あてはめが苦手な受験生 具体的にどうすればいいの?
最難関行政法のあてはめ問題 カギは事前準備にある
今回も平成30年予備試験行政法の設問1からです。
昨日は、規範に関する添削例を出しましたが、今回はあてはめです。
※昨日のブログはこちら!!
具体的な答案の内容は割愛していますが、添削者が答案の何を見ているのかは、かなりリアルにわかると思います。
そもそもあてはめの良し悪しは規範に対する理解に左右されることから接続詞の使い方まで、非常に細かく添削されている点に注目です。
(1)アは、これくらいでいいです。だいぶ簡潔だと思いますが、書く分量が多いときはこういうことも必要です。(1)イの「しかし」以下は、再考が必要だと思います。ここで法効果性を認めること自体は、必ずしも間違っているとは言えないと思います(少々苦しい主張かなと感じますが・・・。簡潔に済ませるなら、こういう戦い方もありだと思います。)。ただ、規範に照らして考えれば、法効果が「国民」Xに「直接」発生していることを認定する必要があります。答案の書き方だと、条例50条から知事に公表をするか否かの裁量がないことを根拠として明示しているにすぎないため、勧告に伴う公表義務がY県知事に課されている(法効果)という記述に読めます。法効果性を認定したいのであれば、Xに公表の受忍義務があることを明示してほしいところでした。それから、出題趣旨では意見陳述の機会付与(条例49条)に言及されていますが、不利益処分と手続保障(行手法参照)は、本来セットになるべきものですので、条例49条から法効果性の論述を組み立てることも可能だと思います。他の法構造をヒントにして当該法の構造を検討する手法は、よくある戦い方の一つなのでこれを機に覚えておけるといいかもしれませんね(実際にやるとなると非常に難しいのですが・・・)。
ちなみに、本問では本件勧告と本件公表という段階の異なる2つの行為の処分性が問われていますが、こういう対比構造が見られる場合、いずれも同じ結論になるパターンはかなり珍しいです(刑訴法でもそうですよね)。先入観を持って問題に望むことは危険ですが、こういう視点も持っていると幾分か書きやすくなるかもしれません。
それから、文章の問題としてイの「また」という書き出しが気になりました。アは要件充足(X?の立場)を認定し、イの書き出しで「また」とくると引き続き同じ立場であるかのように読めるので違和感を感じます。適切な接続詞がほしいです。
(2)に行きます。イの冒頭(「しかし」の段落まで)では、まず、本件公表自体に明確な法効果性がないことを明示してほしいです。Y県の反論では、本件公表に法効果性がないことを認定できていますが、Xの主張では本件公表が他の法効果発生の要件であるか否かという視点で書かれています。ここに対立点の食い違いが見られます。まずは、本件公表(処分性を検討すべき行為)そのものが「直接国民の権利義務を形成するか否か」という要件検討の第一段階の結論をクリアにしてほしいです。仮に明確な法効果性が認定できないとすれば、実質的な法効果性があるかどうかの検討に移ります(実効的な権利救済の問題です)。「しかし」以下がこの問題の検討になるかのように思われましたが、この部分の記述は前述した「重大な損害が生ずるおそれ」(差止訴訟の要件)の検討になってしまっていました。この記述から前述の処分性の規範に対する理解が不十分ではないかという懸念が現実のものになります。処分性で問題となるのは、あくまで直接かつ具体的な法効果あるいはその発生と同等に扱うべき事情の発生であってそれ以外の問題は別物です(要件に忠実に検討し、それ以外の事情に振り回されない姿勢は、参照条文も多く、問題文も長い行政法では特に重要です)。ここでは、あくまで公表に伴う重大な不利益が生ずることを論ずれば足り、事前差止の必要性を論ずることは求められていないと思います。