令和2年刑事系第一問の採点実感を読んでみた~その4~ 例年指摘している・・・
例年指摘していることが出来ない人は合格する気がないのか、と思う。
こんな風に思うのは、初歩的なミス過ぎるからである。
こんなミスをする人が実務家になることを考えただけで恐ろしい。
(赤字は筆者)
※その1、その2、その3もご覧ください。
⑶ その他
例年指摘している点でもあるが,用語の間違い(全体財産と個別財産等)がある答案や,文字が乱雑で判読しづらい答案,基本的用語の漢字に誤記がある答案が散見された。また,文章の補足・訂正に当たって,極めて細かい文字で挿入がなされる答案も相当数あった。時間的に余裕がないことは承知しているところであるが,採点者に読まれるものであることを意識して,大きめで読みやすい丁寧な文字で書くことが望まれる。
→用語の間違いは、基本的理解の不足。誤記は、注意力不足。文字が乱雑なのは(自分自身もそうだったので強くは言えないが)、大き目な文字・文字間の間隔を空けることに注意してもらいたい。
⑷ 答案の水準
(略)
4 法科大学院教育に求めるもの
刑法の学習においては,刑法の基本概念の理解を前提に,論点の所在を把握するとともに,各論点の位置付けや相互の関連性を十分に整理し,犯罪論の体系的処理の手法を身に付けることが重要である。
→「論点の所在の把握、各論点の位置付けや相互の関連性を十分に整理」出来るのは、犯罪論の体系的処理の手法を身につけているからである。闇雲な論点の暗記ではなく、初期段階で学ぶ刑法的思考の体系を意識して、一つ一つ「要件あてはめ」を積み重ねていく意識が大切である。
①一般的に重要と考えられる論点を学習するに当たっては,一つの見解のみならず,他の主要な見解についても,その根拠や難点等に踏み込んで理解することが要請される。論点をそのように多面的に考察することなどを通じて,当該論点の理解を一層深めることが望まれる。また,②刑法各論の分野においても,各罪を独立して学習するだけではなく,例えば,財産犯であれば,財産犯全体に共通する総論的,横断的事項を意識し,また,犯罪類型ごとの区別の基準を重視した学習が望まれる。(丸数字は筆者)
→①は、近年重視されている傾向である。各学説が何を言っているかも重要であるが、それ以上に、どのような視点で何を重視しているかを整理することが大切であると思う。それを学ぶことで「法的に考える力」が磨かれるからである。添削指導をしていると、受験生間に大きな知識量の差はないように思う。しかし、目の付け所や思考展開の上手さには、明確な差が感じられる。それも一種の知識によるものかもしれないが、「暗記の努力」ではなく、「学び方の工夫」を重視しないと、なかなか身につかないように思う。②は、条文相互の関連性に目を向けろと言うことであろう。刑法に限らず、どの法律においても重要な視点である。
さらに,これまでにも繰り返し指摘しているところであるが,判例を学習する際には,結論のみならず,当該判例の前提となっている具体的事実を意識し,結論に至るまでの理論構成を理解した上で,その判例が述べる規範の体系上の位置付けや,それが妥当する範囲や理論構成上の課題について検討し理解することが必要である。
→このような点が大事なのは、判例も「法」だからである。法は、その道具としての性質から、具体的な事実関係との間でのみその機能を発揮する。ゆえに、具体的事実関係との関連を踏まえ、どのように使うのかを意識しないと、法が道具として如何に機能するのか、その本質を理解することが出来ないのである。面倒くさいかもしれないが、理解が進んでこれば、「全てを読まなくても大体予測がつく」という状態になる。理解が深まっていくとは、こういう状態である。ちなみに、これは、上記の「感覚」にまつわる話である。
例年,取り上げるべき論点の把握が不十分なまま,論証パターンを無自覚に記述するため,取り上げなくてよい点についてまで長々と論じる答案が目に付く。事案の全体像を俯瞰して,事案に応じて必要な点について過不足なく論じるための法的思考能力を身に付けることが肝要である。このような観点から,法科大学院教育においては,まずは刑法の基本的知識及び体系的理解の修得に力点を置いた上,刑法上の諸論点に関する問題意識(なぜ問題となるのか)を喚起しつつ,その理解を深めさせ,さらに,判例の学習等を通じ具体的事案の検討を行うなどして,正解思考に陥らずに幅広く妥当な結論やそれを支える理論構成を導き出す能力を涵養するよう,より一層努めていただきたい。
→ABprojectでは、かねてより「法学の基礎基本」が大事であると繰り返し提唱している。これは、司法試験合格レベルでも変わらないようである。優秀層の言うことに必死にくらいつくのも大切であるが、一旦立ち止まって足元を見、「法学の基礎基本」を固める選択をしてもいいのではないか。基礎基本を固めるための方法は何も難しいものではない。要件効果を意識して、法的三段論法を繰り返せばいいのである。その過程で「法学の基礎基本」は、勝手に身につく。急がば回れである。
※当たり前のことを当たり前にできるようにするABprojectの徹底指導。