会社ごとに数個あるいは10個以内にとどまっているというのが多いというように認識しています。部会資料3の2ページにも,電力会社に関する運動型株主の提案に係る議案の数であっても,多くても10個程度にとどまっているという指摘がございます。もちろん,過去に一人の株主から極めて多くの株主提案がなされたことがあったということは認識しております。そういった提案に対しては会社側が真摯に努力をされ,交渉されて議案数を減らすといったような試みもされてきたところだと思いますけれども,そういうある意味ごく一部というか少数の例をもってして株主提案権の行使という重要な権利について数を制限しなければいけないのかどうかという点については,慎重に検討する必要があるのではないかというように考えています。
また,提案権の行使によってどれだけ総会が長時間化しているのかということは必ずしも明らかではないように思います。総会の適正な時間をどれぐらいに想定するかということにもよるかと思いますけれども,提案権が行使された場合,当然,先ほど御指摘があったように,ある程度時間は掛かることになります。ただし,その会社が置かれている状況,あるいはその総会における審議の必要性とか株主の利益といった観点から,本当に許容できないほどの長時間を要しているのかという点については,個別の事案ごとに見ていく必要があるのではないかと思います。仮に提案権行使がない場合であっても,例えば,事業報告に対する質問とか,役員選任議案に対する質問ということで,同程度の時間を要するような場合もあるのではないかと考えています。
私は,株主総会の運営の実務に携わっておりますが,最近の総会は相当運営が洗練されてきていて,提案権の行使に伴い当然時間は取られますけれども,それでも株主からの発言は広くお受けして,なるべく対話型の総会を試みているという努力もされているというように認識しております。
また,本当に数の制限でうまくいくのかという点も,若干疑問があると思っています。部会資料3の3ページには定款変更の内容の固まりごとに複数の議案が存在すると考えることができるとありますが,その議案の固まりをどう分類するかというのは大変難しい問題のように思え,そう簡単に結論を出せないのではないかなというのが1点目。次に,株主ごとに10個なり何個なりと制限したところで,何人かの株主が提案されると結局同じような事態になってしまうのではないかというような懸念もあるのではないかと思います。そういった意味で,議案の数による制限については,慎重に御検討いただければと思う次第です。
定款変更議案等で不適切と思われる議案があるのは,確かであると思います。個人的には,これに対応するために法律上何らかの定めを設けることはあり得るだろうと思います。ただし,今回提案されている工夫されている三つの案,部会資料3の5頁に記載されている①から③までの案,そのうちの3番目の案については二通りの提案がされていますが,実際これが採用されたとしても,株主提案がなされた段階で,いずれにせよ会社としては,これらの要件に該当するか否かという非常に難しい判断を要求されることになるだろうと思います。
通常の会社としては取消事由にはならないとしても,損害賠償義務を負うということ自体避けたいという感覚だと思いますが,そういった状況において非常に難しい判断を強いられる。そうであったとしても,御提案いただいているような単なる一般条項ではない,何らかの形で具体化した条文があれば,それは実務上役に立つ面がある,取っ掛かりにできるというようにも思います。
○沖委員 ありがとうございます。
株主提案権の濫用的な行使の制限のための措置ですが,その必要性や要件の設定について立法事実の慎重な評価が必要なことは事実だと思います。そのための資料ですけれども,先ほど御指摘がありました,公益社団法人商事法務研究会の刊行する『資料版商事法務』,この毎年9月号に前年の7月から当年の6月総会までの具体的な株主提案権の事例が整理して毎年掲載されております。これを過去に遡って見ますと,正直,やはりその提案の中身は問題があるのではないかというものが多数見られます。そういったものをどのように評価するかということになってくると思います。
これを,株主総会の実質的な機能という観点から見てみますと,この企業法務の分野でも総会の運営というのはここ二,三十年で大きく変化した分野でありまして,私が弁護士登録した当時は株主の対応とか質問への回答というのは一種の有事対応であるかのような扱いでしたが,今では様変わりで,会社が株主の質問に対して丁寧に答えると。時間の許す限り答えると。そういった対応はされておりますので,本当に対話ということを考えるようになっているかと思います。
ただ,そうは言いましても,株主総会の審議時間というのは,おのずから合理的な制約はあるかと思うのですね。例えば,朝10時に始めますと,正午までが一つの勝負なわけです。そういった限られた中で公平に株主の質問を受けたり,株主総会の機能を全うするという観点も重要だと思いますので,そういった機能から問題になっている株主提案権の制限の必要性の有無というのを考える必要があるということであると理解しております。
この制限をする場合に,要件の設定については,部会資料では目的の観点と内容の観点からそれぞれ提案がされていると思います。そこで,株主名簿の閲覧請求等ですと,これは基本的に行為としては同じでありまして,目的の点から評価するほかはないわけです。ただ,株主提案権というのは正に提案の内容があるわけでして,その内容面からのやはり制限措置というのは検討する必要があると思います。
その際に,まず,総会の適切な運営を妨げ,株主共同の利益を著しく害するという要件が提案されていますが,この前半の総会の適切な運営を妨げるかどうか,これは株主総会の会議体としての目的との関係でどうかということだと思います。これと後半の株主共同の利益を著しく害するというのは,これは言わば,議案の内容そのものが問題になってくる。もし仮にその議案が可決されたときに会社にどういう影響を及ぼすかということだと思いますので,それぞれこの二つの要件は分けて,独自の要件として設定することが妥当ではないかと考えます。
あとは,『商事法務』の具体例を見ましても,問題と思われる議案のほとんど全てが定款を変更することによって代表取締役に特定の行為を義務付けるというそういう形態のものとなっておりますので,そういったものに問題が多いことは事実だと思います。ですから,この要件の設定に当たっては,そういった定款変更議案の濫用に対応できるものでないといけませんので,その意味でも株主共同の利益を著しく害するという要件は検討する必要があるのではないかと考えます。
○大竹委員
いろいろ議論を興味深く拝聴しておりましたが,裁判所の立場から少し観点を変えまして,株主提案権で苦労しているとすれば,株主提案権に基づく保全処分ということになりますので,少し私の部で担当させていただいた保全処分の実例を御紹介させていただきます。
事案は,株主である債権者が同社の代表執行役である債務者らに対して株主提案権に基づいて招集通知及び参考書類に議題,議案の要領及び提案の理由の記載を求める仮処分の申立てであります。当初は20個の議題,議案の要領及び理由の記載等,これは反対提案とか修正提案も含んでいたようですが,その20個の提案と,それから7個の理由の記載の補充を求めて申立てがされました。
申立ては4月30日でありました。株主総会の予定日は6月1日以降とされておりました。こういう保全処分の申立てを受けますと,裁判官としては,現行法の下では,審理の終期は印刷に付す日だなと,そうすると会社の方にいつ印刷に付しますかというのをお聞きして,それまでにできるだけ裁判所の方で判断をするようにしたいと考えるというのが多くの裁判官のマインドかと思います。
その事件でも,保全の決定は5月9日にされ,一部認容でしたので,保全異議の決定は5月15日にし,保全抗告がされまして,5月27日に,これはもう印刷に付された後ですけれども,高裁の方で抗告審の決定が出たということになります。一般論としては,この保全の審理,特に当初の審理では,掲載を求める議案が明らかに理由がないあるいは違法であるといったものは「もう取り下げたらどうですか」という勧告をする。それから,表現ぶりが不穏当ではあるが少し直せば掲載が認められそうなものは,申立人には「少し直したらどうですか」と言い,会社の方には「そう直すと言ってるから載せたらどうですか」というような和解のようなことをして,取下げをしてもらうというようなことをして,残ったものについては保全裁判所として判断をすることになりますが,時間との闘いということになり,裁判所としてはなかなか厳しい類型の事件ということになります。
その観点からは,提案できる議案の数に数の上で制限を設けていただくというのは,基本的には方向としては賛成であります。それが,10個がいいのかどうかというのはよくいろいろな御議論をいただいたらよろしいかと思います。
その点から裁判所からの質問ないし要望といたしましては,もう出ているところでありますけれども,1個の数の数え方ということになります。特に,実際問題としては株主が1個の議題あるいは議案の要領,提案理由の中に内容的に複数のものを盛り込んで1個の株主提案権の行使だと主張するというのは,容易に推察されるということになりますので,その点はよくこの場でいろいろ御議論いただいて,裁判所も勉強させていただきたいと思います。
それから,部会資料3の5頁に①,②,③と挙がっていることに関連して,二つほど質問ないし要望がございます。
一つ目は,この5ページの①の「株主が専ら人の名誉を侵害し」というこの類型においては,そういう目的で株主提案権を行使するという,①はそういう表記になっていますが,他方で,6ページの(補足説明)の2の第2段落の終わりのところは,「客観的にみて人の名誉を侵害し,又は人を侮辱する事実があるかどうかが考慮要素になる」という書き方になっています。この客観的にみて考慮要素になるというのがどういう御趣旨なのか。特に名誉毀損訴訟を担当している裁判官からは,これは真実性の証明を許すのか,真実だという主張が出てきたときにどう扱うことになるのかというのは疑問に感じるところですので,少し御議論をいただけましたら有り難いと存じます。
二つ目は,同じく5ページの①の類型に関連して,実際には取締役の解任事案などでこの手の取締役の不行状というのが出てきて,その中にいろいろ真実かどうか分からないけれども,その取締役の社会的評価を低下せしめるような事実が摘示されるということはままあるところかと思います。その場合のまとめ方は,そうであるので取締役の適格性には疑問がある。」という提案の理由になるわけなのでしょうけれども,そういう提案の理由になったときのこの種の取扱いと言いますか,それを「専ら人の名誉を侵害する目的」で株主提案権を行使したのか否かの中で判断するというのもなかなか厳しい感じがします。実際に審理を担当する者からはそのような疑問を持ちますので,またおいおい御議論いただけたらと存じます。
○前田委員 この濫用的な行使を制限するための措置として二つ挙がっているうち,重要なのは,後者の不適切な内容の提案の制限の方だと思います。ここは表現が非常に難しいところだとは思うのですけれども,今回せっかく明文規定を設けるのであれば,できることならもう権利濫用の一般規定に頼らずに会社法だけで完結できるように,濫用的な行使を全てカバーできるような形にするのが一番望ましいのではないかと思います。株主名簿の閲覧請求,会計帳簿の閲覧請求,あるいは説明義務の規定などは全てそのような自足的な規定になっているのだと思います。
今回の案は,③が広く使えそうな書き方になっており,これら①から③で権利濫用と考えられる場合を全てカバーできるのかもしれませんけれども,あるいはより一般的な包括規定になり得るようなもの,例えば,「株主であることと関連しない利益のために株主提案を行ったとき」というぐらいの,もう少し一般的,抽象的な場合を定めておくことも考えられるのではないかと思います。
○小林委員 どうもありがとうございます。
まず,株主が提案することができる議案の数の制限というところなのですが,先ほど実務的な感覚については古本委員の方からいろいろお話がありましたので,そちらと概ね同じなのですが,やはり株主総会の運営上,株主との対話,特に質疑等を一般的な意味で充実させるという意味では,余り議案の数が多過ぎると,その他の言わば,説明に時間が取りにくいということがあるのと,もう一つ,質疑はよろしいのですが,議案ということを考えますと,株主全体の利益に関わる熟度の高い提案であることが必要だと考えるとしますと,一般的に可決されるところまでいくかどうかは別としても,かなり多数の賛同が得られるような議案でないとおかしいのではないかなとそういう感覚がございます。
そうすると,一人の株主からそういう議案がたくさん幾つも出されるのかというと,ちょっとそういうレベルのものが10個も出てくるというのはどう考えてもそこまではいかないのではないかと。やはりそういう意味での熟度のレベルからいくと,よくて二,三個ぐらいではないかなという感じがしますので,先ほど古本委員から1個あるいはということなのですけれども,私どもの検討としては3個ぐらいが限界なのではないのだろうかという感覚を持っております。
それから,不適切な内容の提案の制限については,こういう文言を考えていただいて大変有り難いところでございますが,特に③の方はやはり客観的要素が盛り込まれている方がいいと思いますので,後段部分の方がいいのかなと思うのですが。
一つ,①,②につきまして,人の名誉を侵害し,人を侮辱すると書いてあるのですけれども,もう一つ人を困惑させるというところで,「専ら」という文言が付いているのです。これだと非常に厳しい基準かなと。そこをどういうふうに実際認定するのかということはあるのですけれども,やはり「主として」くらいの感じで,「専ら」ではなくて,もう少しレベル感を下げていただいてもいいのではないか。「主として人の名誉を侮辱し」とか,あるいは「主として人を困惑させる」というぐらいでもいいのではないか。この辺はちょっと技術的な問題はもちろんおありかもしれませんが,私どもの印象としてはそういう感じです。
もう一つ,③につきましても株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるというふうになっているのですけれども,これにつきましても「著しく」とまで言う必要があるのかどうか,ちょっとこの辺については検討いただきたい。私どもとしてはむしろ「著しく」はない方がいいと考えておりますが,御検討いただけると有り難いなというところでございます。
○加藤幹事 ありがとうございます。
2点意見を述べさせていただきます。
1点目は,株主が提案することができる議案の数の制限についてです。様々な御意見を伺
っておりまして,議案の数を制限する根拠を濫用の抑止という観点だけに求めるのか,それ
とも株主総会を通じて株主と会社の間で意味のある対話が行われることを確保及び促進する
という観点も考慮すべきとの立場が存在するように思います。
数の制限を,むしろ濫用というよりは,後者の言わば,株主総会で意味のある対話が行われることの確保及び促進という観点から位置付けるのであれば,10よりも少し下げてもいいかなという気がいたします。
それに対しまして,濫用のメルクマールとしての数ということになりますと,実は10個では少な過ぎるのではないかと思います。数のみに着目して株主提案権が濫用されているという状態は,もっと数が多い場合を指すように思います。
繰り返しになりますが,提案の数を制限する意味には二つあって,制度設計をする際に両者をどのように考慮するかによって,結論が異なる気がしております。
2点目は,不適切な内容の提案の制限に関してなのですが,具体的な提案として人の名誉であるとか人を困惑させるとかと非常に一般的な規定の仕方がなされています。これは会社を困惑させるとか,役員とかを困惑させるとかということだけでなくて,より一般的に会社とは一見関係がないような人を困惑させるような提案も拒否できるとか,そういう趣旨を含んでいるのかどうか確認させていただければと思います。
○竹林幹事 ここで専ら念頭に置いているのは会社,その関係者を困惑させるというようなことでございまして,具体的な提案が一般的に人を困惑させるようなものは会社も困惑させるのかどうか,ちょっとその辺り具体的なものをどのように念頭に置かれているのかにもよりますけれども,ここでは人と書いておりますが,会社,その関係者を困惑させるというようなことを念頭に置いて考えております。
○松井(智)幹事 手短になのですけれども。第2のところで,たくさんの株主が共同して提案をしてきたことが判別できないと結局減らないのではないかというお話があったのですけれども。会社の側から複数の株主に対して,あなたたちの議案は共同していますので,この点についてはまとめていただけないかという働きを行った上で,これをあえて拒否する場合には第3の権利がないという方に持っていくというやり方というのもあるのかなと思いました。
それとの関係なのですが,複数の株主が10個が10個重複しているわけではなくて,一部分が重複しているけれども,ほかの部分は独自であるというようなそういう提案の仕方をしてきたときに,併せて10個と数えるというこの数え方はどうするのだろうというのがちょっとよく分からなかったので,この点がもし御意見,想定があるようであれば伺いたいということであります。
○竹林幹事 松井幹事の今の御質問なのですが,一部重複というのは内容の一部重複でなくて,人の一部重複をおっしゃっているのでしょうか。
○松井(智)幹事 内容ですね。
○竹林幹事 内容の一部重複の問題は,恐らくそれはどこまでが独立した議案なのかということに関わってくるのだろうと思っております。どこまでが一つの議案かということを判断した上で重複があるということになってきた場合については,今でも同じ議案が重複しているようなときにどのように取り扱うのかということとの関係もありますが,その重複した議案を取り下げていただければ残りの議案の数で数えるということになってくるのだと思います。
関連ある議案についてどこまでを一つと見ていくのかということ自体に難しい問題があるのだろうとは思っております。
○藤田委員 私からは,一つ目の提案と二つ目の提案各々について簡単に申し上げたいと思います。
一つ目の提案で,議案の数の制限については,具体的な数字について,今日は意見は控えさせていただきたいと思います。ただ,具体的な数字はいくつにするにせよ,御指摘のありましたとおり,議案の数え方をある程度確立していかないと議案数の制限はおよそ機能しないルールになります。数え方を全部裁判所に丸投げするのも,ちょっと無責任かなという気もしますので,もし可能なら,何らかの形で議案の数え方に関する基本的な考え方を,最後条文になるかどうかはともかく,議論はしておいた方がいいとは思います。
余りいい例を思い付かないので突飛なことを言って申し訳ないのですが,国会法では憲法改正の発議の仕方について規定されていて,国会法68条の3では,「憲法改正原案の発議に当たつては,内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする」とあります。バラバラに全部1条ずつ国民投票にかけたりしますと,およそ両立しないような条文が残ってしまったりしかねない,例えば,両院制廃止する憲法改正をしたのに両院制を前提とした特定の条文が残ったりすると困る,だから関連する事項ごとに区分して賛否を問うということでしょう。論理的に関係があって,切り離して判断することが望ましくないようなものは,少なくとも一つと考えなければいけないという発想が表れている条文だと思います。今の国会法と同じ条文で規定しただけで,裁判所にとって有益な指針になるかどうかは分からないのですが,何もない白紙で委ねるのもどうかと思いますので,少なくとも一定の関連性のある議案を一つと数えるという発想を示すための何らかの規定を置くことができないかを議論することが望ましいと思います。
2番目の内容の制限の方ですけれども,この三つでおよそ足りるかという,前田委員の言われた問題もあるのですが,それとは別に③の内容について確認させていただければと思います。先ほど沖委員からの御意見もあった点です。私は,この条文――前の方でも後の方でもいいのですが――の読み方として,株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,その結果株主の共同の利益が著しく害される,つまり,運営が妨げられることによって共同の利益が害される場合を規定しているものと読みました。したがって,とんでもない内容の提案で,万一これが可決されたら会社が大変なことになるから共同の利益に反するとして株主提案を取り上げないという扱いは,少なくともこの条項によってはできないと読みました。内容が悪い提案を否決するのは,総会において株主が行うべきことで,万一このような内容が可決されたら困るという理由で提案それ自体を拒絶することはできない。しかし,そのような提案を取り上げること自身が株主総会の運営にとって望ましくないと言えるような場合,愉快犯的な提案でほかの議案に使うことができたはずの株主総会の時間を割いて議論するのが時間の無駄としかいいようがなく,株主共同の利益に反するから取り上げないというような扱いを認めるものだと読ませていただきました。それが正しいのかというのが確認したい点です。
もう1点は,「株主総会の適切な運営」という言葉で表現されている内容ですが,総会当日における議場での議事の進行のみならず,株主総会の準備も含め適切な運営と書かれていると私は読んだのですけれども,それでよろしいでしょうか。例えば,膨大な提案を直前になって送りつけて,会社側としておよそ対処もできず,株主総会の準備に支障を来すということは,やはり「適切な運営が妨げられる」という文言の中に含まれていると理解したのですが,それで正しいでしょうか。最後の2点は事務局への質問です。
○竹林幹事 記載の趣旨はいずれも藤田委員から御指摘いただいたとおりでございまして,株主共同の利益と書かせていただいておりますのは,株主総会の運営に関わるような利益であると考えております。また,株主総会の適切な運営でございますが,これは議事そのもののみではなく,会社側の事前の準備等のコストといったものも株主の共同の利益に当たってくるということを念頭に置いて考えております。
・第三回法制審議会
まず,第3の「1株主提案権の行使要件の見直しの要否」では,取締役会設置会社における株主の株主提案権の行使要件のうち,300個以上の議決権という要件を引き上げるべきかどうかについて,どのように考えるかとしております。
近時の株主提案権の濫用的な行使事例や株主提案権が導入された昭和56年当時と比較して投資単位が減少していることを踏まえ,株主提案権を行使することができる株主の範囲が広くなり得ることが懸念されており,株主提案権の行使要件のうち300個以上の議決権という要件を引き上げるべきであるという指摘がされております。
しかし,300個以上の議決権という要件を引き上げることは,株主が多数存在する大規模な会社における個人株主による株主提案権の行使を過度に制限してしまうことになるおそれがあると考えられます。
また,300個以上の議決権という要件が,近時の株主提案権の濫用的な行使事例を生じさせた原因であるかは明らかでないことから,当該要件を引き上げるべきか否かについて,株主提案権の濫用的な行使を制限する観点から検討することは相当でないとも考えられます。
さらに,株主提案の数や内容についての措置を整備することとした場合には,近時の株主提案権の濫用的な行使事例の問題は相当程度解消するとも考えられます。
そもそも我が国においては,株主提案権の行使を受けた上場会社の数は50社程度にとどまっており,依然としてその数は少ないという指摘もございます。
したがって,これらの事情も踏まえて,取締役会設置会社における株主の株主提案権の行使要件のうち,300個以上の議決権という要件を引き上げることが適切か否かについては慎重に御議論いただければと存じます。
第3の「2株主提案権の行使期限の前倒しの要否」では,株主総会の日の8週間前までという株主提案権の行使期限を前倒しすべきかどうかについてどのように考えるかとしております。
招集通知を法定の期限より早期に発送している上場会社等においては,招集通知を印刷し封入することなどに要する期間のみならず,株主提案権の行使を受けた後に,その適法性を検討し,議案を作成することなどに要する期間も考慮すると,株主提案権の行使の期限である株主総会の日の8週間前から招集通知の発送までの期間が短くなるので,株主提案権の行使の期限を前倒しすべきであるという指摘がされております。
しかし,例えば定時株主総会を6月より後に開催する場合には,計算書類等の作成や監査に必要な期間に時間的な余裕が生ずる結果として,株主提案権の行使の適法性の検討等に要する期間にも時間的な余裕が生ずることとなると考えられます。
また,株主提案の数や内容についての措置を整備することとした場合には,株主が提案することができる議案の数が制限されることなどから,株主提案権の行使の適法性の検討等に要する期間も短縮することができることとなると考えられます。
さらに,株主は株主提案権の行使時に株主総会の日を正確には知らないのが通常であるので,8週間前を更に前倒しした場合には,株主側に及ぶことになる不利益にも配慮する必要があると考えられます。
したがって,これらの事情も踏まえて,株主総会の日の8週間前までという株主提案権の行使期限を前倒しすることが適切か否かについては慎重に御議論いただければと存じます。事務当局からの説明は以上です。
○古本委員 まず,1番目の株主提案権の行使要件の見直しの要否なのですけれども,この行使要件のうちの300個以上の議決権,慎重な検討を要するということになっておりますけれども,やはり現実的に考えますと,これは株主提案権の濫用を抑止するという意味ではかなり大きな影響のある部分ではないかと思いますので,廃止又は引上げですね,基準の引上げを御検討いただきたいなと思います。
規模の大きな会社について考えますと,議決権300個といいますと,恐らく1%の更に100分の1にも満たないというようなレベルの数字になることもあると思います。金額的にも,時価で言いましてせいぜい数千万円程度というところではないかと思います。数千万円といいましても,株式を保有していなければいけないのは基準日だけでありますので,実務の感覚からしますとこれは現実的なハードルは相当に低い状態になっているのではないかと思います。
我々の問題意識といたしましては,株主提案権に基づいて提案をする株主は,提案の内容について何の責任も問われないということです。そういうものが出てきても,会社としてはコストを掛けて検討し,それを書類の中に入れていかないといけないと,こういう問題がありまして,そういうことが許されるのは,やはりある程度コストが自分の痛みとしても返ってくると,ちょっと考え方はそれで正しいかどうか分かりませんけれども,1%というのであれば何となく理解できるような気がするのですけれども,300個というのが一体どこから出てきたのだろうかと。それが,今現実に妥当なのかどうかということはもう一度前向きに御検討いただきたいなということであります。
第1回目にも申し上げたと思いますけれども,この300個という,こういう数字の規定の仕方というのはここだけだと思いますので,この在り方が妥当なのかどうなのかというところにやはり疑問を感じているということでございます。
それから,もう一つの行使期限の前倒しの要否のところでありますけれども,ここについても是非前向きに御検討いただきたいなと思います。現実問題といたしまして,期限の直前,この8週間前直前になって提案権を行使されますと,会社といたしましては総会の準備,これはスケジュール的に大変厳しいものになります。ですので,これが前倒しされますと,招集通知の早期開示にも対応しやすくなるという利点もございますので,この点もよろしく御検討いただきたいということでございます。
部会資料最後のページの中ほどといいますか,「しかし」のところにありますけれども,6月より遅く総会を開催すれば対応に支障がないのではないかといった趣旨の記載がございますけれども,7月とか8月とかに総会を開催するということにいたしますと,年度が始まってから4か月,5か月たっても役員の選任が行われないと,実務の執行体制が固まらないという問題が生じてしまいますので,7月総会といったものを前提にした議論は現実に合っていないのではないかというふうに思います。
それから,部会資料で,その次に,株主は総会期日を知り得ないので提案権の行使が一層困難になる,これは期間が延びれば延びるほど困難になるという趣旨だと思いますけれども,現実には8週間前であるのと10週間前ないし12週間前であるのと,どれほどの差があるのかなという気がいたします。
ということで,この提案権の行使期限の前倒しにつきましても,これは総会資料の電子化における書面送付の期限の設定とも絡みますので,そうした関連でも御検討いただけないかと思います。
○野村委員 今の御発言の中で300個の話がございましたが,私は今回の改正の趣旨は,濫用的な株主の提案権を防止することであって,現在提案されていることの中で濫用的ではないものについて,その提案自体を抑制するということが立法の目的ではないと思いますので,濫用的な事柄が数と内容によって十分確保できるのであれば,現在極めて少額な出資者の人たちがある一定数集まって合理的な提案をされていることを妨げるようなことはしない方がいいんではないかなと思います。
○小林委員 小林でございます。
先ほどの古本委員の議論とほぼ,理由というか実態は同じところでございますが,やはりこの300個要件については廃止ないし引上げを求めるものでございます。
濫用的な問題というところをもちろん前提にした議論に近いところではあるのですけれども,現実,株主総会の実務というところで見ますと,やはり非常に限られた時間でたくさんの株主からの質疑を受けたり,あるいは現実の合理的な提案についてはもちろん審議するということはあるわけなのですが,先ほどの古本委員からの御指摘もありましたように非常に低い議決権の比率の方が提案するということになりますと,実際に私どもとして重要なのは,これが一定数,相当数の賛成票を集められるかどうかというところが事前に全くスクリーニングなしに出てくるのは本当に良いのかというところがございます。そういう意味では,1%というのは一つの目安ではないかなと思います。
例えにはなりませんけれども,別に国会でもやはり例えば衆議院の20人とか参議院で10人とかいう法案の提案権の縛りがあって,これってよくよく考えても5%くらいですし,余り例えにはならないかもしれませんけれども,マンションの管理組合みたいにこういう全体の合同の話をするときでも,標準規約では議決権の2割とか,そういうふうな,5分の1とかいうふうな基準が付けられております。どちらかというともう率だけで切っていただかないと,やはり非常にいろいろな規模の会社があるということを考えると,定型的な処理にとってやはり支障が出ることも現実にはあるというふうな認識からいいますと,そういう意味での基準があって本来しかるべきなのではないかなという気がしております。
もう一つの提案権の行使については,元々基準日から3か月というところで考えたときに,株主提案がされて,実際最後の総会というよりは,それより前に議案を決める取締役会というのは招集通知の発送スケジュールとか考えるとして1か月半ぐらいまでに普通やらなければいけない。これは決算とか何とか全然関係なくて,早くに株主総会をやろうとすればそれを前倒しするということになると,実際には提案を受けてから取締役会までは検討して,それを決めるまでの日程はほとんどないという現実がございます。そうすると,内容がかなり熟度の高い内容であれば別ですけれども,非常に熟度の低いもの,ないしは数が多いものというような現実があると,そこのコミュニケーションを提案された株主とさせていただく必要があるという観点から見れば,やはり一定の時間が必要だということと,先ほど申し上げた現実に議案として取り上げるかどうかという取締役会までのスケジュールを考えると,やはり今の全体の3か月という範囲の中では8週前というのは非常に短いという感じでございまして,やはり10週なり12週というようなところまでという期限を入れていただきたいなと思います。
これと直接関係ないですけれども,実際にそれに当たる事務局の苦労というのは大変なものだというのはもう現実に提案された会社の方皆さんおっしゃっていますので,働き方改革ではございませんが,一定のやはり時間が欲しいというところは実務的な要請としてはございますので,そういう意味での丁寧な対応をさせていただくという意味で,お時間を頂戴できるような検討をしていただきたいというところでございます。
○沖委員 ありがとうございます。
株主提案権の行使期限の前倒しですけれども,私も1,2週間程度の行使期限の前倒しを検討する必要があるのではないかと考えております。まず,総会準備のスケジュールの観点から申しますと,招集通知が会日の2週間前という発送期限がありますが,これが1週間程度以上早期発送され,この期間は拡大している現状にあると思います。ほかに通知等の決定,印刷に必要な時間を考慮しますと,株主提案権の対応のための時間というのは相当に限られてくると思います。この間に,提案の適法性の法律的検討,取締役の対応,さらに,提案に問題がある場合の提案者との間での交渉等をこなすというのは非常に厳しいと考えます。
もし,会社が株主提案を不適法として拒絶した場合には,提案株主としては議案要領記載の仮処分命令等の申立てで対応することになりますが,過去の判例を見ますと,抗告審の判断が出る段階では招集通知の印刷が終了してしまっていると,そういう事例もありますので,司法審査の期間を十分に確保するという観点からも,可能であれば行使期限を前倒しすることが望ましいと考えます。
なお,部会資料の中で指摘されております7月総会の可能性ですが,これが実務上行われるようになったとしましても,監査法人の監査やこれに対応する社内の経理担当者の負担を軽減する効果はあるとは思いますが,総会担当者や役員の負担を果たしてどこまで軽減するのかという疑問は残ります。総会当月と前月の担当者の負担というのは相当のものですので,その中で株主提案に対し適切に対応するということはかなり厳しいので,その環境整備の必要性は高いと思います。
なお,株主総会資料の電子提供制度を採用した場合,アクセス通知としての招集通知の発送期限は1,2週間前倒しするということが検討されていると思います。これを実現する場合には,これに応じて株主総会の株主提案権の行使期限も1,2週間程度前倒しする必要があるのではないかと思います。
他方,提案株主の側から見ますと,定時総会の開催日というのは期末に固定された基準日や前年の総会日からある程度その時期の予測は可能ですので,1,2週間これが前倒しされたとしても対応は可能ではないかと思います。したがいまして,1,2週間程度の前倒しの方向で前向きに検討する必要があると思います。
○三瓶委員 議決権行使の実務の面から,行使する側からちょっとお話をします。
まず,この資料の中で年間50社程度にとどまっておりというのがあるのですが,確かに全体からすると数は少ないかもしれません。ただ,当該1社について議決権行使をするときに,時間配分的には株主提案の方に8割ぐらいの時間を掛けることになります。というのは,会社提案というのはある種毎年の繰り返しのものもあるし,大体予想の付く範囲なので,どういう方針で向き合うかというのは大体の方針があります。ただ,株主提案についてはどんなものが来るか分からないということと,根拠が余り定かではないというようなこともありますので,これは一つ一つかなりチェックするのに時間が掛かります。そういう意味で,たかが50件といっても,その50件に割く時間配分を皆さんが予想しているとすれば,実際のところは,意外に思われるところがあるのではないかなということ
です。
そして,そのとき何が起こるかというと,特に今,平均で外国人株主が30%ぐらいいるようですけれども,基本的に日本語ではなく英語で議決権行使をすることになります。発行会社側が英語で発信してくれていればまだいいのですけれども,そうではない場合に議決権行使助言会社等の英訳を待って,議決権行使の手続に入ります。そうするとスタートが1週間ぐらい遅れます。そこで,ただその議決権行使助言会社も大変ですから,株主提案について全訳はしません。非常に簡潔にエッセンスだけを訳します。
そうすると,真っ当な議決権行使助言会社が真っ当な英語でさらっとエッセンスだけ述べるととてもそれらしくなります。そうすると,それだけを見て判断するとなるほどなと株主提案に納得するのですけれども,原点に返ってどういう理由で提案しているのかを見ると,ここは判断が随分変わることがあります。というのは,そもそもほかの議案との関係で矛盾しているとか,又はその会社の機関設計上矛盾があるとかいうことがだんだん見えてきます。なので,現状では多くの株主提案を受けた会社に関しては,議決権行使は非常に危なっかしい状態で行われている可能性が否めないというのがあります。
だからといって,その制限をどういうふうにしたらいいかというのは非常に難しいのですけれども,結果的に十分に考慮していないような提案をしていることもよくあるので,そうした株主提案が300個という低いハードルでできてしまうのは適正なのだろうかとは思います。
あと,株主提案には定款変更議案というのが多いのですけれども,定款変更議案について,その中身が本来取締役会決議事項であるものとか,又は業務執行に関わる内容ではないかというような具体的で細かいことが随分あります。これを定款に全部入れるのかと。そうすると,経営判断が随分制限を加えられるので,ここについてはそもそも議案として適正かどうかという判断の根拠として,取締役会決定事項であるとか業務執行に関わることとかいうことは考慮する余地があるのではないかと思います。
○青委員 まず,提案権の行使要件の方でございますけれども,そちらに関しましては濫用防止という観点から別途数や内容の制限についての検討が進んでいるということからいけば,行使要件のところで個人の株主が建設的な提案を行う機会を減らすような方向性に進むことになってしまうというのは,基本的には避ける方が望ましいのではないかと思われます。
加えて,行使期限の前倒しという観点につきましても,こちらも濫用防止のための数の制限等々を考えていくということでいけば,現状との比較という意味でいけば,行使期限の前倒しというのは必ずしも行う必要はないのではないかと考える次第ではございます。
ただ一方で,招集通知あるいはアクセス通知をより早期に発送するということを求めていくということにして,招集通知の準備期間が必要だということであれば,むしろその情報を早く提供するという,そういうプラスの意味があるわけでございますので,そうしたことをセットでということであれば,一定の提案権の行使期限の前倒しは致し方ないというか,あり得る話かなというふうに思う次第であります。
○松井(智)幹事 すみません,今の点,ちょっと私,前回の資料を手元に持っておらず,どんなふうになっているのか,ちょっと事実関係の確認ができないのですけれども,Notice&Accessの制度を取り入れた場合に,招集通知が前倒しになるというところまでの御指摘は頂いたのですけれども,それと連動して取締役会における議案の確定の日程というのも1週間程度早まって,その検討の時間が1週間程度短縮されるということであれば確かに大変かなと思うのですけれども,その点がどうだったのかということがちょっと確認できなくて,すみません。
○沖委員 当然アクセス通知を発送するためには少なくとも議題を決めないといけないのですけれども,その際,株主提案が出されていれば,それを採用するかどうかで議題が追加になるわけですから,そのアクセス通知発送までには少なくとも当該株主提案の議題を受けるかどうかですね,これを決めないといけないということですので,その検討の期間がやはり1,2週間前倒し,余分に取る必要があるのではないかと,そういう意味で申し上げました。
○松井(智)幹事 すみません,役会の日程は変わらず,そこからの事務作業が短縮された結果,招集通知発送が早まるということであれば,恐らく議案確定までの時間のリードタイムというのは余り変わらないのかなというふうに思ったということです。
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「逆にどこを間違えたの?」というご質問に最初にお答えしておきます。
問4と問17です。
「予備試験ルートの受験生」が、短答式試験中どんなことを考えているのか、参考になれば幸いです。
以下、法令名を省略している部分は民法です。また説明上挙げている条数は全て記憶しているわけではありませんが、その内容はある程度記憶しています。
第1問
ア・誤 未成年者の法律行為の取消しは、5条1項2項3項の話。日常生活に関するものであるか否かは条文上何も書かれていないから取り消せない(∵取消の法的根拠なし)。成年被後見人に関する9条ただし書きのひっかけだ。
イ・正 成年被後見人の行為能力は、9条の話。同意の有無については条文上何も書かれていないから取消しの可否には影響しない(∵同意の有無は条文上取消しの要件になっていない)。
ウ・正 条文の問題だと察するがあまり自信がない。制限行為能力者を保護するという観点からすれば、保佐人の同意がある限り、取消しを認める必要がないと考える。同意があるにもかかわらずそれを認めることはかえって取引の安全を害する。同意があるのに取り消せるという成年被後見人の話は、取引の安全より制限行為能力者の保護を優先するという例外だと考える。よって上記のように結論づける(趣旨から考える)。
エ・正 これも条文上の根拠に自信がない。しかし、制限行為能力者保護という制度趣旨から考えれば、同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可がない法律行為を取り消せると考えるのは自然である。よって、上記の通り結論付ける。
オ・誤 取消権の消滅時効が166条167条とは別個に規定されていることは知っているが、この問題の正解については自信がない。もっとも、上記アイの肢は根拠をもって答えられているので、本肢を考える必要はない。
第2問
ア・正 財産管理人の権限は保存行為と目的物の性質を変えない範囲の利用改良行為に限られそれを超える時は家庭裁判所の許可が必要と覚えている(28条前段103条)。本肢は権限の範囲を超えると考えられるから、家庭裁判所の許可が必要。
イ・正 肢アの知識から結論を出せる。
ウ・正 弁済が上記の権限の範囲に入っているのか、自信がない。保留。
エ・誤 遺産分割協議が上記の権限の範囲に入っているか、自信がない。保留。
オ・誤 贈与は上記の権限に入っていないと考えられるから、裁判所の許可が必要だろうと判断。もっとも、上記アイの肢から答えを出しているので一応検討した程度。
第3問
ア・誤 顕名の要件を満たさない代理行為の効力の問題と理解。100条本文とただし書きの内容は記憶しているのでただし書きの規定から誤りと判断。
イ・正 双方代理の話だと理解し、条文を思い出そうと試みる。うろ覚えだったが、双方の許諾がある以上、双方代理により当事者に不当な不利益が生じるおそれは低いと考え、上記の通り結論づける。
ウ・誤 条文はうろ覚え。本人の指名に従う以上、代理人の復代理人選任に対する責任は軽減されると考える。もっとも、選任時に復代理人が不適任であることを知っていた場合、その責任を負わせるのが公平と考える(公平の原理から考える)。よって上記の通り結論付ける。→条文改正があったので注意!!
エ・正 法定代理人は任意代理人よりも容易に復代理人を選任できることを思い出す。任意代理人が法定条件によらず当事者の合意によって初めて選任されるのと対比してその根拠を理解している。もっとも、法定代理人の責任の範囲については自信がないため、保留。
オ・誤 無権代理人の履行又は損害賠償責任の話と理解(改正前117条1項)。もっとも、条文の定めに素直にあてはめられない(あてはまらない)と気づく。そもそも、無権代理人が追認を得られなかった場合、それにより取引の安全が害されること(=相手方保護)に配慮しなければならない(趣旨からの検討)。とすれば、代理人の主観を考慮する本肢はまるで見当違いの話と判断。上記の通り、結論付ける。
第4問→誤答(∵ウエオはわかったものの、アイで正答にたどり着けず)
ア・誤 自信がないので保留。
イ・正 自信がない。もっとも、条件未成就の間も目的物を処分することは可能であったという記憶から、正解と判断。
ウ・誤 条文を読んだ気がするものの自信がない。もっとも、不能の解除条件=条件成就の可能性ゼロ=無条件とおなじ、と考えて結論を出す。
エ・正 130条1項を知っていたため、即答。
オ・誤 随意条件(134条)の話と理解。もっとも、その効果がどうなるかについて、確信がない。条件成就が債務者の意思に委ねられているとすると、法律行為に伴う法的拘束力が実質的に認められないことになると考える。とすれば、法律行為が無効であることと同じと判断。
第5問
ア・正 自信はないため、保留。もっとも、イエの肢から容易に解答を導くことができたので問題なかった。
イ・誤 時効取得と時効完成後の第三者という有名論点を思い出す。
ウ・正 共同相続人の時効援用権の範囲について、自信がないため保留。
エ・誤 自己の所有物でも時効取得を認めた判例を162条1項「他人の物」という文言とともに思い出す。
オ・正 187条1項の定めを思い出すとともに占有の善意無過失について判断時期の定めがないことも思い出す。判例は最初の占有者の占有開始時と判断していたことを記憶していたとともに、善意無過失の判断時期は基本的に占有開始時点という印象もあった。
第6問
ア・正 177条の話。A→B→Cと物権変動が生じた場合、AとCは対抗関係に立たないと即座に判断。
イ・誤 177条の話。DがBとの関係で177条の「第三者」にあたるか否かを考える。Dは遺贈の当事者(A)でなく、またその包括承継人(C)でもないから、これにあたると判断。
ウ・正 遺言をしないで死亡という文言に反応、法定相続の話だと理解。またこれも177条の第三者の話と理解。DはCとの関係で「第三者」にあたるか。Bが相続放棄したという問題設定から、その法的効果を思い出す(939条)。そこからBが相続開始時点に遡り甲土地について無権利であったと考える。とすれば、Bの持分相当を差し押さえたとするDも無権利になるから、Dは「第三者」にあたらない(∵登記の欠缺を主張する正当な利益をもたない)。よって上記の通り結論。
エ・正 解除後の第三者の論点と理解し、慎重に解答。
オ・誤 177条の第三者の話と理解し、即答。
第7問
ア・誤 どこかで見たことがあると思いつつも、自信を持って解答できない。道路運送車両法上の登録を抹消されている以上、普通の動産と同じと考えて上記の通り結論。結果的にエオがわかったことにより事なきを得る。
イ・誤 192条に基づく即時取得の要件を冷静に思い出す。「宝石だから・・・」などと余計な迷いを生まないように気を付ける。「取引行為・・・」という条文上の文言及び取引の安全という条文の趣旨から相続を通じた即時取得はあり得ないと判断。
ウ・正 贈与が「取引行為」に含まれるかどうか悩む。保留。
エ・正 競売は「取引行為」に含まれると判断。また194条が競売による即時取得を前提とする規定を定めていることも根拠とした。
オ・正 質権を即時取得できるのかが問題と判断。この点は、192条が「その動産について行使する権利」と規定している旨を普段から意識していたため、所有権以外の物権も即時取得可能と判断。
第8問
ア・正 収益権限のない者が勝手に苗を生育した場合の土地所有者と苗を生育した者との公平から考える。条文上土地とその定着物は一体のもの(不動産)として扱われること、そして苗がその土地に生育していることから考えて、その苗の所有権が土地の所有者に属すると考える。もっとも、ウオから解答を導いている。
イ・誤 事前知識なし。保留。
ウ・誤 立木に関するAC間の対抗問題と考えて結論付ける。
エ・誤 甲土地についての登記の効力がいかなる範囲に及ぶか考える。不動産は土地及びその定着物であるとの規定(86条1項)から考え、甲土地の登記がその土地上の立木にも及んでいるとして結論付ける。
オ・正 246条1項ただし書きを思い出して解答。
第9問
ア・誤 条文うろ覚え。保留。アウ又はウエのいずれの解答にするか迷った末、消去法によりアウを誤りと判断。
イ・正 条文知識なし。もっとも、土地所有権保護という観点からすれば本肢のような権利を認めない理由がないと考え結論付ける。
ウ・誤 233条。「枝は切れぬが根は切れる」と覚えていたため、即答。
エ・正 条文知識なし。しかし、おそらくそうなのだろうと考える。境界線上にあり、どちらのものとも判別しがたいからである。
オ・正 条文知識なし。しかし、このような規定があっても不都合がないと考えた。
第10問
ア・誤 「持分の処分は自由である」という理解に基づいて解答。
イ・正 当該請求ができるという知識あり。また当該請求によるBCに対する特段の不利益が認められないため、問題ないとも考えた。
ウ・誤 「持分の処分は自由である」
エ・誤 自信なく保留。
オ・正 254条より。また管理に関する債務を持分権者が負担するのはごく自然だとも考えた。ただし、アウが誤りと気づいた時点で解答可能であったためそれほど長く考えていない。
第11問
ア・誤 298条2項より。
イ・正 条文うろ覚え。もっとも、この肢のように定めても特段不都合がないと考え、正答とする。
ウ・正 条文うろ覚え。自信がないため保留。
エ・正 不動産質権者は質物を使用収益できるため、原則として利息請求権がない(356条358条)ことまではわかっていたが、それ以外の点は無知(359条については無知)。保留。
オ・誤 条文知識なし。全く分からなかった。イオのいずれが誤か迷ったものの、イが確からしいと判断した。
第12問
ア・正 302条より。また留置権は留置的効力を生じさせるものである点からも目的物の占有喪失による権利消滅の効果が生じることを覚えていた。
イ・誤 留置権の成立要件から考えた(295条1項ただし書き)。
ウ・正 301条より。条文を知っていたし、留置権が担保物権であること、担保権者の保護と担保権設定者(債務者)の保護との調和という観点から本肢は相当と判断(対立利益から考える)。
エ・誤 本肢の話は過去問で何度も出題されていたので即答。条文数はうろ覚えだったものの、条文(民執法195条)の存在も既知。
オ・誤 判例の存在について既知。留置権を行使することによる留置権者の利益と非債務者の不利益との調和の観点も意識(対立利益から考える)。
第13問
ア・誤 自信がなく保留。
イ・正 350条より留置権の規定(297条1項)が準用されていることから考えた。
ウ・誤 転質に質権設定者の承諾という要件はなかったと記憶していた。そのため、上記のように判断した。
エ・誤 おそらく誤であろうと思ったものの、自信を持って答えられず。もっとも、イウの肢について自信があったため問題なし。
オ・正 債権質の話と考え、即答。
第14問
ア・正 372条より304条が準用されている点から考えた。また抵当権は目的物の交換価値を把握するものであるという基本知識を意識して、目的物滅失に伴う損害賠償請求権にも物上代位が可能と判断した。
イ・正 自信がないため保留。もっとも、244条(動産の付合)と同様に考えるのではないかと推測。
ウ・誤 370条の不可一体物と言えるか検討。過去問からこの論点の知識は既知。
エ・誤 自信がないため保留。もっとも、アウについて知識があったため問題なし。
オ・正 将来債権について抵当権を設定することも可能という判例知識あり。
第15問
ア・誤 371条より。また不履行がないにもかかわらず抵当権の効力を第三者に対する賃料債権に及ばせることは、抵当権者を過度に利するとともに第三者に対する過度な負担にもなりうると考え、誤りと判断。
イ・正 370条より。また不動産とは86条1項。
ウ・誤 370条より。
エ・誤 370条より。判例について不知だが、条文の文言に照らして考えた。
オ・正 370条より。不可一体物とは何か、という定義を意識して考えた。
第16問
ア・正 過去問で出題された論点ではと考えた。もっとも正確な理論的根拠をもって答えられず、保留。
イ・誤 受戻権の放棄を認めることは譲渡担保権に基づく履行強制の実効性を減ずることになるから許されないと理解していた。
ウ・誤 自信がないため保留。もっともアオの知識があったため問題なし。
エ・正 自信がないため保留。もっとも弁済期後の目的物譲渡・差押には受戻しを主張できなかったのではないかとの記憶がうっすらあった。
オ・正 集合物譲渡担保権の話と理解し、解答。
第17問→誤答(∵ウオのいずれも正確に答えられなかったため)
ア・正 446条2項3項より。
イ・誤 保証人の要件(450条1項)については知っていたものの、債権者による指名の場合(同条3項)の規定については自信を持って答えられなかった。保留。
ウ・誤 自信がないため保留。
エ・誤 保証債務の付従性から検討。448条から保証債務が主たる債務より重くなることはない点は意識していた。
オ・正 不知のため保留。
第18問
ア・正 債権譲渡の予約と債権譲渡そのものとは別個の存在であると理解していた。そのため、債権譲渡の予約に対する債務者の承諾があっても予約完結による債権譲渡の効力にはその効力が及ばないと判断。
イ・誤 自信がないものの、契約締結時において目的債権の発生が確実に期待されるものとまでは言われていなかったのではないかと考えた。問題文に惑わされず、将来債権に関する債権譲渡も有効という基本知識を意識。
ウ・正 判例知識より。
エ・誤 自信がなく保留。もっとも、他の肢から解答可能だったため問題なし。
第19問
ア・誤 問題文に惑わされそうになるものの、免除の要件(519条)は債権者の意思表示のみで足りたと考えた。
イ・正 債務者の意思に反する保証契約を前提とした規定(462条2項)があるため即答。また第三者弁済(474条2項)の存在も思い出し、ひっかけかと推測する。
ウ・誤 474条2項より解答。
エ・正 条文(514条)はうろ覚え。もっとも「債務を免れることをよしとしない債務者意思の尊重」という視点から解答(他の論点でも共通する基本原理から考える)。
オ・誤 自信がないものの、代物弁済の要件(482条)から考えて可能と判断。
第20問
ア・誤 484条1項「債権者の現住所」との文言から判断。
イ・正 持参債務と取立債務の履行方法の違いを意識しつつ、取立債務の履行要件を思い出しながら解答。特定物であるため取り立てて分離の必要はないと判断
ウ・正 492条493条を意識。「賃料の受領を拒絶」「口頭の提供をしても賃料の弁済を受領しない意思が明確」といった問題文に反応して解答
エ・誤 不知のため保留。もっともアウから解答できたので問題なし。
オ・正 不知のため保留。「債務の本旨に従って」(493条)という文言は意識して考えた。
第21問
ア・誤 更改の定義から判断。
イ・正 更改の対抗要件について不知のため保留。
ウ・正 自信を持って解答できなかったため保留。
エ・誤 条文(518条)に関しては不知。もっとも契約当事者が変更されるという更改の性質から考え、第三者の承諾なく当該抵当権を更改後の債務に移転させることは当事者意思に反すると考え判断(当事者意思から考える(基本的な視点から考える))。
オ・正 所有権をめぐる対抗関係と賃借権をめぐる法律関係とをそれぞれ意識して判断。また判例に関してはうろ覚えだったが、所有権の移転とともに貸主の地位も移転するという理解を頼りに解答。
第22問
ア・誤 533条648条2項より。有償の委任契約というワードから委任契約は特約がない限り無報酬が原則であることも思い出す。
イ・正 533条545条1項より。売買契約を解除した場合の法律関係はもはや「双務契約の・・・」(533条)とは言い難いから、533条準用のケースと考える。
ウ・誤 造作買取代金債権に留置権が成立しないとする判例は知っていたが、同時履行の抗弁権については自信がなかったので保留。
エ・正 取消しに伴う原状回復義務は同時履行の関係にあると記憶していた。なお、令和元年司法試験当時は判例知識の問題だったものの、現在は改正民法121条の2で対応。
オ・誤 明文はないものの敷金は賃料債権等貸主の債権の担保に供されるものであることから建物明渡義務が先履行の関係にあると記憶していた。
第23問
ア・誤 自信がなく保留。
イ・誤 588条より(「約したとき・・・」)。
ウ・誤 書面ですることが要件とされているのは保証契約のみと記憶していた。
エ・誤 寄託契約には有償無償があると記憶していた(659条参照)。
オ・正 667条2項より。
第24問
ア・正 債務者有責の後発的履行不能(=債務不履行)として判断。なお、改正民法では削除されているので注意。
イ・正 瑕疵担保責任(改正前566条570条)より。なお、改正民法の規定に注意。
ウ・誤 解除前の第三者の問題か?と思いつつも、アイから正答は5(ウオが誤り)ということを結論づけられたので深入りせず。
エ・正 533条より。
オ・誤 期日・期間の問題はケアレスミスもしやすいので基本的に深入りしないようにします。今回は上記の通りアイから正答が分かったので問題なし。
第25問
ア・誤 賃貸借契約の成立要件に書面によることは含まれていない。なお、問題文の導入部分で「建物所有を目的としない土地の賃貸借」とされている点から借地借家法の適用はなく民法のみを考えればいいのかと一安心。
イ・正 改正前民法604条1項。ここで上記の導入部分が意味を持っていることに気付く。なお、改正後604条1項に注意。
ウ・正 自信がないので保留。
エ・正 619条1項より。推定だったか擬制だったか・・・と戸惑うものの、とりあえず結論を出す。
オ・誤 自信がないので保留。もっとも、本問はアイを読んだところで正答を選べたので問題なし。
第26問
ア・正 改正前634条1項ただし書きより。なお、改正民法の規定には注意。
イ・正 改正前634条2項より。
ウ・誤 改正前636条ただし書きより。
エ・誤 改正前637条1項より。
オ・正 改正前640条より。なお、改正民法では削除。
第27問
ア・正 708条には「不法な原因のために給付された」と定められている点を意識。教皇法規違反が当該要件に該当しない可能性は認められると考えた。判例も一応既知。
イ・誤 既登記建物についての「給付」(708条)の成否の問題と理解。判例はうろ覚えだったため、保留。
ウ・正 自信がなく保留。もっとも、アエの正誤を判断できたため問題なし。
エ・誤 判例を意識して解答。
オ・誤 判例はうろ覚えだったが、本肢が誤りであることは判断できた。
第28問
ア・正 717条3項より。
イ・誤 樹木は土地工作物(717条1項)にあたると判断するところからスタート(717条2項は覚えておらず)。所有者は無過失責任(同ただし書き)との理解から解答。
ウ・正 自信がないため一旦保留。オも不明だったため、アウ(1)かアオ(5)かのいずれを選択するかで迷う。もっとも、土地工作物責任の趣旨は危険責任にあるところ、瑕疵が生じている甲建物を現在管理しているのがAがその賠償責任を負うと考えても趣旨に反しないと考え結論を下す。
エ・誤 「占有者」(717条1項)には間接占有者も含むと理解していた。
オ・誤 占有者が無資力の場合について条文の定めがないことから悩む。ウオのいずれがより正しいと言いうるか考えた末、オは誤りと選択。
第29問
ア・誤 過失相殺の前提となる被害者の能力について判例知識あり。
イ・誤 被害者側の過失の論点の問題と理解し解答。内縁の夫という点で多少迷ったが、被害者側の過失の定義に従って考え結論を出した。
ウ・正 共同不法行為(719条)の「連帯」という文言の意義を意識。不真正連帯債務を意味すると理解していた。
エ・正 疾患が「過失」(722条2項)にあたらないことを前提にその類推適用の可能性を認めた判例を意識。
オ・誤 判例を意識。生命保険契約に基づく給付金はあくまで当該契約に基づくものであって、不法行為自体から得られた利益ではないと理解していた。
第30問
ア・正 738条より。成年被後見人の意思尊重。
イ・正 742条1号で婚姻意思が必要なことを意識しつつ、その内容について判例の記憶をたどる。
ウ・誤 自信がなく保留。アオより正答を選べたので問題なし。
エ・正 女性が解体していなかった場合の定めに自信がなく保留。
オ・誤 出生した子の嫡出推定が認められるかという問題と理解。婚姻中の懐胎が嫡出子の要件(772条1項)であること、強迫を理由とする婚姻取消は将来効であると考えられること(748条1項)(この定めには自信がなかった)から、嫡出性が認められると判断。
第31問
ア・正 自信がなかったため保留。
イ・正 825条より。共同親権という原則を前提としつつも相手方保護も考慮すると理解(対立利益から考える)。
ウ・誤 本肢のような条文の定めはないと記憶していたため、誤りと判断。条文に定めがないものは原則として認められないと考えることにしている。
エ・正 770条1項より。同条は裁判上の離婚を認めることができる事由を列挙したに過ぎないと理解していた(∵「・・・離婚の訴えを提起することができる。」)。
オ・誤 761条ただし書きは覚えていなかったが、761条の趣旨から考え本肢は誤りであると判断した。
第32問
ア・誤 自信がないため保留。
イ・誤 766条3項より。そもそも一切の変更が許されないとすることは不都合な場合が生じるため妥当でないと判断。
ウ・正 791条より。子の氏と親の氏が異なる場合の氏の変更は原則裁判所の許可とその旨の届け出が必要、婚姻中だけ例外と記憶していた。
エ・正 819条3項より。
オ・誤 そのように定めた条文はなかったと思いつつ、自信がないため保留。
第33問
ア・正 自信がないため保留。イが分かったため問題なし。
イ・誤 特別養子縁組は配偶者のある者が夫婦共同縁組をしなければならない(817条の3)と記憶していた。
ウ・正 自信がなかったが、養子の利益という視点から正しいと判断。
エ・正 特別養子縁組により実方との親族関係が終了する(817条の9)。
オ・正 自信がなかったが、実方との関係が終了する特別養子縁組の法効果から考えれば養親による離縁請求は養子の利益を著しく害する恐れがあり認められないのではないかと考えた(制度趣旨から考える)。
第34問
ア・正 自信がないため保留。もっともイエの正誤判断から正答を選ぶことができた。
イ・誤 条文にそのような定めはなかったと記憶していたため、アイのいずれが誤りか悩んだ末、こちらを誤と選択した。
ウ・誤 898条899条より。金銭債務は可分債務になると記憶していた。
エ・正 判例知識あり。896条の「一切の権利義務」(同本文)「一身に専属した」(ただし書き)という文言は意識した。
オ・誤 911条より。
第35問
ア・正 自信はなかったが、相続回復請求権が認められた趣旨及びその消滅時効が認められている趣旨に遡って判断した。
イ・誤 遺言による遺産分割方法の指定に関する判例知識より。
ウ・誤 5年を超えない範囲で遺産分割を禁ずることができると記憶していた(908条)。
エ・誤 相続開始後から遺産分割までの間に相続不動産から生ずる賃料債権は相続財産に含まれないから遺産分割の影響を受けないと自分なりに考えて記憶していた。
オ・正 910条より。
第36問
ア・誤 111条1項2号より。代理関係=委任関係=当事者間の信頼関係という理解を前提にして同法律関係の当事者死亡は代理権の消滅自由と覚えていた。
イ・誤 返還時期がある場合の寄託契約の帰趨の問題として条文知識を思い出した。返還時期がある場合、原則として期限前の返還はできない(663条2項)ことから結論を出した。
ウ・正 改正前599条(改正民法597条3項)より。
エ・正 679条1号より。あまり自信がなかったが、イオの肢を迷わず切れたため問題なし。
オ・誤 994条1項より。
第37問
ア・誤 受領遅滞の効力について検討。改正民法では413条により遅滞責任の内容が明文化。
イ・正 自信がないため保留。アエの肢より正答を選べたので問題なし。
ウ・誤 400条より検討。改正民法によりより内容が明確になった。
エ・正 918条1項より。
オ・誤 自信がないため保留。
【感想】
ほぼ全問過去問を通じて得た知識から何とか正答を選ぶことができる問題だったと思う。本試験前の過去問演習中も過去問の知識のみから正答を導くに足りる肢の正誤判断が可能だと感じていた。やはり過去問を通じた知識の蓄積・条文を正確に理解しておくことが大事だと思った。初見の問題で目先を変えられたりしても、過去問で得た知識を信じて解答していければ、大幅な失点はあり得ないと思う。間違えた問題もよくよく考えれば正答にたどり着けそうな気もするのでその点は少々もったいないと思う。
少ない知識で効率よく点数を取るためには、「法学基礎力」を身につけることが不可欠です。
↓↓↓
【予備試験受験生向け】また短答で落ちた 短答4回不合格からの逆転
過去問では点数が取れるのに本番で合格点を超えない
予備試験で不合格になって悲しい思いをしたことはありますか?
1回2回の不合格は、まだまだ序の口です。
下記の結果を見てください。
2013年(大学4年時)→不合格(短答落ち)
2014年(社会人1年目)→不合格(論文落ち)
2015年(社会人2年目)→不合格(短答落ち)
2016年(社会人3年目)→不合格(短答落ち)
2017年(社会人4年目)→不合格(短答落ち)
2018年(社会人5年目)→予備試験最終合格
筆者の戦績です。
散々でしたね。
危なかったですね。
よく諦めずに頑張りましたね。
才能ないですね。
当時の自分に行ってあげたいと思います。
短答の不合格は計4回です。
もう目も当てられない状況です。
もちろん勉強は頑張ってしていましたし、過去問演習もしていました。
過去問を解いていれば、コンスタントに80%以上の正答率になっていました。
「今年こそは大丈夫・・・」
と自分に言い聞かせて受験してまた不合格になる辛さ。
出口は一向に見えてきませんでした。
「過去問さえやっておけば短答は受かる」
という合格者の助言に従っていましたが、どうしても結果が付いてこない。
私はほぼほぼ諦めモードに入っていました。
「最後の悪あがき」として取り組んだこと
予備試験という最終合格率約3%の難関試験に挑んでいた私は、自分が大事なことを忘れていることに気付いてませんでした。
それは・・・。
「周りと比べて地頭がよくない」
ことです。
ご存じの通り、予備試験や司法試験を受験する人たちは、試験強者ばかりです。
「基礎さえ身につけば合格」とか、「計画的に勉強すれば合格」とか、言われることもありますが、私からすれば埋めようのない「才能の差」がありました。
そんな当たり前のことを忘れてしまっていたのですね。
それに気づいてしまった私は、いよいよ諦めモード全開です。
ほんの少しだけ「あと一回だけチャレンジしてみようかな・・・」という気持ちを残しつつ。
なぜあと一回だけチャレンジしてみようと思ったのかはわかりません。
短答すら受かっていないわけですから、論文に合格するという自信もさらさらありませんでした。
ただ、何となく「あと一回だけ」と思っていました。
その最後の1回にかけるにあたって自分の中で決めたことがありました。
「基礎基本にこだわる」ということです。
予備試験合格に向けてそれが大事だと強く思っていたわけではありません。
その大事さを認識するのは、のちの話です。
そんな決意を持ったのは、自分にできることはこれくらいだろうと思ったからです。
もはや「悪あがき」だと思っているので、落ちてもともとです。
出来ることをやって落ちるなら仕方がない、と腹をくくって、最後の望みをかけたわけです。
逆転劇、始まる。
「基礎基本にこだわる」という決意の下、参加したゼミがありました。
そこで学んだことは、ただ一つ「条文を大切にする」ということです。
当たり前すぎて笑われるかもしれませんが、自分にできることはこの程度です。
たくさんの判例を覚えることや難しい法律論を理解することは、無理です(と思っていました)。
ゼミを終えたのが、秋頃です。
そこから、自分なりに過去問を解きなおしてみたのですが。
日々理解が深まっていくのを感じました。
教科書の記述、問題集の解説が「読み込める」ようになりました。
「わからない」を自分で解消していけるようになりました。
自分で考えられるようになったので法律学習が「楽しく」なりました。
全ては「条文」という重要なピースに気付いたからです。
法律学において「条文」は基本中の基本です。
そんなことはわかっていたつもりだったのですが、それが「つもり」だったことは、短答4回不合格の成績が物語っています。
予備試験でつまづいている人は、ぜひ参考にして頂ければと思います。
同じ目に遭わせないように、私自身も努力していきたいと思います。
(逆転劇の立役者となった「法学の基礎基本」を詰め込みました)
(ABprojectの徹底丁寧な個別指導はこちらから)
ご存じとは思いますが・・・ 行政書士試験、3か月では受かりませんよ
行政書士試験の合格率はなぜこんなに低いのか?
平成21年度 9.1%
平成22年度 6.6%
平成23年度 8.1%
平成24年度 9.2%
平成25年度 10.1%
平成26年度 8.3%
平成27年度 13.1%
平成28年度 10.0%
平成29年度 15.7%
平成30年度 12.7%
令和元年度 11.5%
行政書士試験の合格率です。
間違いなく難関試験です。
これを「120日」「3ヶ月」で合格を目指す云々という広告を見かけますが。
まさか「自分でも行けるかも・・・」とか思ったりしていませんよね?
ある条件を満たしていない限り、「絶対に」無理です。
合格可能性ゼロ%です。
一定期間の講座を受ければ、行政書士試験の合格に必要な知識に「触れる」ことはできますが、それと「合格」という結果とは全く結びつきません。
知識を得て合格にたどり着くためには、ある程度の「理解」が不可欠だからです。
3ヶ月合格の実例
行政書士試験の短期合格は不可能だというのは、上記の通りです。
しかし、一定の条件を満たしていれば、別です。
1つはシンプルに「頭がいい人」です。
教科書を読めば暗記も理解も同時に出来てしまう人いますよね?
同じ時間を費やしてても、成果がまるで違う人いますよね?
「勉強の仕方」による差は、確かにあると思います。
しかし、「勉強の仕方」が合否の差に与える影響は、短期合格という観点で言うと微々たるものでしょう。
本当に「頭のいい人」はいます。
皆さんご存じの通りです。
もう1つの条件は、「法学の基礎基本」が身についているです(ある程度)。
もっと具体的に言えば、「条文を意識して考えることが出来る」かどうかがポイントです。
「講座を受けてもそれが頭に残らない」
というお悩みはよく聞きます。
その原因は、知識を整理するための骨組みを意識していないからです。
法律論は、全て条文に起源があります。
つまり、全ての法律論は、条文を基に整理することが出来ます。
「条文から考えることが出来る」人は、学んだ知識を整理して暗記・理解することが出来ます。
これが出来るなら、3ヶ月後の試験までに必要な知識を頭の中に詰め込むことが出来る可能性が出てきます。
可能性なので絶対とは言えません。
でも、私自身は、法学部4年時、試験日の約3か月前(受験申込期間中)に受験を思い立ち、その年に合格までたどり着けました。
その時の点数は「182点」。
ギリギリ合格です。
本当に十分な準備が出来ないまま受験してしまったことが分かると思います。
でも、そんなリアルな体験からやっぱり初学者が3ヶ月は絶対無理だろうと改めて思うわけです。
(こんな成功体験をしてみたいあなたにはこちらをおススメ!)