行政法課題テスト直前記念 「あてはめ」がわかれば、「生きる意味」もわかる
意味は「ある」のではなく、「与える」もの
行政法課題テスト直前記念ということで、予備試験・司法試験の論文式試験においては(短答式試験でも「あてはめ」の意識を持っていないと、知識偏重の弊害に窮することがあります)避けて通れない「あてはめ」をテーマにブログを書こうと思います。行政法においてはもちろん、他の科目でも使える情報ですのでぜひ全ての法律系資格試験の受験生の皆様にご覧いただきたい内容です。
・意味は「与える」もの
早速ですが、「なぜ生きるのか?」という疑問について考えたことはありますか?
・人生の目的を見つけるため
・あなたは人生の意味を問われている
・魂の成長のため
・生きることに理由などない
などなど、色々な見解があると思います。
私自身、その答えを知っているわけではありませんし、自分なりの答えを見つけられたわけでもありません。そもそも、今回のブログではそんなことどちらでもいいのです。
ここで言いたいことは、意味は「そこにある」ものでもなく、「与えられる」ものでもなく、自ら「与える」ものであるということです。
人生の「意味」も自分以外の誰かが教えてくれたり、決めてくれたりするものではなく、最終的に自分自身で与えなければならないものなのではないでしょうか。
・意味を「与える」前提には必ず基準点がある
「意味を『与える』」という視点に立つときには、2つのことを考えなければなりません。
①意味を与えるか否か
②(意味を与えるとして)どのような意味を与えるのか
ということです。
例えば、「生きる意味」について考えた場合、「生きることに意味なんてない」という主張が必ず出ます。これは、①の話です。
一方で「生きることに意味はある」という風に考えれば、その意味の内容について考えないといけません。この時、自分の中に何ら確固たるものがない人は、「わかりません・・・」ということになるでしょう。人は、何かを考える時、必ずよって立つ基準点があるのです。
例えば、「人生の目的を見つけるため」「魂の成長のため」という風に意味づけをするなら、人生や魂という存在がその人の思考の基準点になっています。その基準点から「『生きる』という行為に意味を与えている」わけです。
このように意味づけは、主観的にあるいは客観的に設定されたある基準点からしか与えられないものなのです。基準点がない場合には、何にも意味は与えられません。「ただそこにあるだけ」です。
・法的三段論法における「あてはめ」
前置きが長くなりましたが、小括すると
「意味は『与える』ものであること」
「意味は、『ある基準点から』与えるものであること」
がポイントでした。
これは、法的三段論法におけるあてはめを理解する上で、大きなヒントになります。
例えば、作業着を着た大工風の男性がノコギリが入ったカバンを持って歩いていたとしましょう。ノコギリの刃は、カバンから少しはみ出ており、少し離れたところから見てもそれがノコギリであることが分かる状態だったとします。
公道でその男性とすれ違った人は、その男性を全く気にしないかもしれません。では、パトロール中の警察官がその男性を見た場合はどうでしょうか?
「犯罪を未然に防止する使命」を基準点にすれば、ノコギリを持った男性は、危険人物という風に見るかもしれません。その男性を危険人物とみることは、客観的事実を評価した(意味づけをした)ことに他なりません。
では、状況を少し変えましょう。カバンの中にノコギリを忍ばせた男性が大勢の人が集まるコンサート会場に入っていこうとしていた場合、上記の警察官は何を考えるでしょうか?
犯罪を未然に防止するために職務質問や所持品検査をしたいと考えるかもしれません。この場合、当該警察官が忘れていけないのは、「法に則って動く」ということです。いくら犯罪を未然に防止するという「大義」があっても法に反する公権力行使は許されないからです。
少し刑事訴訟法の話に入ってしまいますが、当該警察官が「急いでいるので」などと言いその場を立ち去ろうとする男性の手を掴むなどしてその場にとどまらせることは、一定の要件を満たさなければ違法な行為になります。
そのため、当該警察官は、当該男性が大勢の人が集まるコンサート会場に似つかわしくないノコギリを持っていることなどの客観的状況を前提に、自身が行う行為を評価する(意味づける)必要があります。この時、評価の基準点になるのは、法解釈から導かれる「一定の要件」(必要性・緊急性など)です。
そこで、当該警察官の行為の適法性を判断するために「一定の要件」に従ってその行為を評価します。
具体的には、
・コンサート会場に向かうノコギリを持った男性の腕をつかむ→殺傷事件を起こす危険性があり、男性が同会場に向かうことを阻止するため(意味づけ)=必要性がある
・男性が「急いでいるので」などと言い、当該警察官の制止を振り切ろうとした→腕をつかむ以外に男性の行動を制止する手段がなかった(意味づけ)=緊急性がある
などと考えることが出来ます。
意味づけは、いずれも「一定の要件」を満たすように自分なりに考えたものです。つまり、当該警察官の行為に「意味を『与えた』」のです。
このように「あてはめ」は、法律要件を満たすように客観的事実に「意味を与える」(事実を評価する)ことによって成立するものなのです。その作業は極めて能動的なもので、受動的にインプット学習しているだけでは身に付きません。アウトプットの訓練がいかに大事かわかりますね。
他方で、法律要件に沿うように事実に意味を与えなければいけませんから、「あてはめ」を上手くこなすためには、法律要件の理解が不可欠になります。「あてはめが苦手」という受験生は、往々にして法律要件の理解が不十分であることが多いです。法律要件⇔事実の相互関係を意識しないと、あてはめをマスターすることは難しいのです。
「あてはめ」をマスターするためには、第三者による厳しい添削を受けることは不可欠です。本気で論文対策をしたい方には、日本一丁寧な添削指導のABprojectをお勧めします。
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行政法課題テスト直前記念 行政法の攻略~事前準備の大切さ~
苦手な受験生が多い科目ほど狙い目
来週2020年12月28日から開始予定の行政法課題テストは全3回です。年をまたいでの実施となりますが、課題テストも残りわずか3回ですので、最後まで気を抜かずに頑張っていただきたいと思います。
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行政法課題テストのテスト範囲は以下の通りです。「⇒課題テスト○」までが一区切りとなっています。勉強のペースメーカーにしてもらえれば幸いです。
0・行政法の基本
・行政法とは
・行政とは
・公法とは
・法源とは
・法律による行政の原理とは
・法律の優位の原則とは
・法律の留保の原則とは
・法律の法規創造力の原則とは
・行政主体とは
・行政機関とは
・行政庁とは
・諮問機関、参与機関、監査機関、執行機関、補助機関とは
・指揮監督関係とは
・権限の代理とは
・権限の委任とは
・専決とは
⇒課題テスト1
1・行政作用法
・行政立法とは
・法規命令及び行政規則とは
・委任命令及び執行命令とは
・通達及び要綱とは
・行政行為(≠行政の行為)とは
・下命、許可、免除、特許、認可、代理、確認、公証、通知、受理とは
・行政行為の瑕疵とは
・公定力とは
・違法性の承継とは
・行政行為の取消しとは
・行政行為の撤回とは
・行政行為の付款とは
・付款の許容性と限界とは
・行政裁量とは
・裁量権行使の違法性判断基準
・行政上の強制手段とは
・行政執行とは
・即時強制とは
・行政調査とは
・行政罰とは
・行政計画とは
・行政契約とは
・行政指導とは
・行政手続とは
・行政手続法とは
・情報公開法とは
⇒課題テスト2
2・行政救済法
・行政不服審査法とは
・行政事件訴訟法とは
・国家賠償法とは
・損失補償とは(憲法の復習)
3・地方自治
・憲法の復習
⇒課題テスト3
さて、今回は行政法攻略というタイトルですが、行政法攻略のポイントに関してはこれまでも当ブログ内で何度も行ってきました。
これもひとえに行政法を苦手とする受験生が多いからです。ABprojectに寄せられる添削指導のご依頼も憲法に続いて行政法が多いです(憲法はとりあえず一科目という時に目を付けられる科目のようです・・・)。
確かに行政法の問題はややこしく感じますね。その原因はいくつかあると思います。
①事務処理量が多い(特に司法試験)
議事録や参考資料なども含めれば他の科目に比べて処理しなければならない分量が圧倒的に多いことは、特に制限時間の厳しい司法試験において受験生を悩ませます。
②勉強時間が短い
行政法は、他の科目に比べて後回しにされる傾向があるようです。その結果、試験直前になっても未だ不安感をぬぐえない受験生が後を絶ちません。
③判例知識がやっかい
この点は、憲法と共通すると思います。行政法分野は長年判例法の蓄積や条例によって対応してきた部分が多く、それに追随する形で法整備が進められてきたという背景があります。そのため、どうしても判例に学ばなければならない部分が多くなり、その点が受験生を苦しめているようです。
こうした行政法の難点をどうクリアしていくかが問題です。
ただ、絶対に忘れてはいけないのは、予備試験・司法試験(特に論文式試験)は相対評価だということです。完璧に問題を理解し解くことが出来なくても、周りの受験生の出来次第で、優秀答案になることはあります。
「ちゃんと理解しないと・・・」「いい答案を書かないと・・・」と完璧主義になる必要はありません。むしろ、過度なプレッシャーで自滅したパターンが毎年発生するようなのでお気を付けください。
・対策その1~必要な情報を集めるための事前準備~
上記①の通り、司法試験行政法の特徴は事務処理量の多さです。私自身も司法試験対策を始めた当時一番戸惑ったのは行政法でした。しかし、最終的にはA判定でフィニッシュしています。そのカギとなったのは、事前準備と問題を解くときの情報の集め方です。
行政法の問題には、とても2時間では処理できないほどの情報量が散りばめられていますが、答案に書ききれない分の情報は無視して大丈夫です。「要件効果」の視点にこだわって、「『主体的に』情報を集める」姿勢がポイントです。
・対策その2~添削指導を通じて「法とは何か」を理解する~
判例が苦手な受験生の多くは、「法とは何か」という点の理解が不十分であることが多いです。 判例は、特定の法律(条文)に関連して裁判所の見解を示すものですが、そもそもの取っ掛かりである「法」というものを捉えられていないために、判例が何を言いたいのかもつかめないのです。
この点は、自分で法を使う経験を増やしていくと次第に解消されていきます。条文解釈・あてはめの訓練を通じて、法と具体的事実、相互の関係性を体得すると、抽象的だった概念が次第に具体化してくるのです。
個別法の読み方に戸惑う受験生も多いようですが、個別法を完璧に読み解かなければ解けない問題は出題されないはずです。それよりも、個別法で目先を変えられても動じない基礎力を身につけておくことが大切です。
添削指導を通じて、条文解釈・あてはめの暗記ではなく「理解」を深めておけば、司法試験・予備試験本番で無駄に慌てることはありません。
司法試験・予備試験の過去問対策は、ABprojectの添削指導なくして始まりません。
法学の基礎基本に徹底的にこだわって「自分の力で学び、成長していける力」を養います。
商法課題テスト⑦正解発表 なぜ選択科目の添削指導をしないのか?
基本7科目をきちんと書けるなら選択科目も怖くない
ABprojectは、予備試験・司法試験の過去問添削を中心に添削指導を継続的に行っています。
その間、多くの方から「選択科目の添削指導はしてもらえますか?」というお問い合わせを頂きました。今回は、この場をお借りして、改めて回答したいと思います。
結論としては、「選択科目の添削指導は一切行っておりません。」ということになります。その理由は、2つあります。
①選択科目の問題はそれほど難しくない
添削指導の意義は、文章の書き方や解答の流れ、題意の把握、あてはめの是非等、教科書を読むだけでは理解が至らない部分を補充していくことにあると考えています。
選択科目は、基本7科目(憲法・行政法・民法・商法(会社法等)・民訴法・刑法・刑訴法)に比べ、問題の難易度が落ちます。司法試験が受験生の法的基礎力を試すことを主眼に置いていることから当然です(2022年からは予備試験でも選択科目が導入される予定ですが、この点は同じでしょう)。
そのため、基本的な知識さえインプット出来れば、論文テクニック的なことを度外視しても合格点は確実にとれると思います。あえて高い添削料を支払って教えを受ける必要性は、低いのではないでしょうか。
②基本7科目を通じて「論文の書き方」をきちんと身につけていれば当然書ける
選択科目は、結局のところ、基本7科目の延長線上にあるものです。異なる法律なので新たに知識をインプットする必要はありますが、その根幹にある「法的思考」は、全く同じです。従って、選択科目でやるべきことは、基本7科目を通じて盤石にした「法的思考」に新たな知識を乗っけるだけということです。
これは、司法試験合格後、実務家になった場合にすべきことと全く同じです。皆さんが目指す実務家は、日々変わっていく世の中のルールを常にアップデートし、必要に応じて学んだことがない特別法にも手を広げなければなりません。そこで頼れるのは、司法試験に合格するために身につけた「法学の基礎基本」です。
「選択科目」というと特別な感じがするかもしれませんが、どれだけ目先を変えられても基礎基本が盤石であれば何も恐れる必要はありません。仮に「『選択科目』になると途端にどう書いていいかわからなくなる」というのであれば、選択科目の知識不足か、法学の基礎基本が身についていないかのどちらかです。
法学の基礎基本というのは、そういうものです。
※番外編~選択科目は何を選ぶべきか?~
個人的な話で恐縮ですが、私は選択科目として「国際私法」を選びました。
前評判で覚えることが少なく予備ルートの受験生向きと言われていたのが、興味を持った理由です。もっとも、決め手になったのは、国際私法の「条文の使い方」が面白いと感じたことです。長らく私のマイブームは「条文操作」にあるわけですが、国際私法の思考スキームは、そこに新たな視点を加えてくれる気がしました。
「条文の使い方」という法学の基礎を徹底的に信仰するなら、国際私法はいい科目だと思います。
予備試験終了後(11月頃)から国際私法の勉強を開始し、5月の司法試験に挑みました。国際私法を本格的に勉強し始めてからわずか半年足らずでしたが、50点は超えていました。「他の科目に比べて覚える量が少ない」というのは確実に言えると思います。正直、法の適用に関する通則法(通則法)の使い方(=新たな条文適用の形)さえわかれば、7割方勉強は終了したようなものだと感じました。
ちなみに「本格的に」と言っても使った本は一冊だけです。基本書等を眺めて見たりもしたのですが、「わずか6か月の間に読めるわけない」と早々に手放してしまいました。
他の科目と比較して考えたいという方はこちらのリンクを参考にしてみては??
ABprojectの添削料は、少々高めですが、その分選択科目突破にも通ずる確実な論文力の養成をサポートできるよう日本一丁寧な添削指導をしています。Abprojectの基本理念でもある「基礎基本の徹底」がいかに大事かを実感して頂ければと思います。
それでは、商法課題テスト⑦の正解と出題者の一言です。
まだ商法課題テスト⑦の問題を見ていない方はこちら。
問1→×
(出題者の一言)法律用語は正確に覚えたいですね。面倒ですが、コツコツ覚えた知識(定義・趣旨・規範等)は、絶対に自分を助けてくれます。
問2→○
(出題者の一言)「条文の定めがない(=明文の定めがない)」ことは、論点創出のきっかけになります。「条文がないからどう処理するべきか判断できない」というわけです。従って、ある問題に関して適用できる条文があるかないかは、常にチェックしておく必要があります。
問3→○
(出題者の一言)似て非なる制度を比較して整理することが大事です。そして、似て非なる制度があるのは、そうするべき必要性があるからです。それを意識するところに、理解のポイントがあります。
問4→×
(出題者の一言)吸収合併と事業譲渡のもっとも重要な違いを問う問題です。また、対抗要件の問題も忘れないでください。権利変動が生じた場合には、必ず対抗問題の存在を疑う必要があります。
問5→×
(出題者の一言)行政法分野における論点とつなげてみました。異なる法分野では、似たような問題でもその処理方法が異なることがあります。その背景には何があるのかを知ると、当該法分野の本質により近づけるかもしれませんね。
これにて商法課題テストは終了です。
行政法課題テストは、2020年12月28日開始予定です。
テスト範囲は近日中に公開します。
課題テストの添削指導で論文基礎力と基本的な法知識を身につけよう!!
司法試験・予備試験合格サポートは、完全月謝制で質問し放題!!
商法課題テスト⑦ こんな人は司法試験に受からない!!
ワーキングメモリの働きと認知負荷とは?
知り合いの司法試験合格者が受験勉強の他に「脳トレ」を努めてやっていたという話を聞いたことがあります。
その動機を聞くと、司法試験の論文試験の問題を解いている際、問題文の後半に差し掛かると問題文の前半に書いてあったことを忘れてしまうことが度々あり、「これではダメだ!」と思ったからだそうです。
これは、脳の「ワーキングメモリ」のお話です。ワーキングメモリとは、一時的に情報を脳に保持し、処理する能力のことです。
ワーキングメモリが十分に鍛えられていないと、上記の司法試験合格者のように情報処理に手間取ることが多くなります。特に司法試験は、問題文が長く、情報処理能力の差がそのまま点数の差につながると言っても過言ではありません。下記の項目に心当たりがある方は、情報処理能力を鍛えることを考えた方がいいかもしれません。
・ふと考え事をすると、何をしようとしていたのか忘れてしまう
・2つ以上のことを同時にできない
・電話番号レベルの少ない情報ですらすぐに忘れてしまう
※ワーキングメモリを鍛える方法
ワーキングメモリと関連して重要な認知の問題として、認知負荷というものがあります。
認知負荷とは、簡単に言うと、ワーキングメモリの活動にかかる負荷のことです。ワーキングメモリの限度を超える認知負荷がかかってしまうと、上記に挙げたように情報処理がうまくいかない事態に陥ることになります。
また、記憶という面でも、この認知負荷を意識することが重要です。人間の記憶は、ワーキングメモリにある情報が長期記憶のスキーマ(脳内にある情報整理の枠組み)に統合されることによって形成されるからです。そもそも、ワーキングメモリの保存容量を超えてしまった分の情報は、記憶として保存される前にこぼれ落ちていきます。
机の上に散らばった本や資料を棚に整理する場面を思い浮かべてください。小さな机に載せられないくらいの本や資料が集まってしまったら、机から落ちて散らかってしまいます。棚にしまうのが遅くなってしまうのは当然です。
このような状態を解決する方法は2つです。
①机を大きくする(ワーキングメモリを鍛える)
②机から棚に移動させる時間を短縮する(記憶への移行時間を短くする)
①は、上記のリンク記事をご参照ください。
②に関しては、脳のスキーマを整理しながらインプットする工夫が大事だと思います。基本的なことを学んだ後、応用的なことを学ぶというように学習の順序を工夫したり、情報の枠組みとなる知識を先に学んで、その知識にタグ付けするように新たな情報をインプットするようにしたりすることが考えられます。
また、一度に多くのことを覚えようとしないことも大事です。どこまでいっても机の大きさ(ワーキングメモリの容量)には限界があるからです。
法学習に行き詰っている方には、「法学のコンパス」を使って法知識のスキーマを作ることをお勧めします。これは、膨大な情報量に圧倒され何度も挫折を経験した私自身の経験から生まれたものです。法学の見方や考え方をシンプルにまとめ(A4サイズ7ページ)、膨大な情報とどう向き合えばいいのか、その指針を示すものです。
ワーキングメモリの容量が少ない方でも、無理なく合格への第一歩を踏み出せるような内容になっています。
※法学のコンパス(新版)発売開始!!
○注意書き
・参照可→六法等
・制限時間なし
・解答は記述式
・記述の構成要件→①正誤②条文の適示③問題となる要件④問題の所在
・5問中4問正解で合格
問1
資本金の額とは、設立又は株式の発行に際して株主となる者が会社に対して払込み又は給付した財産の額のことを言い、その額は登記事項であるとともに、定款記載事項である。
(正誤)
(理由付け)
問2
分配可能額を超える剰余金配当の法的効力については明文の定めがないのに対して、その会社の純資産額が300万円を下回る場合には、剰余金配当をすることができない旨の明文の定めがある。
(正誤)
(理由付け)
問3
吸収合併においては、吸収合併消滅会社の債務は当然に吸収合併存続会社に承継されるが、事業譲渡においては、譲渡会社が債権者の承諾を得て譲受会社に免責的引受けをさせない限り、譲渡会社の債務は存続する。
(正誤)
(理由付け)
問4
事業全部の譲受けをした会社が当該譲受けに関わる財産の移転につき第三者に対抗するには、個々の財産について対抗要件を具備する必要があり、この場合、事業の全部を譲渡した会社は、もはやその実体を持たないから当然に消滅する。
(正誤)
(理由付け)
問5
吸収分割をめぐって重大かつ明白な違法があった場合、その手続きは当然に無効と解されるから、株主は、特段の手続によらず、吸収合併存続会社に対してその無効を主張できる。
(正誤)
(理由付け)
商法課題テスト⑦の正解発表は明日2020年12月22日予定です。
課題テストの添削指導は、こちらからお申込みいただけます。
予備試験・司法試験の論文試験対策は、過去問添削指導なくしてはじまりません。
商法課題テスト⑥正解発表 わからないことは一旦諦めなさい
勉強していないときも脳は勝手に動いている
【速報!!法学のコンパス新版が発売されました】
私自身、勉強していない間に脳が勝手に情報処理してくれていることは、何となく気付いていました。
・昨日、覚えようとしていたものの何だかうろ覚えだったことが翌日にはクリアに記憶出来ていた
・数か月前に死ぬほど理解に苦しんだ論点が、すんなり理解できた
といった経験が何度もあったからです。
これは、心理学者も認めるところのようです。立命館大学総合心理学部の服部雅史教授が、下記の記事の中で「意識と無意識の相互作用」について説明されていました。
要は、「意識して」考えたけどわからなかった問題については、その問題が意識から離れている間に無意識が答えを導きだしてくれることがあるということです。
ここでのポイントは、意識して(一生懸命)考えたという点です。この点は、無意識の性質から納得できます。そもそも、無意識は、抽象的な概念を嫌う性質があり、シンプルかつ具体的な指示を受けないと効果的な働きができないからです。
つまり、「意識して考える」という行為は、無意識に答えを導くための情報を与えるとともに、答えを出したい方向性を指し示すという意味があるように思います。
勉強のコツである
・全体像を把握する
・目的意識を持つ
といったポイントも、実は無意識を上手く働かせるための工夫だと言えるかもしれません。
さらに、松下幸之助氏の言葉もあります。
「何としても二階に上がりたい、どうしても二階に上がろう。この熱意がハシゴを思いつかせ、階段を作り上げる。上がっても上がらなくてもと考えている人の頭からは、ハシゴは生まれない。」
「わからない」は、あくまで現時点での話です。また、自分の行動のわずか5%程度しかコントロールできない意識の中での話です。私たちには、長く続く「時間」があり、意識の及ばない広い範囲に大きな可能性があります。
一生懸命考えてみてわからなければ、潔く諦めることも、時に大事な勉強のコツだと気を楽にしてもらえたら幸いに思います。ちなみに、「諦める」の語源は、「明らむ」、つまり、つまびらかにする、明らかにすることだと考えられているそうです。
「『諦める』ために研究する」というのは、とてもいい表現ですね。
それでは、商法課題テスト⑥の正解と出題者の一言です。
まだ問題を見ていないという方は、先に問題を見てみましょう。
問1→×
(出題者の一言)「株式割当て」(会社法204条等)の法効果を問う問題です。非常にシンプルな問題ですが、この問題をきっかけに、どのような法効果が生じるかを権利義務の視点から整理する習慣をつけてもらいたいと思います。
問2→×
(出題者の一言)条文を見つけられれば、答えは出せますね。体系的理解のために、民法における相殺の規定との関連もぜひ整理してほしいと思います。なお、株式会社による相殺の主張が許されるかという論点もあります。
問3→×
(出題者の一言)社債はあまり問われることがありませんが、一応テスト範囲なので出題してみました。原則例外の関係性が出てきたら無意識にチェックしてしまうくらいになってほしいと思います。
問4→×
(出題者の一言)募集社債の発行要件(=法律要件)について問う問題です。どの分野のどの問題も結局は、要件効果につながっていきます。自分で要件効果の形を整える力を身に付けられれば、未知の法分野を学ぶことも怖くありません。
問5→○
(出題者の一言)前半は、募集株式発行差止請求の法律要件に関する理解を問うています。他方、後半は、新株予約権無償割当の差止請求ではどうなるのかを問うています。いずれも重要な論点ですが、特に意識してもらいたいのは、条文の使い方です。条文の使い方さえ身についていれば、頑張って覚えることは、自然と減っていきます。
課題テストの添削指導、予備試験・司法試験過去問の添削指導は、随時受付中です。「わかっているつもり」を無くし、着実に実力アップを図りましょう。
次回商法課題テスト⑦は、2020年12月21日公開予定です。
テスト範囲は、下記の通りです。
22・剰余金の配当
・剰余金の配当とは
・違法配当とは
23・会社の基礎の変更
・合併とは
・合併自由の原則とは
・吸収合併とは
・新設合併とは
・反対株主の株式買取請求権及び新株予約権買取請求権とは
・債権者保護手続きとは
・吸収合併及び新設合併無効の訴えとは
・簡易手続及び略式手続による合併とは
・事業譲渡とは(商法の営業譲渡参照)
・簡易手続及び略式手続による事業譲渡等とは
・会社分割とは
・吸収分割とは
・新設分割とは
・簡易手続及び略式手続による分割とは
・株式交換とは
・株式移転とは
・親子会社とは
・定款変更とは
・組織変更とは
24・持分会社
・合名会社とは
・合資会社とは
・合同会社とは
商法課題テスト⑥ 優位感覚から考える自分に合った暗記法
考える時間と覚える時間を分けて勉強しよう
法律系資格試験に限らず受験勉強では覚えることが不可欠です。一方で難関試験になればなるほど、覚えるだけでは足りず考えて理解する時間も必要になります。
ただし、一日は24時間しかありません。時間不足に悩んだ受験生は、「そうだ!考えながら覚えよう!」と思い至りますが、思いの外、上手く勉強が進まないという事態に陥ります。
さて、今回は今日からの暗記学習に使える「意識」のメカニズムについて少しだけ触れてみたいと思います。
例えば、「書いて覚える」という勉強法について。
これは、個人的には全く機能しませんでした。「書くこと」に意識が行ってしまって、「覚えること」ができなかったのです。
また、「音読して覚える」これも機能しませんでした。「音読する(声を出す)」ことに意識が向いてしまって、「覚えること」ができなかったからです。
私にとって一番よかった暗記法は、「頭の中で映像を再生する」という方法でした。具体的には、一度教科書等に目を通した後、目で見た文字や項目の並び順などを思い出すという方法です。この時は、声も出さず、細かに手を動かすこともありません(空で項目を指さしたりすることはあります)。
ここで私が言いたいのは、エネルギーを注ぎたいところに「意識」を向けられる方法が常に一番望ましい方法だということです。そして、その方法には個人差があります。なぜなら、人にはそれぞれ「優位感覚」というものがあるからです。
※優位感覚とは
自分の感覚に気付くということは、無意識に行われている作用(脳の働き)に対して自分の「意識」が向いているということです。自分の優位感覚を知ることが出来れば、自分の「意識」が向きやすい方向がわかります。それは、つまり、意識と無意識が連動しやすいポイントを見つけられるということです。
※意識と無意識の相互作用についてはぜひこの記事を読んでみてください
効率よく暗記するためには、意識と無意識を出来るだけフルに活用していく必要があります。「頑張って覚えよう!!」という意識だけではうまくいかないことは、皆さんよくご存じですよね?
感情や感覚など、自分の無意識領域の中にあるものに記憶の手掛かりがあります。普段の生活では意識にばかり目が行きがちですが、「意識と無意識の相互作用」は、自分の潜在能力を高めるカギになると思います。
ちなみに、マルチタスクは作業効率を80%下げるという研究結果があるそうです。これは、向けたい方向(無意識の領域)に意識を向けられなくなるからかもしれません。この点からすると、「考える」ということに意識が向いている時は、あまり「覚える」ということに意識が向いていないかもしれません。「考える」と「覚える」を同時に行うのは、あまりお勧めできません。
次回のブログでは、さらに意識や無意識のメカニズムを紹介し、勉強のポイントを明らかにできればと思っています。
それでは、商法課題テスト⑥の問題を公開します。
○注意書き
・参照可→六法等
・制限時間なし
・解答は記述式
・記述の構成要件→①正誤②条文の適示③問題となる要件④問題の所在
・5問中4問正解で合格
問1
募集株式の発行は会社の資金調達を目的に行うものであるから、株式会社が株主に株式を割り当てた場合、その株主は、当該株式を引き受ける義務を負う。
(正誤)
(理由付け)
問2
相殺は簡易迅速な決済を可能にする機能を有するところ、募集株式の引受人が会社に対する債権を有していた場合、当該引受人は当該株式に関する払込債務について、当該債権を自働債権とする相殺を主張することができると解するのが法の趣旨に照らして妥当である。
(正誤)
(理由付け)
問3
株式について株券発行が原則であるのと同様に社債も社債券を発行することが原則であるから、会社は社債券を不発行にする場合にその旨を定めればよい。
(正誤)
(理由付け)
問4
募集社債の発行は、その総額が引き受けられて初めてその目的を達するものと言えるから、その一部について引受けの申込みがあったにすぎない場合は不成立となる。
(正誤)
(理由付け)
問5
会社の支配権につき争いがある場合に、従来の株主の持株比率に重大な影響を及ぼすような数の新株が発行され、その目的が特定の株主の持株比率を低下させ現経営者の支配権を維持することを主要な目的としてされた場合、株主は、当該株式発行が法令又は定款に違反するものでなくとも、会社に対して募集株式発行の差止めを請求することができる。これは、新株予約権株主無償割当てでも同様に考えられる。
(正誤)
(理由付け)
商法課題テスト⑥の正解発表は明日2020年12月19日予定です。
課題テストの添削指導は、下記リンクから。
予備試験・司法試験の添削指導、始めるなら今すぐ!!
商法課題テスト⑤正解発表 合格は逃げない、逃げるのは自分だ
資格試験はあくまで通過点。そして、人生は短距離走ではなく長距離走。
昨日のブログから「生き急ぐ」をテーマにしています。「生き急ぐ」人は、向上心や行動力があるので、のんびりしている人よりも人生の展開は早いと思います。ただ、その「スピード感」と「もたらされる結果」は必ずしも比例しません。焦って行動する分その質が下がってしまっていたり、精神的・肉体的な疲れから「ベストな頑張り」を継続できなくなってしまっていることが少なくないからです。
人は、それぞれにあった速度で進んでいくしかないのだと思います。今回は、「生き急ぐ」ではなく、自分合った速度で着実に進んでいくためのヒントをお届けしたいと思います。
生き急がず、着実に結果に近づくヒント
①時には勇気をもって立ち止まる
結果を出すためには「気付く」ことが必要です。不安から逃れられず「生き急ぐ」ことを選んでしまうかもしれませんが、自分の制御できる範囲を超えるスピードで動いていれば、見えるものも見えなくなります。
「急がば回れ」ということわざもあるように、急いで進むだけが結果につながる唯一の道ではありません。時に立ち止まり、顔を上げ、現状を顧みる時間を持つ「勇気」が必要です。
②色々な価値観に触れる
予備試験・司法試験合格者の過去を紐解いていくと、本当に千差万別な人生があることがわかります。さらに、予備試験・司法試験に合格はできなかったものの、違う道で充実した毎日を過ごしている人も実際にいらっしゃいます。
合格に向かって猪突猛進するだけが「正しい合格戦略」ではないことに気付くと、思わぬ形で壁を破れるかもしれません。
③「今この瞬間」を大事にする
生き急ぎの原因は、過去の失敗・栄光、未来への不安など、本来自分ではどうにもできない部分に気を取られてしまっていることにある場合があります。
今は、今だけでなく過去・未来とともに成り立つものなので、過去を振り返り、未来をイメージすることも時に必要だと思います。ただ、言うまでもなく、一番大切なことは「今を生きること」です。過去や未来にとらわれすぎて、あるがままの「今」を見られなくなっていませんか?
④100段抜かしを目指さない
法学習は、階段を一つ一つ上っていくようなものです。その歩みのスピードは違えど、その道程は皆同じです。しかし、人とスピードが違うことに焦った人は、しばしば何段か間を飛ばして上っていこうとしてしまいます。転んでけがをしたり、階段から転げ落ちてしまったら、当然頂上にたどり着くのに時間がかかります。
どうか心に余裕を持って一つ一つの段差を確認しながら上ってください。一つ一つの段差は少し頑張ればクリアできる程度のものだと思います。
⑤感情に振り回されない
仏教の教えによると、感情は、真の自分自身とは異なる存在です。あせりや不安といった感情に振り回されている「自分」をまずはきちんと見つめる必要があります。
不必要に生き急いでも疲れるだけです。自分の行動を感情に決められてしまっていないか。自分の真意に沿った意思決定が出来ているか。それが確認できれば、努力の歯車はかみ合ってくるはずです。
それでは、商法課題テスト⑤の正解と出題者の一言です。
まだ問題を見ていないという方は、こちらから!!
問1→○
(出題者の一言)会社の機関に関する定めは、覚えてしまえば短答式試験で確実な得点源になります。また、論文式試験においても機関の理解が十分な受験生は、そうでない受験生に比べ問題理解度が高い傾向があります。面倒ですが、大事な分野だと思います。
問2→×
(出題者の一言)条文の定め・趣旨からどうするべきか考えてほしいと思います。ある行為の効果を事前に予測し、「その効果から逆算して」法解釈をすること(あるいはその妥当性を判断すること)は、しばしば用いる手段です。例えば、刑法とか・・・。
問3→×
(出題者の一言)問1と同じく機関に関する問いになっています。機関設計を覚える時は、その目的も合わせて覚えるようにすると、覚えやすくかつ「会社」というものに対する理解も進むと思います。
問4→×
(出題者の一言)条文解釈は趣旨からすることもできますが、他の条文との対比によって導ける場合もあります。監査役の任期の規定と合わせて、ぜひ取締役の任期の規定もチェックしてほしいと思います。
問5→×
(出題者の一言)「監査委員とは」が問題になる問いです。一つ一つのワードの意味を正確に暗記・理解することは、地味な作業で一見遠回りに見えます。が、ある地点を超えて飛躍していくためには、避けて通れません。そして、合格にたどり着くには、ある地点を超えて飛躍する段階が来なければなりません。
次回商法課題テスト⑥は2020年12月18日予定です。
テスト範囲は以下の通りです。
21・株式による資金調達
・募集株式の発行等とは
・募集株式の発行とは
・自己株式の処分とは
・募集株式の発行等の手続とは
・株式の割当方法
・株式の有利発行とは
・募集事項の通知と公告とは
・募集株式の発行等をやめることの請求とは
・新株発行無効の訴え及び不存在の確認の訴えとは
・自己株式処分の無効の訴え及び不存在の確認の訴えとは
・募集新株予約権とは
・募集新株予約権の発行手続きとは
・募集新株予約権の行使方法とは
・募集新株予約権の有利発行とは
・募集新株予約権の募集事項の通知と公告とは
・社債とは
・社債の発行手続きとは
・社債管理者とは
・社債権者集会とは
・募集新株予約権の発行をやめることの請求とは
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