予備試験に合格した私だから伝えられる!法学の基礎基本!

予備試験・司法試験の合格を目指していた私が法学の基礎基本とは何か…ということに悩み苦しんだ結果、たどり着いた答えを書き綴っていきたいと思います!難しい論点を解説しようとはしていません。法律の資格試験に合格するのに必要なことは法学の基礎基本を見極め、理解することだけです!

令和2年刑事系第一問の採点実感を読んでみた~その4~ 例年指摘している・・・

例年指摘していることが出来ない人は合格する気がないのか、と思う。

こんな風に思うのは、初歩的なミス過ぎるからである。

こんなミスをする人が実務家になることを考えただけで恐ろしい。

(赤字は筆者)

※その1、その2、その3もご覧ください。

 

 

その他

例年指摘している点でもあるが用語の間違い全体財産と個別財産等がある答案や文字が乱雑で判読しづらい答案基本的用語の漢字に誤記がある答案が散見されたまた文章の補足・訂正に当たって極めて細かい文字で挿入がなされる答案も相当数あった時間的に余裕がないことは承知しているところであるが採点者に読まれるものであることを意識して大きめで読みやすい丁寧な文字で書くことが望まれる

用語の間違いは基本的理解の不足誤記は注意力不足文字が乱雑なのは自分自身もそうだったので強くは言えないが)、大き目な文字・文字間の間隔を空けることに注意してもらいたい

 

答案の水準

 

法科大学院教育に求めるもの

刑法の学習においては刑法の基本概念の理解を前提に論点の所在を把握するとともに各論点の位置付けや相互の関連性を十分に整理し犯罪論の体系的処理の手法を身に付けることが重要である

→「論点の所在の把握各論点の位置付けや相互の関連性を十分に整理出来るのは犯罪論の体系的処理の手法を身につけているからである闇雲な論点の暗記ではなく初期段階で学ぶ刑法的思考の体系を意識して一つ一つ要件あてはめを積み重ねていく意識が大切である

 

一般的に重要と考えられる論点を学習するに当たっては一つの見解のみならず他の主要な見解についてもその根拠や難点等に踏み込んで理解することが要請される論点をそのように多面的に考察することなどを通じて当該論点の理解を一層深めることが望まれるまた刑法各論の分野においても各罪を独立して学習するだけではなく例えば財産犯であれば財産犯全体に共通する総論的横断的事項を意識しまた犯罪類型ごとの区別の基準を重視した学習が望まれる丸数字は筆者

→①近年重視されている傾向である各学説が何を言っているかも重要であるがそれ以上にどのような視点で何を重視しているかを整理することが大切であると思うそれを学ぶことで法的に考える力が磨かれるからである添削指導をしていると受験生間に大きな知識量の差はないように思うしかし目の付け所や思考展開の上手さには明確な差が感じられるそれも一種の知識によるものかもしれないが、「暗記の努力ではなく、「学び方の工夫を重視しないとなかなか身につかないように思う。②条文相互の関連性に目を向けろと言うことであろう刑法に限らずどの法律においても重要な視点である

 

さらにこれまでにも繰り返し指摘しているところであるが判例を学習する際には結論のみならず当該判例の前提となっている具体的事実を意識し結論に至るまでの理論構成を理解した上でその判例が述べる規範の体系上の位置付けやそれが妥当する範囲や理論構成上の課題について検討し理解することが必要である

このような点が大事なのは判例だからである法はその道具としての性質から具体的な事実関係との間でのみその機能を発揮するゆえに具体的事実関係との関連を踏まえどのように使うのかを意識しないと法が道具として如何に機能するのかその本質を理解することが出来ないのである面倒くさいかもしれないが理解が進んでこれば、「全てを読まなくても大体予測がつくという状態になる理解が深まっていくとはこういう状態であるちなみにこれは上記の感覚にまつわる話である

 

例年取り上げるべき論点の把握が不十分なまま論証パターンを無自覚に記述するため取り上げなくてよい点についてまで長と論じる答案が目に付く事案の全体像を俯瞰して事案に応じて必要な点について過不足なく論じるための法的思考能力を身に付けることが肝要であるこのような観点から法科大学院教育においてはまずは刑法の基本的知識及び体系的理解の修得に力点を置いた上刑法上の諸論点に関する問題意識なぜ問題となるのかを喚起しつつその理解を深めさせさらに判例の学習等を通じ具体的事案の検討を行うなどして正解思考に陥らずに幅広く妥当な結論やそれを支える理論構成を導き出す能力を涵養するようより一層努めていただきたい

→ABprojectではかねてより法学の基礎基本が大事であると繰り返し提唱しているこれは司法試験合格レベルでも変わらないようである優秀層の言うことに必死にくらいつくのも大切であるが一旦立ち止まって足元を見、「法学の基礎基本を固める選択をしてもいいのではないか基礎基本を固めるための方法は何も難しいものではない要件効果を意識して法的三段論法を繰り返せばいいのであるその過程で法学の基礎基本勝手に身につく急がば回れである

 

※当たり前のことを当たり前にできるようにするABprojectの徹底指導。

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令和2年刑事系第一問の採点実感を読んでみた~その3~ 見えないものを見えるようにするにする

「なぜできないのか?」を基礎基本から説明する。

 

基礎基本に立ち返らないと見えないことがあるのに、先を急ごうとするのはナンセンスです。

(赤字は筆者)

 

イ 設問について

本設問では出題の趣旨で記載したないしの事実を挙げつつこれを根拠に実行行為性又は実行の着手因果関係及び故意を否定するための理論構成を記述することが求められていたが多くの答案は必要な記述を展開することができていた

他方理論構成に関する基本的理解が不足しているとの印象を受ける答案も目立った例えば因果関係を否定する場合には被害者の特殊事情を判断資料に含めるべきかという視点が不可欠であるところこのような視点を欠いたまま諸般の事情の総合的判断によって因果関係を否定するなど論理過程に疑義のある答案が散見されたまた甲が第行為を止めたことに着目して甲に中止犯が成立し殺人未遂罪になるため殺人既遂罪は成立しないと結論付ける答案も相当数あったしかし中止犯は未遂犯の成立を前提とする以上中止犯が成立することが殺人既遂罪の成立を否定する理由とならないことは明らかであるこれらの答案はいずれも総じて論証パターンを無自覚に記述しているにすぎないとの印象を受けた

この辺りの知識は短答過去問でも触れられているはずである短答過去問の学習は同時に論文対策にもなる予備試験・司法試験の過去問は論文・短答問わず十分に繰り返しておいて損することは絶対にない刑法の基本的理解をサポートしてくれる再考の素材ばかりである刑法に限ったことでないが)。

 

ウ 設問について

本設問では前述のとおり,⑴ないしの各行為の擬律判断が求められていたところこれら各行為をまんべんなく検討している答案は少数であった。⑴の行為についてはそもそも項詐欺罪の成否が問題となることを把握できていない答案も多かったがこれを把握できている答案についても甲が自己名義の預金口座から犯罪によって得た金員の払戻しを請求しているという事情を適切に評価している答案はごく一部にとどまった

→「少数であったという記述から推測するに多くの受験生にとってこの部分は難しかったのであろうこの点に言及しなかった答案は、「甲が自己名義の預金口座から払戻を受けていることを評価した結果であろうかしかし、「犯罪によって得た金員の払戻しという特殊事情(=典型的なケースでは存在しないであろう事情に注目して要件検討をする姿勢は見せられたのではないか。「要件効果という基本に立ち返って粘りを見せられた受験生は知識の有無に左右されない正しい法的思考を身につけているものと思われる

 

の行為については横領罪の成否が問われていることを把握できてはいてもその客体が500万円に限定されることや検討対象となる行為と客体の特定を意識的に結び付けて論じることができている答案は必ずしも多くなかった

この点については上記の通り

の行為については早すぎた構成要件実現の処理が問われているところ甲の計画に反し行為によっての死亡結果及び財産上の利益の移転が現実化しているため,2項強盗殺人罪の成立を認めるためには同罪の実行行為及び故意が認められるかを具体的に論ずることが必要になるがそもそも問題の所在を適切に指摘できている答案は少数にとどまった例えば多くの答案が出題の趣旨で記載した最決平成1622刑集58187頁が示した判断要素を前提として行為の段階で実行の着手が認められることから故意既遂犯の成立を導いていたが実行の着手が認められることがなぜ故意既遂犯の成立を認める論拠となるのかについて十分な説明を欠いている答案が多数であった

判例をそのまま覚えているだけだから説明できないのである故意既遂犯が成立するためには何が必要なのかを意識していれば判例の内容を改めて整理してインプットしそれを答案上でも表現する必要があることに思い至るはずである

 

強盗の実行行為性すなわち第行為自体あるいは第行為と一体的に評価された第行為が強盗罪にいう暴行に該当するか否かについて論じることができている答案は少数であった

ここは多くの答案において条文の文言に着目すること実行行為性という構成要件に着目することという基本が出来ていないと指摘されたものであるこれらはいつも当たり前に意識すべきことであるなぜなら犯罪成立を導く法的根拠であり要件であるからである

 

他方強盗罪の実行行為性を認める立場からは同罪の手段と評価し得る行為によりが死亡した本事例では強盗の機会性の有無について論じる必要はないはずであるのにこれを長と論じる答案が散見された関連する論点をとりあえず書いておこうとするのではなく具体的な事案の解決において必要となる論点に絞り込んで検討することが肝要である

→「何を書いていいかわからない時にとりあえず何かを書いておくパターンで上手くいくことはほとんどない大抵墓穴を掘るだけである。「沈黙は金なりである司法試験で大事なことは、「間違えないことだからである

 

少数ながら甲が500万円の返還を免れたことが昏酔強盗罪の客体に当たるとして同罪の成立を認め,「2項昏酔強盗殺人という犯罪が成立するとした答案もあったしかし条文上昏酔強盗罪の客体が財物に限られていることは明らかであり基本的知識の不足と条文を確認する姿勢の欠如が感じられた

昏睡強盗罪についてしっかり学んだことがなかったのかもしれないそれは試験本番においてはもう仕方ないしかし試験本番において条文を確認する姿勢の欠如があったとすればこれは大きな問題である条文を確認することは普段の学習から無意識的に出来ていなければならないことだからである試験本番を迎えても条文の一字一句を全て暗記している受験生は恐らくいないだからこそ全受験生は試験本番でも条文をきちんと確認すべきである法律家にとって大事なことは間違えないことだからである

 

の行為については腕時計の奪取時点で,Aが生存していたことは問題文上明らかであるのに死亡していたとして死者の占有が腕時計に及ぶか否かを論述する答案も散見された例年指摘しているところであるが問題文をよく読んで何が問われているかを正確に把握して検討に取り掛かることが求められる

問題文を読んだものの起案段階になって読んだ内容を正確に記憶していないということは起こり得るその原因はの一つは演習不足もう一つは刑法の基本的知識が定着しておらず試験本番で頭の中が混乱してしまっていることであるいずれにしてもこれらは試験本番までの事前準備において解決しておくべき問題であるちなみに脳の機能不足を感じる受験生には、「脳トレをおススメする現にそれをやって司法試験の成績が伸びた者もいるようである

 

なお本設問で殺人既遂罪の成否を論じず自説の内容が不明の答案が散見されたこのような答案は設問での記述を所与の前提としている印象を受けたがこれを前提にするのであれば設問に関する記述が自説であることを示しつつ論じる必要があった

答案の書き方に迷う受験生は多いようである確かに経験不足ゆえに書き方がわからないこともあると思うしかしながら近時の出題傾向の変化に対応できないのは経験不足でなく法学の基礎不足だと思う法的主張の構造をきちんと理解した上問いに答える形で引き直せばいいだけだからである憲法でも同様の傾向が見られるが、「猿真似のような学習姿勢では法の本質に近づくことは難しいだろう

 

(続きは後日)

 

見える化するならABproject。

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令和2年刑事系第一問の採点実感を読んでみた~その2~ 

あなたが知らない視点や考え方がここにある。

 

新たな「気付き」があったら嬉しく思います。

(赤字は、筆者)

 

採点実感等

各考査委員から寄せられた意見や感想をまとめると以下のとおりである

全体について

本問は前述のとおり論じるべき点が多岐にわたるため厚く論じるべきものと簡潔に論じるべきものとを選別し手際よく論じる必要があったが論じる必要のない論点を論じる答案や必ずしも重要とは思われない論点を長と論じる答案が相当数見られた

論じるべきポイントがズレてしまうのは各論点の理解度の問題もあるがそれ以上に感覚のズレが大きいと思う暗黙知や常識と言ってもいいと思ういわゆる論点主義的な答案は圧倒的にこの部分への意識が希薄なように思う形式をなぞるだけでなく場面場面でその結論をどう思うか」「その理由付けに対してどう感じるかという点を意識して学習を進めるといいと思う法が目指す正義言ってしまえば価値観であるあまりそのような観念的な話をされることはないかもしれないが法の世界にあるそういったものを学んでいくことも法律を理解するためには大事なことだと思う

 

規範定立部分については論証パターンの書き写しに終始しているのではないかと思われるものが多く中には本問を論じる上で必要のない点についてまで論証パターンの一環として記述を行うものもあったほか論述として表面的にはそれらしい言葉を用いているものの論点の正確な理解ができていないのではないかと不安を覚える答案が目に付いたまた規範定立と当てはめを明確に区別することなく問題文に現れた事実を抜き出しただけでその事実が持つ法的意味を特段論じずに結論を記載する答案も少なからず見られたこれは論点の正確な理解とも関係するところであり一定の事実がいかなる法的意味を有するかを意識しつつ結論に至るまでの法的思考過程を論理的に的確に示すことが求められる。(丸数字と下線は筆者

他の科目でも言及したが論証パターンは必ずしも悪ではない問題は使い方と使い手の能力のである。①検討すべき対象を正確に認識できているとは言えないから法的思考力が乏しい。②規範等の理解が乏しい論証を正確に書き写してもあてはめで理解の浅さはすぐばれる。③時間がなかったからかもしれないが法的三段論法としてふさわしいものとは言えない部分的に簡略化することはやむを得ないかもしれないが答案の全体を通して法的三段論法くらい当然できますというアピールは必要であるそうすれば問題ない

 

各設問について

ア 設問について

本設問では,Bの交付行為によってに対する債務が消滅することを構成要件上どのように評価するべきかという問題意識の下出題の趣旨に記載した見解の対立構造を示しつつ恐喝罪の構成要件該当性について正確な法的理解を示すことが求められるが違法性阻却の問題とした上で専ら事実関係の評価を変えることで損害額を論じる答案が目立ち上記の点を的確に検討できている答案は比較的少数であった

論点を知らなかったことが直ちに不良との評価を招くわけではない問題は犯罪の成否を検討するにあたり構成要件該当性の検討も求められることをどの程度意識できていたかである問題文を読んだ瞬間違法性阻却の問題だ!」と決めつけてしまっていなかったか犯罪成立を認定するためには全ての要件該当性を漏れなく検討する必要があるその基本を忘れてはいけない

 

甲に成立する財産犯について,1項恐喝罪を認める答案が多かったが客体が財物に該当するか否かを意識して論じるものは少数であったほか恐喝罪の構成要件要素を正確に摘示しないなど同罪の構成要件要素全般に関する理解が十分示されていない答案が散見された

ここも犯罪成立要件を漏れなく検討せよと言われているだけである法学の基本である

 

また甲に詐欺既遂罪の成立を認める答案も散見されたが,Bは債権額については誤信しておらずまた甲を暴力団組員と誤信した点は畏怖の念を生じさせる一材料にとどまっているため詐欺未遂罪はともかく詐欺既遂罪の成立は認め難いところこれを認める答案については構成要件要素の検討が不十分であるとの印象を受けた

詐欺既遂罪を検討したこと自体は悪くない確かに甲は債権額を偽っているからであるしかし既遂を認めるためには全ての構成要件の充足を認定する必要があるところその検討過程で要件不充足に気付けなかったことが問題である要件を一つ一つ精緻に解釈しているのは間違った法的結論に至らないためである(=正義の実現)。とするならば要件充足性を検討した結果通常認め難い結論に至ってしまうのは法の趣旨を没却する重大なヒューマンエラーが原因である法律家の卵たる司法試験合格者にふさわしいか否かは言うまでもない

 

なお少数ながら甲に強盗罪の成立を認める答案もあったが行為態様からすれば反抗抑圧に足りる程度の脅迫は認め難く同罪の成立は一層困難といえ具体的な事実の構成要件への当てはめができていないとの印象を受けた

当てはめについては相場観がある上記でも言及したが、「感覚のようなものである行為態様に照らして強盗罪で定める重い刑を科することが妥当と言えるか比例原則的思考)?、判例に照らして妥当か法の公平性等)?などな角度から結論の妥当性を間違わずに判断できるように分析できる必要がある

 

(続きは明日)

 

※他にはない気付きがここに。

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令和2年刑事系第一問の採点実感を読んでみた~その1~ 刑法が苦手はあり得ない

形式を重んじれば書ける

何事も型は大事です。

法律論も同じです。

刑法は、形式さえ崩れなければ、だいたい何とかなります。

(赤字は筆者)

 

令和年司法試験の採点実感刑事系科目第

出題の趣旨ねらい

既に公表した出題の趣旨のとおりである

採点方針

本問では具体的事例について甲の罪責やその理論構成一定の結論を導くために着目すべき事実を問うことにより刑法総論・各論の基本的な知識と問題点についての理解事実関係を的確に分析・評価し具体的事実に法規範を適用する能力対立する複数の立場から論点を検討する能力結論の妥当性やその導出過程の論理性論述力等を総合的に評価することを基本方針として採点に当たった丸数字は筆者

問われている能力や知識は、①~⑤とのことである刑法の基礎基本を身につけておくこと(①)。それを前提に具体的な事実関係を法的に分析・評価できること(②)。①②から明らかになる事項論点だけでなく条文解釈の結果として明らかになる規範もを前提として適切なあてはめができること(③)。①に関して複数の立場から見解を述べられること(④)。結論の妥当性を意識しつつ論理的に一貫した論述が出来ること(⑤)。④は少特殊性があるかもしれないがそれ以外はただ単に法律論を展開する際の基本を指摘しているにすぎないこれらは刑法のみならず他の科目でも妥当するものである刑法知識は別)。すなわちここで明らかにされている採点方針の中で評価されない答案を書いているとすると他の科目でも成績が振るわない可能性が高い法の基礎基本を押さえていないといわば全科目に共通する基礎点のようなものを落とすことになり一つ二つの論点落としと比にならない失点となり得る

 

いずれの設問の論述においても各設問の内容に応じ各事例の事実関係を法的に分析した上で事案の解決に必要な範囲で法解釈論を展開問題文に現れた事実を具体的に摘示しつつ法規範に当てはめて妥当な結論や理論構成を導くことさらにはそれらの結論や理論構成を導く法的思考過程が論理性を保って整理されたものであることが求められるただし論じるべき点が多岐にわたることから事実認定上又は法律解釈上争いが生じ得る事項など法的に重要な事項については手厚く論じそうでない事項については簡潔に済ませるなど答案全体のバランスを考えた構成を工夫することも必要である下線は筆者

下線部が苦手な受験生は多いようである不十分な論述で得点できないことを恐れるからであろうかしかし過剰な論述をしている答案も同様に失当である。「検討すべき事項は何か?」を具体的な事実関係と条文の規定を照らし合わせて的確に見定められること自体が実力であるそれが出来なければ適切な法律論の展開は不能であるからであるまた、「検討すべき事項に対していかなる論述規範定立とあてはめが必要かを判断できる能力も実力であるこの辺りのことが出来ていない受験生は、「法律問題を解決するという法の本質を意識していないと言わざるを得ないこの意識がなければ試験本番の論述が失当なものとなるだけでなく日頃の学習もあまり実りのないものになってしまう試験は試験のためにあるのではなく受験生の成長を促す道標を与えてくれるものである過去問を努めて学ぶ重要性もここにある

 

出題の趣旨でも示したように設問では事例における甲の罪責について甲に成立する項恐喝罪又は項恐喝罪いずれかの被害額が,①600万円になるとの立場及び②100万円になるとの立場双方からの説明に言及しつつ最終的に自説としてどのような構成でいかなる結論を採るのかを根拠とともに論じる必要があったしたがって上記及びを小問形式と捉えてそれぞれの理論構成を別個に示したにとどまりいかなる結論がいかなる理由で妥当であるのか自説を論じていない答案は低い評価にとどまった下線は筆者

一つ目の下線部は、2491項又は2項のいずれを適用すべきか本罪の被害法益の区別)、条文適用の帰趨あてはめの結果等を問題としていると解されるいかなる事項も法的三段論法においてどう位置づけるべきかを意識することが大切である

二つ目の下線部は、「設問をきちんと読んで答えなさいという話である問いに答えていない答案の評価が低いのは当然である

 

及びへの言及においては出題の趣旨で記載した各立場からの説明が考えられるがこれを客観的構成要件要素に関する法解釈上の問題と位置付け恐喝罪の保護法益の内容や同罪における財産上の損害の要否及びその内容に関する各見解を踏まえ論理性を保って論述することができている答案は高い評価であった他方で,①及びへの言及で上記各見解に一切触れず専ら違法性阻却の観点からすなわち犯行態様等の違法性阻却の判断要素に関わる事実関係の評価を変えることにより違法性が阻却されない場合をの立場,500万円の交付については違法性が阻却される場合をの立場として説明するのみの答案は低い評価にとどまった

犯罪の成否を検討する際その成立要件として構成要件該当性・違法性・有責性について検討すべきことは司法試験受験生なら知らないものはいないはずであるしかし知っていることと出来ることは違う仮に本件で参考になるような判例を知っていてもそれを犯罪の成立要件に関連付けて整理していなければこの問題は解けないあるいは、「要件効果を一つ一つ積み重ねるという形式を意識した論述をしていれば本番で何とか対応出来たかもしれないいずれにしても本問について論点を知らなかったという一言で片づけてしまう受験生に成長はない知らない論点もそれなりに書けるようになるための準備は法律家になるために必須であるしそのために必要なことは法学の基礎基本を追及することにあるからである

 

設問,A睡眠薬を摂取して死亡したことについて自説か否かに関わりなく甲に殺人既遂罪が成立しないという結論の根拠となり得る具体的事実として考えられるものをつ挙げた上でそれらが当該結論を導く理由を記述させるものであった

この設問を読んで何を考えたか。「犯罪成立要件のいずれかを通じて犯罪の成立を否定できればいい!」という視点に直ちに至り検討を開始することが出来ていたかいわゆるあたりを付けて検討することが出来るか否かは事務処理のスピードを上げかつミスを減らすために重要である

 

このつの事実としては出題の趣旨で記載した①,②及びの各事実が考えられるこれに対し当該結論を導く理由としてはな理論構成からの説明が考えられるところ問題文で事実ごとの記述が求められている以上出題の趣旨で記載したとおり複数の事実を一括せず,①の事実に着目して実行行為性又は実行の着手を,②の事実に着目して因果関係を,③の事実に着目して故意をそれぞれ否定することが想定されていたまた問題文で簡潔な記述が求められているのであるから理論構成の根拠や他説への批判まで論じる必要はなかった

→「『事実ごとの記述が求められているとはすなわち要件ごとの検討が求められているということである具体的な事実が法的に意味を持つのは要件との関係においてだからである

「『簡潔な記述が何かわからない受験生が多いようであるそれがわからないのは普段から論述の濃淡を意識できていないからである。「問いに答えるために最低限書かなければいけないことは何か」「必要十分な論述となるためにはどこまで書かなければいけないかなど問いに合わせた適切な論述を展開するためには法的主張の基本的な構造要件効果等の理解がなければならないその先にこそ文章の長短だけではなく質を保った「『簡潔な記述が成り立つのである

 

設問では出題の趣旨で示したとおり事例における甲の罪責については,⑴甲が銀行の窓口係員に対し犯罪被害金であることを秘しつつ甲名義の預金口座から600万円の払戻しを請求し同額の払戻しを受けた行為について,1項詐欺罪の成否を論じる必要があったが犯罪被害金の払戻請求とはいえ甲が銀行に有効な預金債権を取得していることに着目して,「欺く行為の有無に関し設問における結論との整合性も意識しつつ論じることが求められていた

犯罪の成否を検討すべき事実関係は、「具体的な行為と被害に遭った保護法益を探せば見つけ出せる上記で言うと甲の払戻行為と銀行が管理している600万円の金銭であるこれを見つけた後にするのは法の適用今回で言うと、2461項の適用であるこれも甲の行為態様及び被害法益を基準にして導かれるなおこの前提として2461項等を含む刑法の基礎的理解が求められる上記採点方針の通り)。その上で、「欺く行為といえるか否かという要件を主に検討していく甲が銀行に有効な預金債権を取得している事情等を考慮するのはその要件該当性の範囲においてであるこれが出来れば自然と論理性を持った論述が出来るはずである

 

甲がに対する借金返済のため前記600万円の払戻しを受けこれをに渡して費消した行為については横領罪の成否を論じる必要があったが客体をに交付すべき500万円に限定した上でいかなる行為を横領行為と評価するかに対応させながら甲名義口座の預金又は払い戻した現金が同罪の客体に該当するかを論じることが求められていた

この部分も要件該当性に対する繊細な感覚なくして理解できないと思われる難解に感じる法律論ほど要件効果に立ち返って検討をする必要があるほとんどの問題は大体それで解決するしかし多くの受験生が要件効果という基本に立ち返る方法を知らないがために路頭に迷っているように思われる

 

甲がに対する500万円の返還を免れるため睡眠薬を混入したワインをに飲ませて眠り込ませその影響によりの心臓疾患を悪化させ,Aを死亡させた行為については,2項強盗殺人罪の成否を論じる必要があったが早すぎた構成要件実現の処理が問題になっているため出題の趣旨でも記載したとおりまずは実行行為をどのように構成するのかすなわち第行為(A睡眠薬を摂取させる行為及び第行為(Aに有毒ガスを吸引させる行為を一体的に評価した上これを実行行為として構成するのか行為のみを実行行為として構成するのかを論じその上でそれぞれの立場から因果関係の有無や故意の有無を論じることが求められていた

→「早すぎる構成要件実現刑法上の超有名論点の1つと言っていいだろうこれをどれだけの受験生が具体的な犯罪成立要件との関係で整理しているかそこを見られていることを意識してもらいたい。「あの論点だ!」「あの判例の規範を書いて・・・あてはめて・・・という答案を読んでも刑法総論の基本的な知識と問題点の理解上記採点方針よりがあると言えるか疑問が残る。「実行行為」「因果関係」「故意等の構成要件に絡めて説明が出来ないと意味がないやはり要件効果の形式が大事なのである

 

また強盗罪の実行行為である暴行が認められるか否かについてその意義に遡って具体的に論じることが求められていたがこれを肯定した場合甲が財産上不法の利益を得たといえるかについて当該文言の意義を正確に示した上で,Aに相続人がいないこと等の具体的事実を摘示して当てはめを行う必要があったなお,2項強盗殺人罪又は殺人罪の実行の着手を否定した場合殺人予備罪強盗予備罪の成否のほか傷害致死,(過失傷害罪又は同致死罪などの成否も問題となり得る以上それらの論述が必要であった

犯罪成立を肯定するためには犯罪成立要件を漏れなく検討する必要があるこの点を意識するだけで刑法の点数は随分安定するだろう。「論点に囚われすぎず基本的な要件の積み重ねを意識してもらいたい他の科目と同様に

 

甲が睡眠薬を混入したワインをに飲ませた後,A方で発見した腕時計を奪取した行為について窃盗罪等の財産犯の成否を論じる必要があった

意識すべきことは上記と重複する

 

設問では,⑴ないしの各行為ごとに事案の解決に必要な範囲で法解釈論を展開し問題文に現れた事実を具体的に指摘しつつ法規範に当てはめることができている答案は高い評価であった

→「具体的事実関係の分析犯罪として検討すべき対象の特定)→条文の適用・法解釈論の展開規範定立・要件定立)→あてはめ結論すなわち法的三段論法をしなさいということであるそれ以上でも以下でもない論文攻略への第一歩は刑法攻略と言ってもいいかもしれないそれくらい刑法は法的三段論法等法律論の形式を重んじている

 

※形式にこだわるABprojectはこちら。

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予備試験・司法試験受験生が行政書士試験を受けるべき3つの理由

資格取得は登山と同じ。段階を踏んで、目標点を目指しましょう。

予備試験・司法試験受験生の方、そして、これからロースクールに進もうとしている方にも、ぜひ行政書士試験を受験して頂きたいと思っています。

もちろん、記念受験ではなく、「合格」を狙ってください。

 

その理由は、3つです。

 

①試験科目がかぶる

行政書士試験の法令科目は、基礎法学、憲法行政法民法、商法・会社法です。

基礎法学は、法学徒の常識問題としてさておき、「憲法行政法民法、商法・会社法」は、司法試験や予備試験でも避けては通れません。

予備試験・司法試験挑戦の手始めにもってこいの構成となっています。

 

②多角的に学ぶ機会になる

様々な法律系資格試験を見るとわかるのですが、同じ科目でも各試験によって問われる角度が違います。

それを「難易度の違い」と一括りに論じてしまうのは勿体ないと思います。

学んだ知識を異なる角度から見直すことは、深い理解を得るために不可欠です。

様々な資格試験に挑戦することは、その機会を得るまたとない機会になるのです。

 

そういった意味では、宅建司法書士試験もいい題材になると思いますが、もっとも無駄がないのは、上記の通り、行政書士試験なのです。

 

③将来のリスクマネジメント

ここが最も重要だと思っています。

多くの司法試験・予備試験受験生は、「合格」することをイメージしてばかりで、自分が「不合格」になったときのシュミレーションが出来ていません。

しかし、現に「司法試験に五回落ちる」「予備試験にいつまでも受からない」というケースは、毎年発生しているのです。

 

予備校では、「合格できる!」と誘いつつ、ある程度不合格が続くと「志望先を変えた方がいい・・・」という案内に移行することが少なくないようです。

私の知人も司法制度改革の波に乗ろうとロースクールに進みましたが、結局司法試験に合格出来ず、「法律系の資格を何ら取得しないまま30代後半になってしまった」と嘆いていました。

 

言うまでもなく、予備試験・司法試験は超難関試験です。

難易度・合格率に変動があっても、「一生受からない人生」が発生する可能性は、常に存在しています。

そして、合格させるため、合格した後に手を差し伸べてくれる人は多くいても、「不合格になった後に手を差し伸べてくれる人」は、多くありません。

最悪の事態になった時に自分の身を守るのは自分しかいません。

余裕のあるうちに行政書士試験に合格しておくことを強くお勧めします。

もちろん、合格しているのことが将来の足かせになることは、全くありません。

 

かくいう私は、運よく学部時代に行政書士試験に合格していたので、その後の進路選択でも「最悪、行政書士(注:目標は、あくまで司法試験だったので)」という気持ちで、不安を持つことなくロー入試や予備試験・司法試験に挑戦していけました。

 

最後に。

行政書士試験に合格できないというレベルでは、正直なところ、予備試験・司法試験合格を現実的な目標としてとらえることは難しいでしょう。

そういった意味では、予備試験・司法試験挑戦への試金石とも言えるかもしれません。

 

行政書士試験を受験する理由は人それぞれだと思います。

でも、受験すること自体は、絶対的におススメです。

 

令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その5~ 知ってほしい表裏一体の不思議

民訴法はおいしい科目

 

点数が安定してくると大崩れしなくなるのが民訴法の特徴だと思います。

非常にとっつきにくい科目ですが、どうか嫌いにならないでください。

(赤字は筆者)

※その1、その2、その3、その4もご覧ください。

 

 

ウ 設問のまとめ

 

法科大学院に求めるもの

本年の問題に対しては多くの答案において一応の論述がされていたが定型的な論証パターンをそのまま書き出したと思われる答案出題の趣旨とは関係のない論述や解答に必要のない論述をする答案事案に即した検討が不十分であり抽象論に終始する答案なども残念ながら散見された

→「論証が悪なのではない論証と条文・判例等論証の元となる法源とのつながり論証と問題文から導かれる具体的事実関係とのつながりに関する説明が不十分だから、「になってしまうのであるつまり論証を使う者の能力不足が原因である予備校添削等では論証が書けていれば多少あてはめが不十分でもを付けられることが少なくないこれは添削時間に限りがあるためだと思うが非常に問題があると思う受験生自身も自分の身を守るため厳しくチェックしてもらいたい

 

また民事訴訟の極めて基礎的な事項への理解や基礎的な条文の理解が十分な水準に至っていないと思われる答案も一定数あったこれらの結果は受験者が民事訴訟の体系的理解と基礎的な知識の正確な取得のために体系書や条文を繰り返し精読するという地道な作業をおろそかにし依然としていわゆる論点主義に陥っており個別論点に対する解答の効率的な取得を重視しているのではないかとの強い懸念を生じさせるこの点は設問や設問の採点実感中において指摘したとおりである

条文や制度趣旨等、「当たり前の事項に関する理解が大事なのであるその上にしか論点の理解は成立しないにもかかわらず論点主義に陥っていると言われるのは闇雲に暗記する学習に走っている受験生が多いからであろう暗記も大事であるしかしその前提の思考をきちんと学んでいないと使える知識は身につかないそして、「法律は道具であるから、「使えない知識では意味がない難しい法律論の中で学ぼうとするから気付かぬうちに暗記学習に傾倒してしまう誰でも理解できる簡単な事項の中で法的思考を学んでほしいやはり基礎基本が大事なのである

 

また設問において典型的な論点であると思われる課題とそうではない課題とで論証の充実度に大きな差異があったことからもいわゆる論点主義の弊害がうかがわれよう昨年も指摘したところであるが条文の趣旨や判例学説等の正確な理解を駆使して生起する様な事象や問題に対して論理的に思考し説得的な結論を提示する能力は法律実務家に望まれるところでありこのような能力は基本法制の体系的理解と基礎的な知識の正確な取得論理的な思考の日の訓練という地道な作業によってこそ涵養され得るものと思われる法科大学院においてはこのことが法科大学院生にも広く共有されるよう指導いただきたい以上は例年指摘しているところであるが本年も重ねて強調したい

→「思考の訓練をせよと言われても受験生の立場からすれば何をすればいいのかわからないはずであるだからまずは思考の方法を学ぶ必要があると思うしかしこれを丁寧に教え訓練してくれる人が少ないように思う予備校の基礎講座等でも初期段階で教えられるが気付けば難解な法律論に脳内を支配される時間が多くなるそのうち法的思考がぐちゃぐちゃになるでももう誰もそのことに気を留めない論点の理解・暗記ばかりに気を取られるからである。3歩進んだら2歩下がるゆとりも大事だと思うどんなに学習を重ねても常に基礎基本を振り返る時間を取ってほしし。「簡単すぎることはない基礎基本を大事にする意識が難解な法律論を理解するカギであると思う

 

また民事訴訟法の分野においては理論と実務とは車の両輪であり両者の理解を共に深めることが重要である設問においては和解手続における当事者の発言内容を心証形成の資料とすることができるとした場合の問題の検討が求められているが多くの答案がその検討に当たり実務上の和解手続の姿をイメージしていたと評価することができるこれは受験者や法科大学院等の関係者において実務の理解を深めることの重要性についての認識が共有されつつあることの現れであると受け止めたい現実の民事訴訟手続についてのイメージがつかめないままに学習を進めることは難しいと思われる法科大学院においては今後ともより一層理論と実務を架橋することを意識した指導の工夫を積み重ねていただきたい

刑事訴訟法でも同様実務の話に触れる機会があまりない受験生には法律系雑誌を読んでみたり実務家のブログを読んだりすることをおススメする具体的な検討のためには具体的な学びも必要であると思う

 

※難しい問題こそ基礎基本から見直そう。

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令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その4~ 法律問題の本質は同じだ。

短答対策と論文対策は共通。

 

出題形式にとらわれず、「法律問題」を解く方法を身につけていれば、得点は安定します。

やるべきことは、ただそれだけ。

(赤字は筆者)

※その1、その2、その3もご覧ください。

 

 

設問について

ア 設問の採点実感

設問では和解手続におけるY2の発言から本件契約の解約の合意の存在を認定することができない理由の検討が求められているここでは争いのある事実の認定に当たり法第247条において裁判所が口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して心証を形成するものとされていることを指摘した上で和解手続における当事者の発言がこれらに当たらないことを論証する必要があるこうした論証は多くの答案においてされていたが特に検討が必要な口頭弁論の全趣旨の意義とその当てはめについては十分に意識されていないものが目立った

→247条を指摘できるかどうかが本問の分かれ道と言ってよいそして和解手続におけるY2の発言が検討対象とされているのであるから、「口頭弁論の全趣旨」(247が問題となるのであって、「証拠調べの結果が問題となるのではない。「口頭弁論の全趣旨の解釈が不十分なのも問題であるが、「証拠調べの結果について長と言及する答案も問題だと思う問題の所在を把握できていないと解されるからである目の前の検討事項を具体的事実関係から分析しその判断に必要な規範を端的に示せる答案は得てしていい答案である長く書けばいいというものではない。「問いに答えることが解答の最重要事項だからである

 

また設問の出題の趣旨を弁論主義の問題と捉え法第247条を指摘しつつあるいはその指摘すらなく弁論主義について延と論じて結論を導こうとする答案も少なからずあったこのような答案は問題点自体の理解を根本的に誤るものであって評価されないこの点もまたいわゆる典型論点の定型的な論証パターンを暗記するだけという学習が中心となっていて基礎的な条文や概念の基本的な理解がおろそかになっているのではないかと強く懸念される一例である

本問で弁論主義に思い至ることは決して悪いことではないと思う判決の前提となる事実関係の整理に伴う問題だからであるしかし、「弁論主義とは何か?」ということを正確に把握していれば弁論主義と自由心証主義との区別は出来たはずである問いに対して正しく法的思考を展開出来ているか否かを測る指標として、「間違いを修正できるか?」というポイントがある仮に本問で一旦取り上げた弁論主義の検討をやめた受験生がいたとするとその受験生は法的思考レベルが高いと思われる

 

また設問では争いのある事実の認定に当たって和解手続における当事者の発言内容を心証形成の資料とすることができるとした場合の問題についても検討することが求められているここでは当事者の発言内容が裁判官の心証に影響し得るとすると例えば和解の成立に向けた当事者の自由な発言を阻害するおそれがあることや本問のようにいわゆる交互面接方式により行われた和解手続では情報の共有や反論の機会の保障がないままに判決がされるおそれがあることなどより実質的な観点から具体的に問題点を指摘することが期待される多くの答案においてこれらのうち少なくとも一方特に当事者の自由な発言の阻害のおそれを指摘することができていたがこれらを多角的に論ずる答案は多くはなかった

この辺りは実務に対する理解がある程度必要なのではないだろうか多角的な検討が出来た答案が多くなかったのも無理はないと思う

 

イ 設問のまとめ

 

設問について

ア 課題の採点実感

設問ではまず課題として本件訴訟において,XY2に対する訴えのみを取り下げることができるかどうか法第261条第の検討が求められているここではその前提として本件訴訟について訴訟共同の必要があるものかどうかすなわち本件訴訟が通常共同訴訟であるのか固有必要的共同訴訟であるのかという点の検討が必要となる本件訴訟が通常共同訴訟であると考える場合には例えば実体法的観点から相続財産の共有が民法249条以下の共有と性質を異にするものではないこと建物明渡義務が不可分債務同法第430に当たり義務者各自が全部につき除去義務を負うことなどを指摘して共同訴訟人独立の原則法第39が本件訴訟にも適用されることその帰結として,XY2に対する訴えの取下げをすることができることを示す必要がある本件訴訟について固有必要的共同訴訟であると解し,XY2に対する訴えの取下げをすることはできないとする場合であっても説得力のある理由が示されていれば評価に差異はないがいずれにせよ自説の根拠と結論との整合性が求められる

短答でも問われるレベルの知識である短答学習においても結論だけでなくその論理まで学習することを意識したい。「短答プロパーなどという表現が見られることもあるが短答学習の充実度は論文の成績に直結すると思うどんな問題も軽視しないで丁寧に積み重ねることが大切である

 

課題では多くの答案において本件訴訟が通常共同訴訟であるとの結論を採っておりその理由としても上記の点を指摘することができていたもっともその理由を十分に論じたものは少なく例えば単に本件建物の明渡義務が不可分債務であるということを指摘するだけのもの共同訴訟人独立の原則やその根拠となる条文を指摘しないまま本件訴訟が通常共同訴訟であることをもって直ちにY2に対する訴えの取下げをすることができるとするものなども散見された

ここでの指摘は、「規範にあてはめる」「法律効果の根拠となる条文を指摘するという基本的なことが出来ていないという話であるこのような答案を無意識に書いているようだとかなりまずい他の部分でも論述の甘いところが散見されるはずであるそれはすなわち民訴法だけでなく多くの科目で失点する可能性があるということである

 

他方で本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を採る答案も少なくなかったこの結論であっても評価に差異はないことは上記のとおりであるがその根拠を十分に論証する答案はほとんどなかったため本件訴訟が通常共同訴訟であるとの結論を採る答案と比較すると相対的に低い評価となった本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を採る場合には例えば訴訟法的観点から判例の結論とは差異があることを踏まえつつ合一的確定の必要と訴訟共同の必要があることを説得的に論証することなどが必要となるしかし本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を採る答案においては単に合一的な確定が必要である。」等の結論を示すだけのものが多かったこれでは説得的な論証とは言い難い

→401項の合一にのみ確定すべき場合とはどういう意味なのか同項は何を定めた規定なのか今一度考えてもらいたい条文の機能に関する一般論が見えてくるはずである

 

また実体法的観点からこれを基礎付けようとする答案も一定数あったがこのような答案は総じて本件建物の明渡義務が不可分債務であることを根拠とするものであったしかし上記のとおり本件建物の明渡義務が不可分債務であることは本件訴訟が通常共同訴訟となることの根拠となるものであってこれにより本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を基礎付けることは困難である。「不可分という語の語感に引きずられたのではないかと推測されるが実体法の基礎的な知識の欠落があるのではないかとの危惧を禁じ得ないまた本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を採る場合には法第40条を指摘した上で一部に対する訴えの取下げは全員の当事者適格を失わせることとなるためその効力を生じないことを指摘する必要があるがこの点の論証を欠く答案も少なからず見られたこのような答案は固有必要的共同訴訟という概念自体の理解が十分ではないのではないかと懸念される

この点の指摘を受ける答案は規範定立あてはめに関する瑕疵若しくは判例の理解に関する瑕疵又はその両方に問題があるいずれにせよ大失点である

 

このほか本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を採るにもかかわらず,Y2に対する訴えの取下げができるとするもの固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟の区別をすることなく必要的共同訴訟かどうかを論ずるもの本件訴訟が類似必要的共同訴訟であるとするものなども少ないながらあったこれらの答案の評価は低いものとなる

→401項には必要的共同訴訟としか書かれていない。「固有類似の区別は理論上の区別であるつまり条文の定めを前提に更に法理論を学ぶことで必要的共同訴訟制度に対する理解をより深めていくことが出来る段階を踏んでいくことが体系的理解のコツである

 

なお本件訴訟が通常共同訴訟である又は固有必要的共同訴訟であるという点を示すのみであり,XY2に対する訴えの取下げができるかどうかについての結論を示さない答案も一定数あった尋ねられたことに対して解答しなければ評価されないことは当然である

→「問いに答える当然の話である

 

イ 課題について

設問では次に課題として,Xが適法にY2に対する訴えのみを取り下げたという前提の下において,XY1のみの訴訟において本案判決がされる場合に取下げがされる前の期日においてY2が提出して取調べがされた本件日誌の証拠調べの結果を事実認定に用いてよいかどうかの検討が求められているここでは,「共同訴訟における証拠調べの効果それが訴えの取下げによって影響を受けるかどうかという問題文中で示された二つの視点を踏まえつつ検討を進める必要がある

いずれも一定の訴訟行為の効果を検討するものである法効果を考える時のポイントはその存在内容範囲である

 

このうち一つ目の視点すなわち共同訴訟における証拠調べの効果についてはまず通常共同訴訟においては共同訴訟人独立の原則により共同訴訟人の一人の訴訟行為は他の共同訴訟人に影響を及ぼさないことを述べた上でその例外として共同訴訟人の一人が提出した証拠から得られる証拠資料はその援用がなくとも他の共同訴訟人に関する事実認定にも用いることができるという証拠共通の原則の意義やこれが認められる根拠を説明することが求められる相当数の答案において共同訴訟人独立の原則やその例外としての証拠共通の原則について指摘することができていたが証拠共通の原則の意義を論ずるに当たり誰と誰との間の規律であるのかという視点が明確に示されていない答案も一定数あったまた証拠共通の原則が認められる根拠については例えば歴史的に一つしかない事実についてはその認定判断も一つしかあり得ないことからこれを認めなければ裁判所に対して矛盾した判断をさせることとなり自由心証主義の不当な制約となること共同訴訟人の一部が提出した証拠であっても他の共同訴訟人がその証拠調べの手続に関わる機会があることから他の共同訴訟人の手続保障も図られていることなどを指摘して論ずる必要があるもっともこれらを過不足なく論じた答案は僅かであり多くの答案は前者のみを指摘するものであったまたそのような答案においては単に歴史的に事実は一つ」,「自由心証主義からなどとのみ述べる答案も少なくなかった時間の不足に起因するものであるとも考えられるがこのような答案は論証としては十分なものとは言い難いことに留意が必要である

原則と例外の視点例外の理由付けの方法必要性と許容性など基本的な法的視点は、「法学のコンパス1」で学んでほしい証拠共通が誰と誰との間の規律であるのかという問題は法効果の範囲の問題

 

次に二つ目の視点すなわちそれが訴えの取下げによって影響を受けるかどうかという点については訴えの取下げがあった部分は初めから係属していなかったものとみなされる法第262条第という訴えの取下げの効果を指摘することが必要となるがこれを条文とともに的確に指摘することができた答案は多くはなかったこの点は課題が検討を求める問題意識の前提となるものでありこの理解を欠く答案の評価は低いものとならざるを得ない

→2621項を当たり前に指摘できるかどうか意識しなくても出来る受験生は難易度の高い問題に挑戦する実力のある受験生である実力の有無はだいたい当たり前が出来るかどうかを見ればわかる

 

そして以上の二つの視点からの論証を通じ,XY2に対する訴えの取下げがY2の申出により取調べがされた本件日誌についての証拠共通に影響を与えるのではないかという問題意識が導かれることとなる

論点自体知らなくても、「訴え取下げの効果提出された証拠は?」という問題意識を持つことはできるのではないか訴え取下げの法効果をどれだけ具体的にイメージできているかが分かれ目になっているように思う知らない論点でも気付けるかどうかは法的思考力を測る一つのポイントである

 

これが課題における主要な検討事項となる本件日誌を証拠として用いることができるとの結論を採る場合にはその根拠として例えば判例最高裁判所昭和3225日第三小法廷判決・民集111143によれば証拠申出の撤回は証拠調べの終了後においては許されないとされておりその結論は相手方に有利な証拠資料が得られている可能性があることを考慮すると是認されることや,Y2の申出によりされた証拠調べの結果は証拠共通の原則によりY1との関係においても心証を形成する資料となっているところそれは係属が消滅した訴訟における訴訟行為に基づく訴訟法律関係とは別個の訴訟法律関係が生じていると言い得ることから訴えの取下げによってもその効果は維持されるべきであることなどを指摘することが考えられるこれに対し本件日誌を証拠として用いることができないとする結論を採る場合にはその根拠として例えば訴えの取下げの結果当事者の訴訟行為によって形成された法律効果は全て消滅することを前提とし証拠申出の撤回は弁論主義に照らし相手方の同意があれば許されるとした上で,XY2に対する訴えの取下げをしたことにより実質的にはY2の証拠申出とこれに基づく証拠調べの結果の消滅に同意をしているものとみることができることなどを指摘することが考えられよう課題についてはいずれの結論であっても評価に差異はないが論理的かつ説得的な論証が求められるもっとも以上を適切に論ずる答案はどちらの結論であってもほとんどなかった多くの答案においては上記のとおり前提となる訴えの取下げの効果を指摘することができていないためそもそも課題が求める問題意識自体を正しく把握することができておらず訴えの取下げの効果を指摘することができているものであってもかろうじて一度形成された心証は消せない。」といった理由を述べて本件日誌を証拠として用いることができるとの結論を採るものが一定数あったほかは結論のみを述べるもの根拠となり得ないものを述べるものなどであった

要件効果の積み重ねから論点は生じるものである本問はそれを理解させる良問である未知の論点であり論証自体は難しいかもしれないが奇問難問の類だとは思われない解けなかった受験生は、「なぜ解けなかったのかを見直すことをおススメする他の問題でも活かせる法的思考のヒントを得られるはずである

 

ウ 設問のまとめ

 

※法律問題の解き方を意識するのはABprojectだけ。

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