予備試験に合格した私だから伝えられる!法学の基礎基本!

予備試験・司法試験の合格を目指していた私が法学の基礎基本とは何か…ということに悩み苦しんだ結果、たどり着いた答えを書き綴っていきたいと思います!難しい論点を解説しようとはしていません。法律の資格試験に合格するのに必要なことは法学の基礎基本を見極め、理解することだけです!

令和元年民事系第1問に見る「法学のコンパス」の威力 持つべき視点・考え方

法律問題には「共通項」がある

 

お待たせしました。それでは、具体的に私がとった解決策を説明していきます。

以下は、出題趣旨で示されている理由(黒太字)に対して私がどういうアプローチで迫ったのかキーワード(赤太字)を示したものです。

 

下線部㋐を正当とする理論的な理由としては,本件譲渡契約における譲渡の対象は将来「債権」であり,譲渡人Dは,自己が取得すべき債権を処分することはできるが,他人が取得すべき債権を処分することはできないから,本件譲渡契約の効力は,Hが取得する賃料債権に及ばないとすることなどが考えられる。個人主義

 

個人主義というのは、「自分の法律関係は自分で決める。自分がしていない法律行為によっては、法的拘束を受けない。」という原則的考え方です(と私が考えています。憲法分野で「個人主義」という思想が出てきますが、それが全ての法に活かされていると感じています)。私的自治の原則も個人主義の一内容であると思っています。他には、民法で言うと「第三者のためにする契約(537条3項)」や対抗要件制度にその考え方が現れている気がします。また、他の科目でも個人主義の考え方が見られる部分があります。

さて、本問では、不動産の旧所有者が将来賃料債権譲渡契約を締結していたわけですが、個人主義の見地からすれば、新所有者(新たな賃貸人)が、それに拘束される理由はないわけです。とすれば、新所有者としては、「そもそも、将来賃料債権譲渡の効力が自分に及ばないぞ」という主張を立てることができるのではないかと思いつくわけです。

 

また,結論の妥当性の観点からの理由としては,将来債権譲渡は,もともと将来の債権の発生という不確実な事実に効力をかからせるものであり,賃貸借の目的不動産の譲渡により将来賃料債権の譲渡人(D)が取得すべき賃料債権が発生しなくなることは,当然想定される事態の一つであってやむを得ないことや,将来賃料債権の譲受人(F)が権利を失うことになる不利益は,将来賃料債権譲渡の契約の当事者(D及びF)の間で解決されるべき問題であることなどが考えられる。→結論の妥当性、対立利益、理由付けの方法(必要性と許容性)

 

さて、上記の通り問題点に気付いたわけですが、個人主義からの理由付けだけでは不十分です。なぜなら、それは、新所有者が自己の利益を主張したにすぎないからです。法的見解には、論理だけでなく、結論の妥当性が求められます。特に双方当事者の利益に配慮した上での結論であるか否かは、重要なポイントです。

そこで、理由付けでは、必要性(個人主義からの理由。新所有者の保護。)だけでなく、許容性(結論の妥当性、対立利益からの理由。将来債権の譲受人が不利益を甘受すべき理由。)にも言及します。将来の不利益に対する予測可能性があることは、当事者に不利益を受忍させるべき理由として度々登場します。今回もその類でした。


これに対し,下線部㋑を正当とする理論的な理由としては,本問における将来賃料債権の譲渡は,本件賃貸借契約から将来生ずる賃料債権を譲渡の目的とするところ,Hは本件賃貸借契約における賃貸人の地位を承継するのであり,Hの下で生ずる賃料債権も本件賃貸借契約から生ずるものであるため,本件譲渡契約の効力がなお及ぶと考えられることなどが挙げられる。→パラレルシンキング

 

この点に関しては、占有の承継や本人の無権代理人の責任承継等の論点を思いだしながら考えました。異なる論点でも類似性があることから同じように処理できるというケースは度々あります。典型論点を学ぶ意義はこういうところにあるのでしょう。

この見解をとる場合、個人主義が劣後することになりますが、原則には例外もあります個人主義を意識できていれば、㋐と㋑の関係を構造的にとらえることができますから、「反対説からの反論」(採点実感より)もいくらか容易になったのではないでしょうか。

 

また,結論の妥当性の観点からの理由としては,賃貸借の目的不動産を譲り受けようとする者は,賃借人への照会その他の調査により,将来賃料債権譲渡がされた事実を知ることが通常可能であり,実際,本問においてHは本件譲渡契約がされたことを知りつつ本件売買契約を締結しているから,目的不動産(乙建物)の譲受人(H)が不測の不利益を受けることにはならないことや,下線部㋐を正当とすると将来賃料債権譲渡の効力が賃貸借の目的不動産の譲渡により容易に失われるため,将来賃料債権譲渡の有用性が著しく損なわれてしまうことなどが考えられる。→結論の妥当性

 

この部分は、上記で言及した結論の妥当性の問題と同じように考えられます。なお、上記では、不利益を受ける者の予測可能性について言及していましたが、ここでは回避可能性について言及されています。

「過失」(民法709条等)の意義を論ずる際、結果予見可能性(予測可能性)や結果回避可能性に言及されますが、これは、不法行為者(過失によって他人に損害を与えてしまった者)が損害賠償という不利益を受忍すべきことを基礎づける理由付けに他なりません。「要件該当性=法効果発生の正当化事由」と考えられるからです。

 

このように、法律問題の解き方・考え方には、「共通項」が多数存在します。

私は、試験前からその点に着目し「共通項」を意識した思考を訓練していたため、民法の難問にも何とか食らいつくことができたのだと思います。

さて、上記のような考え方をまとめたのが、下記の「法学のコンパス」です。

A4用紙7ページほどの簡単な資料なので、試験直前でも楽に読めると思います。

法律問題を理解する・法律問題に解答するのに重要な視点や考え方をまとめており、初学者から上級者までどなたでもお使いいただけると思います。

ぜひ一度ご覧ください!!

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