予備試験に合格した私だから伝えられる!法学の基礎基本!

予備試験・司法試験の合格を目指していた私が法学の基礎基本とは何か…ということに悩み苦しんだ結果、たどり着いた答えを書き綴っていきたいと思います!難しい論点を解説しようとはしていません。法律の資格試験に合格するのに必要なことは法学の基礎基本を見極め、理解することだけです!

令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その2~ 知識不足は基本的に責めない

「知らなくても解ける問題」を如何に増やすかがABprojectのテーマ。

 

実務家になれば「知らない問題」に直面し、自分の力で道を切り開かなければならないこともあるでしょう。

先を見据えた勉強の工夫も必要です。

(赤字は筆者)

※その1もご覧ください。

 

設問について

ア 課題の採点実感

設問ではまず課題として,Xが本件契約の締結時にから交付された120万円について敷金であることを否定し,Y1との間の本件契約の解約の合意を争って本件建物の明渡しを拒んでいるという事実関係の下において敷金の返還を求めるY2の立場から本件建物の明渡しをしないままの状態でこれを求める将来の給付の訴えの適法性についての検討が求められている

何気なく「Xが・・・Aから・・・、Y1が・・・などと書かれているがこれはまさに具体的検討である生の事実を的確に指摘しそれについて検討をしようという手間を惜しんではいけない時間制限等の関係で簡略化する必要性がある場合も否定できないが、「何が具体的検討かを知っていて何を簡略化しているかを認識している状態で答案作成をすることは大切であるその意識を欠く答案は単に雑なだけである

 

ここでは敷金返還請求権が目的物の明渡しを条件としてそれまでに生じた敷金の被担保債権一切を控除した残額につき発生するため本件建物の明渡し前には請求権の成否及び額が明確に定まらないことそのため本件訴訟はその事実審の口頭弁論終結基準時には訴訟物である請求権の成否及び額が具体化しない将来の給付の訴えであることを踏まえ民事訴訟以下という。)135条の将来の給付の訴えの利益に言及した上で将来の給付の訴えの適法性につき検討する必要があるそして法第135条についてはほとんどの答案において指摘することができていた。(下線部は筆者

下線部を説明し、135条の問題であることを指摘できる答案はいい答案である問題を読めば、135条を適用すべきことは多くの受験生が気付くはずであるその中でなぜ135条なのか?」を説明できるか否かそもそも説明しようとするか否かという点に、「意識の違いがあるこれは正しい法的思考を身につけそれを意識できているかという問題に他ならない

 

また既判力の基準時までにその成否及び額が定まらない請求権を行使する将来の給付の訴えの適法性については例えばいわゆる権利保護の資格請求の適格と狭義の権利保護の利益とを分けて前者の問題として論ずる考え方や将来の権利発生の蓋然性と現在これを行使する必要性とを総合的に判断するとの観点から論ずる考え方など判断の枠組みとそのような権利の性質の位置付けに関していくつかの考え方が成り立ち得るいずれの考え方であっても評価に差異はないが設問において敷金返還請求権の特質のほか当事者間の衡平の観点から将来の給付の訴えの適法性が認められた場合における被告の負担を考慮することが求められているとおり今後の賃料の滞納の可能性や明渡しの時の原状回復の必要性によってその額はもちろん成否さえも不明であるという敷金返還請求権の特質や敷金返還請求権の発生要件である本件建物の明渡しは債務者(X)ではなく債権者特に本件では主としてY1)に依存していることなど本件における当事者間の争いの状況を踏まえ将来における権利発生の蓋然性や将来の強制執行に対する防御のために請求異議の訴えを提起しなければならなくなるかもしれない被告の負担につき論ずる必要があるまたその際には判例最高裁判所昭和561216日大法廷判決・民集35101369大阪国際空港事件),最高裁判所昭和6331日第一小法廷判決・裁判集民事153627頁等が示した将来の給付の訴えの適法性についての判断基準(①請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在しその継続が予測されるとともに,②請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られ,③これについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない場合以下「3要件という。)を用いることが適当かどうかも意識して検討することが期待される下線は筆者

上記判例135条を学ぶ際には必ず目にするはずの判例であるこれらは、135条の適用にあたり必要不可欠な規範を示したものである。「規範の重要性は今更言うまでもないがそれにもかかわらずきちんと覚えていないというのであれば、「意識が低いと言わざるを得ない。「なぜその判例を学ぶのか?」という点を意識できていればその内容を覚えておくべき必要性の高さに思い至るはずである

判例の知識等から導かれた要件を前提に下線部の情報を整理する必要がある問題文による誘導も法的思考の大枠が整っているからこそ論理的に一貫した形で整理できるのである。「要件を具体的に明らかにしないまま敷金返還請求権の性質や当事者間の衡平等を書き連ねてもあまり意味のない論述に終わるまた整理すべき具体的状況も検討すべき要件があるからこそその整理の方向性を見定められる正しい法的思考の順序を身につけてほしい

 

もっとも以上を適切に論ずる答案はほとんどなかった多くの答案においては請求の適格と狭義の権利保護の利益とを分けて前者の問題として論ずるという考え方を採った上で,3要件を用いて検討をしていたがそのうち大半の答案においては,3要件が本問のような敷金返還請求においても同様に当てはまるかどうかという点についての意識を有していないことがうかがわれたまた②3要件を用いて検討する答案であっても具体的な事案の当てはめにおいて敷金返還請求権の特質が適切に意識されたものは多くはなく敷金返還請求権の特質への言及がされているもののそれが結論を導き出すに当たってどのように考慮されているのかが不明なものやそもそも敷金返還請求権の特質が意識されていないもの何らの具体的な根拠を示すことなくが請求異議の訴えの負担を負うことが不当である又はないという結論だけを示すものなど当てはめにおける検討が十分ではないものが多かったまた当てはめの内容が不適切であって自身が用いた要件の意義を正しく理解しておらずその表面的な文言を暗記して記述しているだけであると判断される答案も散見されたこのほか④3要件とは内容や表現が若干異なっており,3要件を提示したいという趣旨であれば不正確であるものさらには,3要件の意味合いが異なるものとなってしまっていると考えられるもの),法第135条のあらかじめその請求をする必要と請求の適格の関係が曖昧であるものなども一定数あったこれらの答案からは受験者が定型的な論証パターンを暗記するだけという学習をしているのではないかと懸念されるこのほか何らの基準も示すことなく漫然と問題文中の事実を摘示しただけで結論を導く答案も少数ながらあったこのような答案は論理を示したものとはいえず評価されない

→①判例の射程の問題と理解できようかもっとも根本的には本問がなぜ135条の問題なのか?」という説明が必要だという話上述と同じである本問と135要件定立の根拠とのつながりも敷金返還請求権を問題とする本問と判例(3要件の根拠とのつながりもその説明が必要な間隙があるこの辺りは説明する意識がないと説明できるようにならない説明すらするようにならない

敷金返還請求権を巡る事例と将来の給付の訴えの論点を考えたことがない受験生には難しい問題かもしれないしかし要件を把握できているならばあてはめの巧拙は日頃の演習の成果が試されるところである。「あてはめの検討が不十分な原因は要件に関する理解が不足しているかあてはめにおいてきちんと説明する意識が希薄であるかのいずれかである闇雲にあてはめの練習をしないことが大切である点数が伸びないのは原因がある

③④インプットのし直しが必要な例である覚え直せばあてはめもグッとよくなるケースが少なくない

知識不足だったのだろうかそれなら仕方ないもう一度勉強のし直しである一方で、「これでいいと思っている受験生がたまにいる条文の文言を書き写し問題文の事実を書き写すだけのような答案は原則として論外である条文の解釈や事実の評価等があって初めて隙間のない精緻な法的検討が成立しうる法的思考の基本に関わるポイントである

 

※脱暗記、法的思考重視の添削指導はABproject。

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