法的利益ってなんだ?
刑事訴訟法でみる法的利益
前回は、法的利益を見極めるというテーマでブログを書きました。
その中で、法的利益が何かということと法的紛争の解決策には、ある程度関連性があること、そして、法的利益を把握する癖をつけておけば、初見の問題も解けるようになってくることもお伝えしました。
今回は、その点について、掘り下げてみようかと思います。
さて、これまで、憲法、民法、刑法を例に挙げてきましたので、今回は、刑事訴訟法を例に挙げて説明してみます。
ただ、今回は、とりあえず刑事訴訟法を例にしているだけで、他の科目でも同様に考えることができます。
私の基本的スタンスは、どの科目も同じ法律科目である、です。
捜査法分野だと、とりあえず、何があっても、「強制の処分」(刑事訴訟法第197条第1項但書)の定義を書いてから、問題を解き始めますよね。
(ちなみに、上の「但書」と「ただし書き」と法律によって文言の違いがありますよね。そういうところまで、気を配って条文を読めていますか?条文の一字一句に気を配ることは、法の深い理解に不可欠な姿勢だと思いますし、無論、法学の基礎基本に含まれるものだと思います。)
で、「強制の処分」について書くまではいいでしょう。
予備試験・司法試験の受験生なら、99.99999・・・%くらいの人がかけると思います。
問題は、そのあとです。
強制処分該当性の当てはめ、任意処分に当たるとしてその処分の適法性を判断するときの当てはめで何を書くかということなんですね。
たくさんの問題を解いて、当てはめの知識をつけていけば、その分だけ書けるようにはなるでしょう。
公道上にいる被疑者の写真撮影と自宅内にいる被疑者の写真撮影との対比とか、すぐピンとくるようになりますよね。
ですが、知識をつけることでパワーアップしていく勉強は、伸び率が低い気がします。
初見の問題を見ると途端に何書いていいかわからなくなりますよね。
私が思うに、きちんと把握したいのは、捜査によって侵害される法的利益はどういうものなのか、捜査によって得られる法的利益はどういうものなのか、という点を見極める感覚です。
判例・学説が何を言っているかということではなく、実際、自分がその立場に立たされた時、その利益が侵害されるとどう感じるか、という感性を磨いていくべきだと思うのです。
捜査により害される法的利益が重要でそれに対する侵害が重大なら、捜査を適法と判断する基準は、厳格になるでしょう。
他方、捜査により得られる法的利益が重要なら、その判断基準は、緩やかになるでしょう。
捜査法分野の話は、たったこれだけのことなのです。
法的利益の対立、それを折衷させる判断基準の定立、あてはめ、です。
判例解説等々で云云かんぬん書かれていることもありますが、これらは、研究者等々の考え方を示しているにすぎません。
ですから、それを理解し、使えるに越したことはないかもしれませんが、それと別に自分の考えを持って、法律問題と対峙することは、決して悪いことだとは思いません。
ただ、結局のところ、その法的利益に対する自分の感覚が磨かれていない限り、初見の問題は解けるようになりません。
(予備試験・司法試験の問題は、初見の問題でしょうから、予備試験・司法試験の問題を試験本番で解けるようにはならないでしょう。)
逆に言えば、法的利益をとらえる感覚があれば、自分なりに適法性の判断基準を組み立てて、事実を当てはめることにより、一定の答えを導くことはできます。
たいていの受験生は、初見の問題に対してパニックになりますから、きちんと法的利益をとらえた上で、判断基準を定立し、当てはめができている人は、それだけで相対的にいい成績になりはずです。
今回のお話は、法をイメージでとらえるということの一端になると思いますが、日々生の法律問題に取り組んでいる実務家・研究者にとって、不可欠なものだと思います。
すなわち、予備試験・司法試験の受験生にも求められることだと思います。
本日も当ブログを読んでくださり、ありがとうございました。
当ブログに対する質問・疑問や予備試験・司法試験に対する疑問・質問、記事にしてほしいテーマ等、何でも結構ですので、コメントいただけますと幸いです。