平成30年予備試験行政法 個別法の読み方
個別法の読み方講座? 意味が分かりません
今回も平成30年予備試験行政法です。
設問2に入りました。
本件勧告の適法性を考える問いですが、まず問題はいかなる規範でその適法性を考えるかということです。そして、そのためには、規範を導く根拠条文をきちんと解釈しなければならないということになります。いわゆる個別法解釈が問題となります。
以前ある予備校で個別法解釈の方法をテーマとした講座の案内を見たことがあります。「苦手な受験生が多いんだろうな」と察したわけですが、そもそも法の読み方がわからないというレベルで司法試験・予備試験に合格しようとするなんてありえません。
「いつも読んでる条文ならわかるんだけど、初見の法令はちょっと・・・」という受験生は根本的に勉強の仕方が間違っていると思います。
そこに難しさがあることは否定しませんが、条文を読むということは法律家の基礎的能力です。以下では、問題となっている条例をどう見るか説示しているようです。
(1)についてみます。出題趣旨によると「おそれがあると認めるときは・・・」という部分に裁量の問題はなさそうです。確かにその文言から裁量があるようにも思えるかもしれませんが、行政の裁量を認めるべき対象というのは、基本的に対立利益を調整する必要があるものです。消費者保護を目的とするであろう条例で「消費者の利益が害されるおそれ」というのは、あくまで消費者の立場に立って考えるべき要件だと思われますので、ここで裁量論を出す必要性は特になかったかなと思います。また、本問では検討すべき事項が多いのでいくつも裁量論を論じさせることは問題設定上考えにくいかなという判断もできると思います。ここで裁量論を書くよりも、法の基本に立ち返り、要件効果の流れを示す姿勢を見せたいところでした(要件検討は簡単でいいです。主たる争点は効果の方だと思うからです)。
「指導し又は勧告することができる」というのは、いずれかを選択できるとともに、いずれもしないという選択もできることを含んでいます。答案の記述だと後者の可能性を否定しているように読め、条文理解の誤りを疑われますのでご注意ください。ここではまさに消費者保護と事業者の経済活動の利益との調和を図るべく指導・勧告に裁量を認めようという趣旨が読み取れますので、裁量論を論じてください。「専門的・政策的判断」というワードはよく使われるもので便利ですが、少し上記の視点を含みながら説明できると、より問題理解度をアピールできいいかなと思います。