予備試験に合格した私だから伝えられる!法学の基礎基本!

予備試験・司法試験の合格を目指していた私が法学の基礎基本とは何か…ということに悩み苦しんだ結果、たどり着いた答えを書き綴っていきたいと思います!難しい論点を解説しようとはしていません。法律の資格試験に合格するのに必要なことは法学の基礎基本を見極め、理解することだけです!

会社法改正!! 法制審議会の議事録読んでみた・・・。

株主提案権の濫用防止が主な目的でした・・・

 

ABprojectは、ココナラというサイトを中心に法律学習系のサービスを提供しています。

今回掲載する法制審議会の議事録(株主提案権の議論に関するものを抜粋)もサービス提供のご依頼をきっかけに読んでみたというものです(そのご依頼は、頓挫してしまいましたが・・・。ドタキャンは本当にやめてください!!)。

 

株主提案権の濫用を防止するために旧会社法303条~305条の内容が議論されています。

改正の経緯を知ると、単に文面を知っているだけよりも深く条文の意味を理解できます。

個人的な感覚としては「立体的に」見えるようになる気がします。

 

これは、大事なポイントです。

例えば、論証を張り付けているだけ(論点主義)の答案と問題の個別事情に合わせた具体的な検討ができている答案かは、「立体的に」見えているかどうかの差だと感じます。

「多角的に」見えているという表現もできるかもしれません。

いずれにしても、一度読んでみてください。

条文の一字一句に「こだわり」があることがわかると思います!!

 

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・第一回法制審議会

 

(P1)

また近年株主提案権が濫用的に行使される事例が見られるようになったことを受けて株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備を検討すべきではないかという指摘もあります

 

(P5)

「2 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備では株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置を整備することを検討してはどうかとさせていただいております

 近年一人の株主により膨大な数の議案が提案されるなど株主提案権が濫用的に行使されこれにより株主総会における審議の時間等が無駄に割かれ株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり株式会社における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加することが弊害として指摘されているところでございますこのような濫用的な行使に対しては一般条項である権利濫用の禁止では対処することが難しいという指摘もあるところです株主が提案することができる議案の数を制限することや株主による不適切な内容の議案の提案を制限することを検討するのがよいのではないかと思われます

 

(P9:小林委員

株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置ということでございますがこちらについては基本的には賛成でございますがいろいろな現実的な株主総会等での運営上言わば他の一般的な株主から見ましてむしろ建設的な対話が阻害されるような提案については一定の制限が必要であると考えさせていただいておりますそのほか濫用的な場面とは必ずしも言えないかもしれませんけれども単元株の考え方が大分変わってきているということもありますので株主提案権の行使要件についてあるいは株主提案を行った方とのいわゆるコミュニケーションの問題というようなこともございますのでこの行使期限の考え方等についても併せて検討していただけると大変有り難いと考えているところでございます行使期限の話は濫用のケースと区別する

 

(P16:古本委員

点目の株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備でございますけれども株主提案権が濫用的に行使されますと先ほど御紹介があったとおり本来株主総会で議論するのにふさわしくないような議案につきましても会社の負担で総会資料に掲載せざるを得なくなるという問題がございますまた総会の場でもそのための時間を確保しなければならなくなりますし提案が多数なされた場合はほかの株主との対話の機会が阻害されるということにもなりかねません以上のことから株主提案権の濫用的な行使を制限するということに賛成でございます

 資料には提案個数の制限と不適切な内容の提案の制限について書かれておりますが提案権の行使要件と行使期限の前倒しについても御検討いただきたいと思っております行使要件のうち,300個の議決権という絶対数基準が現行法ではございますけれどもこれは会社の規模発行株式数と関連しない基準でありましてこれを維持することには疑問を感じているということでございます

 

(P23:柳澤委員

点目ですが,「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備ということについて簡単にコメントさせていただきますこちらに関しましては権利濫用になるのか否か判断するのに容易でない面があるというように捉えております基本的に提案できる議案の数ですとか内容について制限を導入することが望ましいと考えております近年の行使事例におきましては些末な内容を含む議案や一人の株主が膨大な数の議案を提案するような状況が見受けられますけれども実務上会社側で株主提案権の濫用的な行使になるのか否か判断するのは難しいのではないかと認識していますそのためこうした状況に何らかの歯止めがかからない限り株主総会参考書類等の印刷や発送費用の増大といったコスト面での負荷はもとよりほかの株主の実質的な議論の時間が少なくなるといった意思決定機能上の弊害というリスクも生じ得る可能性があると思います

 仮に制限措置を検討するとした場合ですが実現可能性が高いと考えられるものとしては部会資料にも記載がありますとおり提案できる議案の数を制限することや不適切な内容の提案を制限することが挙げられるかと思います今後の個別議論に際しましては具体的に議案数の制限を幾つまでとするのがよいのかまた不適切な内容に対応するために株主提案の拒絶事由を設けるべきか否か設けるとした場合にどのような文言となるのかこういった点も課題だと認識しております

 

・第二回法制審議会

まず株主提案権の濫用的な行使の制限の要否におきましては株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置を整備するものとすることでどうかとしております株主提案権の制度の趣旨は株主の疎外感を払拭し経営者と株主とのコミュニケーションを良くしようとするものですが近時株式会社を困惑させる目的で議案が提案されたり一人の株主により膨大な数の議案が提案されるなど株主提案権が濫用的に行使される事例が見られます株主提案権が濫用的に行使されることにより株主総会における審議の時間等が無駄に割かれ株主総会の意思決定機関としての機能が害されることや株式会社における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加することが弊害として指摘されております

 判例では一定の場合には株主提案権の行使が権利濫用に該当することが認められておりますが実務上株主提案権が行使された場合に株式会社がその株主提案権の行使が権利濫用に該当すると判断することは難しいと指摘されております

 そこで株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置といたしましてで御議論いただきますように株主が提案することができる議案の数を制限することや株主による不適切な内容の議案の提案を制限することを提案しております

 まず株主が提案することができる議案の数の制限におきまして,「取締役会設置会社においては会社法305条第項の議案役員及び会計監査人の選任又は解任に関する議案を除く。)の数は,[10]を超えることはできないものとすることでどうか。」としております。10にブラケットを付けている趣旨といたしましては制限される議案の数につきましては仮のものとして現段階では提案させていただくものでございます

 本文では役員等の選任又は解任に関する議案については議案要領通知請求権に基づき株主が同一の株主総会に提案することができる議案の数の制限の例外にすることを提案しております役員等の選解任議案は候補議案と解されていることから役員等の員数に応じて株主が提案することができるようにしておくことが合理的であり議案の数の制限の例外とする必要があるのではないかと考えております

 また本文では株主が同一の株主総会に提案することができる議案の数は10を超えることができないことを提案しておりますこの提案は近時提案数が多いとされている電力会社に対する運動型株主の提案に係る議案の数も多くて10程度にとどまっていることや株主が同一の株主総会に議案を何十も提案する必要があることがまれであることなどを踏まえたものでございます

 本文の1)株主が提案することができる議案の数を制限する場合におきましても株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を一つの議案として提案したときにおける定款変更議案の数え方についてどのように考えるかを問うものでございます

 定款変更議案の数え方につきましては現在の株主総会の実務を前提といたしますと関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案であっても株主が当該議案を分けて提案しなければ形式的には議案の数は一つであると考えられるように思われますしかし株主がこのような定款変更議案を提案した場合には定款変更の内容の固まりごとに複数の議案が存在すると考えることもできそのように考える場合におきましては定款変更の内容の固まりごとに複数の議案に数の制限が及ぶとも考えられます

 ただしそのような取扱いが会社提案に係る定款変更議案に及ぼす影響など現在の株主総会の実務に与える影響を踏まえまして定款変更議案の数の考え方につきましては御議論いただければと考えております

 続きまして不適切な内容の提案の制限では,「会社法304条及び第305条の規定は次のいずれかに該当する場合には適用しないものとすることでどうかとしております

 ①といたしまして,「株主が専ら人の名誉を侵害し又は人を侮辱する目的で同法第304条の規定による議案の提出及び同法第305条の規定による請求以下第において株主提案という。)を行ったとき。」,②といたしまして,「株主が専ら人を困惑させる目的で株主提案を行ったとき。」,③といたしましてここでは二つの案を提案させていただいておりますが,「[株主が株主総会の適切な運営を妨げ株主の共同の利益を害する目的で株主提案を行ったとき。/株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるとき。]」としております

 なお補足説明で記載いたしましたとおり議案の数の制限と同様の理由によりまして議題提案権については不適切な内容の制限をしないこととしております

 続きまして本文のからまでの事由についてそれぞれ御説明させていただきます本文の株主が専ら人の名誉を侵害し又は人を侮辱する目的で株主提案を行った場合に当該株主提案を行うことができないものとすることを提案しております株主が専ら人の名誉を侵害し又は人を侮辱する目的で株主提案を行った場合には正当な権利行使とは言えませんのでこのような株主提案を制限することが考えられます

 また本文専ら人を困惑させる目的で株主提案を行った場合に当該株主提案を行うことはできないものとすることを提案しております人の名誉侵害や侮辱に至らない場合でありましても株主が人を専ら困惑させる目的で株主提案を行ったときは株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の制度の趣旨に反するのみならずで申し上げましたように株主総会における審議の時間等が無駄に割かれることになることなどもありますので嫌がらせ的に株主提案権制度を利用することを防止するためにこのような株主提案を制限することが考えられます

 最後の本文,(に記載いたしましたとおり株主が株主総会の適切な運営を妨げ株主の共同の利益を害する目的で株主提案を行った場合に当該株主提案を行うことができないものとすること又は株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ株主の共同の利益が著しく害されるおそれがある場合に当該株主提案を行うことはできないものとすることのいずれかを択一的に提案するものでございます

 株主提案権は株主総会において行使されるものとして株主総会の適切な運営との関係において制約を受けると考えられますことから株主が株主総会の適切な運営を妨げる目的で株主提案を行った場合や株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられるおそれがある場合などにつきましては先ほど申し上げた株主提案権の制度の趣旨に反するだけではなく株主総会の審議時間が無駄に割かれるなどの弊害も生ずることとなり結果として株主の共同の利益が害されることになりますのでこのような株主提案を制限することが考えられます

 本文におきまして株主の共同の利益を害する目的を要求する場合と当該目的を要求しない場合というように二つの案を提案させていただいている趣旨でございますが株主が株主総会の適切な運営を妨げ株主の共同の利益を害する目的で株主提案を行ったときという要件とした場合につきましては株式会社側において株主の主観的意図の有無を判断し立証することが困難であるという御指摘等も考えられることも踏まえまして株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるという要件も併せて提案するものでございます

 

古本委員

 まず点目の株主提案権の濫用的な行使の制限の要否でございますけれども前回も申し上げましたがこれを制限するための措置を整備することに賛成でございますこういった権利が濫用的に行使されますと会社においては提案についての対応の検討それから招集通知の印刷郵送こういったところで無用の手間とコスト負担を余儀なくされますまた総会当日におきましては株主提案に関する趣旨の説明会社からの反対の意思表明など必要以上に時間を取られましてほかの株主の発言の機会を制約することになってしまいます会社と株主との建設的な対話の場の一つとしての株主総会の運営に悪影響を及ぼすことにもなりますので株主提案権の濫用的な行使これは制限すべきであると考えてございます

 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置のうちの議案の数の制限でございます部会資料では役員選任議案等を除いて10個までとすることが提案されておりますまずこの数としての10個についてですけれどもやはり実務の感覚からはいかにも多いということを申し上げざるを得ないと思います

 数の面のみで濫用か否かを判断するということは非常に難しいと考えてございまして判例上も10個を超えれば濫用であるというふうになっているわけではないと理解してございますつまり10という数字が必ずしも濫用か否かのメルクマールになるというわけではないということからいたしますと,10という数字が座りが良いのかもしれませんがほかの数字を考えてもおかしくはないのではないかと思う次第でございます

 後で出てまいりますけれども行使要件が現行法では非常に緩く設定されていると考えておるわけでございますこれとの絡みでやはり一人10個までとなりますと同じ株主グループでも二人三人とこの要件を満たせばの主張という形をとって20,30個といった数の提案が可能になってしまうという問題がございます取締役会という株主から信任を受けた機関これが提案する議案の数が役員選任議案を除きますと通常は一つか二つということになっておりますのでこれとの比較で見ましても株主に必ず10個まで保障するというところまで本当に必要なのだろうかという思いがございます

 今申し上げましたように濫用という観点からだけでは数において上限設定をするのは難しいと思いますので一人の株主が総会の時間を独占するそういうことによる弊害の防止という視点も加味してこの上限の数を検討いただいてもよろしいのではないかと思います

 仮に10個の提案がなされたといたしまして,1議案当たり趣旨説明が会社の反対意見表明質疑で10分といたしますと全部で150分掛かるということになります総会実務では総会の場ではできるだけ多くの株主に発言の機会を確保するという趣旨から質問につきましても一人問ですとか,3問までといったような制限を設ける会社が多いのではないかと思いますこれと同じような考え方から株主提案の上限個数につきましても一人につき個ないし個というような数にすることで十分ではないかと考えます

 次に役員選任議案を除いてという部分ですけれども部会資料に記載のとおりにいたしますと仮に役員選任議案で10個提案したといたしましてもそれは個というふうにカウントされるということであと10結局,20個提案できるということになってしまいます役員選任議案については全くカウントしないというのはやはり妙な気がいたします先ほど申し上げた総会時間の独占の回避という視点から見ますと役員選任議案もほかの議案と同じことになりますので合理的な制限が設けられてしかるべきではないかと思います

 それから,(1)の記載になりますが株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を一つの議案として提案したときこの定款変更議案の数え方でございますけれども資料のページ目の補足説明にありますように内容の固まりごとに判断するということにつきましては異論はございませんただ会社側が定款変更を提案するといったときの議案の数え方との関連もございますのでこの定款変更議案につきましては業務執行の範囲に属する事項については提案できないとすることも併せて御検討いただきたいと考えてございます

 それからのうちのもう一つの不適切な内容の提案の制限でございますけれどもこれは記載されている御提案に賛成でございます。③につきましては先ほど御説明いただいたとおりやはり株主の主観に属する提案の目的を立証するということは困難を伴うと思われますので後の方の文言の,「株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるときとする方が望ましいと考えます

梅野幹事 少し違う観点からと申しますかむしろ反対の方向からまずは論点等を明確にするために発言させていただきます

 濫用的と言えるような事例をどう評価するか株主提案権の行使を制限する立法事実として十分なのかというところについてはいろいろな意見があり得るだろうと思います部会資料ページにございますとおり平成27月から28月総会において3,500社と言われる上場会社のうち,50の会社で提案権行使がされたというように理解しておりますそれにつきましては今日配布された資料版商事法務の資料においても同様の記載がされているところかと思います

 このうち何社かについては支配権争いに伴う株主からの提案権の行使であり何社かについては電力会社における運動型株主によるものでありあるいはこれらの中には定款変更等で不適切な内容と思われるものも含まれていると思いますこのような事実をどう評価するかという問題だと思います

 特に数・議案数の観点から制限すべきかについてはより慎重に検討する必要があるのではないかと思います私が何か事実を見落としているのがあれば御教示いただきたいと思いますが,2013年以降の商事法務の株主総会白書というのを見てきたのですけれども提案数は会社ごとに数個あるいは10個以内にとどまっているというのが多いというように認識しています部会資料ページにも電力会社に関する運動型株主の提案に係る議案の数であっても多くても10個程度にとどまっているという指摘がございますもちろん過去に一人の株主から極めて多くの株主提案がなされたことがあったということは認識しておりますそういった提案に対しては会社側が真摯に努力をされ交渉されて議案数を減らすといったような試みもされてきたところだと思いますけれどもそういうある意味ごく一部というか少数の例をもってして株主提案権の行使という重要な権利について数を制限しなければいけないのかどうかという点については慎重に検討する必要があるのではないかというように考えています

 また提案権の行使によってどれだけ総会が長時間化しているのかということは必ずしも明らかではないように思います総会の適正な時間をどれぐらいに想定するかということにもよるかと思いますけれども提案権が行使された場合当然先ほど御指摘があったようにある程度時間は掛かることになりますただしその会社が置かれている状況あるいはその総会における審議の必要性とか株主の利益といった観点から本当に許容できないほどの長時間を要しているのかという点については個別の事案ごとに見ていく必要があるのではないかと思います仮に提案権行使がない場合であっても例えば事業報告に対する質問とか役員選任議案に対する質問ということで同程度の時間を要するような場合もあるのではないかと考えています

 私は株主総会の運営の実務に携わっておりますが最近の総会は相当運営が洗練されてきていて提案権の行使に伴い当然時間は取られますけれどもそれでも株主からの発言は広くお受けしてなるべく対話型の総会を試みているという努力もされているというように認識しております

 また本当に数の制限でうまくいくのかという点も若干疑問があると思っています部会資料ページには定款変更の内容の固まりごとに複数の議案が存在すると考えることができるとありますがその議案の固まりをどう分類するかというのは大変難しい問題のように思えそう簡単に結論を出せないのではないかなというのが点目次に株主ごとに10個なり何個なりと制限したところで何人かの株主が提案されると結局同じような事態になってしまうのではないかというような懸念もあるのではないかと思いますそういった意味で議案の数による制限については慎重に御検討いただければと思う次第です

 定款変更議案等で不適切と思われる議案があるのは確かであると思います個人的にはこれに対応するために法律上何らかの定めを設けることはあり得るだろうと思いますただし今回提案されている工夫されている三つの案部会資料頁に記載されているからまでの案そのうちの番目の案については二通りの提案がされていますが実際これが採用されたとしても株主提案がなされた段階でいずれにせよ会社としてはこれらの要件に該当するか否かという非常に難しい判断を要求されることになるだろうと思います

通常の会社としては取消事由にはならないとしても損害賠償義務を負うということ自体避けたいという感覚だと思いますがそういった状況において非常に難しい判断を強いられるそうであったとしても御提案いただいているような単なる一般条項ではない何らかの形で具体化した条文があればそれは実務上役に立つ面がある取っ掛かりにできるというようにも思います

 

沖委員 ありがとうございます

 株主提案権の濫用的な行使の制限のための措置ですがその必要性や要件の設定について立法事実の慎重な評価が必要なことは事実だと思いますそのための資料ですけれども先ほど御指摘がありました公益社団法人商事法務研究会の刊行する資料版商事法務』,この毎年月号に前年の月から当年の月総会までの具体的な株主提案権の事例が整理して毎年掲載されておりますこれを過去に遡って見ますと正直やはりその提案の中身は問題があるのではないかというものが多数見られますそういったものをどのように評価するかということになってくると思います

 これを株主総会の実質的な機能という観点から見てみますとこの企業法務の分野でも総会の運営というのはここ二三十年で大きく変化した分野でありまして私が弁護士登録した当時は株主の対応とか質問への回答というのは一種の有事対応であるかのような扱いでしたが今では様変わりで会社が株主の質問に対して丁寧に答えると時間の許す限り答えるとそういった対応はされておりますので本当に対話ということを考えるようになっているかと思います

 ただそうは言いましても株主総会の審議時間というのはおのずから合理的な制約はあるかと思うのですね例えば10時に始めますと正午までが一つの勝負なわけですそういった限られた中で公平に株主の質問を受けたり株主総会の機能を全うするという観点も重要だと思いますのでそういった機能から問題になっている株主提案権の制限の必要性の有無というのを考える必要があるということであると理解しております

 この制限をする場合に要件の設定については部会資料では目的の観点と内容の観点からそれぞれ提案がされていると思いますそこで株主名簿の閲覧請求等ですとこれは基本的に行為としては同じでありまして目的の点から評価するほかはないわけですただ株主提案権というのは正に提案の内容があるわけでしてその内容面からのやはり制限措置というのは検討する必要があると思います

 その際にまず総会の適切な運営を妨げ株主共同の利益を著しく害するという要件が提案されていますがこの前半の総会の適切な運営を妨げるかどうかこれは株主総会の会議体としての目的との関係でどうかということだと思いますこれと後半の株主共同の利益を著しく害するというのはこれは言わば議案の内容そのものが問題になってくるもし仮にその議案が可決されたときに会社にどういう影響を及ぼすかということだと思いますのでそれぞれこの二つの要件は分けて独自の要件として設定することが妥当ではないかと考えます

 あとは,『商事法務の具体例を見ましても問題と思われる議案のほとんど全てが定款を変更することによって代表取締役に特定の行為を義務付けるというそういう形態のものとなっておりますのでそういったものに問題が多いことは事実だと思いますですからこの要件の設定に当たってはそういった定款変更議案の濫用に対応できるものでないといけませんのでその意味でも株主共同の利益を著しく害するという要件は検討する必要があるのではないかと考えます

 

大竹委員

 いろいろ議論を興味深く拝聴しておりましたが裁判所の立場から少し観点を変えまして株主提案権で苦労しているとすれば株主提案権に基づく保全処分ということになりますので少し私の部で担当させていただいた保全処分の実例を御紹介させていただきます

 事案は株主である債権者が同社の代表執行役である債務者らに対して株主提案権に基づいて招集通知及び参考書類に議題議案の要領及び提案の理由の記載を求める仮処分の申立てであります当初は20個の議題議案の要領及び理由の記載等これは反対提案とか修正提案も含んでいたようですがその20個の提案とそれから個の理由の記載の補充を求めて申立てがされました

 申立ては30日でありました株主総会の予定日は日以降とされておりましたこういう保全処分の申立てを受けますと裁判官としては現行法の下では審理の終期は印刷に付す日だなとそうすると会社の方にいつ印刷に付しますかというのをお聞きしてそれまでにできるだけ裁判所の方で判断をするようにしたいと考えるというのが多くの裁判官のマインドかと思います

 その事件でも保全の決定は日にされ一部認容でしたので保全異議の決定は15日にし保全抗告がされまして,527日にこれはもう印刷に付された後ですけれども高裁の方で抗告審の決定が出たということになります一般論としてはこの保全の審理特に当初の審理では掲載を求める議案が明らかに理由がないあるいは違法であるといったものはもう取り下げたらどうですかという勧告をするそれから表現ぶりが不穏当ではあるが少し直せば掲載が認められそうなものは申立人には少し直したらどうですかと言い会社の方にはそう直すと言ってるから載せたらどうですかというような和解のようなことをして取下げをしてもらうというようなことをして残ったものについては保全裁判所として判断をすることになりますが時間との闘いということになり裁判所としてはなかなか厳しい類型の事件ということになります

 その観点からは提案できる議案の数に数の上で制限を設けていただくというのは基本的には方向としては賛成でありますそれが,10個がいいのかどうかというのはよくいろいろな御議論をいただいたらよろしいかと思います

 その点から裁判所からの質問ないし要望といたしましてはもう出ているところでありますけれども個の数の数え方ということになります特に実際問題としては株主が個の議題あるいは議案の要領提案理由の中に内容的に複数のものを盛り込んで個の株主提案権の行使だと主張するというのは容易に推察されるということになりますのでその点はよくこの場でいろいろ御議論いただいて裁判所も勉強させていただきたいと思います

 それから部会資料頁に①,②,③と挙がっていることに関連して二つほど質問ないし要望がございます

 一つ目はこのページの株主が専ら人の名誉を侵害しというこの類型においてはそういう目的で株主提案権を行使するという,①はそういう表記になっていますが他方で,6ページの補足説明の第段落の終わりのところは,「客観的にみて人の名誉を侵害し又は人を侮辱する事実があるかどうかが考慮要素になるという書き方になっていますこの客観的にみて考慮要素になるというのがどういう御趣旨なのか特に名誉毀損訴訟を担当している裁判官からはこれは真実性の証明を許すのか真実だという主張が出てきたときにどう扱うことになるのかというのは疑問に感じるところですので少し御議論をいただけましたら有り難いと存じます

 二つ目は同じくページのの類型に関連して実際には取締役の解任事案などでこの手の取締役の不行状というのが出てきてその中にいろいろ真実かどうか分からないけれどもその取締役の社会的評価を低下せしめるような事実が摘示されるということはままあるところかと思いますその場合のまとめ方はそうであるので取締役の適格性には疑問がある。」という提案の理由になるわけなのでしょうけれどもそういう提案の理由になったときのこの種の取扱いと言いますかそれを専ら人の名誉を侵害する目的で株主提案権を行使したのか否かの中で判断するというのもなかなか厳しい感じがします実際に審理を担当する者からはそのような疑問を持ちますのでまたおいおい御議論いただけたらと存じます

 

前田委員 この濫用的な行使を制限するための措置として二つ挙がっているうち重要なのは後者の不適切な内容の提案の制限の方だと思いますここは表現が非常に難しいところだとは思うのですけれども今回せっかく明文規定を設けるのであればできることならもう権利濫用の一般規定に頼らずに会社法だけで完結できるように濫用的な行使を全てカバーできるような形にするのが一番望ましいのではないかと思います株主名簿の閲覧請求会計帳簿の閲覧請求あるいは説明義務の規定などは全てそのような自足的な規定になっているのだと思います

 今回の案は,③が広く使えそうな書き方になっておりこれらからで権利濫用と考えられる場合を全てカバーできるのかもしれませんけれどもあるいはより一般的な包括規定になり得るようなもの例えば,「株主であることと関連しない利益のために株主提案を行ったときというぐらいのもう少し一般的抽象的な場合を定めておくことも考えられるのではないかと思います

 

小林委員 どうもありがとうございます

 まず株主が提案することができる議案の数の制限というところなのですが先ほど実務的な感覚については古本委員の方からいろいろお話がありましたのでそちらと概ね同じなのですがやはり株主総会の運営上株主との対話特に質疑等を一般的な意味で充実させるという意味では余り議案の数が多過ぎるとその他の言わば説明に時間が取りにくいということがあるのともう一つ質疑はよろしいのですが議案ということを考えますと株主全体の利益に関わる熟度の高い提案であることが必要だと考えるとしますと一般的に可決されるところまでいくかどうかは別としてもかなり多数の賛同が得られるような議案でないとおかしいのではないかなとそういう感覚がございます

 そうすると一人の株主からそういう議案がたくさん幾つも出されるのかというとちょっとそういうレベルのものが10個も出てくるというのはどう考えてもそこまではいかないのではないかとやはりそういう意味での熟度のレベルからいくとよくて二三個ぐらいではないかなという感じがしますので先ほど古本委員から個あるいはということなのですけれども私どもの検討としては個ぐらいが限界なのではないのだろうかという感覚を持っております

 それから不適切な内容の提案の制限についてはこういう文言を考えていただいて大変有り難いところでございますが特にの方はやはり客観的要素が盛り込まれている方がいいと思いますので後段部分の方がいいのかなと思うのですが

 一つ,①,②につきまして人の名誉を侵害し人を侮辱すると書いてあるのですけれどももう一つ人を困惑させるというところで,「専らという文言が付いているのですこれだと非常に厳しい基準かなとそこをどういうふうに実際認定するのかということはあるのですけれどもやはり主としてくらいの感じで,「専らではなくてもう少しレベル感を下げていただいてもいいのではないか。「主として人の名誉を侮辱しとかあるいは主として人を困惑させるというぐらいでもいいのではないかこの辺はちょっと技術的な問題はもちろんおありかもしれませんが私どもの印象としてはそういう感じです

 もう一つ,③につきましても株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるというふうになっているのですけれどもこれにつきましても著しくとまで言う必要があるのかどうかちょっとこの辺については検討いただきたい私どもとしてはむしろ著しくはない方がいいと考えておりますが御検討いただけると有り難いなというところでございます

 

加藤幹事 ありがとうございます

 2点意見を述べさせていただきます

 1点目は株主が提案することができる議案の数の制限についてですな御意見を伺

っておりまして議案の数を制限する根拠を濫用の抑止という観点だけに求めるのかそれ

とも株主総会を通じて株主と会社の間で意味のある対話が行われることを確保及び促進する

という観点も考慮すべきとの立場が存在するように思います

 数の制限をむしろ濫用というよりは後者の言わば株主総会で意味のある対話が行われることの確保及び促進という観点から位置付けるのであれば,10よりも少し下げてもいいかなという気がいたします

 それに対しまして濫用のメルクマールとしての数ということになりますと実は10個では少な過ぎるのではないかと思います数のみに着目して株主提案権が濫用されているという状態はもっと数が多い場合を指すように思います

 繰り返しになりますが提案の数を制限する意味には二つあって制度設計をする際に両者をどのように考慮するかによって結論が異なる気がしております

 2点目は不適切な内容の提案の制限に関してなのですが具体的な提案として人の名誉であるとか人を困惑させるとかと非常に一般的な規定の仕方がなされていますこれは会社を困惑させるとか役員とかを困惑させるとかということだけでなくてより一般的に会社とは一見関係がないような人を困惑させるような提案も拒否できるとかそういう趣旨を含んでいるのかどうか確認させていただければと思います

 

竹林幹事 ここで専ら念頭に置いているのは会社その関係者を困惑させるというようなことでございまして具体的な提案が一般的に人を困惑させるようなものは会社も困惑させるのかどうかちょっとその辺り具体的なものをどのように念頭に置かれているのかにもよりますけれどもここでは人と書いておりますが会社その関係者を困惑させるというようなことを念頭に置いて考えております

 

松井幹事 手短になのですけれどものところでたくさんの株主が共同して提案をしてきたことが判別できないと結局減らないのではないかというお話があったのですけれども会社の側から複数の株主に対してあなたたちの議案は共同していますのでこの点についてはまとめていただけないかという働きを行った上でこれをあえて拒否する場合には第の権利がないという方に持っていくというやり方というのもあるのかなと思いました

 それとの関係なのですが複数の株主が10個が10個重複しているわけではなくて一部分が重複しているけれどもほかの部分は独自であるというようなそういう提案の仕方をしてきたときに併せて10個と数えるというこの数え方はどうするのだろうというのがちょっとよく分からなかったのでこの点がもし御意見想定があるようであれば伺いたいということであります

 

竹林幹事 松井幹事の今の御質問なのですが一部重複というのは内容の一部重複でなくて人の一部重複をおっしゃっているのでしょうか

松井幹事 内容ですね

竹林幹事 内容の一部重複の問題は恐らくそれはどこまでが独立した議案なのかということに関わってくるのだろうと思っておりますどこまでが一つの議案かということを判断した上で重複があるということになってきた場合については今でも同じ議案が重複しているようなときにどのように取り扱うのかということとの関係もありますがその重複した議案を取り下げていただければ残りの議案の数で数えるということになってくるのだと思います

関連ある議案についてどこまでを一つと見ていくのかということ自体に難しい問題があるのだろうとは思っております

 

藤田委員 私からは一つ目の提案と二つ目の提案各について簡単に申し上げたいと思います

 一つ目の提案で議案の数の制限については具体的な数字について今日は意見は控えさせていただきたいと思いますただ具体的な数字はいくつにするにせよ御指摘のありましたとおり議案の数え方をある程度確立していかないと議案数の制限はおよそ機能しないルールになります数え方を全部裁判所に丸投げするのもちょっと無責任かなという気もしますのでもし可能なら何らかの形で議案の数え方に関する基本的な考え方を最後条文になるかどうかはともかく議論はしておいた方がいいとは思います

 余りいい例を思い付かないので突飛なことを言って申し訳ないのですが国会法では憲法改正の発議の仕方について規定されていて国会法68条のでは,「憲法改正原案の発議に当たつては内容において関連する事項ごとに区分して行うものとするとありますバラバラに全部条ずつ国民投票にかけたりしますとおよそ両立しないような条文が残ってしまったりしかねない例えば両院制廃止する憲法改正をしたのに両院制を前提とした特定の条文が残ったりすると困るだから関連する事項ごとに区分して賛否を問うということでしょう論理的に関係があって切り離して判断することが望ましくないようなものは少なくとも一つと考えなければいけないという発想が表れている条文だと思います今の国会法と同じ条文で規定しただけで裁判所にとって有益な指針になるかどうかは分からないのですが何もない白紙で委ねるのもどうかと思いますので少なくとも一定の関連性のある議案を一つと数えるという発想を示すための何らかの規定を置くことができないかを議論することが望ましいと思います

 2番目の内容の制限の方ですけれどもこの三つでおよそ足りるかという前田委員の言われた問題もあるのですがそれとは別にの内容について確認させていただければと思います先ほど沖委員からの御意見もあった点です私はこの条文――前の方でも後の方でもいいのですが――の読み方として株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられその結果株主の共同の利益が著しく害されるつまり運営が妨げられることによって共同の利益が害される場合を規定しているものと読みましたしたがってとんでもない内容の提案で万一これが可決されたら会社が大変なことになるから共同の利益に反するとして株主提案を取り上げないという扱いは少なくともこの条項によってはできないと読みました内容が悪い提案を否決するのは総会において株主が行うべきことで万一このような内容が可決されたら困るという理由で提案それ自体を拒絶することはできないしかしそのような提案を取り上げること自身が株主総会の運営にとって望ましくないと言えるような場合愉快犯的な提案でほかの議案に使うことができたはずの株主総会の時間を割いて議論するのが時間の無駄としかいいようがなく株主共同の利益に反するから取り上げないというような扱いを認めるものだと読ませていただきましたそれが正しいのかというのが確認したい点です

 もう点は,「株主総会の適切な運営という言葉で表現されている内容ですが総会当日における議場での議事の進行のみならず株主総会の準備も含め適切な運営と書かれていると私は読んだのですけれどもそれでよろしいでしょうか例えば膨大な提案を直前になって送りつけて会社側としておよそ対処もできず株主総会の準備に支障を来すということはやはり適切な運営が妨げられるという文言の中に含まれていると理解したのですがそれで正しいでしょうか最後の点は事務局への質問です

 

竹林幹事 記載の趣旨はいずれも藤田委員から御指摘いただいたとおりでございまして株主共同の利益と書かせていただいておりますのは株主総会の運営に関わるような利益であると考えておりますまた株主総会の適切な運営でございますがこれは議事そのもののみではなく会社側の事前の準備等のコストといったものも株主の共同の利益に当たってくるということを念頭に置いて考えております

 

・第三回法制審議会

まず「1株主提案権の行使要件の見直しの要否では取締役会設置会社における株主の株主提案権の行使要件のうち,300個以上の議決権という要件を引き上げるべきかどうかについてどのように考えるかとしております

 近時の株主提案権の濫用的な行使事例や株主提案権が導入された昭和56年当時と比較して投資単位が減少していることを踏まえ株主提案権を行使することができる株主の範囲が広くなり得ることが懸念されており株主提案権の行使要件のうち300個以上の議決権という要件を引き上げるべきであるという指摘がされております

 しかし300個以上の議決権という要件を引き上げることは株主が多数存在する大規模な会社における個人株主による株主提案権の行使を過度に制限してしまうことになるおそれがあると考えられます

 また300個以上の議決権という要件が近時の株主提案権の濫用的な行使事例を生じさせた原因であるかは明らかでないことから当該要件を引き上げるべきか否かについて株主提案権の濫用的な行使を制限する観点から検討することは相当でないとも考えられます

 さらに株主提案の数や内容についての措置を整備することとした場合には近時の株主提案権の濫用的な行使事例の問題は相当程度解消するとも考えられます

 そもそも我が国においては株主提案権の行使を受けた上場会社の数は50社程度にとどまっており依然としてその数は少ないという指摘もございます

 したがってこれらの事情も踏まえて取締役会設置会社における株主の株主提案権の行使要件のうち,300個以上の議決権という要件を引き上げることが適切か否かについては慎重に御議論いただければと存じます

 「2株主提案権の行使期限の前倒しの要否では株主総会の日の週間前までという株主提案権の行使期限を前倒しすべきかどうかについてどのように考えるかとしております

 招集通知を法定の期限より早期に発送している上場会社等においては招集通知を印刷し封入することなどに要する期間のみならず株主提案権の行使を受けた後にその適法性を検討し議案を作成することなどに要する期間も考慮すると株主提案権の行使の期限である株主総会の日の週間前から招集通知の発送までの期間が短くなるので株主提案権の行使の期限を前倒しすべきであるという指摘がされております

 しかし例えば定時株主総会月より後に開催する場合には計算書類等の作成や監査に必要な期間に時間的な余裕が生ずる結果として株主提案権の行使の適法性の検討等に要する期間にも時間的な余裕が生ずることとなると考えられます

 また株主提案の数や内容についての措置を整備することとした場合には株主が提案することができる議案の数が制限されることなどから株主提案権の行使の適法性の検討等に要する期間も短縮することができることとなると考えられます

 さらに株主は株主提案権の行使時に株主総会の日を正確には知らないのが通常であるので,8週間前を更に前倒しした場合には株主側に及ぶことになる不利益にも配慮する必要があると考えられます

 したがってこれらの事情も踏まえて株主総会の日の週間前までという株主提案権の行使期限を前倒しすることが適切か否かについては慎重に御議論いただければと存じます事務当局からの説明は以上です

 

古本委員 まず,1番目の株主提案権の行使要件の見直しの要否なのですけれどもこの行使要件のうちの300個以上の議決権慎重な検討を要するということになっておりますけれどもやはり現実的に考えますとこれは株主提案権の濫用を抑止するという意味ではかなり大きな影響のある部分ではないかと思いますので廃止又は引上げですね基準の引上げを御検討いただきたいなと思います

 規模の大きな会社について考えますと議決権300個といいますと恐らく1%の更に100分のにも満たないというようなレベルの数字になることもあると思います金額的にも時価で言いましてせいぜい数千万円程度というところではないかと思います数千万円といいましても株式を保有していなければいけないのは基準日だけでありますので実務の感覚からしますとこれは現実的なハードルは相当に低い状態になっているのではないかと思います

 の問題意識といたしましては株主提案権に基づいて提案をする株主は提案の内容について何の責任も問われないということですそういうものが出てきても会社としてはコストを掛けて検討しそれを書類の中に入れていかないといけないとこういう問題がありましてそういうことが許されるのはやはりある程度コストが自分の痛みとしても返ってくるとちょっと考え方はそれで正しいかどうか分かりませんけれども,1%というのであれば何となく理解できるような気がするのですけれども,300個というのが一体どこから出てきたのだろうかとそれが今現実に妥当なのかどうかということはもう一度前向きに御検討いただきたいなということであります

 回目にも申し上げたと思いますけれどもこの300個というこういう数字の規定の仕方というのはここだけだと思いますのでこの在り方が妥当なのかどうなのかというところにやはり疑問を感じているということでございます

 それからもう一つの行使期限の前倒しの要否のところでありますけれどもここについても是非前向きに御検討いただきたいなと思います現実問題といたしまして期限の直前この週間前直前になって提案権を行使されますと会社といたしましては総会の準備これはスケジュール的に大変厳しいものになりますですのでこれが前倒しされますと招集通知の早期開示にも対応しやすくなるという利点もございますのでこの点もよろしく御検討いただきたいということでございます

 部会資料最後のページの中ほどといいますか,「しかしのところにありますけれども,6月より遅く総会を開催すれば対応に支障がないのではないかといった趣旨の記載がございますけれども,7月とか月とかに総会を開催するということにいたしますと年度が始まってからか月,5か月たっても役員の選任が行われないと実務の執行体制が固まらないという問題が生じてしまいますので,7月総会といったものを前提にした議論は現実に合っていないのではないかというふうに思います

 それから部会資料でその次に株主は総会期日を知り得ないので提案権の行使が一層困難になるこれは期間が延びれば延びるほど困難になるという趣旨だと思いますけれども現実には週間前であるのと10週間前ないし12週間前であるのとどれほどの差があるのかなという気がいたします

 ということでこの提案権の行使期限の前倒しにつきましてもこれは総会資料の電子化における書面送付の期限の設定とも絡みますのでそうした関連でも御検討いただけないかと思います

 

野村委員 今の御発言の中で300個の話がございましたが私は今回の改正の趣旨は濫用的な株主の提案権を防止することであって現在提案されていることの中で濫用的ではないものについてその提案自体を抑制するということが立法の目的ではないと思いますので濫用的な事柄が数と内容によって十分確保できるのであれば現在極めて少額な出資者の人たちがある一定数集まって合理的な提案をされていることを妨げるようなことはしない方がいいんではないかなと思います

 

小林委員 小林でございます

 先ほどの古本委員の議論とほぼ理由というか実態は同じところでございますがやはりこの300個要件については廃止ないし引上げを求めるものでございます

 濫用的な問題というところをもちろん前提にした議論に近いところではあるのですけれども現実株主総会の実務というところで見ますとやはり非常に限られた時間でたくさんの株主からの質疑を受けたりあるいは現実の合理的な提案についてはもちろん審議するということはあるわけなのですが先ほどの古本委員からの御指摘もありましたように非常に低い議決権の比率の方が提案するということになりますと実際に私どもとして重要なのはこれが一定数相当数の賛成票を集められるかどうかというところが事前に全くスクリーニングなしに出てくるのは本当に良いのかというところがございますそういう意味では1%というのは一つの目安ではないかなと思います

 例えにはなりませんけれども別に国会でもやはり例えば衆議院20人とか参議院10人とかいう法案の提案権の縛りがあってこれってよくよく考えても5%くらいですし余り例えにはならないかもしれませんけれどもマンションの管理組合みたいにこういう全体の合同の話をするときでも標準規約では議決権の割とかそういうふうな,5分のとかいうふうな基準が付けられておりますどちらかというともう率だけで切っていただかないとやはり非常にいろいろな規模の会社があるということを考えると定型的な処理にとってやはり支障が出ることも現実にはあるというふうな認識からいいますとそういう意味での基準があって本来しかるべきなのではないかなという気がしております

 もう一つの提案権の行使については基準日からか月というところで考えたときに株主提案がされて実際最後の総会というよりはそれより前に議案を決める取締役会というのは招集通知の発送スケジュールとか考えるとしてか月半ぐらいまでに普通やらなければいけないこれは決算とか何とか全然関係なくて早くに株主総会をやろうとすればそれを前倒しするということになると実際には提案を受けてから取締役会までは検討してそれを決めるまでの日程はほとんどないという現実がございますそうすると内容がかなり熟度の高い内容であれば別ですけれども非常に熟度の低いものないしは数が多いものというような現実があるとそこのコミュニケーションを提案された株主とさせていただく必要があるという観点から見ればやはり一定の時間が必要だということと先ほど申し上げた現実に議案として取り上げるかどうかという取締役会までのスケジュールを考えるとやはり今の全体のか月という範囲の中では週前というのは非常に短いという感じでございましてやはり10週なり12週というようなところまでという期限を入れていただきたいなと思います

 これと直接関係ないですけれども実際にそれに当たる事務局の苦労というのは大変なものだというのはもう現実に提案された会社の方皆さんおっしゃっていますので働き方改革ではございませんが一定のやはり時間が欲しいというところは実務的な要請としてはございますのでそういう意味での丁寧な対応をさせていただくという意味でお時間を頂戴できるような検討をしていただきたいというところでございます

 

沖委員 ありがとうございます

 株主提案権の行使期限の前倒しですけれども私も1,2週間程度の行使期限の前倒しを検討する必要があるのではないかと考えておりますまず総会準備のスケジュールの観点から申しますと招集通知が会日の週間前という発送期限がありますがこれが週間程度以上早期発送されこの期間は拡大している現状にあると思いますほかに通知等の決定印刷に必要な時間を考慮しますと株主提案権の対応のための時間というのは相当に限られてくると思いますこの間に提案の適法性の法律的検討取締役の対応さらに提案に問題がある場合の提案者との間での交渉等をこなすというのは非常に厳しいと考えます

 もし会社が株主提案を不適法として拒絶した場合には提案株主としては議案要領記載の仮処分命令等の申立てで対応することになりますが過去の判例を見ますと抗告審の判断が出る段階では招集通知の印刷が終了してしまっているとそういう事例もありますので司法審査の期間を十分に確保するという観点からも可能であれば行使期限を前倒しすることが望ましいと考えます

 なお部会資料の中で指摘されております月総会の可能性ですがこれが実務上行われるようになったとしましても監査法人の監査やこれに対応する社内の経理担当者の負担を軽減する効果はあるとは思いますが総会担当者や役員の負担を果たしてどこまで軽減するのかという疑問は残ります総会当月と前月の担当者の負担というのは相当のものですのでその中で株主提案に対し適切に対応するということはかなり厳しいのでその環境整備の必要性は高いと思います

 なお株主総会資料の電子提供制度を採用した場合アクセス通知としての招集通知の発送期限は1,2週間前倒しするということが検討されていると思いますこれを実現する場合にはこれに応じて株主総会の株主提案権の行使期限も1,2週間程度前倒しする必要があるのではないかと思います

 他方提案株主の側から見ますと定時総会の開催日というのは期末に固定された基準日や前年の総会日からある程度その時期の予測は可能ですので,1,2週間これが前倒しされたとしても対応は可能ではないかと思いますしたがいまして,1,2週間程度の前倒しの方向で前向きに検討する必要があると思います

 

三瓶委員 議決権行使の実務の面から行使する側からちょっとお話をします

 まずこの資料の中で年間50社程度にとどまっておりというのがあるのですが確かに全体からすると数は少ないかもしれませんただ当該社について議決権行使をするときに時間配分的には株主提案の方に割ぐらいの時間を掛けることになりますというのは会社提案というのはある種毎年の繰り返しのものもあるし大体予想の付く範囲なのでどういう方針で向き合うかというのは大体の方針がありますただ株主提案についてはどんなものが来るか分からないということと根拠が余り定かではないというようなこともありますのでこれは一つ一つかなりチェックするのに時間が掛かりますそういう意味でたかが50件といってもその50件に割く時間配分を皆さんが予想しているとすれば実際のところは意外に思われるところがあるのではないかなということ

です

 そしてそのとき何が起こるかというと特に今平均で外国人株主が30%ぐらいいるようですけれども基本的に日本語ではなく英語で議決権行使をすることになります発行会社側が英語で発信してくれていればまだいいのですけれどもそうではない場合に議決権行使助言会社等の英訳を待って議決権行使の手続に入りますそうするとスタートが週間ぐらい遅れますそこでただその議決権行使助言会社も大変ですから株主提案について全訳はしません非常に簡潔にエッセンスだけを訳します

 そうすると真っ当な議決権行使助言会社が真っ当な英語でさらっとエッセンスだけ述べるととてもそれらしくなりますそうするとそれだけを見て判断するとなるほどなと株主提案に納得するのですけれども原点に返ってどういう理由で提案しているのかを見るとここは判断が随分変わることがありますというのはそもそもほかの議案との関係で矛盾しているとか又はその会社の機関設計上矛盾があるとかいうことがだんだん見えてきますなので現状では多くの株主提案を受けた会社に関しては議決権行使は非常に危なっかしい状態で行われている可能性が否めないというのがあります

 だからといってその制限をどういうふうにしたらいいかというのは非常に難しいのですけれども結果的に十分に考慮していないような提案をしていることもよくあるのでそうした株主提案が300個という低いハードルでできてしまうのは適正なのだろうかとは思います

 あと株主提案には定款変更議案というのが多いのですけれども定款変更議案についてその中身が本来取締役会決議事項であるものとか又は業務執行に関わる内容ではないかというような具体的で細かいことが随分ありますこれを定款に全部入れるのかとそうすると経営判断が随分制限を加えられるのでここについてはそもそも議案として適正かどうかという判断の根拠として取締役会決定事項であるとか業務執行に関わることとかいうことは考慮する余地があるのではないかと思います

 

青委員 まず提案権の行使要件の方でございますけれどもそちらに関しましては濫用防止という観点から別途数や内容の制限についての検討が進んでいるということからいけば行使要件のところで個人の株主が建設的な提案を行う機会を減らすような方向性に進むことになってしまうというのは基本的には避ける方が望ましいのではないかと思われます

 加えて行使期限の前倒しという観点につきましてもこちらも濫用防止のための数の制限等を考えていくということでいけば現状との比較という意味でいけば行使期限の前倒しというのは必ずしも行う必要はないのではないかと考える次第ではございます

 ただ一方で招集通知あるいはアクセス通知をより早期に発送するということを求めていくということにして招集通知の準備期間が必要だということであればむしろその情報を早く提供するというそういうプラスの意味があるわけでございますのでそうしたことをセットでということであれば一定の提案権の行使期限の前倒しは致し方ないというかあり得る話かなというふうに思う次第であります

 

松井幹事 すみません今の点ちょっと私前回の資料を手元に持っておらずどんなふうになっているのかちょっと事実関係の確認ができないのですけれども,Notice&Accessの制度を取り入れた場合に招集通知が前倒しになるというところまでの御指摘は頂いたのですけれどもそれと連動して取締役会における議案の確定の日程というのも週間程度早まってその検討の時間が週間程度短縮されるということであれば確かに大変かなと思うのですけれどもその点がどうだったのかということがちょっと確認できなくてすみません

 

沖委員 当然アクセス通知を発送するためには少なくとも議題を決めないといけないのですけれどもその際株主提案が出されていればそれを採用するかどうかで議題が追加になるわけですからそのアクセス通知発送までには少なくとも当該株主提案の議題を受けるかどうかですねこれを決めないといけないということですのでその検討の期間がやはり1,2週間前倒し余分に取る必要があるのではないかとそういう意味で申し上げました

 

松井幹事 すみません役会の日程は変わらずそこからの事務作業が短縮された結果招集通知発送が早まるということであれば恐らく議案確定までの時間のリードタイムというのは余り変わらないのかなというふうに思ったということです

 

 続きはあした!!