令和元年行政法過去問添削例をご紹介 ABprojectをまだ知らないという方、遅れてますよ
令和元年行政法の過去問添削、最終章へ!!
令和元年行政法の設問2(2)はズバリ裁量権の逸脱濫用について問われていました。
誘導文の中に考慮すべき事情も多く、制限時間も厳しい中で多くの受験生が意外と苦労したのではないかと思います。
「なかなかうまく書けないな」と思うときこそ、自分ができること、基礎基本に忠実な姿勢がより大切になります。自分的にうまく書けていなくても、基礎基本に沿って当たり前のことを当たり前に出来ていれば、全体としてみて十分な点数は付きます。
裁量権逸脱濫用の論点は多くの受験生が書き慣れすぎて雑になりがちです。以下の添削では、基本が何なのかを改めて説示しています。
・裁量権の違法性判断基準について
要件裁量を認定した後、直ちに裁量の逸脱濫用の検討に入ってしまっているのは、論理の飛躍があると思います。要件充足性の検討は、原則として要件に当てはまる事実があるかないか、で判断されます。しかし、裁量権逸脱濫用の論理は、事実の有無にとどまらず、その評価を前提に判断の合理性を検討し違法性を判断するというものです。つまり、原則的な違法性判断方法とは、一線を画するものです。従って、裁量権に関わる違法性判断を行う場合は、裁量が認められている点について裁量権の逸脱濫用があって初めて違法性が認められるという理屈を明確に説明すべきだと思います。その上で、裁量権逸脱濫用の判断基準定立・あてはめに入ってください(行訴法30条は直接適用できないことに注意)。
裁量権逸脱濫用の判断基準ですが、「判断過程に誤りがあり、結果が著しく妥当性を欠く」という規範は、規範としての精緻さを欠くと思います。まず、判断に誤りがありという部分ですが、仮に「誤り」でなくても具体的な事実関係の下で社会通念上「不合理」と言えれば、裁量権の行使として認めるべきでないと言いうる場合もあると思います。また結果が著しく妥当性を欠くという部分については、結果の妥当性だけでなく、判断過程の妥当性も考慮されるべきですから、「結果が」著しく妥当性を欠くと限定するのは相当でないと思います。判例や合格答案等を参考にして規範の見直しを図ってみてはいかがでしょうか。今後も裁量権の話は必ず聞かれると思いますので、重要なポイントです。
・あてはめについて
どう書くか難しかったのではないでしょうか。論じ方に方向性が感じらず、苦労されているように感じました。B県の反論に正当性がない旨の主張は概ね適切になされていると思います(会議録の分量に比べて解答量が少ないと感じましたが、時間制限もあるのでやむを得ないでしょう)。しかし、B県の反論部分とそれに対する自説部分が完全に分かれてしまっているため、主張反論の対立構造があいまいな論述に終わってしまっていると感じました。どうすれば改善できるのか、以下で示したいと思います。
あてはめは、規範に沿って事実を評価していく作業のことですから、規範に沿って事実関係を整理していく必要があります。また、事実評価は、一事実一評価が基本です。とすると、まず裁量権逸脱濫用の判断では、裁量権逸脱濫用の考慮事情である考慮不尽や他事考慮等(お持ちの教科書等で是非確認してください)を念頭に置いて論述を進めていく必要があります(この点の意識は、本答案でも見られました)。次に、一事実毎に検討して考慮事情(要件)にあてはめていくという姿勢が求められます(この点の意識が希薄だったように思います)。「道路ネットワーク形成」のメリット、本件道路の交通量が増加することによる周辺環境への影響、本件道路の小学校への影響、地下水への影響等、各項目はそれぞれ別個の事実上の問題です。それぞれについて問題点を検討してください。このように論述の構造を修正すれば、もっと書きやすくなると思います。
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