法的三段論法(2)
規範を立てましょう?
さて、前回から法的三段論法について書いています。
今回は、①規範を立てるということについて詳しく見ていきたいと思います。
「規範を立てる」とは、法(条文)を解釈して要件を明確にすることを言います。
この点について、例えば、「善意の第三者」(民法第94条第2項)と書いて事実関係に対する結論を導いている答案が散見されます。
これは、①をクリアしているとは言えません。
法を「解釈」するということができていないからです。
「善意の第三者」について規範を立てたと言えるためには、「善意」という文言について通謀して虚偽の意思表示をした事実を知らないこと、「第三者」という文言について虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者であることを示していなければなりません。
かくいう私は、この解釈するという行為について長年疑問がありました。
「予備試験・司法試験合格者の再現答案の中には、こんなにきちんと書いていないものもあるじゃないか!ここまで書く必要はあるのか?」
というものです。
かつての自分に回答するなら「あります。予備試験・司法試験合格者の再現答案の記述が簡略化されているのは、試験時間及び紙幅に制限があるからです。」と答えます。
予備試験・司法試験合格者ともなれば、民法第94条第2項の第三者の意義くらい知っていて、書こうと思えば書けます。
でもあえてその記述を簡略化することはありうるのです。
より高い点数を確保するために上記の法解釈を他の法解釈に比べて短く(薄く)しておくという答案戦略です。
規範を立てるということは、上記の通りきちんと法解釈をして要件を明らかにすることだと覚えておいてください。
これができることを前提に、答案のバランスを考えて文字で表す規範の量を調整するのです。
法解釈の仕方については、次回改めて詳述しようと思っていますのでお楽しみに!!
ちなみに、①として問題提起を挙げていません。
これは、厳密には法的三段論法に含まれないからです。
確かに答案作成の際には、問題提起をした方がいいです。
それは、「何が法適用にあたって問題となっているか?」ということに対する理解、つまり当該問題に対する理解を示せるからです。
しかし、問題提起がないからといって「法ゲーム」のルールである法的三段論法に反するわけではありませんから、これを簡潔にし、あるいは最悪省略してもそれほど大きな問題にはなりません。
というわけで、問題提起に長々と時間をかける答案は、あまり好ましくないと思います。
気を付けましょう!