法的なものの見方・考え方(6) 法律効果も解釈の結果です
教科書の丸暗記になっていませんか?
前回は、権利濫用の条文(民法第1条第3項)を用いて、一般法理でもきちんと要件定立しないとダメですよ、というお話をしました。
キーワードは、「抽象度を排除する意識と感覚」です。
ところで、民法第1条第3項の法効果って、何なんでしょうね?
条文には「これを許さない。」と書いてありますが、これがどういう法効果を導くことになるのか?
予備試験・司法試験に合格する人は、条文を読んだだけでここまで意識を向けることができます。
予備試験・司法試験に合格しない人は、「これを許さない。・・・ふーん。」で終わります。
この差が条文を使える人か否か、予備試験・司法試験に合格する人か否かの差につながってきます。
ちなみに、条文素読という勉強をされる方がよくいらっしゃいますが、後者に属する人がいくら条文素読をしても意味がないというのはわかりますよね?
合格者の勉強法が自分に合わないという好例だと思います。
そういうわけで、今回は、要件・効果のうち、効果も条文解釈として重要ですよというお話をします。
例えば、債務不履行解除の法律効果は知っていますか?(民法ばかりで申し訳ありません。ただ、法運用能力を磨くのに民法が一番適していると思うので、あえて民法中心で進めています。「民法を制する者は司法試験を制する」とはよく言ったものだと思います。)
法律効果の根拠となる条文の存否はわかりますか?
根拠条文があるとしてどの文言の解釈が問題になるかわかりますか?
「原状に復させる義務を負う。」という文言までたどり着けましたか?
民法第545条第1項本文です。
ここまで来て初めて、直接効果説と間接効果説の対立という論点が出てきます。
仮に上記の過程の一部でも飛ばして考えていたのであれば、法律効果に対する条文解釈の姿勢がおざなりになっていると言えるでしょう。
これはほんの一例ですが、法律効果も要件と同様に条文解釈によって導けるようにならなければならないものと言えます。
教科書には必ず載っている知識なので知っている方も多いとは思いますが、「知っている」と「使える」とは全く違います(大事なことなので何度も繰り返します)。
上記の過程を知っている「使える」人は、仮に知らない法知識が問われたときでも、上記のように論理を組み立てて、自分なりの解釈にたどり着くことができます。
安易に暗記に走る人(「知っている」人)は、ほんの少し知識が増えただけで終わります。
その差がつくことは明らかですね。
「使える」を重視した勉強は、特に短期合格者に多く見られる傾向だと思います。
短期合格者の多くは、コンピューターのように知識を吸収できる暗記の天才のように思われがちですが、必ずしもそれだけが要因ではないように感じます(もちろん、地頭の良さもあるのでしょうが・・・)。
「知らなくても解ける」を実践しているんでしょうね。
他方、長期合格者(?)も同じことが言えると思います。
長年勉強して知識が蓄積してきたから合格するのではありません。
長年勉強していく中である時突然、「コツ」を掴んだから合格したという人が多いのです。
そこに至るまでに時間がかかってしまっただけで、それ以降の急成長にはさほど時間を要しません。
だから、前年の成績が散々だったものの、翌年は合格したという受験生が毎年出現するのです。
逆に長年勉強して知識が増えていけば自然と合格可能性が高まっていると思っている方は、大きな間違いだと思います。
たくさんの知識を暗記しさえすれば合格できるほど、予備試験・司法試験は、甘くないと思います。