予備試験に合格した私だから伝えられる!法学の基礎基本!

予備試験・司法試験の合格を目指していた私が法学の基礎基本とは何か…ということに悩み苦しんだ結果、たどり着いた答えを書き綴っていきたいと思います!難しい論点を解説しようとはしていません。法律の資格試験に合格するのに必要なことは法学の基礎基本を見極め、理解することだけです!

令和2年公法系第ニ問の採点実感を読んでみた~その4~ 時間切れは実力不足

無論、法解釈は、法律学の基本だ

今回は、令和2年公法系第一問の採点実感を読んでみたの最終回です。

 

以下、採点実感です。赤い字は筆者です。

設問

全体について

他の問題で時間を使いすぎたためか途中で解答が終わっている答案や全く解答がない答案がかなり見られた解答に要する時間配分の都合もあると推察されるが,「個別事情を考慮しないでなされた処分通知には裁量の逸脱があるので違法のように全体として論述内容の粗い極めて大雑把な検討にとどまったりする答案がかなりの数に上ったほか行政裁量の違法判断の一般論を展開し農振法や農振法施行令等についてはほとんど検討することなくいくつかの事実を挙げて申出の拒絶を違法とするなど論ずべきポイントを捉えきれなかったものも多く他の問題と比べて最も不出来な答案が多かった他方で数は多くはなかったが農振法や農振法施行令農振法施行規則等を参照し問題文中の事実を踏まえて検討している答案も見られた

行政法は時間切れを起こしやすい科目であると思う逆に行政法の問題を難なく書ききれるようなら他の科目で時間切れを心配する必要はないと思うどうしたら時間切れを起こさなくなるのか答案の構造大枠)、その要素小枠)、枠に当てはまる事実と枠とのつながりを細分化して検討出来るようになると大幅に時間短縮できるなお大枠は設問や問題文条文によって設定する小枠は会議録の誘導に注意するそれを前提として最後に細かな事実の整理である

 

本問では複雑な法令の適用関係を読み解くことが求められているそして一般的にこの種の設問では資料として示された関係法令の条文に事案を当てはめた解釈論理的な筋道を立てて丁寧に展開することが求められる農用地区域については農振法農振法施行令農振法施行規則といった法令が複層的に存在していることからやや複雑な法令の構造を把握し的確に条文への当てはめをすることが必要であったが的確に条文を当てはめることができている答案は少数であり当てはめが混乱したり不十分にとどまったりしたものが大半であった

時間がないなら解釈がままならないのも当然だと思う仮に時間があったとするならば条文の解釈はその階層の濃淡を意識して行ってほしい同じ法律の中でも重要な規定とそうでない規定があるはずである法律を前提として存在している政令や規則なら法律の内容を理解することが先決である普段の学習の中で意識的に練習してほしいこれは何も行政法だけの問題ではない民法と商法・会社法との関係性や民訴法と行訴法との関係性憲法と各法律の関係性など、「法令が複層的に存在している場面には日常的に遭遇しているはずである

 農地の冠水の防止を目的とするのは本件事業であるにもかかわらず本件計画が農地の冠水の防止を目的としていると論ずるもの本件事業が農振法第10条第項第農振法施行規則第条の号が規定する事業に該当しない結果として本件農地が同法第13条第項第号の土地に該当し本件計画を変更すべきであると論ずる意図と思われるところ本件事業は同法第13条第項第号に該当しないから本件計画を変更すべきであると論ずるものなど本件計画本件事業及び本件農地を明確に区別しそれぞれがどのような趣旨内容のものでありどの条項が適用されるのかを的確に把握することなく論じていると思われる答案が多かった下線部は筆者

正直なところ下線部をきちんと処理できる時間的余裕はなかっただろうと思う仮にできていたとすれば余裕で圧倒的上位答案になったと思われるだからこの辺りの処理が間に合わなかったからといって悲観する必要はそれほどないと思うただこうした細かな事実関係を整理する能力は上記の条文の整理能力に通ずるものがあると思う日頃から条文を注意深く読みその関係性を整理する練習をしている受験生は知らず知らずのうちに事実関係を精緻に分析・整理する能力を育んでいるように思う現に事実の引用や評価が上手な答案は条文操作も的確であることが多い一事が万事である

 

会議録にある本件農地についての別の処分を申請してその拒否処分に対して取消訴訟を提起するという会話文中の別の処分が何なのかを考えずにそのまま書き写しているだけの答案や同じく本件事業は農地の冠水の防止を主たる目的とするものでこれによって関係する農地の生産性が向上するとは考えにくい」,「とりわけ本件農地は高台にあるためほとんど本件事業の恩恵は受けないという会話文を書き写し法令のどの要件との関係が問題になるかを示すことなく,「したがって考慮不尽に当たるといった結論めいたことを書いている答案など会話文が持つ法的含意を余り考えない安易な答案も数多くあった

時間がないならこうなるのは仕方がないただそれだけの話であるもっとも過去問を分析する時は時間制限にとらわれず完璧な答案を書く練習をしてみてほしい時間制限を気にするあまり雑な答案を書くことが癖になってしまっている受験生をよく見かけるしかし雑な答案を書いたところで点数はそれほど伸びないきちんとした答案を書けるなら時間制限に合わせて答案を修正することは容易であるから安心してほしい

 

裁量論について

設問については多くの答案が裁量権濫用の問題として捉えておりこのために判断のポイントを十分に押さえきれていない論述となっていた条文をよく読んだ上で論理的に考えれば裁量権濫用の問題でないことは分かるはずであり問題の論理的構造を把握する能力が不足していると言わざるを得ない

→「条文をよく読んだ上で論理的に考えれば裁量権濫用の問題でないことは分かるはずであその通りであるつまり多くの受験生が条文をよく読んでいないし論理的に考えてもいないのである推測するにいつも裁量権濫用の問題が出題されるから本年度もその方向で論じたのであろう

農振法の規定から下位法令をたどることができず本問で適用すべき規定を正確に指摘できていない答案が多かったおそらくそのこともあって同法第13条第項第号の要件該当性の判断については市に裁量が認められるとした上で裁量権の踰越濫用の有無を検討する答案が多かったまた農振法施行令第条の規定を裁量基準とした答案は行政法の基本的知識が欠けていると思われる

単なる条文操作の問題であって知識云を直接的に問われているわけではないつまり勉強不足というより練習不足である法律を運用する能力・技術を磨く必要性に気付いてもらいたい

 

農用地区域の変更は裁量処分ではなく一定の事情が発生した場合に当然にそれをすべきものでありそのことは法令の規定振りからも相当程度明確に読み取れるにもかかわらずこれを裁量処分として論じ裁量権の逸脱濫用があると結論付けるものが多数であった規定の文言処分の性質や内容等を良く考えて裁量の有無を決することが大切である

裁量の有無の判断基準は多くの受験生がある程度知っているはずであるそれを使いこなせているかどうかが問われている。「法は道具であるぜひ使いこなすことを目標にしての学習に取り組んでもらいたい

 

 本問で裁量権の踰越濫用を検討している点で既に疑問であるが裁量権の踰越濫用の一般論を長と論じている答案が散見されたそのような答案は問題文の中から関係する事実を見付けてそれを条文に当てはめるといった作業が本問で求められていることを理解していないと思う

→「目の前の具体的事実関係を条文に基づいて整理するのは法的思考の基本である裁量権逸脱濫用の話も正しい法的思考の過程で存在するものであるこれはいわゆる論点主義と批判されても仕方ないものである。「正しい法的思考という基本を身につけることを意識する必要がある

 

 特に検討を踏まえることなく端的に農振法施行令や農振法施行規則を行政規則であり裁量基準であるとする答案も少なくなかった

時間がなかったから省略したのかそれなら仕方ない答案戦略的な視点も時に必要であるただし法律論の基本を見失わないように注意してほしい

 

農振法第13条第項第号該当性

 農振法第13条第項第号該当性については会議録中に記載されているの主張に沿って本件農地が同法第10条第項第号に掲げる土地に該当しないことを論じる必要がありそのためには同号を受けて定められた農振法施行規則第条のの第号該当性を検討する必要がある同号の定めを丹念に読み,Xの主張する事実関係を同号の規定に当てはめていくことが必要でありかつそれで足りるはずであるが本件事業が同号柱書の括弧書及び同号イの括弧書によって除外される事業であることを記載できている答案は驚くほど少なかった勉強したことのない法令であっても落ち着いて精読した上で法令の仕組みがどのようなものかを正確に理解しその当てはめを答案に着実に記載していくことが求められている

→「落ち着いて精読することが求められているようである日頃の学習の中で条文を落ち着いて精読している受験生はどれくらいいるのだろうか条文を落ち着いて精読することで見えてくるものは意外と多い文言解釈が法解釈の基本であるという原点に立ち返った学習が大切である過去問は時に法律学習のヒントを教えてくれる決して過去問は点取りゲームとして存在しているのではないのである

 

 本問において農振法施行令第条の適用が問題になることを指摘することができている答案の中でも同条の趣旨をきちんと示した上で結論を導いている答案は必ずしも多くなかったまた同条の適用の例外を論証するに当たりその不当な結果のみを取り上げて論ずる答案が少なくなくそもそもなぜ例外を認めるような解釈が可能であるかを論じたものは余り見られなかった

法律論を展開する上で趣旨理由付けを意識することは基本中の基本であるこれらは、「覚えるものと教わるかもしれないが必ずしもそうではない普段の学習の中で自ら導くことにもチャレンジしてみてほしい法の見え方が変わってくるはずである

 

 取消訴訟の対象となる処分の根拠規範である農振法施行規則の条文を引用しない答案が多かった点は同じ解答者の答案が設問の処分性の検討においては判例の定式に従って条文を引用していることとの対比においても目を引くところであるあるいは委任立法の解釈の在り方に言及した答案がほとんどなかった点に鑑みれば委任立法への意識の薄さゆえであるかもしれない

一度引用した条文を他の設問でも再度引用することは躊躇したのかもしれない

 

政令による期間制限

会議録で土地改良事業との関係で農用地区域からの除外を制限している農振法の趣旨目的を踏まえてとして農振法の趣旨目的を踏まえて農振法施行令所定の期間制限に例外を認める解釈を検討するよう指示されているにもかかわらず農振法の条文を全く検討しない答案が極めて多く農振法第13条第項第号が農業に関する公共投資により得られる効用の確保を図る観点からと定めていることに言及した上でこれを踏まえた検討を行った答案は非常に少数であった政令が法令の委任を受けて制定される下位法令である以上政令を解釈するに当たっては法令の趣旨を参酌しながら検討することが求められ問題文に引用されている法令の条文を精読した上で問題の要求に着実に答えていくことが何よりも重要である下線部は筆者

一つ目の下線部は、「指示されていなくても検討すべき話であるこれを落とす時点で法解釈するという意識が希薄であると言わざるを得ない誘導に乗る乗らないの話ではない二つ目の下線部は要するに法令を横断的に読む場合でも条文の文言に沿って解釈しなさいということであるいずれも法学の基本が分かっていればそうすべきことには気付けたはずである実際に着手する余裕があったかどうかは別の話だが・・・)。

 

 農振法施行令は法規命令であるのに農振法施行令の機械的適用はすべきでなく個別事情を考慮していないといった答案が多かった機械的適用・個別事情の考慮は裁量基準行政規則で議論される論点である法規命令と行政規則とが十分に区別されていないように思われる

上記で裁量論として論じた答案が多かったと指摘されているそのような答案が農振法施行令を裁量基準としたのであろうかなお法規命令と行政規則の区別は学んだことがあるはずである論証の暗記だけでなくこのような基本的事項の理解も疎かにしないでほしい

 

会議録において詳しく会話がなされているためか比較的事案の事情は拾えている答案が多かったただし政令の規定の法適合性や法に適合するための解釈といった委任命令の範囲等に関することにまで触れている答案は多くはなかった

→「会議録において詳しく会話がなされていることは親切でもあり不親切でもあると思う読んで整理するのが大変だからである行政法の事務処理量の多さに閉口している受験生は心配しなくてもいい合格者も同じように苦しんでいるのである

 

○ 「農地の生産性が向上するとは考えにくい」,「本件農地は高台にあるなどの議事録にある生の事実だけを記載する答案が散見され法的検討が不十分であったそのため農振法施行規則該当性として論じようとするのか裁量権の逸脱濫用として論じようとするのかさえ明らかでない答案もあった

→「法的検討とは事実を評価するという話だろう条文を解釈して導いた規範と生の事実とのつながりを説明することが事実を評価するということである出来るだけ頑張って評価してもらいたい

 

今後の法科大学院教育に求めるもの

 単に判例の知識を詰め込むような知識偏重の教育は必要ないであろうが主要な判例については当該判例の内容や射程についての理解を正確に身に付けることは重要と思われる

判例学習も大事なのは当然判例だからである

 実体的な違法性の検討においては多くの答案は裁量論にのみ重点を置いており多くの受験生にとっては個別法に沿った解釈論を組み立てる能力の涵養について手薄となっているように思われる実体的な検討において裁量論が重要であることについては言うまでもないが個別法に沿った解釈論も行政法の学習においては重要であり法科大学院においてはこのような分野についてもトレーニングが行われる必要があると考えられる

ちゃんと条文を解釈出来るようになりましょうという話である逆になんでそのようなトレーニングを積まないまま司法試験本番を迎えているのかと思う法律家の卵を養成したいなら条文をきちんと読むトレーニングをさせるのは当然だと思う法学の基礎基本を当たり前のこととして終わらせてしまっている指導者が多いのではないかと思う

 

法科大学院には基礎知識をおろそかにしない教育事実を規範に丁寧に当てはめそれを的確に表現する能力を養う教育を期待したい

法学の基礎基本を徹底せよという話である。ABprojectが散指摘している話である

 

 これまでも繰り返し言われていることだろうが行政法の基本的な概念・仕組みと重要な最高裁判例の内容・射程を確実に理解した上でそれらの知識を前提にして事例問題の演習を行うことが求められるように思われる事例問題の演習においては条文をきちんと読み問題文の中から関係する事実を拾い出してそれを条文に当てはめたり法的に評価したりする作業を丁寧に行うことなどを意識すべきだろう

多くの受験生に対して感じることだが自分の実力に合わない「100段飛びの学習をしてしまっているように思う法学の基礎基本をしっかり固めなければ崇高な法議論は一向に理解できないただ理解できていないことを理解できない受験生が多いのが現実である暗記さえすればやり過ごせてしまう場面が多いからであるそれを許さずその実力に応じた基礎固めを徹底してほしい

 

・ 法曹実務家は現実の紛争解決に有効な法理論を身に付けることが求められるそして現実に生起する紛争事案は二当事者間の対立紛争という比較的単純な事案ばかりではなく紛争当事者が三者以上存在したり利害関係人が多数存在するような事案も少なくなくそうした複雑な紛争につき適切な法理論を用いて的確に解決に導くことが求められるそのためには基本的な法理論を土台ないし根本から深く理解することが重要であり,「応用力というのはその発現形態にすぎないすなわち法理の基本に立ち返って深く掘り下げることができるような思考力を涵養することが真の応用力を身に付ける早道と思うのでそのような観点からの教育を期待したい下線部は筆者

→「法学の基礎基本を徹底せよ」「正しい法的思考を身につけよという点は上記で述べたとおりである下線部は、「応用力の前提としてこれらがポイントになることを明示的に指摘しているその通りだと思うしそもそも応用力は付けようと思って付けるものではないとも思う基礎固めをしていたら応用力が身についてしまっているのであるそれが正しい法学習のあり方である

 

・ 今回の答案の全体的な傾向は法律家としての思考が表現されている答案が少なかったことにあるように思う生の事実をただ拾うのではなくそれが法的にどのような意味を持つのかどの法令のどの文言との関係で問題となるのかなどについて考え表現する癖を付ける教育が望まれる

→「どの法令のどの文言との関係で問題となるのかを考えるのは法学の基本である誰に言われるわけでもなく当然にやってほしい

 

 申請に対する不作為を手続的瑕疵と捉え手続的瑕疵が処分の取消事由に該当するかという論点につき検討した答案が少なくなかった点は予想外であったそのように解答した者の言い分は行政手続法第条違反であるから同法第条や第条に違反した場合と同様に考えたということであろう確かにこれがなぜ誤りであるかという点につき明確に説明している行政法教科書は余り見かけないように思われる法科大学院の授業でも十分に触れられていないかもしれないもっとも,①手続的瑕疵が処分の取消事由に該当するかという論点が存在する理由あるいは不作為の違法確認訴訟が行政庁の不作為という判断自体の適法性を争う訴訟であることを正確に理解していればそのような誤った理解には至らないと思われる受験者には正確な理解が求められるが法科大学院での行政法の教え方についても考えさせられるところがあった

出題者からすると何でこんな間違いをするんだ??」と戸惑ったことだろうと思うその原因は正しく法律を学んできたものが持っている感覚とそうでないものの感覚にズレがあるからだと思う。「考えるまでもなく違うという判断が正しく出来ることは、「間違いを犯さないためには大事なことだと思う普段から正しい法的思考を繰り返し法律の世界における常識を身につけてほしい

 

 設問への解答において行政裁量を論じる必要があるか否かをよく考えずに裁量の有無裁量の逸脱・濫用を検討する答案が目立った本案における行政処分の適法性の検討においては事案のいかんを問わずとにかく行政裁量を論じれば良いと考えているのではないかと疑われる答案が全体としては優秀な答案の中にも少なからず見られ事案を具体的に検討することなく裁量の有無裁量の逸脱・濫用に関する一般論の展開に終始する答案も少なくないなど行政裁量の問題が飽くまでも法律解釈の問題の一部であるという基本的な事柄が理解されていないと実感した行政裁量に関する基本的な学習に問題があることがこのような設問によって逆に明らかになったように思われるがこれまでの行政法総論の学習教育の在り方全体を見直す必要があるのではないかという気がした

→「行政裁量の問題が飽くまでも法律解釈の問題の一部であるという基本的な事柄が理解されていないとの指摘は全くその通りである本当に行政法総論の学習教育の在り方全体を見直す必要があるこれは行政法だけでなく他の科目においても言えることである判例・学説という法議論の花形に目を奪われている場合ではない条文を中心に据え法学の基礎基本を徹底的に学ばなければならない

 

(民事系の採点実感はまた後日)

 

※とにもかくにもまずは「法学基礎力」。

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