行政法論文式試験の肝 書けそうで書けない処分性
平成30年予備試験行政法! 懇切丁寧な過去問添削
今回は、平成30年予備試験行政法の添削例をご紹介します。
本件勧告と本件公表の処分性を問う出題でした。処分性というと多くの受験生がその定義を正確に書きますから、規範レベルで相対的な差が付くことはあまりないと思います。
むしろここで差が開いているようでは、だいぶ厳しいでしょう。
以下の添削例では、最低限書けなければならないこと、そしてそこにどうプラスアルファを加えるか、解説しています。
処分性(行政事件訴訟法3条2項←「事件」が要ります。法令名は正確に!!)の規範は、できる限り判例の規範をそのまま書けるようにしておいた方がいいかと思います。処分性・原告適格に関する判例の規範は、受験生の99.9%くらいの人が書けると思うので、ここで書けないと相対的にマイナス評価です。特に近年は規範の正確性を重視した採点がなされる傾向が強まっているようなので、注意が必要です。答案中の規範をみると、判例の言う「・・・法律上認められている」的な部分が抜けていると読めますが、ここは落とさない方がいいと思いました。この点が取り立てて問題とされることはありませんが、「法律に基づく行政の原理」という観点からすると処分について法律上の根拠が必要なのは当然の話になるからです。判例の規範を知っているということと行政法上の基本的な考え方を知っているという2つのポイントに関わる問題です。
「そして・・・」以降、考慮要素を示した部分ですが、評価される記述かどうか確信が持てません。というのは、「事後的に争うことや他の方法によるのでは権利救済が見込めない」という記述は、差止訴訟(行訴法37条の4)の「重大な損害を生ずるおそれ」(同1項)の要件に係る規範とよく似ていて、要件相互の区別が付いているか疑わしく思われるからです。「実効的権利救済の観点から」「合理的であるかどうか」を判断するという視点は、いいと思います。ただ、「事後的に争うことや他の方法による」という記述の意味をより明確かつ具体的にできた方がよかったと思います。本問は、抗告訴訟の処分性が問われているので、必ずしも差止訴訟に限られない規範定立が求められています。抗告訴訟によるか、それ以外の手段での救済を図らせるのか、という区別の基準が欲しいのです。
予備試験は、司法試験に比べて出題趣旨・採点実感など「答案はこう書くべき!!」という指針になる情報が少ないのが難点です。ABprojectは、とことん法学の基礎基本にこだわって、最低限ここはマスターしてほしいという部分を徹底指導します。
それが予備試験論文式試験突破に向けた必要不可欠な一歩になるからです。