法的なものの見方・考え方(3) 個人主義
自分のことは自分で決めるというのが基本
今回も至極当然の話をします。
個人主義(と私は命名していますが、学説でそのように言われることがあるのかはよく知りません)のお話です。
これは、見出しの通り、自分のことは自分で決めるという原則です。
現代の法全体を貫く極めて重要な考え方だと思います。
例えば、私的自治の原則があります。
これは、個人の権利義務関係がその個人の意思によってのみ成立するという原則です。
まさに個人主義が現れています。
これを原則とすると、代理(民法第99条1項)が例外だと言えませんか?
自分以外の誰か(代理人たる他人)が行った法律行為に自分が拘束されるのです。
民法学習者はかなり初期の段階でこれを学ぶので、何となく代理という制度の恐ろしさをスルーしがちですが、代理って実はそれほど当たり前の話ではないのです。
要件がきちんと定められていることからも、そのルールを厳格にする必要性を見て取れますね。
所有権絶対の原則や過失責任主義も個人主義の現れだと思います。
詳細は割愛しますが、自分のことを自分で決めるためには、個人の自由を最大限尊重することが大前提になるからです。
刑法でも個人主義は現れていると思います。
言われてみると当たり前の話だと思いますが、刑法第二編罪で定められる各犯罪は、基本的に単独正犯として成立する場合を規定しています。
共同正犯・教唆犯・幇助犯といった共犯は、刑法第60条以下の条文の適用によって初めて成立しうることになります。
つまり、各個人は、原則として自分がした犯罪に該当する行為について法的責任を負い、共犯として定める例外的な場合には他人の行為についても法的責任を負うということになります。
あとは、憲法や会社法でも第三者に対する権利侵害を対象にして違憲・違法を主張できるのか、という論点がありますよね(第三者所有物没収事件、株主総会招集通知送付の瑕疵の話)。
これらの話は、全部「個人主義」という視点から整理できると思います。
教科書をただ読むだけでなく、こうした視点を一つ加えて読むだけで条文相互の関係性や論点に対する理解が立体的に見えてくると思いませんか?
答案に表現することはありませんが、自らの力で法に対する理解・分析を進めていくには重要な視点だと思いますので、ぜひこれを機会に意識してみてください。
本日も当ブログをご覧いただきありがとうございました。
答案添削等、個別の対応もしておりますので、ご希望の方はぜひコメントよろしくお願い致します。