民法の論文式試験で家族法が問われた? 未知の論点が出たらどうすればいいのか?
民法の論文式試験で家族法が問われた? 未知の論点が出たらどうすればいいのか?
平成30年予備試験民法第2問では、「財産分与」というワードが出てきたため一瞬戸惑った受験生も多かったと思います。
もっとも、結局は基本知識から考えれば合格レベルの答案が書けるものだったと思います。目先を変えられると途端に自滅する受験生が毎年相当数いるようですが、そのような受験生の共通点は、暗記した知識に頼って問題を解いているということです。
いつも基礎基本から自分の頭で論理を組み立てて問題を解いている受験生は、不測の事態が訪れても慌てません。既知の論点だろうが、未知の論点だろうが、結局いつも通り解くだけだからです。既知の論点なら少し心の余裕があるという程度でしょう。
以下では、平成30年予備試験民法第2問の添削例を紹介しています。
いい点+悪い点のいずれにもきちんと目を配りながら、一行一行丁寧に添削していることが分かります。答案の一言一句を無駄にしない姿勢が、穴のない理解・思考につながっていきます。
2について見ます。まず、(1)でCF間の財産分与を取り消そうとするのはいいのですが、その根拠として本件土地・建物の移転登記抹消登記請求権だけを主張しても、無意味です。財産分与契約自体の取り消しと登記の移転は、別だからです。そもそも、取り消すべき詐害行為は、登記ではなく、財産分与です。ここは、詐害行為取消請求権を主張すれば足りると思います。
(2)一言でいいので、要件認定の理由がほしいですね。簡潔に書きたい気持ちはわかりますが・・・。
(3)アで本問財産分与が「財産権も目的としない行為」にあたる理由がほしいです。一言理由がついているだけで、だいぶ条文理解度に対する印象が変わります。当たり前のことは、理由なく済ます答案もありますが、基本は理由を書きます。今後試験時間が足らない、紙幅が足らないという問題に直面したときのテクニックとして理由省略を用いることはあると思いますが、まずは、基本に忠実に行きましょう。「しかし・・・」以下の規範は、言うことありません。
イのあてはめについて見ます。一行目はいい事実適示+評価で好印象です。2行目については、規範との対応関係を今一度考えてほしいですね。無資力になったから、上記趣旨を大幅に逸脱することになるのでしょうか?。そのあとの424条2項の該当性を否定する部分はオッケーです。
ウの部分は、本問財産分与を424条の適用対象とするかという問題と別の要件の検討になります。「したがって・・・」と続けるのは、論理の飛躍があります。「害することを知っていた」等の要件は、別途検討してください。各要件にかかる事実が問題文中にちゃんと散りばめられているので。
ちなみに、設問中「本件土地及び本件建物の財産分与・・・」と書かれていますが、このようにいずれか一つでも存在していれば要件充足に足りるにも関わらず、二つ以上の客体を設定する設問は、何かしらの意味を持つことが多いです。実際、本問でも本件土地は婚姻前の財産、本件建物は婚姻後Fの協力の下建てられたものになっています。財産分与の趣旨に反する不当な財産処分と言えるか否かという点について重要な差異をもたらしうるポイントです。また、「全部・・・」と問われているので、「全部できる」「全くできない」「一部できる」という結論の選択肢がありうることを想起できるといいですね。問題文から何かしらの出題意図を感じ取れることも大事な感性です。