予備試験に合格した私だから伝えられる!法学の基礎基本!

予備試験・司法試験の合格を目指していた私が法学の基礎基本とは何か…ということに悩み苦しんだ結果、たどり着いた答えを書き綴っていきたいと思います!難しい論点を解説しようとはしていません。法律の資格試験に合格するのに必要なことは法学の基礎基本を見極め、理解することだけです!

令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その3~ 採点実感が繰り返し伝えていること

採点実感の読み方を伝え、意識すべきポイントを共有したい。

 

採点実感・出題趣旨は、多くの受験生が読んでいると思います。

しかし、それが身になっている受験生は、多くないのでしょう。

一緒に読みましょう。

(赤字は筆者)

※その1、その2もぜひご覧下さい。

 

イ 課題の採点実感

設問では次に課題として敷金に関する確認の訴えにおける確認の利益の検討が求められているここでは本件建物の明渡し前における敷金関係の確認の訴えにつき確認の利益の一般的指標とされる確認訴訟という方法を選択することの適切性確認対象の適切性即時確定の必要性に従ってあるいは確認訴訟における権利保護の資格と利益に沿って,Y2の立場から確認の利益が肯定されるように説得的な立論をすることが求められる

ここまでは多くの受験生が書けるはずただし確認の利益の一般的指標は決して条文に定められた事項ではないことに注する必要があるつまりこの指標はあくまで一般的なものであって絶対的なものではない。「確認訴訟のときはいつもこれだから今回も書こう!!」程度にしか認識していない受験生は一旦立ち止まり確認の利益を判断する3要件の理解を確認してもらいたいこういう部分の見直しが論点主義を脱するためのポイントである

 

特に敷金返還請求権が設問の課題では将来の給付訴訟の対象と性質付けられていることとの関係をも踏まえつつどのような確認対象又は権利保護の資格であれば即時確定の必要性又は権利保護の利益が肯定され基準時に確定する必要が認められることとなるのかについて理解を示す必要があるその際には賃貸借契約継続中における敷金返還請求権の確認の利益を肯定した判例最高裁判所平成1121日第一小法廷判決・民集53のように確認対象を現在の権利又は法律関係と位置付ける立場のほか将来の権利又は法律関係と位置付けた上で確認対象となり得ると解する立場もあるどちらを採るかにより評価に差が生ずるわけではないが前者については敷金返還請求権を単に条件付債権と位置付けるにとどまらず将来と性質付けた給付訴訟との違いを示し本件の紛争状況から見て確認の利益が肯定される対象を具体的に検討することが期待されるまた後者については,Xの支払った金銭は敷金でないと争っているなどといった具体的な事情をできるだけ挙げた上で将来具体化する対象であっても即時確定の利益又は権利保護の利益が現在認められることを本件に即して説得的に論ずることが求められる

ここは確認の利益の3要件を軸にしつつその要件該当性の検討を問題とするところである上記判例要件該当性判断において参考にできる先の将来の給付の訴えに関する判例に関しては特に規範定立の重要性を指摘したが要件該当性も同じく重要である判例を学ぶ際には規範定立について学んでいる要件該当性について学んでいるなど法的思考の構造を意識しながら情報を整理することが必要であるこうすることで判例を覚えるだけでなく、「法的思考力を鍛えることが出来る。「意識の持ち方次第で学習の密度は大きく変わるそして、「本件に即して説得的に論ずることが出来るのは高い学習密度を保ってきた受験生だけである論点主義の暗記学習と真の法律学習の違いに気付いてもらいたい

 

まず確認の利益の一般的指標については大半の答案が確認訴訟という方法を選択することの適切性確認対象の適切性即時確定の必要性の三つの指標を指摘していた

もっともその具体的な当てはめにおいては十分ではないものや不適切なものが散見された課題の中心的な検討事項となる確認対象の適切性を論ずるに当たって判例のように現在の条件付きの権利である敷金返還請求権と捉える答案は一定数あったところでありこれらは相応の評価に値するものではあるが更に進んで将来の請求と性質付けた給付訴訟との違いを意識的に論じたものはほとんどなかった他方でそもそも敷金に関するどのような法律関係を確認対象と考えているのかがあやふやなまま検討を進める答案や,「敷金を差し入れたこと」,「敷金契約が成立したことなど過去の事実や過去の法律関係を無留保で確認対象とするものも少なくなかったこのうち過去の法律関係を確認対象とすることについてはそれが常に不適切であるというものではなく基礎的な法律関係であって判決において端的に確認対象とすることにより確認訴訟が有する紛争の直接かつ抜本的な解決の機能が果たされることなどを併せて論ずるものである限り一定の評価の対象となり得るがほとんどのものにおいてこのような検討はされておらずその多くにおいては自身が過去の事実や過去の法律関係を確認対象として論じていることについての自覚がないままに論述しているものと推測された以上のような答案の評価は低いものとならざるを得ない

→「もっともその具体的な当てはめにおいては十分でないものや不適切なものが散見された」「ほとんどのものにおいてこのような検討はされておらずその多くにおいては自身が過去の事実や過去の法律関係を確認対象として論じていることについての自覚がないままに論述しているものと推測されたそうである言われなくてもそうだろうと思う先述した学習の密度の問題を振り返ってもらいたい兎角民訴法の理論は難解なものが多く1回読んだくらいではとても理解できないものが多いだからといって、23回読んだらわかるのかと言うとそうでもない難解な理論を吸収するためにはその下準備が必要である法的三段論法を身につけていることや正しく法的思考を組み立てられることなど行き詰った時には一度基礎基本を見直してもらいたい理解できない原因はそもそも見るべきポイントが見えていない可能性が高い

 

また確認対象の適切性を検討するに当たっては即時確定の必要性との関係にも留意する必要があるここでは原告が保護を求める法的な地位すなわち確認対象の適切性において検討した権利又は法律関係が十分に具体化現実化されているかということを指摘しつつ被告の態度や行為の態様が原告の法的地位に危険や不安を生じさせているかその危険や不安を除去するために確認判決が必要かつ適切であることを論ずる必要があるそして多くの答案において被告の態度や行為の態様が原告の法的地位に危険や不安を生じさせているかという点に言及することができていたが確認対象となる権利又は法律関係との関係や確認判決の必要性なども含めて多角的に論証していた答案は少なかったまた過去の事実や過去の法律関係を確認対象とする場合には上記のような論証から直ちに即時確定の利益が肯定されるとは言い難いにもかかわらずこの点の意識がされたものはほとんどなかった

確認の利益を認める要件として即時確定の利益を指摘する答案は多いがその意味するところが何かという点まで理解できている答案は多くないこの辺りが採点の分かれ目である要件を立てたらその意味するところを確認するのは法律学習において当然であるそうでなければ正しくあてはめられないからである上記で指摘されているあてはめの不十分さは基本的な法知識の理解不足に起因するものと思われる

 

課題の結果からも受験者が定型的な論証パターンを暗記するだけという学習をしているのではないかと懸念された

すでに指摘した通りである

 

ウ 設問のまとめ

 

※大事なことは繰り返し伝えるABprojectの添削指導

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令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その2~ 知識不足は基本的に責めない

「知らなくても解ける問題」を如何に増やすかがABprojectのテーマ。

 

実務家になれば「知らない問題」に直面し、自分の力で道を切り開かなければならないこともあるでしょう。

先を見据えた勉強の工夫も必要です。

(赤字は筆者)

※その1もご覧ください。

 

設問について

ア 課題の採点実感

設問ではまず課題として,Xが本件契約の締結時にから交付された120万円について敷金であることを否定し,Y1との間の本件契約の解約の合意を争って本件建物の明渡しを拒んでいるという事実関係の下において敷金の返還を求めるY2の立場から本件建物の明渡しをしないままの状態でこれを求める将来の給付の訴えの適法性についての検討が求められている

何気なく「Xが・・・Aから・・・、Y1が・・・などと書かれているがこれはまさに具体的検討である生の事実を的確に指摘しそれについて検討をしようという手間を惜しんではいけない時間制限等の関係で簡略化する必要性がある場合も否定できないが、「何が具体的検討かを知っていて何を簡略化しているかを認識している状態で答案作成をすることは大切であるその意識を欠く答案は単に雑なだけである

 

ここでは敷金返還請求権が目的物の明渡しを条件としてそれまでに生じた敷金の被担保債権一切を控除した残額につき発生するため本件建物の明渡し前には請求権の成否及び額が明確に定まらないことそのため本件訴訟はその事実審の口頭弁論終結基準時には訴訟物である請求権の成否及び額が具体化しない将来の給付の訴えであることを踏まえ民事訴訟以下という。)135条の将来の給付の訴えの利益に言及した上で将来の給付の訴えの適法性につき検討する必要があるそして法第135条についてはほとんどの答案において指摘することができていた。(下線部は筆者

下線部を説明し、135条の問題であることを指摘できる答案はいい答案である問題を読めば、135条を適用すべきことは多くの受験生が気付くはずであるその中でなぜ135条なのか?」を説明できるか否かそもそも説明しようとするか否かという点に、「意識の違いがあるこれは正しい法的思考を身につけそれを意識できているかという問題に他ならない

 

また既判力の基準時までにその成否及び額が定まらない請求権を行使する将来の給付の訴えの適法性については例えばいわゆる権利保護の資格請求の適格と狭義の権利保護の利益とを分けて前者の問題として論ずる考え方や将来の権利発生の蓋然性と現在これを行使する必要性とを総合的に判断するとの観点から論ずる考え方など判断の枠組みとそのような権利の性質の位置付けに関していくつかの考え方が成り立ち得るいずれの考え方であっても評価に差異はないが設問において敷金返還請求権の特質のほか当事者間の衡平の観点から将来の給付の訴えの適法性が認められた場合における被告の負担を考慮することが求められているとおり今後の賃料の滞納の可能性や明渡しの時の原状回復の必要性によってその額はもちろん成否さえも不明であるという敷金返還請求権の特質や敷金返還請求権の発生要件である本件建物の明渡しは債務者(X)ではなく債権者特に本件では主としてY1)に依存していることなど本件における当事者間の争いの状況を踏まえ将来における権利発生の蓋然性や将来の強制執行に対する防御のために請求異議の訴えを提起しなければならなくなるかもしれない被告の負担につき論ずる必要があるまたその際には判例最高裁判所昭和561216日大法廷判決・民集35101369大阪国際空港事件),最高裁判所昭和6331日第一小法廷判決・裁判集民事153627頁等が示した将来の給付の訴えの適法性についての判断基準(①請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在しその継続が予測されるとともに,②請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られ,③これについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない場合以下「3要件という。)を用いることが適当かどうかも意識して検討することが期待される下線は筆者

上記判例135条を学ぶ際には必ず目にするはずの判例であるこれらは、135条の適用にあたり必要不可欠な規範を示したものである。「規範の重要性は今更言うまでもないがそれにもかかわらずきちんと覚えていないというのであれば、「意識が低いと言わざるを得ない。「なぜその判例を学ぶのか?」という点を意識できていればその内容を覚えておくべき必要性の高さに思い至るはずである

判例の知識等から導かれた要件を前提に下線部の情報を整理する必要がある問題文による誘導も法的思考の大枠が整っているからこそ論理的に一貫した形で整理できるのである。「要件を具体的に明らかにしないまま敷金返還請求権の性質や当事者間の衡平等を書き連ねてもあまり意味のない論述に終わるまた整理すべき具体的状況も検討すべき要件があるからこそその整理の方向性を見定められる正しい法的思考の順序を身につけてほしい

 

もっとも以上を適切に論ずる答案はほとんどなかった多くの答案においては請求の適格と狭義の権利保護の利益とを分けて前者の問題として論ずるという考え方を採った上で,3要件を用いて検討をしていたがそのうち大半の答案においては,3要件が本問のような敷金返還請求においても同様に当てはまるかどうかという点についての意識を有していないことがうかがわれたまた②3要件を用いて検討する答案であっても具体的な事案の当てはめにおいて敷金返還請求権の特質が適切に意識されたものは多くはなく敷金返還請求権の特質への言及がされているもののそれが結論を導き出すに当たってどのように考慮されているのかが不明なものやそもそも敷金返還請求権の特質が意識されていないもの何らの具体的な根拠を示すことなくが請求異議の訴えの負担を負うことが不当である又はないという結論だけを示すものなど当てはめにおける検討が十分ではないものが多かったまた当てはめの内容が不適切であって自身が用いた要件の意義を正しく理解しておらずその表面的な文言を暗記して記述しているだけであると判断される答案も散見されたこのほか④3要件とは内容や表現が若干異なっており,3要件を提示したいという趣旨であれば不正確であるものさらには,3要件の意味合いが異なるものとなってしまっていると考えられるもの),法第135条のあらかじめその請求をする必要と請求の適格の関係が曖昧であるものなども一定数あったこれらの答案からは受験者が定型的な論証パターンを暗記するだけという学習をしているのではないかと懸念されるこのほか何らの基準も示すことなく漫然と問題文中の事実を摘示しただけで結論を導く答案も少数ながらあったこのような答案は論理を示したものとはいえず評価されない

→①判例の射程の問題と理解できようかもっとも根本的には本問がなぜ135条の問題なのか?」という説明が必要だという話上述と同じである本問と135要件定立の根拠とのつながりも敷金返還請求権を問題とする本問と判例(3要件の根拠とのつながりもその説明が必要な間隙があるこの辺りは説明する意識がないと説明できるようにならない説明すらするようにならない

敷金返還請求権を巡る事例と将来の給付の訴えの論点を考えたことがない受験生には難しい問題かもしれないしかし要件を把握できているならばあてはめの巧拙は日頃の演習の成果が試されるところである。「あてはめの検討が不十分な原因は要件に関する理解が不足しているかあてはめにおいてきちんと説明する意識が希薄であるかのいずれかである闇雲にあてはめの練習をしないことが大切である点数が伸びないのは原因がある

③④インプットのし直しが必要な例である覚え直せばあてはめもグッとよくなるケースが少なくない

知識不足だったのだろうかそれなら仕方ないもう一度勉強のし直しである一方で、「これでいいと思っている受験生がたまにいる条文の文言を書き写し問題文の事実を書き写すだけのような答案は原則として論外である条文の解釈や事実の評価等があって初めて隙間のない精緻な法的検討が成立しうる法的思考の基本に関わるポイントである

 

※脱暗記、法的思考重視の添削指導はABproject。

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令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その1~ 論理に盲目な人は落ちる。

「科学的なエビデンス」で安心する人は、本質を見誤る。

 

今日から民事系第三問の採点実感を読んでみたシリーズに入ります。

タイトル等の言葉は、最近気になっていることです。

この世の中に絶対的なものなんてないはずです。

「法学の基礎基本」を除いては・・・(笑)

(赤字は筆者)

 

令和年司法試験の採点実感民事系科目第

出題の趣旨等

民事系科目第問は民事訴訟法分野からの出題であり出題の趣旨は既に公表されている令和年司法試験論文式試験出題の趣旨民事系科目】〔〕」のとおりである本問においては例年と同様受験者が,①民事訴訟の基礎的な原理原則や概念を正しく理解し基礎的な知識を習得しているか,②それらを前提として設問で問われていることを的確に把握しそれに正面から答えているか,③抽象論に終始せず設問の事案に即して具体的に掘り下げた考察をしているかといった点を評価することを狙いとしている

上記の基礎的な原理原則は主に短答過去問でその範囲を特定できる短答過去問演習は必須。②、①を前提として問題の意図を把握できるかがポイント問題を解くためだけでなく問題を正確に把握するためにもが大事。③質の高い論文添削を受けて具体的に検討するとはどういうことか理解することが必要合格答案や参考答案等でわかった気になるのではなく自分自身の答案を使って具体的に答えるイメージを育てよう

 

採点方針

答案の採点に当たっては基本的に上記からまでの点を重視するものとしている本年においても問題文中の登場人物の発言等において受験者が検討し解答すべき事項が具体的に示されているそのため答案の作成に当たっては問題文において示されている検討すべき事項を適切に吟味しそこに含まれている論点を論理的に整理した上で論述すべき順序や相互の関係も考慮することが必要であるそして事前に準備していた論証パターンをそのまま答案用紙に書き出したり理由を述べることなく結論のみを記載したりするのではなく提示された問題意識や事案の具体的な内容を踏まえつつ論理的に一貫した思考の下で端的に検討結果を表現しなければならない採点に当たっては受験者がこのような意識を持っているかどうかという点についても留意している下線部は筆者

上記①~③はいわば法的思考を展開するにあたって基本となる当たり前の話採点実感で書かれているから大事だという話ではないまた各下線部は答案作成において注意すべき点正しい法的思考につながるポイントであるそして、「意識を持っているかどうかという点も留意しているとの指摘には特に注目してもらいたいその意識の違いは日頃の学習への取り組み方の違いを如実に表すものだからである日頃の意識の違いは、「無意識にも影響する。「無意識に書いている部分にも当然その解答者の実力が反映されている

 

採点実感等

全体を通じて

本年の問題では例年同様具体的な事案を提示し登場人物の発言等において受験者が検討すべき事項を明らかにした上で訴えの利益心証形成の資料共同訴訟の類型訴えの取下げの効果等の民事訴訟の基礎的な概念や仕組みに対する受験者の理解を問うとともに事案への当てはめを適切に行うことができるかどうかを試している

問われた事項について全く知らないという受験生はいないはずである誰もが一度は学んだことがある事項についてその理解の深さを問う問題だと思うもちろん使うべき規範判例を覚えておくことが前提である本年度問われた知識は民訴法上の問題としてよく問われるものばかりである知識が足りなかったと感じるのであればそもそも知識に対する意識が足りなかったというべきだろう

 

設問について時間が不足していたことに起因すると推測される大雑把な内容の答案が一定数見られたものの全体としては時間内に論述が完成していない答案は少数にとどまったしかし検討すべき事項の理解を誤り検討すべき事項とは関係ない又は不要な論述を展開する答案や検討すべき事項自体には気が付いているものの問題文で示されている事案への当てはめによる検討が不十分であって抽象論に終始する答案も散見されたまた基礎的な部分の理解の不足をうかがわせる答案も少なくなかった

時間不足になったのはおそらく知識や理解の不足が原因だろう何を書いていいかわからないまま時間だけが過ぎてしまうのも実力不足である何を書いていいかわからないときでも具体的事実関係を改めて整理しなおす条文を読み直すなどして論点をあぶりだせることは少なくないその練習を日頃からしておくことが必要であるしそもそもどういう時に論点になるのかをパターン的に整理しておくことも有益であるこの辺りの準備の差は、「法律問題を解くためにはどうすればよいか?」という意識の持ち様と関わっている

 

なお条文の引用が当然求められる箇所であるにもかかわらずその条文を引用していない答案や引用条文の条番号が誤っている答案も一定数見られた法律解釈における実定法の条文の重要性は改めて指摘するまでもないまた判読が困難な乱雑な文字や略字を用いるなど三者が読むことに対する意識が十分ではない答案特に刑事訴訟法との用語の混同など法令上の用語を誤っている答案日本語として違和感を抱かせる表現のある答案も一定数見られたこれらについては例年指摘されているところであるが本年においても改めて注意を促したい下線部は筆者

下線部はいずれも意識次第で改善できるはずであるし合格答案を作成するために改善しなければならない基本的な問題である当たり前のこと過ぎてあえて指摘されていないこともあるのかもしれないが改善できることを改善することはその時点ですぐに改善できないことを改善する礎になる一事が万事である添削指導でも特に注意している

 

※全ての添削に根拠を示す添削指導はABproject。

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令和2年民事系第二問の採点実感を読んでみた~その3~ 法的三段論法をなめていないか?

出来てるつもりが一番怖い

今日で民事系第二問の採点実感は最終回。

「法的三段論法」の重要さと難しさを噛み締める一日にしてもらいたいと思います。

(赤字は筆者)

※その1、その2もご覧ください。

 

設問2⑵について

ア 全体的な採点実感

設問2⑵会社が特定の種類の株式のみを対象として株式の併合をしようとする場合に不利益を受けるおそれのある種類株式の株主の事前の法的救済方法としてどのようなものが考えられるかについての理解等を問うものである

またもや条文を知っているか引けるか)?」という問いである。「会社法上の手段という設問中の文言を見た瞬間反射的に頭の中の六法をめくったあるいは実際に六法を開いた受験生が合格者となる資格のある者である必ずしも下記の全ての条文を事前に知っている必要はないただし現場で速やかに六法をめくれるような事前準備をしておく必要はある

 

(ア) 設問2⑵においては,P本件株式併合の効力の発生前の時点で会社法上の手段として,①反対株主の株式買取請求をすること会社法116条第項第号イ),②本件株式併合について差止請求をすること同法第182条の3),③本件優先株式のみを株につき株の割合で併合すること等について定める議案本件議案3)に関する甲社の臨時株主総会本件臨時総会の決議本件決議3)について株主総会の決議の取消しの訴えを提起することなどが考えられる

(イ) ,P種類株主総会の決議を要しない旨の会社法322条第項の定めがある本問においては同法第116条第項第号イの規定により反対株主の株式買取請求をすることができる。Pが反対株主の株式買取請求をすることについて論ずるに当たっては設問2⑴の解答及び本問におけるその他の事実関係を踏まえ反対株主の株式買取請求の要件が満たされていること例えば本件優先株式の株主に損害を及ぼすおそれがある同号柱書と認められることや事前の反対通知と株主総会での反対をしているので反対株主に該当する同条第と認められることなどにも具体的に言及することが求められる

しかし,P会社法116条第項第号イの規定により反対株主の株式買取請求をすることなどに言及している答案は少なかった他方で本件株式併合によって株に満たない端数は生じないため,Pは同法第182条のの規定により反対株主の株式買取請求をすることができないことに言及している答案が相当数見られた

(ウ) ,P本件株式併合について差止請求をすることが考えられる。Pが本件株式併合の差止請求をすることについて論ずるに当たっては設問2⑴の解答及び本問におけるその他の事実関係を踏まえ取り分け差止事由が認められるか否かについて検討することが求められる

この点に関する解釈としては様なものがあり得るところである例えば,①甲社が本件優先株式を発行する前に発行していた株式本件普通株式の株主は本件株式併合によって他の株主と共通しない特別の利益を得るため株主総会の決議について特別の利害関係を有する者に該当しかつ本件株式併合は専ら本件優先株式の株主の優先配当権を実質的に縮減することを目的とするため本件決議は著しく不当な決議に該当することから本件決議には取消事由がある会社法831条第項第と認められこれが瑕疵のない株主総会の決議による決定を求める同法第180条第項に違反し差止事由である法令違反同法第182条の3)が認められるといった解釈が考えられるまた,②本件優先株式の株主の優先配当権の実質的な縮減を目的とする不当な株式の併合であって権利濫用の法令違反があるとして差止事由である法令違反が認められるという解釈も考えられるさらに,③取締役の善管注意義務を定める一般的な規定同法第330民法644会社法182条の法令に含まれるとする理解を前提に取締役は善管注意義務の一内容として株主間の不当な利益移転を生じさせないようにする義務を負うところ本問においてはこのような義務の違反があるため差止事由である法令違反が認められるとする解釈も考えられる加えて,④本件株式併合は実質的には本件優先株式の権利内容を変更するための定款変更と等しいことから同法第322条第項第号及び第項ただし書が類推適用され種類株主総会の決議が要求されるのにそれを経ていないことが法令違反に該当するとする解釈も考えられるなお,⑤上記からまでのように本件決議に取消事由があるとしても実際に本件決議が取り消されない限りは差止事由である法令違反があるとは認められないとする解釈も考えられる

しかしこれらを十分に論じている答案は少なかった他方で本問においては差止事由である法令違反が認められないため,Pは本件株式併合について差止請求をすることができないと論ずる答案が相当数見られた

(エ) ,P本件決議について株主総会の決議の取消しの訴えを提起することが考えられる。Pが本件決議の取消しの訴えを提起することについて論ずるに当たっては仮に本件決議が取り消された場合にはこれによって本件株式併合も無効となると解されるため本件決議の取消しの訴えを提起することは本件株式併合の効力が発生した後に本件株式併合の無効を主張する前提となることに言及するなどまずは本件株式併合の効力の発生前の時点で本件決議の取消しの訴えを提起することの意義を明らかにすることが望ましいその上で本問における事実関係を踏まえ本件決議に取消事由が認められるか否か例えば上記からまでの解釈と同様の解釈を採り本件決議には取消事由がある会社法831条第項第と認められると論ずることなどが考えられる

が本件決議の取消しの訴えを提起することについて論ずる答案は一定数見られた。Pが本件株式の併合の差止請求をすること及び差止事由について論じている答案は,Pが本件決議の取消しの訴えを提起すること及び取消事由についても論じていることが多かった

なお差止事由又は取消事由として株主平等原則違反に言及する答案が相当数見られたが株主平等原則を定める会社法109条第項の規定が特定の種類株式についてのみ株式の併合をする本件にも類推適用されるかどうかを適切に論じている答案は少なかった

上記の指摘はいずれも条文解釈に関わる話であるから条文の文言一つ一つを注意深く読みながら整理すべきである会社法条文数が多いそれに対して苦手意識を持つ受験生もいるようだが条文が多いということは命綱が多いということである。「条文は命綱である命綱を見逃さない命綱を掴んだら離さない会社法のたくさんの条文に触れながら試験本番まで徹底的に練習してほしい会社法の細かい規定が苦にならなくなったら他の法律はほぼ楽に読めるはずである。「法律学習の相乗効果に期待してもらいたい

 

イ 答案の例

 

法科大学院教育に求められるもの

設問においては新株発行の無効の訴えに言及しない答案やそれに言及しているものの株主総会の決議の取消しの訴えとの関係について十分に言及しない答案が少なくなかった会社の行為本問においては新株発行の効力が問題となる場合にはそのことをどのような訴えによって争うべきかについても適切に理解することが求められる

上記で指摘した通り条文に沿って検討できていればいいだけの話である法科大学院では法学の基本すら教わらないのかと思われてしまう

 

本件決議に取消事由があることが本件株式発行の無効原因になるかどうかについて非公開会社の事例であることを考慮して論ずることができている答案は必ずしも多くなかった会社法募集株式の発行等については非公開会社と公開会社とで株主にどのような保護を与えるべきかが異なるという考え方の下異なる手続規制が用意されているためこのような会社法の基本的な規律を踏まえた検討が必要であることに強く留意してほしいこのような観点から検討する際には会社法上の代表的な判例本問についていえば前掲最判平成2424日等についてその判例の事案と問題文中の事実関係の異同を適切に拾い上げ事実関係に即して柔軟かつ適切にその判例についての理解を応用することができるようになればなお望ましい

公開会社と非公開会社を区別する実質的な利益は実務を知らない受験生には理解しがたいかもしれないしかし条文を読んでいればこれらを区別して定められる規定が一つや二つではないことに気付くはずであるそれはつまりこれらの区別を前提に異なる手続規制が用意されているということである条文から読み取れる事柄は多い本当に条文を読むことは大事なのである

 

本件決議に取消事由があることを認定しつつもそのことがどのような理由から本件株式発行の効力に影響するかについては十分に検討しない答案が多かった本問において問われているのは本件株式発行の効力であるため何が法的論点であるかを常に意識しながら検討をする必要がある

→「本問において問われているのは本件株式発行の効力であるためという指摘は要するに設問をちゃんと読んで理解してほしいということである問われていることを理解した上それに答えるための判断基準要件を条文等から導くことが法的思考の肝である。「何が法的論点であるか・・・などと言われると高尚な話のように思うかもしれないが問われたことに対して基本に忠実に考え答えろという当たり前のことを言われているだけである

 

全員出席総会による瑕疵の治癒が認められるか否かが問題となることに言及している答案も多くなかった会社法上の基本的な制度や条文判例について理解していることが前提であるが問題文中の事実関係から会社法上重要な意味を有する事実を適切に拾い上げることができることが必要である

基本的に問題文に無駄な事実はないと思って答案構成していいただし事実を追いすぎると事実に踊らされて収拾がつかなくなるので注意が必要である上記で指摘されている通り事実を適切に拾い上げることが出来るのは、「会社法上の基本的な制度や条文判例について理解していることが前提である」。とすると日頃の学習は事実を適切に拾い上げるための準備として位置付けるべきである覚えるだけの学習は不十分であるということである

 

設問2⑴比較的良くできていたが,Pの持株比率が低下することを挙げるにとどまる答案など本件株式併合によって株主に生じ得る不利益を抽象的かつ一般的に論ずるにすぎない答案も少なからず見られたまた問題文においてどのような不利益が生じ又は生じるおそれがあると考えられるかについて説明しなさい。」と問われているにもかかわらず例えば単に持株数比率が減少するという事実のみに言及するにとどまり生じ又は生じるおそれがある不利益についての具体的な説明を欠くと評価せざるを得ないような答案も見られた会社がある行為をする場合にそのことが利害関係人本問においては株主にどのような影響を及ぼし得るかについてはできる限り具体的にイメージし論述することができる力を養うことが求められるそのことは事前の手続規制や事後的な救済手段など会社法上の制度について深く理解するために必要なことであると考えられる

上記で述べた通り事実と評価が大事と指摘されている目の前にある事実生の事実を示し適切にその評価をすれば自然と具体的な論述になる具体的な論述が出来ない受験生は事実と評価の区別を徹底すればいいなお事実の評価は基本的な法の理解が前提となることも忘れてはいけない

 

設問2⑵においては会社が特定の種類の株式のみを対象として株式の併合をしようとする場合に不利益を受けるおそれのある種類株式の株主の事前の法的救済方法として会社法116条第項第号イの規定により反対株主の株式買取請求をすることに言及している答案は少なかったまた本問の事例は同法第182条のの規定により反対株主の株式買取請求をすることができる場面であると誤解している答案が少なくなかった必ずしも確認する機会が多くない条文であっても種類株式が発行されている場合における異なる種類株主間の利益調整の必要性とそのつの調整方法である反対株主の株式買取請求等が認められるための要件といった会社法上の基本的な制度についての理解を前提として問題文中の事実関係に即して適用されるであろう条文を探し出しその内容を正確に理解することができることが必要である

勉強したことがない条文でも間違えてはいけないのである日頃の学習の中で条文を学ぶことも大切であるが読めるようになっておくことも大切であるこれは試験対策としてだけではない条文を読めない受験生の学びはどこまでも浅いのである

 

が本件株式の併合の差止請求をすること又は本件決議の取消しの訴えを提起することについて論ずるに当たっては差止事由又は取消事由である法令違反をどのように構成するかが難しかったようであるが会社法上の基本的かつ重要な制度について学習する上で例えば株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって当該決議が取り消されることとなるかどうかについて検討することとなる機会は少なくないのであるからそのような機会を通じて身に付けた基本的な理解を前提として問題文中の事実関係に即して柔軟かつ適切にその理解を応用することができることが期待される

→「法令違反をどのように構成するかが難しかったようであると思われるのは法令違反とは何か整理できていなかったからではないか法令違反を認定するためには少なくとも、①特定の法令の存在その違反要件の話の段階をクリアする必要があるこの理解を前提にあとは死に物狂いで該当する事実を探すのであるここまで理解していて本番で見つからないのは仕方がない知らない知識ゼロで試験に臨める受験生はほぼ皆無のはずである

 

従来と同様に会社法上の基本的な制度や条文判例についての理解を確実なものとするとともに問題文中の事実関係から重要な意味を有する事実を適切に拾い上げこれを評価し条文を的確に解釈及び適用する能力と論理的思考力を養う教育が求められる

法的三段論法を極めなさいという話である法的三段論法という言葉を知らない受験生はいないと思うが実際に極めている受験生も少ないのが現実である知識の問題ではなく訓練の問題である量も大切だが適切な指導の下質を高めないと身につかない

 

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令和2年民事系第二問の採点実感を読んでみた~その2~ 添削指導の申込みを受け付けています。

今日のブログは、とても短い。

 

昨日ののブログが長かった分、今日は短めです。

でも質はそのまま。

「法学の基礎基本」にこだわっています。

(赤字は筆者)

※長い長いその1もご覧ください。

 

 

設問2⑴について

ア 全体的な採点実感

設問2⑴会社が特定の種類の株式のみを対象として株式の併合をしようとする場合に当該種類株式の株主とその他の種類株式の株主がどのような利害状況に置かれるかについての理解等を問うものである

ご存じの通りこの問題は少特殊な出題であるしかし全受験生が大切にすべき法的なものの見方を学ぶことが出来る良問である

 

設問2⑴においては本件優先株式のみを対象とする株式の併合本件株式併合の効力の発生によって本件優先株式の株主であるその保有する本件優先株式の数が半減するため,①株主総会における議決権の割合が大幅に縮減することになること,②優先配当額の総額も半減することになることなどについて説明することが求められるその際には,Pの議決権割合がどれほど縮減することになるかを具体的に算定した上で,P本件株式併合の効力の発生前には行使することができた一定の少数株主権も行使することができなくなることに言及したり本件優先株式には累積条項が付されていることなどに鑑みると優先配当額の総額の縮減によってが受ける不利益は比較的大きいと考えられることに言及したり,Bの議決権割合が分の超になるため,P株主総会の特別決議事項についてキャスティングボートを握ることができないようになることに言及するなどより深い分析をしていればなお望ましい

上記については言及している答案が多かったまた上記のような分析をしている答案も一定数見られたなお本件株式併合により本件優先株式の数は半分になるものの議決権割合は半分にはならないが議決権割合も半分になるとする答案が少なからず見られた

本問では「Pにはどのような不利益が生じ又は生じるおそれがあると考えられるかが問われている無論この不利益とは本件株式併合に伴う法律上の不利益である事実上の不利益ではない)。そして不利益の有無を判断するには具体的事実を適示しつつそれを評価する必要がある。(本件株式併合によってどのような効果が生じるのか効果発生後の事実関係の整理)→P保有株式数の減少、(それを前提とすると、Pにはどうのような不利益が生じていると言えるか権利義務関係に照らして得られる評価)→上記の二段階構造を意識できているべきである生の事実とその評価の区別は法的三段論法においても重要であるし、「法的なものの見方としても非常に重要である

 

イ 答案の例

 

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令和2年民事系第二問の採点実感を読んでみた~その1~ 連日のブログ投稿頑張っています!

今日のブログはかなり長いです。

 

連日、ひたすら手を変え品を変え「法学の基礎基本」をお伝えすることに苦心しております。

本日から民事系ぢ二問の採点実感を読んでみたシリーズです。

(赤字は筆者)

 

令和年司法試験の採点実感民事系科目第

出題の趣旨等

採点方針及び採点実感

民事系科目第問は商法分野からの出題であるこれは事実関係を読み分析し会社法上の論点を的確に抽出して各設問に答えるという過程を通じ事例解析能力論理的思考力会社法に関する基本的な理解並びに法令の解釈及び適用の能力等を確認するものであり従来と同様であるその際に論点について過不足なく記述がある答案や記述に多少の不足があっても総じて記述が論理的である答案制度の趣旨等に照らして条文を解釈している答案事案に即して具体的な検討がされている答案には一定の高い評価を与えたこれらも従来と同様であるなお例年言及しているが文字を判読することができず文章を理解することができない答案が見られるそのような文章については趣旨が不明であるものと判断した上で採点せざるを得ない

具体的な事実関係を条文に沿って整理する能力事例解析能力)、正しく法的思考を展開する能力論理的思考力)、会社法の法令解釈・適用能力条文上明らかでない法知識を含む)、読み手に文意を伝える能力文章表現力が求められているこれは別に気にするところではないなぜなら日頃の法律学習の中で当然に強調されるべきところであり言われるまでもないはずだからである

 

設問について

ア 全体的な採点実感

設問公開会社でない株式会社以下非公開会社という。)が募集株式の発行等をする場合にどのような手続が要求されるかそれらの手続に瑕疵があることが当該募集株式の発行等の効力にどのような影響を及ぼすか及び募集株式の発行等の無効をどのような訴えにより主張すべきかについての理解等を問うものである

→「・・・を問うものである。」と読んで分かった気になっていてはいけない設問に何と書いてあったのかが重要である

設問には本件株式発行の効力が発生したことを前提に、①「B本件決議及び本件決議には瑕疵がありそのことが本件株式発行の効力に影響を及ぼすと考えている。」、②「B令和2514日の時点でどのような訴えを提起してどのような主張をすることが考えられるかを検討した上でその主張の当否について論じなさい。」と書かれているこれらの指示を読んでどの程度明確に書くべき内容を構造的にイメージできたかがポイントである。①を読んで本件株式発行の効力が問題となることすなわち会社法上いかなる方法で効力を争うことが出来るか要件効果の話を考えなければならないことがわかる。②を読んで具体的な主張を述べなければならないことすなわち要件にあてはまる事実等を論ずべきことがわかるこれらは法的三段論法を意識していれば当然思い至る話である

について効力を争うときに使える条文は定められているか?、定められているとしてそれはどの条文なのか?、その条文にはどのようなことが定められているのかを六法を頼りに確認するそれを前提に必要な法律上・事実上の主張(②)を考えるなお本件では非公開会社における問題であるという特殊性がある事案の特殊性は常に意識しておく必要があるが優先順位は後であるまずは上記の条文からの検討を整理してほしい

 

(ア) 設問においては,B,①議決権のある剰余金配当優先株式本件優先株式の発行本件株式発行を行う旨の議案本件議案2)に関する甲社の定時株主総会本件定時総会の決議本件決議2)には取消事由があり非公開会社において募集事項を決定する株主総会の決議に取消事由があることは本件株式発行の無効原因に該当すると主張すること及び本件優先株式の内容等の所要の事項を定める定款変更を行う旨の議案本件議案1)に関する本件定時総会の決議本件決議1)には取消事由があるため本件株式発行は定款の定めのない種類の株式の発行となりこれは本件株式発行の無効原因に該当すると主張することが考えられる

本問は本件株式発行の効力について問うていただから本件株式発行の無効原因を検討するべきなのであるそして募集株式発行無効は訴えをもってのみ主張することが出来ると条文に書いてある(82812同柱書)。だから同無効の訴えに絡めて検討すべきなのである

 

そして令和14日の時点では本件株式発行の効力が生じているため,B例えば新株発行の無効の訴え会社法828条第項第を提起し本件株式発行の無効原因として上記及びのとおり主張することが考えられる

→「本件株式発行の無効原因として上記及びのとおり主張することが考えられる。」とあるがそもそも条文に無効原因は定められていないここが非常に大きな問題である。「ある事柄が条文に定められていないというのは論点が生じる典型パターンの一つだからであるこの点を大して意識もせず本件株式発行が無効となるのは・・・などと書き進めていく答案は、「条文から考えるという基本がわかっていない出題趣旨や採点実感を読んでこれを書けばよかったんだー。」と膝を叩いているだけの受験生に成長はない試験問題と出題趣旨・採点実感との間隙を埋められなければ単なる暗記学習で終わる大事なのは、「理解である

 

これらのことを論述する際には本問においては,⒜新株発行の無効の訴えの提訴期間非公開会社にあっては株式の発行の効力が生じた日から年以内会社法828条第項第が経過していないことさらに,⒝株式の発行の無効原因として株主総会の決議の取消事由を主張する場合には当該決議の取消しの訴えの提訴期間内株主総会の決議の日からか月以内同法第831条第項柱書前段新株発行の無効の訴えを提起しなければならないとする見解に立つときはその提訴期間も経過していないことにも言及することが求められる

→「『・・・言及することが求められる。』と書いてあるから今度は書こう。」と考えている受験生は二流である条文に照らして検討した後、「法定の訴えをもって無効原因を主張していこうと考えるからこそ書かなければいけないのである条文に書いてある訴訟要件すら検討せず訴えに基づく主張を展開することは通常あり得ない訴訟要件は本案の前提要件だからであるただし検討不要という問題設定となることがありうる)。

 

しかしそもそも新株発行の無効の訴えに言及していない答案が決して少ないとは言えなかったまた新株発行の無効の訴えと株主総会の決議の取消しの訴え又は当該決議の取消事由との関係について十分に理解しておらず何ら言及していない答案や当該決議の取消しの訴えを提起し当該決議を取り消す旨の判決を得た上で当該決議を欠くことを理由として新株発行の無効の訴えを提起するとする答案このような手順を踏むことは新株発行の無効の訴えの提訴期間が経過してしまう危険が大きいため実務的には考え難い。)もかなり存在した

→「新株発行の無効の訴えに言及していない」「新株の無効の訴えと・・・取消事由との関係について十分に理解しておらず何ら言及していない答案は全く条文を使えていないからその時点でレベルが低い明らかに基本が出来ていないのである無効原因は訴えをもってのみ主張することが出来ると定められているし(8281項柱書)、取消事由は株主総会決議取消の訴え(8311の規定として定められている無効原因の論述を展開するなら避けて通れない条文や説明があるはずである。「正しい法的思考を意識していないがゆえに中身がスカスカな答案になってしまっているこのような答案を書く受験生は知っている論点についてはある程度書けている風に見えるが少しひねられると途端に崩れる試験全体を通じて安定した成績を挙げるのは難しい

 

(イ) Bの上記の主張の当否を論ずるに当たっては本問において甲社は取締役会設置会社であるから株主総会の招集通知には株主総会の日時及び場所のみならず株主総会の目的である事項及び払込金額が募集株式の引受人に特に有利な金額である場合いわゆる有利発行の場合における募集株式を引き受ける者の募集に係る議案の概要を記載しなければならなかった会社法299条第項第298条第会社法施行規則63条第号ホ)。しかし本件定時総会の招集通知本件招集通知には株主総会の日時及び場所のみを記載していたため本件決議には株主総会の招集の手続の法令違反という株主総会の決議の取消事由があること同法第831条第項第を指摘することが求められるなお本問においては,「定款変更の件及び株式発行の件という会議の目的事項について取締役会で決定しているため同法第309条第項の違反はないと考えられる。)。

しかし会社法299条第項第号及び第項並びに第298条第項の適用関係や内容を正しく理解しておらず株主総会の招集通知に株主総会の目的である事項を記載しなければならないことに言及していなかったり株主総会の目的である事項議題と議案を混同していたりする答案が多かった

ここで問われていることは、「会社法の条文を知っているかちゃんと引けるか)?」ということである短答でも聞かれるレベルの知識であるから予備試験や司法試験の短答過去問をきちんと解いていれば複数の条文を整理した上で法令違反があることを指摘することくらいはできたはずである短答式試験の問題は条文操作を練習するのに最適の素材である試験科目になっていないからといってやらないというのではいけない少なくとも予備試験組は解いているはずである予備試験組の司法試験合格率の高さは短答を通じた訓練の賜物といっても過言ではない

 

(ウ) その上で本問においては株主全員(A及びB)が本件定時総会に出席しているからいわゆる全員出席総会による瑕疵の治癒が認められるか否かについて会社法株主総会を招集するためには招集権者による招集の手続を経ることが必要であるとしている趣旨は全株主に対し会議体としての機関である株主総会の開催と会議の目的たる事項を知らせることによつてこれに対する出席の機会を与えるとともにその議事及び議決に参加するための準備の機会を与えることを目的とするものであるから招集権者による株主総会の招集の手続を欠く場合であつても株主全員がその開催に同意して出席したいわゆる全員出席総会において株主総会の権限に属する事項につき決議をしたときには右決議は有効に成立するとする判例最判昭和601220民集391869全員出席総会による瑕疵の治癒が認められるためには株主が瑕疵を認識しつつ株主総会の開催に同意していることが必要であるとする見解大阪地判平成3025日金判155359等も踏まえ検討することが求められる

そして本問においては上記の判例を踏まえ株主全員(A及びB)が異議を述べずに出席しているから全員出席総会による瑕疵の治癒が認められると論ずることや上記の見解を踏まえ,(ⅰ)招集通知に記載すべき議案の概要においては本件株式発行が有利発行である旨が示されている必要があると解した上で,Bは有利発行であることを認識していないため瑕疵を認識して開催に同意したとは評価することができず全員出席総会による瑕疵の治癒は認められないと論ずること又は(ⅱ)招集通知に記載すべき議案の概要においては本件株式発行が有利発行である旨が示されている必要はなく払込金額等の募集事項が記載されていれば足りると解した上で,Bは瑕疵を認識して開催に同意したとも評価することができるため全員出席総会による瑕疵の治癒が認められると論ずることなどが考えられる

しかし全員出席総会による瑕疵の治癒について論じている答案は多くなくさらにこれについて株主が瑕疵を認識しつつ株主総会の開催に同意していることの要否を問題とするなど充実した論述をしている答案は少なかった

ここで問われている瑕疵の治癒について書けなかった受験生はそれほど悲観する必要はない瑕疵の治癒については条文に何も書かれていないからであるただし、「結論の妥当性という観点から形式的な検討の結果を修正するケースは論点発生の典型パターンである会社法においては、「法的安定を重視する傾向があるからあの手この手で行為の有効性を維持しようとすることが少なくないことをこれを機に覚えておけばいい

 

(エ) また本問においては本件株式発行が有利発行に該当することは比較的明らかであると考えられるところ有利発行の場合には取締役は株主総会の決議に際して有利発行を必要とする理由を説明しなければならず会社法199条第),それを欠くことは株主総会の決議の方法の法令違反という取消事由同法第831条第項第に該当する

本問においては,C本件決議に際し,2億円の資金調達が急務でありそのためには事実上本件株式発行以外に選択肢がないことを説明する一方で,2万円という払込金額が公正な払込金額である旨の虚偽の説明をしており,Bは本件株式発行が有利発行であることを認識することができていないため果たしては有利発行を必要とする理由を説明したものと評価することができるかあるいは仮にそのような評価が可能であるとした場合であっても株主の議決権行使に重要な影響を及ぼす事項について虚偽の説明をして本件決議を成立させているため決議方法の著しい不公正という取消事由同号が認められないかといった点について検討することが求められるその際には甲社の取締役は有利発行を必要とする理由の説明会社法199条第をしていないと評価することができるため本件決議には決議方法の法令違反という取消事由同法第831条第項第が認められると論ずることが考えられる他方で,A,2億円の資金調達が急務であること及びそのためには事実上本件株式発行以外に選択肢がないことを説明しているから有利発行を必要とする理由を説明したと評価することができると論ずることもあり得るまた,A株主の議決権行使に重要な影響を及ぼす事項について虚偽の説明をして本件決議を成立させているため本件決議には決議方法の著しい不公正という取消事由同号が認められると論ずることもあり得る

要するに、1993項違反があったかどうか(=決議方法の法令違反が問われている同項から導かれる要件を丁寧に検討し事実をあてはめていれば十分に合格答案になるはずであるほとんどの受験生が事前知識を持っていない状態でこの問題に臨んでいるはずであるとすれば合否を分けたのは、「条文を使いこなす力であるとかく会社法の問題は正確に条文を引用し使いこなせるかが問われているそれさえできれば何も怖くない。「知識がなかったから点数が取れなかった会社法に限ってはほとんどありえないと思う

 

本件株式発行が有利発行に該当するか否かについて言及している答案は多かったその中では有利発行を必要とする理由の説明をしていないと認定する答案が最も多かったがそのような認定をした根拠を十分に述べない答案も少なくなかったまた特に根拠を挙げることなく有利発行を必要とする理由を説明したと認定する答案も散見されたなお上記のとおり本問においては本件株式発行が有利発行に該当することは比較的明らかであると考えられるため本件株式発行が有利発行に該当するか否かについてはさほど厚く論ずる必要はないと考えられるがその点を長と論ずる答案が少なからず見られた

知識がないから根拠を上手く述べることが出来なかったのだろうそれは仕方がない知っているふりをして長と論じてみても墓穴を掘るリスクが高まるだけでさほど点数が上がるケースは多くない。「さほど厚く論ずる必要はないと考えられるがその点を長と論ずる答案ただの悪あがきであるし事例解析能力の低さを露呈するだけである

 

(オ) そして本件決議に取消事由が認められると解する場合には例えば,「非公開会社についてはその性質上会社の支配権に関わる持株比率の維持に係る既存株主の利益支配的利益の保護を重視しその意思に反する株式の発行は株式発行無効の訴えにより救済するというのが会社法の趣旨と解されるのであり非公開会社において株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合その発行手続には重大な法令違反がありこの瑕疵は上記株式発行の無効原因になるとする判例最判平成2424民集662908を踏まえ本問のように募集事項を決定する株主総会の決議を経ている場合であっても本件決議に上記のような取消事由があると解するときは既存株主の意思に反してその支配的利益が害されていると言うことができるか否かについて事案に即して検討した上で本件株式発行に無効原因が認められると解すべきか否かを論ずることが求められる

前掲最判平成2424日の判示内容に照らすと募集事項を決定する株主総会の決議の手続を経ていても決議に取消事由がある場合には株主は自らの支配的利益が損なわれていることに真に同意しているとは評価することができず株主の意思に反して支配的利益が損なわれていると言うことができるため株式の発行の無効原因が認められると解されると論ずることが考えられるその上で本問においては上記のように募集事項を決定する本件決議について取消事由が認められると解されるため本件株式発行には無効原因が認められ,Bの主張が認められると論ずることが考えられる

他方で株主総会の決議に取消事由がある場合であってもそれが既存株主の支配的利益に影響を及ぼさないときは株式の発行の無効原因が認められないとする解釈もあり得るそのような解釈を採る場合には本問においては支配的利益に影響を及ぼすと論ずること又は影響を及ぼさないと論ずることのいずれもがあり得るまた,Bには有利発行である本件株式発行を差し止める機会が実質的に与えられなかったことも考慮して本件株式発行に無効原因があると認められるか否かを論ずることも考えられる最判平成28民集5171頁を参照)。すなわち会社法非公開会社において原則として株主総会の決議が要求されるところ株主総会の決議の手続が要求される場合には株主はこのような手続を通じて募集事項を知ることができるといった理由から募集事項の公示が要求されていないところが本問においては株主総会の決議の手続を経ているものの,Bに有利発行であることが秘匿されているため,Bには株式発行差止請求権を行使する機会が保障されていなかったと評価することもできるそのことに着目して本件株式発行には無効原因が認められしたがって上記のの主張は認められると論ずることもあり得る

このように本件決議に上記のような取消事由があることと本件株式発行の無効原因との関係について十分な論述がされている答案は必ずしも多くなかった非公開会社における株主の支配的利益を厚く保護すべきであるという前掲最判平成2424日の実質的根拠等に言及した上で本件株式発行の効力を論ずる答案は一定数見られたまた特に理由を述べることなく本件決議に取消事由があることが直ちに本件株式発行の無効原因に該当するかのように論ずる答案が相当数見られた株式の発行の無効原因は判例及び学説上限定的に解されている一方で株主総会の決議の取消事由は株主総会の決議の瑕疵の中でも比較的軽微な事由であるとされていることとの平仄が検討されておらず株式の発行の無効という結論に合わせた強引な論述であると言わざるを得ない)。なお株主総会の決議の取消しの訴えを提起し当該決議を取り消す旨の判決を得た上で新株発行の無効の訴えを提起することを前提として前掲最判平成2424日の判示内容をそのまま当てはめる答案も一定数見られた下線及び丸数字は筆者

→①について参考判例の知識を前提に十分な論述をするのは実際のところ非常に難しいこれが出来るのはかなりの上位答案だということになる。②について非公開会社の特殊性を踏まえるべき問題は過去にも出題されていることから株主の支配的利益に言及することが出来たのだろう真に判例を理解できていたかどうかは疑わしいが仮に判例を読んだことがなくても問題演習等を通じて判例関連知識を蓄えているのだろう問題演習とその解説を通じて判例関連知識を増やしていく方法は、「判例百選をダラダラ読む方法よりおススメであるシンプルに退屈しにくいからである。③についてカッコ書きで実質的な問題点を指摘してくれているがそもそも決議取消しの訴えの本案要件と株式発行無効の訴えの本案要件は別物のはずである条文から要件を定立しそれにあてはめるという法的三段論法に精通している者なら、③のような指摘を受ける答案の違和感に気付けるはずである気付けないのは基本が出来ていない証左である

なお、「無効事由重大な法令違反程度の知識は持っていてほしい

 

(カ) Bの上記の主張の当否を論ずるに当たっても上記と同様に本件決議には株主総会の目的である事項及び定款の変更に係る議案の概要の記載がないという株主総会の招集の手続の法令違反がありそのことが株主総会の決議の取消事由に該当すること会社法831条第項第を指摘した上で全員出席総会による瑕疵の治癒が認められるか否かについて判例前掲最判昭和601220等も踏まえ検討することが求められる

既に述べた通り

 

(キ) そして本件決議に取消事由が認められると解する場合には本件株式発行が定款の定めのない種類の株式の発行に該当しこれが本件株式発行の無効原因に該当すると認められるか否かについて検討することが求められる

他方で全員出席総会による瑕疵の治癒が認められるためには株主が瑕疵を認識しつつ株主総会の開催に同意していることが必要であるとする見解に立った上で,Bが瑕疵を認識していたかどうかを問題にする答案の場合には本件決議については瑕疵の認識があるため治癒が認められるとする答案もあり得る

これについては本件決議と本件決議を区別しないでいずれも決議に取消事由が認められるため本件株式発行には無効原因が認められると論ずる答案が多かったもっとも本件決議については決議に取消事由が認められるため本件株式発行が定款の定めのない種類の株式の発行に該当しこれが本件株式発行の無効原因に該当すると論ずる答案も少数ではあるが見られた

この点に解答するためにはかなり高度な事例解析能力と条文知識が求められる上手く解答できたのが少数であったこともうなずける司法試験には解答出来なくてもいい論点があることを知っておいてほしい

 

イ 答案の例

 

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令和2年民事系第一問の採点実感を読んでみた~その3~ 判例の機能を知っているか?

判例にも出現パターンがある。

 

今回は、民事系第一問の採点実感を読んでみた最終回です。

毎年判例に対する理解不足が指摘されますが、それは、そもそも「判例とは何か」をわかっていないことが原因のように思います。

(赤字は筆者)

※その1、その2もぜひご覧ください。

 

全体を通じ補足的に指摘しておくべき事項

本年の問題も昨年に引き続きどのような法規範判例により形成される規範を含む。)の適用を問題とすべきかという大きな検討課題の把握は比較的容易であり実際にもこれを大きくは外さない答案が少なくなかったそれでも答案間で評価に差が付くのは分析の深度や精度更には論理的な展開力などによるところが大きいと感じられることも昨年と同様である下線は筆者

条文を適切に使えるか法的三段論法は身についているかなど基本的な能力・技術の部分で差がつくということである闇雲に知識を増やしても理解は深まらない理解を深めるためには基礎基本をきちんと押さえることである

 

すなわち本年の各設問にも現れているようにある一つの事案を解決するに当たっては複数の制度や判例等にまたがった分析が必要となるが当然ながらそのためにはの制度等についての理解が必要であり更には制度相互間の体系的な理解が必要になるその上でこれを一つの分析結果にまとめ上げるためにはその理解している内容を示された事実関係を踏まえて論理的に展開していくことが重要である

この部分は短答過去問をしっかり解くと馴染みやすいと思う短答過去問の中にはいわばミニチュア論文問題のような問題がある短答過去問も知識確認だけでなく法的三段論法を意識して丁寧に解いてもらいたい正しく学習していればいずれ上記の課題はクリアできるはずである道は果てしないが残念ながら近道はない

 

このような法律の体系的理解とこれに基づく実践的な論理展開能力の重要性は例年指摘しているところであり引き続き留意をしていただきたいその上で本年の答案を見て特に感じられたことについて幾つか指摘しておきたい

問題文をよく読まず,その指示や趣旨に従わずに論ずるものが散見されたことである例えば設問において,Bが乙建物に住み続けることを前提として,Cへの支払額を少なくするためのの契約責任に基づく主張について尋ねているにもかかわらず契約の解除取消しといった契約関係を解消する主張などを論じる答案が散見されたことや設問において問題文で指示した解答の流れから外れた論じ方をする答案も散見されたことである問題文において指示した内容に応じて解答する前提で採点はされるから限られた時間内に必要十分な答案を作成するためには問題文をよく読んで理解した上で答案を作成することが肝要である

その通りすでに演習不足が原因だろうと指摘した

 

特定の法律効果の発生の有無を検討することが求められているのにその基本的な要件が満たされているかどうかを検討せず自己が主要な論点と考える部分のみを論ずるものが散見されたことである例えば設問において契約不適合責任の有無について深く論ずること自体はよいとしてもそれのみを検討し代金減額請求や損害賠償請求の他の要件に触れないまま安易に請求権の発生を認める答案が散見された法律効果を発生させるためには法律要件が満たされていなければならないという当然の基本的原則を常に銘記する必要がある

→「法律効果を発生させるためには法律要件が満たされていなければならないという当然の基本的原則を常に銘記する必要があるのである日頃からやるべきことはこれである論点はその先にしかやってこない採点実感で指摘されているからではなく法の基本的原則であるからやらなければならないのである

 

毎年のように指摘をしているにもかかわらず本年も文字が乱雑であったり小さすぎたりあるいは線が細すぎたりして判読が困難なものが一定数存在したことである特に十分な答案構成をせずに書き始め後から既述部分に多数の挿入をする答案は必然的に文字が小さくなりその判読が困難になるこれらの点についても引き続き改善を望みたい

文字を大きく書く間隔を広く開けることをしてほしい文字が乱雑になってしまうのは非常によくわかる個人的な話で非常に恐縮だが正直どうしようもできなかったただ文字は大きく間隔は広くそれだけで随分違う

 

法科大学院における今後の学習において望まれる事項

本年は民法債権関係改正の施行後初めての試験であり同改正を踏まえた出題もされているがおおむね改正内容を把握した上での解答がされており法科大学院教育を通じて改正内容についての理解が進んでいることがうかがわれた引き続き改正内容を踏まえた法的知識の習得に取り組んでいただきたい

判例を明文化しただけの部分も多い

 

また本年においても昨年ほどではないものの設問の文字数を減らして受験者の事務処理の負担を軽減しつつ財産法の分野における基本的知識・理解を横断的に問う問題が出題された条文や判例に関する基本的な知識を踏まえ問題文を注意深く読んだ上で,【事実に顕れた事情を分析して設問の趣旨を適切に捉え筋道を立てて論旨を展開すれば相当程度の水準の解答ができるはずである設問の小問(2)多くの受験生にとってこれまでに検討したことがない問題であったと思われ検討に時間を要するとは考えられるがこのような問題であっても基本的な知識・理解が十分身に付いていればそれを手掛かりとしながら検討することは可能であると考えられる。)。限られた時間内で答案を作成するためには短時間で自己の見解を適切に文章化するのに必要な基本的知識・理解を身に付けることが肝要であり引き続き法的知識の体得に努めていただきたい

事務処理の負担が軽減したとは言いつつも依然大変な事務処理量だと感じる受験生が多いのではないかスムーズに答案構成しスムーズに論述を進める必要があるこれは、「気合いの問題ではなく事前準備の問題である。「条文なければ判例)→要件効果までの流れは短答過去問等を通じて徹底的に練習し考えなくても出来るようにする必要があるこれは基本中の基本ここが疎かになるから本番でもミスが出る多くの場合あてはめや正確な規範に注力する前に勝負がついてしまっている

 

さらに本年も昨年同様判例を参考にすることで深い検討を行うことができる問題が出題されているが法律実務における判例の理解・検討の重要性を再認識していただきたい判例の採った論理や結論を墨守することを推奨してはいないが判例と異なる見解を採るのであれば判例を正確に指摘して批判することが必須である。)。例年指摘されているところであるが判例を検討する際にはその前提となっている事実関係を基にその価値判断や論理構造に注意を払いながらより具体的に検討することが重要でありかつなケースを想定して判例の射程を考えることで判例の内容をより的確に捉えることができるものであるこのような作業を行うことでの制度についての理解が深まるだけでなく制度相互間の体系的な理解が定着することに改めて留意していただきたい

条文で定められていない部分を判例が埋めるという話は先述したこのように判例には決まった機能があるそれを意識せず闇雲に暗記しようとしていないか判例重要性は知りつつもなぜ重要なのかイマイチ理解していない受験生が多いように思うそれは判例を学ぶ前段階のつまづきが原因であると思われる

 

(民事系第二問はまた後日)

 

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