予備試験に合格した私だから伝えられる!法学の基礎基本!

予備試験・司法試験の合格を目指していた私が法学の基礎基本とは何か…ということに悩み苦しんだ結果、たどり着いた答えを書き綴っていきたいと思います!難しい論点を解説しようとはしていません。法律の資格試験に合格するのに必要なことは法学の基礎基本を見極め、理解することだけです!

令和2年公法系第二問の採点実感を読んでみた~その3~ 「条文は命綱」と心得よ

当たり前のことしか書いていない採点実感を読む

読んでみたシリーズその1、その2も是非チェックしてくださいね。

 

以下、採点実感より。赤字は筆者。

設問1⑵

全体について

 不作為の違法確認訴訟における訴訟要件や本案要件について条文を引用し問題文の事案を丁寧に拾って要件への当てはめをするという形式的なことができていない答案が多かった理論的ないわゆる論点と言われるものの議論も重要であるが実務においても訴訟要件及び本案要件の当てはめは基本であり普段の学習においてもないがしろにせず注意するよう心掛けてほしいところである

当たり前の話過ぎるのであるこんなことすら出来ないで司法試験に合格することは絶対にあり得ない仮にあったとするならそんな試験は実務家登用試験として失格である条文の引用要件へのあてはめは法学の基本中の基本だからであるそして論点はその基本の上に初めて成り立つものであるからである論点主義に対する批判も基本を疎かにする姿勢に対する批判に他ならない

 

申請の不受理や申請書の返戻は正に行政手続法第条違反になる場合であり本問でも同条により市に審査義務が発生していることは多くの答案が指摘することができていたと思うだが不作為の違法確認訴訟の訴訟要件との関係で本件申出書の返却が法的にどのような意味を持つのかという点に言及することができている答案は少なかったまた本件申出書の返却を申請拒否処分と捉えた答案もあった

論述が不十分だったということであるそのことに自覚的なら問題はそれほど大きくない問題は無自覚的に論述が不十分である答案でありそういった答案は意外と多い無自覚であるがゆえに直さないからである

 

 行政手続法に即して本件申出書の返送やその違法性を説明している答案は余り見られず,1年間が経過していた事実のみから直ちに違法とする答案が少なくなかった

そもそも行政手続法の問題であるということに対する意識が希薄な受験生が多かったのではないかと思う検討すべき条文から離れてしまうとそれだけで点数を落としてしまうのである逆に適切な条文選択をしていれば条文の文言に沿って検討するだけでいい。「条文は命綱である

 

抽象的に不作為の違法確認訴訟の訴訟要件が何であるか記載されていても訴訟要件への本事例の当てはめがされていない答案もあり本件で肝心な相当な期間の経過についても検討が不十分な答案が多かった一方で申出書の返却と行政指導について厚く論じる答案もありバランスの悪い答案となっていた

→「答案のバランス感覚いわば常識的判断を求められているのである司法試験の難しさはこういう暗黙知の多さにあると思う言われなくてもわからないといけないし言う方も説明が非常に難しいのである数をこなすことでしか身につけられない感覚があることそれは受験生に対しても当然に求められていることを自覚してもらいたい言われたことを覚えるだけが法律学習ではないのである

 

 不作為の違法確認訴訟の訴訟要件・本案要件の充足の有無を検討するに当たり行政事件訴訟法条第37条に基づく検討とは別にいわゆる確認訴訟における確認の利益の有無即時確定の利益対象選択の適否方法選択の適否などを検討する答案が少なからず存在した不作為の違法確認訴訟の確認に引きずられたのであろうかそれとも不作為の違法確認訴訟においても確認の利益の有無を検討すべしといった教育を受けたのであろうか非常に違和感が残った

不作為の違法確認訴訟の訴訟要件・本案要件について検討したことがある受験生はあまり多くなかったのではないかと思う。「確認訴訟という響きから確認の利益に言及したくなる気持ちはわからなくはないただ司法試験の鉄則を思い出してほしい。「間違えないことが大事である知らないことは長と書かない条文に書いてあることについてだけ淡と論じていればいい。「守りの答案を書くための秘訣である

 不作為の違法確認の訴えにおいては何も処分がされていないことが前提であるから何らかの処分がされ当該処分を争う訴えを起こすことが可能となる時点を特定することが前提となる出訴期間の定めが適用される余地はないはずであるのに不作為の違法確認の訴えにも出訴期間の定めの適用がありその要件を満たしている旨を論ずる答案が散見された出訴期間の意義について理解が不足しているものと思われた

出訴期間の意義も何も条文を読めばわかる話である出訴期間の理解も不足しているし条文を読むという当たり前のことも出来ていないこのようなミスをする受験生が設問のような個別法解釈に挑んでも玉砕することは目に見えている

 

 申出書の返送後,Xと市職員とのやりとりを行政指導と捉えた答案が少なからず存在した許認可の申請前後の行政と市民とのやりとりは行政指導でよく扱われることは事実であるが本件における職員の発言内容には行政指導の要素は含まれていない思い込みが先行してしまい問題文の読み込みが不足しているように思われる

→Xと市職員のやりとりを行政指導であると捉えた受験生は行政指導の定義行手法26を読んだのだろうか。「思い込みの先行問題文の読み込みが不足するのは条文に基づいて具体的事実関係を正確に整理できていないからである繰り返しになるが条文は命綱である条文に従って考える習慣が身についていれば防げるミスは思いの外多いはずである

 

少数ではあったが被告を市が所属する県とすべきとする答案もあったところ,A県と市は別個独立の公共団体でありそれぞれ独立の被告適格を有するという半ば常識によって判断し得る事項を理解できていなかったのは残念であった

常識のない法律家は、「常識がないと批判される法律による正義の実現は常識なくしてあり得ないからであるなお被告適格も条文を読めばわかるはずであるこういう部分で間違えを犯さない答案をいい答案だと思ってほしい

 

訴訟類型の選択

 問題文中に抗告訴訟という指示があるなど問題文がかなり解答の方向を限定していたため訴訟の類型については多くの答案が不作為の違法確認訴訟と解答することができていたただし差止訴訟無効確認訴訟とする答案も散見されこれらは訴訟類型の理解が十分ではないかあるいは事案を誤解しているのではないかと思われた

訴訟類型を間違えるということは適用すべき条文を間違えるということであるすでに述べた通りこれは看過できないミスである日頃の学習段階から的確な条文を見つける訓練は努めてするべきであるそこで鍛えられる能力は精緻な法律論を組み立てる基礎となる

 

 申出拒絶の取消又は無効確認訴訟,②申出書の返送の取消訴訟,③申出拒絶処分の差止訴訟,④申出に対する応答を受ける地位を有することに係る確認訴訟公法上の実質的当事者訴訟を指摘する答案があった。①及び会議録において申出への拒否処分自体がされていないことを前提とするよう指示されている以上取り消す又は無効を確認する対象となる処分が存在しないことを前提として検討すべきことと整合せず,③,B市が申出書を返送して申出を受理しないとされる状態にしている以上処分をする蓋然性自体がなく,④抗告訴訟には該当しないから,「Xが提起すべき抗告訴訟について検討しなさいという問題文とは整合しないものであることが明らかであるこのようにこれらの訴訟は少し冷静に考えればいずれも提起し得ないものであることに容易に気付くことが可能なもの現に途中で気が付いて正しく修正できていた答案もあった。)であり行政事件訴訟法に掲げられた訴訟類型の基本的な理解を定着させることが重要である下線部は筆者

どの訴訟類型に該当するのか一つ一つ要件を検討するようにチェックしていけばよかったのである下線部の答案は答案構成段階で間違っていた点は残念であるがそれでも最終的に修正できたのは正しく検討できていたからである繰り返しになるが司法試験では間違えないことが大事である間違えないためには知識を増やすこと以上に正しく検討できるように訓練しておくことが大切である法的に正しい検討方法は間違いが発生しにくい日頃の学習は知識を増やすこと以上に正しく検討出来ているかを意識して進めてほしい

 

 ほとんどの答案は正しい訴訟類型を選択していたが当該訴訟類型を選択したことの正当性を自覚的に論証した答案は必ずしも多くはなかった普段から検討の機会が多くはない訴訟類型が問題として取り上げられたことが理由として考えられるほかに問題文に書かれていた事案の事実状況が慎重に検討されていないことも関係しているのではないかとも思われる

→「当該訴訟類型を選択したことの正当性言い換えれば結論の妥当性の問題である法律論を展開する場合常に結論の妥当性はチェックするべきである答案に書くかどうかはまた別の話)。妥当性に欠ける結論は、「正義を実現するものとは言えないからであるこれも法学の基本である

 

申出が申請に該当すること

 申出が行政手続法上の申請に該当しそれが行政庁に到達することによって行政庁の審査及び応答義務が生ずるにもかかわらず応答がされていないことの問題点を論ずる必要があるという問題の基本的な構造は理解できている答案が比較的多かったもののこれを正確に文章で表現できている答案は少数にとどまった

文章表現力は日頃の練習の成果がもろに表れてしまう部分である文意が分かりやすい答案が文章表現力の高い答案だと思うそれだけで何となく分かっている感じがする何だかざっくりとした話に聞こえるかもしれないが意外と印象点は大きいのであるそれは加点材料というよりミスをしたときの傷の浅さにつながっているような気がする

 会議録においては,X置かれている状態や市による対応の法的な意味を検討した上でと記載されているにもかかわらず申出書の到達により行政手続法第条の定める審査義務が発生していること到達後の市による申出書の返却行為は法的には無意味であり申請である申出は応答されていない状態であること申出書の返却が法的には無意味であることなどについて丁寧に記載している答案は少なかった多くの答案がこのような検討をしないまま市の対応が不作為である旨を端的に指摘するにとどまり中には,B市の不作為があることを摘示することすらせず不作為があることを当然の前提として他の要件の検討のみを記載する答案も散見された

論述の丁寧さはこだわりたいポイントではあるが筆力には個人差があるのはれっきとした事実であるこの現実を受け入れた上で、「自分に書ける分量の中で最善を尽くす必要がある覚えておいてもらいたいのは、「たくさん書いてある答案いい答案ではないということである。45ページ以内の答案でもAは取れる条文の引用や論述の正確性・論理性などを意識してまずは間違いのない答案を目指してほしい事実の適示や評価などを通じて記述量を増やすのはその先の話である

 

 申請に対する応答義務があることを暗黙の前提として論ずるにとどまりそれを定めた行政手続法第条を指摘することができていない答案がかなりの数に上った申請に対する応答処分がないことが違法であることを指摘するためにはその前提として申請に対する応答義務が存在しなければならないという当然のことをきちんと文章化できるかどうかというところに普段の学習の程度や実力の差が現れたと思われる

→「義務違反義務の存在その不履行違法という基本や条文の引用という基本を意識して論じていたかその点が普段の学習の程度や実力の差だと言っているのである漫然と教科書を読んでいるだけでは気付かないのではないだろうか入門レベルの基礎基本が司法試験でも合否を分けるポイントになるのである

 

不作為の違法確認の訴訟要件

不作為の違法確認訴訟を挙げることはできているものの不作為の違法確認訴訟の理解が不十分と思われる答案が多く見られた例えば義務付け訴訟と区別できていないのではないかと思われる答案が見られたまた不作為の違法確認訴訟の訴訟要件の理解が不正確な答案も少なくなかった

→「理解が不十分だったのは試験に臨むまでの学習に漏れがあったからであるこれは仕方ない残念ながら試験当日までに試験範囲のすべてを完璧に押さえていくことは凡人には不可能であるその上で大事なことは何度も繰り返すように間違えないことである傷は出来るだけ浅く済ませたい具体的には間違った条文を引用しないこと条文の文言から離れないことを意識してもらいたい

 

訴訟要件の充足性は訴訟要件を定める法令のどの文言に対応するのかを理解することなくしてこれを正確に検討することは不可能なはずであり事実に法律を正確に適用することが法律実務家にとって最も基本的なスキルであることを意識することが大切である

これまで繰り返してきた内容を明確に指摘してくれていることに感謝したいくらいである大事なことは全てここに詰まっているといっていいこれが出来るようになれば法律学習は勝手に深化していく

 

(続きは明日)

 

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