法的なものの見方・考え方(4) 対立利益が見えますか?
質の高い答案、深みのある答案
タイトルを読んで「またか・・・」と思われてしまったかもしれませんが、今回もまた対立利益について触れることになります。
何度も触れるということはそれだけ大事なことだと認識していただければ幸いです。
同じように問題を解き、同じように教科書を読んでいても、当人がどこに意識を置いて取り組んでいるかによって、その効果は、100にも1にもなります。
私が他の予備試験受験生の方よりもたくさんの問題を解き、たくさんの教科書を読んでいたとは、到底思えません。
それでも合否の結果に違いがあるのだとしたら、その要因の一つに意識の持ち方があると思います。
対立利益に対する意識の持ち方、今回のブログからぜひ感じ取っていただければと思います。
例えば、債権者代位権(民法第423条第1項)や詐害行為取消権(民法第424条第1項)の趣旨は何でしょうか?
受験生の答案を読んでいてもそう書いてある答案が多いです。
ですが、それだけでしょうか?というのが今回のテーマです。
債権者代位権は、債権者が一定の要件の下に債務者の権利(他人の権利)を行使できるという権利です。
詐害行為取消権は、債権者が一定の要件の下に債務者の法律行為(他人の法律行為)を取り消すことができるという権利です。
つまり、前回扱った「個人主義(私的自治)」の例外と言えます。
原則があって初めて存在するのが例外ですから(原則・例外パターン)、ここでは、原則に基づく私的自治という利益が存在することを見逃してはいけません。
債権者代位権や詐害行為取消権の要件を改めて読んでみてください。
事の発端は、債務者が債権者の債権を弁済しないことなのに、結構要件が厳しいと思いませんか?
簡単にこれらの権利行使を認めないのは、責任財産保全の必要性を見極めるのと同時に安易に債務者の私的自治が害されないようにするためです。
責任財産保全(=債権者の利益)対私的自治(=債務者の利益)という対立利益の構造が見えてきましたね。
このように条文の中には、見えにくい対立利益に対する配慮が含まれている場合もあります。
法律(=条文)を理解したと言えるためには、単に要件・効果を覚えるだけでなく、こうした部分に気付いていかなければなりません。
初めはなかなか気付けないかもしれませんが、趣旨が似ている条文は、とらえるべき対立利益にもある程度の共通性がありますから、コツコツやっていくうちに気付けるようになってきます。
対立利益が見抜けるようになってくると、知らないうちに答案の質も変わってきます。
論述に深みが出てくるのです。
本日も当ブログをご覧いただきありがとうございました。
答案添削等、個別対応もしておりますので、ご希望の方は、コメントを頂けますと幸いです。