択一式試験の解き方でわかる 体系的理解の有無
択一式試験で悩む受験生向け 解説を読んで終わりにしてませんか?
今回は、択一式試験の勉強の仕方をご紹介したいと思います。
択一式試験の勉強というと、多くの方が「問題を解く⇒解説を読む」という手順を踏むと思います。それ自体は問題ないのですが、多くの方が「解説の記述は理解を深めるのに不十分だ」ということを認識していません。
同じように過去問を解いていても正答率が上がる人と上がらない人がいるのはこの点の認識にポイントがあります。
例えば債権譲渡の問題として次のような出題がされることがあります。
「受働債権となるべき債権の譲渡が行われた場合であっても、その対抗要件が具備されるまでにした相殺を譲受人に対して対抗できるか?」
答えは○です(民法469条1項)。
結局のところ、469条1項を知っているか否かという問題なのですが、その旨を知るだけではこの問題の学習として不十分です。そもそも、この問題は、相殺(民法505条1項)から始まっているという点から確認していくべきです。
下記の添削例は、相殺と債権譲渡の話を横断的に見ながら解説を進めています。「体系的理解が大事」とはよく言われるところですが、「体系的理解」とは全ての分野について知識があるということではなく、各分野の相互関係を理解していることだということに気が付いてほしいと思います。
これは相殺の問題なので、まず相殺の要件をあげておきます。
①相対する当事者が互いに債権(債務)を有すること
②それらの債権(債務)が同種の目的を有すること
(例)金銭債権と金銭債権
③それらの債権(債務)がともに弁済期にあること
④それらの債権(債務)が相殺を許すものであること
(例)不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権とすることはできません(509条)
問題文にある「相殺をもって対抗でき」るか否か点は、相殺できるか(法律行為の成否)+相殺の効果を譲受人に対抗できるか(法律効果の範囲)の問題と分析できます。
469条1項(条文を指摘する時は、○項まで明示してください。○条だけではどの要件・効果の話をしたいのか明確にならないからです)は、債権譲渡後、その対抗要件具備の前に取得した債権による相殺は可能であること(上記要件①に関わります)、その効果は当該相殺に関して第三者的立場である譲受人にも対抗できることを明らかにしています。法律要件(法律行為)と法律効果の視点から条文の文言を解釈してください。