商法課題テスト③ 課題テストの添削指導はこんな感じ!
課題テストの添削指導例
下記は商法課題テスト②の理由付けに関する添削例です。添削指導は、一人一人の答案に沿って行います。ゆえに内容が大幅に変わる可能性がある点はご了承ください。
問1
判断の根拠としている条文は適切です。ただ、問題の解き方(法律問題に対する考え方)の筋道は見直してほしいと思いました。
本問の問いは、2つあります。①発起設立の場合に発起人が払込取扱銀行に対して金銭保管の証明書の請求をすることができるか②銀行が発起人に同証明書を交付した場合の効果です。
①について見ます。そもそも、「発起設立の場合はどうか」と問われているので、その場合にどうなるかを正面から答えてほしかったです。本答案の見方だと、64条1項が募集設立の際の取り扱いを定めていることを指摘したにすぎません。
具体的に考えるとまず発起設立に関して保管証明書請求権に関する定めがないことが問題の所在です。明文があればすぐわかるのですが、それがないからどうなるか考えなければならないということです(法学のコンパス参照)。そこで検討するに明文の規定がない以上、当該請求権は認められないという形式的理由付けが考えられます。また、以前は発起設立においても同証明書が必要書類であったわけですが、会社法改正によりそれが不要になったことが当該請求権を認めない実質的理由になると考えられます(理由付けの仕方も法学のコンパス参照です)。以上より、答えが導けると考えられます。
続いて②です。②に関しては①で本問が×であるとわかっているのであえて答える必要はないのですが、本課題の中では少しでも多くを学べるように問題文の中にあるすべての問いに答える姿勢を見せてほしいと思います。②は64条2項の通りです。
問2
判断の根拠としては、まず現物出資財産のてん補責任の連帯責任に関する52条3項が問題となります。この時、52条3項の要件を満たすためには、同一項の定めに関する問題が発生していること、弁護士が33条10項3号の証明をした者にあたることも確認が必要であることを忘れないでください。その上で、「注意を怠らなかった」か否かが問題になります。短答を解く際、この過程を省略しがちですが、これらの要件が満たされるという前提がなければ、そもそも52条3項ただし書きの検討をするまでもなく当人の責任は成立しないという論理が成り立つ可能性もありますから、大切な検討です。
「注意を怠らなかった=必要な注意を果たした」などと解釈を展開した上であてはめをする姿勢も大事にしたいですね。そもそも、問題の所在は、無過失の証明が「注意を怠らなかった」の要件を満たすか否かという点にあるからです。単なる知識の確認だけで短答を終わらせるのはもったいないと思います。
問3
本問は、ご指摘の通り52条2項の話ですが、「発起人」の意義、すなわちこの文言が指す発起人の範囲の問題として処理してほしい問題でした。本答案の書き方だと、現物出資をした発起人も「発起人」には含まれるが、現物出資をしているから同カッコ書きを理由にその責任を免れないという論理を展開しているように読めます。この規定はそういうものではなく、そもそも現物出資をした発起人をこの規定にある「発起人」からは除くと定めているので現物出資をした発起人には当該規定が適用される余地がないと解するべきです。条文の文言解釈としてその「文言」がいかなる範囲を指しているのかは、よく問題になります。些細な違いのようですが、文言解釈に対する理解が問われる大事な問題です。
問4
問題の所在は、発行可能株式総数を会社設立登記をする時までに定款で定めなければならないか?です。37条1項の規定からは明らかでないからです。そのほか、本問に関しては特にいうことありません。指摘してほしかった条文もきちんと適示できていました。
問5
本問の問題の所在は、発起人が自ら株式を引き受けることはできないのか?という点です。問題の所在を明らかにしてから答える訓練をすると問題を整理する力もつくので論文にも生きると思いますよ。問題にはきちんと答えられていました。
課題テストを通じて基本的知識を確認し、論文基礎力を磨きたいという方には、「法学のコンパス」もおすすめです。課題テストは、ここに書かれている法学の基礎基本を身につけられるように構成されているからです。
それでは、商法課題テスト③の問題を公開いたします。
○注意書き
・参照可→六法等
・制限時間なし
・解答は記述式
・記述の構成要件→①正誤②条文の適示③問題となる要件④問題の所在
・5問中4問正解で合格
問1
株式が2以上の者の共有に属するときは、共有者の一人は、民法の共有に関する原則に従い、その全員の同意に基づき当該株式についての権利を行使する者一人を定めた上、株式会社に対してその者の氏名若しくは名称を通知するか、又は会社の同意を得ることが出来れば、その権利を行使することが出来る。
(正誤)
(理由付け)
問2
取得請求権付株式は、株主の投下資本回収を容易にする趣旨で認められたものであるから、当該株式の株主は、会社に対し、当該会社に分配可能額の如何に関わらず、その取得を請求することが出来る。
(正誤)
(理由付け)
問3
単元未満株式について、株主提案権を行使することはできるが、議決権を行使することができない場合が想定されることから、株主には単元未満株式について、会社に対して自己が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の売渡しを請求する権利がある。
(正誤)
(理由付け)
問4
株券を発行するには、その旨を定款で定める必要があり、その旨を定めている場合、株式の譲渡は、株主名簿の書換えなくして、第三者に対抗することができる。
(正誤)
(理由付け)
問5
発行する株式の一部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について当該会社の承認を要する旨を設ける会社は、種類株式発行会社に分類されるところ、当該会社が取締役会設置会社である場合、その承認を株主総会が行う旨を定款で定めることはできない。その趣旨は所有と経営の分離である。
(正誤)
(理由付け)
商法課題テスト③の正解発表は明日2020年12月12日予定です。
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