法的三段論法(6) 事実を評価するという技術
要件に事実をあてはめたと言えるためには・・・
さて、今回は法的三段論法の結論部分の話です。
予備試験・司法試験の受験生ならもうホントに耳にタコができるくらい聞いていますよね?
あてはめの話です。
要件に事実を「あてはめ」るから「あてはめ」というわけですが、正直めっちゃ奥が深いと思います。
また、教科書等を読んでも法解釈の話ばかりであてはめについて解説した本は、見たことがありません(皆さんはありますか?)。
というわけで、多くの受験生がとっても苦労するところだと思います。
ですが、的確なあてはめができるようにならないと法律を使えるようになったとは言えませんし、予備試験・司法試験の合格も絶対にありえません。
出来るようになるまではつらい思いをすることも多いと思いますが、きちんと理解すれば絶対にできるようになりますから、根気強く頑張りましょう!
とはいえ、たくさん数をこなせば出来るようになるというわけではありません。
私の経験上では、そう思います。
「事実を評価する」とはどういうことかちゃんと理解しないといけないんだと思います。
私は残念なことに答練を数多くこなせば出来るようになると勘違いしていました。
答練で毎回毎回「事実の評価が出来ていない」「あてはめが薄い」「あてはめが出来ていない」等々、お叱りを受けていました。
「自分なりに」事実を評価してあてはめているつもりだったのですが、全然だめだったようです。
今回は、そんな私の経験から、あてはめが苦手・よくわからないという方にいいアシストができればと思って書いています。
「事実を評価する」とは、生の事実と要件が一致しているということを示すために生の事実の意味を明らかにする作業のことを言うと考えます。
例えば、強盗罪(刑法第236条1項)の「脅迫」とは、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであると解釈されます。
これに対して、ある強盗事件の被疑者・被告人が犯行の際に刃渡り15センチのナイフを被害者に向けていたという事実(生の事実)があったとしましょう。
この場合、例えば、刃渡り15センチのナイフ(事実)は「人を十分に死傷させるに足るものであり、被害者に強い恐怖心を抱かせた」という評価が可能です。
強盗罪の成否を検討する(構成要件該当性判断)にあたり、刃渡り15センチのナイフを用いていたことがどのような意味を持っているのかを私なりに考えたわけです。
ナイフ→殺傷能力・強い恐怖心→反抗抑圧のつながりが見えてきました。
事実に対して一定の評価(意味づけ)をすることによって、より精緻に法律の適用を行うことができるのです。
今回のような例は、事実の要件該当性にそれほど争いがないでしょうからあまり問題となりませんが、場合によってはこの評価の差が法適用の有無を分けることもあり得ますし、事実を適切に評価しなければ、誤った法適用に至ってしまう可能性もあります。
事実の評価は、法律家にとって重要な技術なのです。