ABprojectの徹底添削 行政法が書けるなら事務処理能力に問題なし?
行政法の主張反論形式 違法認定されるとはどういうこと?
今回は平成30年予備試験行政法最終章です。
設問2では原告と被告の主張を対立させながら、本件勧告の違法性を検討せよと求められています。
原告と被告の主張対立を明示しながら論述させる形式は他の科目でも見られるところです。基本的に法律問題は、対立構造が軸になりますから当然ですね。
以下では、主張反論形式をどう処理するか、違法認定の基本的な考え方から説明しています。
2を見ます。Y県の反論を先に書くという構造自体は悪くないのですが、検討事項がかみ合っているか否かという点は意識してほしいなと思います。当該反論も有り得ると思いますが、Xの違法主張に対して、それを否定する反論が出来ていないと、そもそも違法性の認定を免れないからです。
3(1)を見ます。Xの主張のみをもって違法性の主張を組み立てることは、実際上できなくないと思いますが、内容としてかなり薄いですよね。ごく一部の従業員がしたことであっても「事業者」の行為に変わりないというY県側の反論を意識した記述であれば、論述の厚みも出ます。反論を意識することの効用を感じてほしいと思います。ちなみに個人的な見解ですが、当該事実を根拠に事実誤認を主張するのは、少々苦しいかなと思います。それより、一部の従業員が勝手にしたことを理由に違法性が軽微であることを主張した方が効果的だと考えます。違法性が軽微なのに勧告をするとは、処分が重すぎるという比例原則違反の主張です。同じ事実でも色々な使い方が考えられるので、今後も様々な問題にあたり、その感覚を身に付けて頂ければと思います。また、一つでも違法事由があれば違法であるというのが法の基本なので、認められなさそうな違法を手あたり次第主張するよりも、確実に仕留められそうな違法事由に集中してそこを徹底的に攻めた方がいいという場合もあります。訴訟戦略的な話ですが、頭の片隅に置いておいていただけるといいと思います。
3(2)を見ます。比較考量論的な書き方で論理的な構造は整っていると思います。ただ、失われる利益が得られる利益よりも大きいと主張することの説得力が欠けるかなと思いました。消費者保護条例の違法性を検討するにあたり、消費者保護に資する利益が大きいことを認定していることは、極めて大きな意味があると思います。とすれば、単にXの不利益が大きいというだけではそれを覆すことは難しいのではないでしょうか。(紙幅の関係上難しいかもしれませんが)答案の結論を維持したいのであれば、勧告以外の手段でも消費者保護を図り得るなど、先に認定した利益の大きさを減ずる主張を立てておけるとベターだと思います。