行政法課題テスト②正解発表 真の法律家になるには?
「判例・通説だから」って言う人の法的素養
昨日のブログは、「『エビデンス』を妄信していてはダメなのでは」というテーマでした。今回はその続きです。
研究者の仕事は、ある意味「エビデンス」を疑うことが仕事ですから、エビデンス至上主義に陥ることは少ないかもしれません。一方で、資格試験など「実益」を求められる場面では、「とりあえず『エビデンス』に従っておけば・・・」という思考になりがちだと思います。たとえそれが自分の考えと違っていても、最悪その「エビデンス」が誤りを含んだものであっても・・・。
しかし、プロフェショナルとして生きようとする人間が目先の「実益」に目をくらませ、真の正しさとは何か?を追求することをやめてはいけないと思います。
今回は、エビデンス至上主義に陥ったままプロフェッショナルになると何が起きるか?医学の現場からヒントをもらいたいと思います。
例1・・・エビデンスを悪用する製薬会社
法律の専門家としてエビデンスを活用することは必須ですが、それを疑い、時にそれを覆すくらいの気概をもっていなければ、エビデンスに流されるだけの「薄っぺらい法律家」になってしまうと思います。
法律家の仕事は、エビデンスを守ることではなく、クライアントの「真の利益」を守ることではないでしょうか?
例2・・・「エビデンスがないから」救われない命
法律の世界でも前例が乏しいあるいはまったく存在しないケースは多々あります。そんなとき、エビデンス至上主義の立場に立ち、「信頼できるエビデンスがないから、訴えを諦めてください。」というのでしょうか?
法律家には、少数派の利益を守るために自らエビデンスを創出すべき使命もあると思います。与えられた「エビデンス」を鵜呑みにするだけでなく、その真の意義を問い、「エビデンス」の先へ進む力は、法律家を目指す今から養っていくべきではないでしょうか?
例3・・・結局一番大切なのは目の前にいる患者様
教科書等で学ぶ学説・判例は、基本的に過去に起きた事例に関する見方や考え方を示すものです。もちろん、将来起きる事例についてその見方や考え方をそのまま「踏襲」(詳しくは記事を読んでください)することが出来る場合もあります。
しかし、全ての事例は、少なからず「何か違う部分」があります。その違いによっては、似た事例でも全く異なる見方や考え方をしなければならないこともあるでしょう。
要は、一番大事なのは、目の前にある「その事例」について深く考えることなのです。過去の事例に照らして使えるエビデンスを探すだけの勉強では、一番大事なことを見落としてしまうように思います。
予備試験・司法試験でも、判例と少し状況を変えた出題が度々行われます。これは、既存のエビデンスだけに縛られず、目の前の事例に向き合うことの大切さを暗に伝えるものと言えるのではないでしょうか?
それでは行政法課題テスト②の正解と出題者の一言です。
まだ問題を解いていない方は、こちらからご覧ください。
問1→○
(出題者の一言)「論点として教わった内容以外は、法的に問題にはならない。」と考えるのは誤りです。争点とならなくても、法的にどう扱われるべきか、確認しておくべき話は、たくさんあります。そこを押さえる習慣があるか否かは、論点の理解度につながっていきます。
問2→×
(出題者の一言)前半は、行政法分野で学ぶ内容が刑事訴訟と絡んできた事例ですね。後半は、取消訴訟において「処分性」が争われる典型事例です。いずれの事例も「通達の適法性」を争おうとする点で共通していますが、それ同時に存在する「違い」に注目してほしいです。
問3→×
(出題者の一言)この問題は2つの論点に分けて分析できるといいなと思います。信義則を始めとする一般原則は、いつも「最後の手段」です。
問4→○
(出題者の一言)「行政法の論文問題=裁量権逸脱濫用」というようなイメージで、裁量権逸脱濫用を安易に使ってしまう人が多いように感じます。しかし、実際にはなかなかトリッキーなことをしていることを意識できていますか?通常の要件効果論とは趣がが違うことを感じられていると嬉しいです。
問5→○
(出題者の一言)通常、当事者を拘束する義務は、契約や法律に明記されているはずです。これが原則です。そうでない場合に当事者の義務を認めることは、例外であって、それを認めることには慎重さと丁寧さが求められることを意識してほしいです。
次回行政法課題テスト③(最終回)は2021年1月4日公開予定です。
テスト範囲は以下の通り。
2・行政救済法
・行政不服審査法とは
・行政事件訴訟法とは
・国家賠償法とは
・損失補償とは(憲法の復習)
3・地方自治
・憲法の復習
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