予備試験に合格した私だから伝えられる!法学の基礎基本!

予備試験・司法試験の合格を目指していた私が法学の基礎基本とは何か…ということに悩み苦しんだ結果、たどり着いた答えを書き綴っていきたいと思います!難しい論点を解説しようとはしていません。法律の資格試験に合格するのに必要なことは法学の基礎基本を見極め、理解することだけです!

令和2年刑事系第一問の採点実感を読んでみた~その1~ 刑法が苦手はあり得ない

形式を重んじれば書ける

何事も型は大事です。

法律論も同じです。

刑法は、形式さえ崩れなければ、だいたい何とかなります。

(赤字は筆者)

 

令和年司法試験の採点実感刑事系科目第

出題の趣旨ねらい

既に公表した出題の趣旨のとおりである

採点方針

本問では具体的事例について甲の罪責やその理論構成一定の結論を導くために着目すべき事実を問うことにより刑法総論・各論の基本的な知識と問題点についての理解事実関係を的確に分析・評価し具体的事実に法規範を適用する能力対立する複数の立場から論点を検討する能力結論の妥当性やその導出過程の論理性論述力等を総合的に評価することを基本方針として採点に当たった丸数字は筆者

問われている能力や知識は、①~⑤とのことである刑法の基礎基本を身につけておくこと(①)。それを前提に具体的な事実関係を法的に分析・評価できること(②)。①②から明らかになる事項論点だけでなく条文解釈の結果として明らかになる規範もを前提として適切なあてはめができること(③)。①に関して複数の立場から見解を述べられること(④)。結論の妥当性を意識しつつ論理的に一貫した論述が出来ること(⑤)。④は少特殊性があるかもしれないがそれ以外はただ単に法律論を展開する際の基本を指摘しているにすぎないこれらは刑法のみならず他の科目でも妥当するものである刑法知識は別)。すなわちここで明らかにされている採点方針の中で評価されない答案を書いているとすると他の科目でも成績が振るわない可能性が高い法の基礎基本を押さえていないといわば全科目に共通する基礎点のようなものを落とすことになり一つ二つの論点落としと比にならない失点となり得る

 

いずれの設問の論述においても各設問の内容に応じ各事例の事実関係を法的に分析した上で事案の解決に必要な範囲で法解釈論を展開問題文に現れた事実を具体的に摘示しつつ法規範に当てはめて妥当な結論や理論構成を導くことさらにはそれらの結論や理論構成を導く法的思考過程が論理性を保って整理されたものであることが求められるただし論じるべき点が多岐にわたることから事実認定上又は法律解釈上争いが生じ得る事項など法的に重要な事項については手厚く論じそうでない事項については簡潔に済ませるなど答案全体のバランスを考えた構成を工夫することも必要である下線は筆者

下線部が苦手な受験生は多いようである不十分な論述で得点できないことを恐れるからであろうかしかし過剰な論述をしている答案も同様に失当である。「検討すべき事項は何か?」を具体的な事実関係と条文の規定を照らし合わせて的確に見定められること自体が実力であるそれが出来なければ適切な法律論の展開は不能であるからであるまた、「検討すべき事項に対していかなる論述規範定立とあてはめが必要かを判断できる能力も実力であるこの辺りのことが出来ていない受験生は、「法律問題を解決するという法の本質を意識していないと言わざるを得ないこの意識がなければ試験本番の論述が失当なものとなるだけでなく日頃の学習もあまり実りのないものになってしまう試験は試験のためにあるのではなく受験生の成長を促す道標を与えてくれるものである過去問を努めて学ぶ重要性もここにある

 

出題の趣旨でも示したように設問では事例における甲の罪責について甲に成立する項恐喝罪又は項恐喝罪いずれかの被害額が,①600万円になるとの立場及び②100万円になるとの立場双方からの説明に言及しつつ最終的に自説としてどのような構成でいかなる結論を採るのかを根拠とともに論じる必要があったしたがって上記及びを小問形式と捉えてそれぞれの理論構成を別個に示したにとどまりいかなる結論がいかなる理由で妥当であるのか自説を論じていない答案は低い評価にとどまった下線は筆者

一つ目の下線部は、2491項又は2項のいずれを適用すべきか本罪の被害法益の区別)、条文適用の帰趨あてはめの結果等を問題としていると解されるいかなる事項も法的三段論法においてどう位置づけるべきかを意識することが大切である

二つ目の下線部は、「設問をきちんと読んで答えなさいという話である問いに答えていない答案の評価が低いのは当然である

 

及びへの言及においては出題の趣旨で記載した各立場からの説明が考えられるがこれを客観的構成要件要素に関する法解釈上の問題と位置付け恐喝罪の保護法益の内容や同罪における財産上の損害の要否及びその内容に関する各見解を踏まえ論理性を保って論述することができている答案は高い評価であった他方で,①及びへの言及で上記各見解に一切触れず専ら違法性阻却の観点からすなわち犯行態様等の違法性阻却の判断要素に関わる事実関係の評価を変えることにより違法性が阻却されない場合をの立場,500万円の交付については違法性が阻却される場合をの立場として説明するのみの答案は低い評価にとどまった

犯罪の成否を検討する際その成立要件として構成要件該当性・違法性・有責性について検討すべきことは司法試験受験生なら知らないものはいないはずであるしかし知っていることと出来ることは違う仮に本件で参考になるような判例を知っていてもそれを犯罪の成立要件に関連付けて整理していなければこの問題は解けないあるいは、「要件効果を一つ一つ積み重ねるという形式を意識した論述をしていれば本番で何とか対応出来たかもしれないいずれにしても本問について論点を知らなかったという一言で片づけてしまう受験生に成長はない知らない論点もそれなりに書けるようになるための準備は法律家になるために必須であるしそのために必要なことは法学の基礎基本を追及することにあるからである

 

設問,A睡眠薬を摂取して死亡したことについて自説か否かに関わりなく甲に殺人既遂罪が成立しないという結論の根拠となり得る具体的事実として考えられるものをつ挙げた上でそれらが当該結論を導く理由を記述させるものであった

この設問を読んで何を考えたか。「犯罪成立要件のいずれかを通じて犯罪の成立を否定できればいい!」という視点に直ちに至り検討を開始することが出来ていたかいわゆるあたりを付けて検討することが出来るか否かは事務処理のスピードを上げかつミスを減らすために重要である

 

このつの事実としては出題の趣旨で記載した①,②及びの各事実が考えられるこれに対し当該結論を導く理由としてはな理論構成からの説明が考えられるところ問題文で事実ごとの記述が求められている以上出題の趣旨で記載したとおり複数の事実を一括せず,①の事実に着目して実行行為性又は実行の着手を,②の事実に着目して因果関係を,③の事実に着目して故意をそれぞれ否定することが想定されていたまた問題文で簡潔な記述が求められているのであるから理論構成の根拠や他説への批判まで論じる必要はなかった

→「『事実ごとの記述が求められているとはすなわち要件ごとの検討が求められているということである具体的な事実が法的に意味を持つのは要件との関係においてだからである

「『簡潔な記述が何かわからない受験生が多いようであるそれがわからないのは普段から論述の濃淡を意識できていないからである。「問いに答えるために最低限書かなければいけないことは何か」「必要十分な論述となるためにはどこまで書かなければいけないかなど問いに合わせた適切な論述を展開するためには法的主張の基本的な構造要件効果等の理解がなければならないその先にこそ文章の長短だけではなく質を保った「『簡潔な記述が成り立つのである

 

設問では出題の趣旨で示したとおり事例における甲の罪責については,⑴甲が銀行の窓口係員に対し犯罪被害金であることを秘しつつ甲名義の預金口座から600万円の払戻しを請求し同額の払戻しを受けた行為について,1項詐欺罪の成否を論じる必要があったが犯罪被害金の払戻請求とはいえ甲が銀行に有効な預金債権を取得していることに着目して,「欺く行為の有無に関し設問における結論との整合性も意識しつつ論じることが求められていた

犯罪の成否を検討すべき事実関係は、「具体的な行為と被害に遭った保護法益を探せば見つけ出せる上記で言うと甲の払戻行為と銀行が管理している600万円の金銭であるこれを見つけた後にするのは法の適用今回で言うと、2461項の適用であるこれも甲の行為態様及び被害法益を基準にして導かれるなおこの前提として2461項等を含む刑法の基礎的理解が求められる上記採点方針の通り)。その上で、「欺く行為といえるか否かという要件を主に検討していく甲が銀行に有効な預金債権を取得している事情等を考慮するのはその要件該当性の範囲においてであるこれが出来れば自然と論理性を持った論述が出来るはずである

 

甲がに対する借金返済のため前記600万円の払戻しを受けこれをに渡して費消した行為については横領罪の成否を論じる必要があったが客体をに交付すべき500万円に限定した上でいかなる行為を横領行為と評価するかに対応させながら甲名義口座の預金又は払い戻した現金が同罪の客体に該当するかを論じることが求められていた

この部分も要件該当性に対する繊細な感覚なくして理解できないと思われる難解に感じる法律論ほど要件効果に立ち返って検討をする必要があるほとんどの問題は大体それで解決するしかし多くの受験生が要件効果という基本に立ち返る方法を知らないがために路頭に迷っているように思われる

 

甲がに対する500万円の返還を免れるため睡眠薬を混入したワインをに飲ませて眠り込ませその影響によりの心臓疾患を悪化させ,Aを死亡させた行為については,2項強盗殺人罪の成否を論じる必要があったが早すぎた構成要件実現の処理が問題になっているため出題の趣旨でも記載したとおりまずは実行行為をどのように構成するのかすなわち第行為(A睡眠薬を摂取させる行為及び第行為(Aに有毒ガスを吸引させる行為を一体的に評価した上これを実行行為として構成するのか行為のみを実行行為として構成するのかを論じその上でそれぞれの立場から因果関係の有無や故意の有無を論じることが求められていた

→「早すぎる構成要件実現刑法上の超有名論点の1つと言っていいだろうこれをどれだけの受験生が具体的な犯罪成立要件との関係で整理しているかそこを見られていることを意識してもらいたい。「あの論点だ!」「あの判例の規範を書いて・・・あてはめて・・・という答案を読んでも刑法総論の基本的な知識と問題点の理解上記採点方針よりがあると言えるか疑問が残る。「実行行為」「因果関係」「故意等の構成要件に絡めて説明が出来ないと意味がないやはり要件効果の形式が大事なのである

 

また強盗罪の実行行為である暴行が認められるか否かについてその意義に遡って具体的に論じることが求められていたがこれを肯定した場合甲が財産上不法の利益を得たといえるかについて当該文言の意義を正確に示した上で,Aに相続人がいないこと等の具体的事実を摘示して当てはめを行う必要があったなお,2項強盗殺人罪又は殺人罪の実行の着手を否定した場合殺人予備罪強盗予備罪の成否のほか傷害致死,(過失傷害罪又は同致死罪などの成否も問題となり得る以上それらの論述が必要であった

犯罪成立を肯定するためには犯罪成立要件を漏れなく検討する必要があるこの点を意識するだけで刑法の点数は随分安定するだろう。「論点に囚われすぎず基本的な要件の積み重ねを意識してもらいたい他の科目と同様に

 

甲が睡眠薬を混入したワインをに飲ませた後,A方で発見した腕時計を奪取した行為について窃盗罪等の財産犯の成否を論じる必要があった

意識すべきことは上記と重複する

 

設問では,⑴ないしの各行為ごとに事案の解決に必要な範囲で法解釈論を展開し問題文に現れた事実を具体的に指摘しつつ法規範に当てはめることができている答案は高い評価であった

→「具体的事実関係の分析犯罪として検討すべき対象の特定)→条文の適用・法解釈論の展開規範定立・要件定立)→あてはめ結論すなわち法的三段論法をしなさいということであるそれ以上でも以下でもない論文攻略への第一歩は刑法攻略と言ってもいいかもしれないそれくらい刑法は法的三段論法等法律論の形式を重んじている

 

※形式にこだわるABprojectはこちら。

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予備試験・司法試験受験生が行政書士試験を受けるべき3つの理由

資格取得は登山と同じ。段階を踏んで、目標点を目指しましょう。

予備試験・司法試験受験生の方、そして、これからロースクールに進もうとしている方にも、ぜひ行政書士試験を受験して頂きたいと思っています。

もちろん、記念受験ではなく、「合格」を狙ってください。

 

その理由は、3つです。

 

①試験科目がかぶる

行政書士試験の法令科目は、基礎法学、憲法行政法民法、商法・会社法です。

基礎法学は、法学徒の常識問題としてさておき、「憲法行政法民法、商法・会社法」は、司法試験や予備試験でも避けては通れません。

予備試験・司法試験挑戦の手始めにもってこいの構成となっています。

 

②多角的に学ぶ機会になる

様々な法律系資格試験を見るとわかるのですが、同じ科目でも各試験によって問われる角度が違います。

それを「難易度の違い」と一括りに論じてしまうのは勿体ないと思います。

学んだ知識を異なる角度から見直すことは、深い理解を得るために不可欠です。

様々な資格試験に挑戦することは、その機会を得るまたとない機会になるのです。

 

そういった意味では、宅建司法書士試験もいい題材になると思いますが、もっとも無駄がないのは、上記の通り、行政書士試験なのです。

 

③将来のリスクマネジメント

ここが最も重要だと思っています。

多くの司法試験・予備試験受験生は、「合格」することをイメージしてばかりで、自分が「不合格」になったときのシュミレーションが出来ていません。

しかし、現に「司法試験に五回落ちる」「予備試験にいつまでも受からない」というケースは、毎年発生しているのです。

 

予備校では、「合格できる!」と誘いつつ、ある程度不合格が続くと「志望先を変えた方がいい・・・」という案内に移行することが少なくないようです。

私の知人も司法制度改革の波に乗ろうとロースクールに進みましたが、結局司法試験に合格出来ず、「法律系の資格を何ら取得しないまま30代後半になってしまった」と嘆いていました。

 

言うまでもなく、予備試験・司法試験は超難関試験です。

難易度・合格率に変動があっても、「一生受からない人生」が発生する可能性は、常に存在しています。

そして、合格させるため、合格した後に手を差し伸べてくれる人は多くいても、「不合格になった後に手を差し伸べてくれる人」は、多くありません。

最悪の事態になった時に自分の身を守るのは自分しかいません。

余裕のあるうちに行政書士試験に合格しておくことを強くお勧めします。

もちろん、合格しているのことが将来の足かせになることは、全くありません。

 

かくいう私は、運よく学部時代に行政書士試験に合格していたので、その後の進路選択でも「最悪、行政書士(注:目標は、あくまで司法試験だったので)」という気持ちで、不安を持つことなくロー入試や予備試験・司法試験に挑戦していけました。

 

最後に。

行政書士試験に合格できないというレベルでは、正直なところ、予備試験・司法試験合格を現実的な目標としてとらえることは難しいでしょう。

そういった意味では、予備試験・司法試験挑戦への試金石とも言えるかもしれません。

 

行政書士試験を受験する理由は人それぞれだと思います。

でも、受験すること自体は、絶対的におススメです。

 

令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その5~ 知ってほしい表裏一体の不思議

民訴法はおいしい科目

 

点数が安定してくると大崩れしなくなるのが民訴法の特徴だと思います。

非常にとっつきにくい科目ですが、どうか嫌いにならないでください。

(赤字は筆者)

※その1、その2、その3、その4もご覧ください。

 

 

ウ 設問のまとめ

 

法科大学院に求めるもの

本年の問題に対しては多くの答案において一応の論述がされていたが定型的な論証パターンをそのまま書き出したと思われる答案出題の趣旨とは関係のない論述や解答に必要のない論述をする答案事案に即した検討が不十分であり抽象論に終始する答案なども残念ながら散見された

→「論証が悪なのではない論証と条文・判例等論証の元となる法源とのつながり論証と問題文から導かれる具体的事実関係とのつながりに関する説明が不十分だから、「になってしまうのであるつまり論証を使う者の能力不足が原因である予備校添削等では論証が書けていれば多少あてはめが不十分でもを付けられることが少なくないこれは添削時間に限りがあるためだと思うが非常に問題があると思う受験生自身も自分の身を守るため厳しくチェックしてもらいたい

 

また民事訴訟の極めて基礎的な事項への理解や基礎的な条文の理解が十分な水準に至っていないと思われる答案も一定数あったこれらの結果は受験者が民事訴訟の体系的理解と基礎的な知識の正確な取得のために体系書や条文を繰り返し精読するという地道な作業をおろそかにし依然としていわゆる論点主義に陥っており個別論点に対する解答の効率的な取得を重視しているのではないかとの強い懸念を生じさせるこの点は設問や設問の採点実感中において指摘したとおりである

条文や制度趣旨等、「当たり前の事項に関する理解が大事なのであるその上にしか論点の理解は成立しないにもかかわらず論点主義に陥っていると言われるのは闇雲に暗記する学習に走っている受験生が多いからであろう暗記も大事であるしかしその前提の思考をきちんと学んでいないと使える知識は身につかないそして、「法律は道具であるから、「使えない知識では意味がない難しい法律論の中で学ぼうとするから気付かぬうちに暗記学習に傾倒してしまう誰でも理解できる簡単な事項の中で法的思考を学んでほしいやはり基礎基本が大事なのである

 

また設問において典型的な論点であると思われる課題とそうではない課題とで論証の充実度に大きな差異があったことからもいわゆる論点主義の弊害がうかがわれよう昨年も指摘したところであるが条文の趣旨や判例学説等の正確な理解を駆使して生起する様な事象や問題に対して論理的に思考し説得的な結論を提示する能力は法律実務家に望まれるところでありこのような能力は基本法制の体系的理解と基礎的な知識の正確な取得論理的な思考の日の訓練という地道な作業によってこそ涵養され得るものと思われる法科大学院においてはこのことが法科大学院生にも広く共有されるよう指導いただきたい以上は例年指摘しているところであるが本年も重ねて強調したい

→「思考の訓練をせよと言われても受験生の立場からすれば何をすればいいのかわからないはずであるだからまずは思考の方法を学ぶ必要があると思うしかしこれを丁寧に教え訓練してくれる人が少ないように思う予備校の基礎講座等でも初期段階で教えられるが気付けば難解な法律論に脳内を支配される時間が多くなるそのうち法的思考がぐちゃぐちゃになるでももう誰もそのことに気を留めない論点の理解・暗記ばかりに気を取られるからである。3歩進んだら2歩下がるゆとりも大事だと思うどんなに学習を重ねても常に基礎基本を振り返る時間を取ってほしし。「簡単すぎることはない基礎基本を大事にする意識が難解な法律論を理解するカギであると思う

 

また民事訴訟法の分野においては理論と実務とは車の両輪であり両者の理解を共に深めることが重要である設問においては和解手続における当事者の発言内容を心証形成の資料とすることができるとした場合の問題の検討が求められているが多くの答案がその検討に当たり実務上の和解手続の姿をイメージしていたと評価することができるこれは受験者や法科大学院等の関係者において実務の理解を深めることの重要性についての認識が共有されつつあることの現れであると受け止めたい現実の民事訴訟手続についてのイメージがつかめないままに学習を進めることは難しいと思われる法科大学院においては今後ともより一層理論と実務を架橋することを意識した指導の工夫を積み重ねていただきたい

刑事訴訟法でも同様実務の話に触れる機会があまりない受験生には法律系雑誌を読んでみたり実務家のブログを読んだりすることをおススメする具体的な検討のためには具体的な学びも必要であると思う

 

※難しい問題こそ基礎基本から見直そう。

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令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その4~ 法律問題の本質は同じだ。

短答対策と論文対策は共通。

 

出題形式にとらわれず、「法律問題」を解く方法を身につけていれば、得点は安定します。

やるべきことは、ただそれだけ。

(赤字は筆者)

※その1、その2、その3もご覧ください。

 

 

設問について

ア 設問の採点実感

設問では和解手続におけるY2の発言から本件契約の解約の合意の存在を認定することができない理由の検討が求められているここでは争いのある事実の認定に当たり法第247条において裁判所が口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して心証を形成するものとされていることを指摘した上で和解手続における当事者の発言がこれらに当たらないことを論証する必要があるこうした論証は多くの答案においてされていたが特に検討が必要な口頭弁論の全趣旨の意義とその当てはめについては十分に意識されていないものが目立った

→247条を指摘できるかどうかが本問の分かれ道と言ってよいそして和解手続におけるY2の発言が検討対象とされているのであるから、「口頭弁論の全趣旨」(247が問題となるのであって、「証拠調べの結果が問題となるのではない。「口頭弁論の全趣旨の解釈が不十分なのも問題であるが、「証拠調べの結果について長と言及する答案も問題だと思う問題の所在を把握できていないと解されるからである目の前の検討事項を具体的事実関係から分析しその判断に必要な規範を端的に示せる答案は得てしていい答案である長く書けばいいというものではない。「問いに答えることが解答の最重要事項だからである

 

また設問の出題の趣旨を弁論主義の問題と捉え法第247条を指摘しつつあるいはその指摘すらなく弁論主義について延と論じて結論を導こうとする答案も少なからずあったこのような答案は問題点自体の理解を根本的に誤るものであって評価されないこの点もまたいわゆる典型論点の定型的な論証パターンを暗記するだけという学習が中心となっていて基礎的な条文や概念の基本的な理解がおろそかになっているのではないかと強く懸念される一例である

本問で弁論主義に思い至ることは決して悪いことではないと思う判決の前提となる事実関係の整理に伴う問題だからであるしかし、「弁論主義とは何か?」ということを正確に把握していれば弁論主義と自由心証主義との区別は出来たはずである問いに対して正しく法的思考を展開出来ているか否かを測る指標として、「間違いを修正できるか?」というポイントがある仮に本問で一旦取り上げた弁論主義の検討をやめた受験生がいたとするとその受験生は法的思考レベルが高いと思われる

 

また設問では争いのある事実の認定に当たって和解手続における当事者の発言内容を心証形成の資料とすることができるとした場合の問題についても検討することが求められているここでは当事者の発言内容が裁判官の心証に影響し得るとすると例えば和解の成立に向けた当事者の自由な発言を阻害するおそれがあることや本問のようにいわゆる交互面接方式により行われた和解手続では情報の共有や反論の機会の保障がないままに判決がされるおそれがあることなどより実質的な観点から具体的に問題点を指摘することが期待される多くの答案においてこれらのうち少なくとも一方特に当事者の自由な発言の阻害のおそれを指摘することができていたがこれらを多角的に論ずる答案は多くはなかった

この辺りは実務に対する理解がある程度必要なのではないだろうか多角的な検討が出来た答案が多くなかったのも無理はないと思う

 

イ 設問のまとめ

 

設問について

ア 課題の採点実感

設問ではまず課題として本件訴訟において,XY2に対する訴えのみを取り下げることができるかどうか法第261条第の検討が求められているここではその前提として本件訴訟について訴訟共同の必要があるものかどうかすなわち本件訴訟が通常共同訴訟であるのか固有必要的共同訴訟であるのかという点の検討が必要となる本件訴訟が通常共同訴訟であると考える場合には例えば実体法的観点から相続財産の共有が民法249条以下の共有と性質を異にするものではないこと建物明渡義務が不可分債務同法第430に当たり義務者各自が全部につき除去義務を負うことなどを指摘して共同訴訟人独立の原則法第39が本件訴訟にも適用されることその帰結として,XY2に対する訴えの取下げをすることができることを示す必要がある本件訴訟について固有必要的共同訴訟であると解し,XY2に対する訴えの取下げをすることはできないとする場合であっても説得力のある理由が示されていれば評価に差異はないがいずれにせよ自説の根拠と結論との整合性が求められる

短答でも問われるレベルの知識である短答学習においても結論だけでなくその論理まで学習することを意識したい。「短答プロパーなどという表現が見られることもあるが短答学習の充実度は論文の成績に直結すると思うどんな問題も軽視しないで丁寧に積み重ねることが大切である

 

課題では多くの答案において本件訴訟が通常共同訴訟であるとの結論を採っておりその理由としても上記の点を指摘することができていたもっともその理由を十分に論じたものは少なく例えば単に本件建物の明渡義務が不可分債務であるということを指摘するだけのもの共同訴訟人独立の原則やその根拠となる条文を指摘しないまま本件訴訟が通常共同訴訟であることをもって直ちにY2に対する訴えの取下げをすることができるとするものなども散見された

ここでの指摘は、「規範にあてはめる」「法律効果の根拠となる条文を指摘するという基本的なことが出来ていないという話であるこのような答案を無意識に書いているようだとかなりまずい他の部分でも論述の甘いところが散見されるはずであるそれはすなわち民訴法だけでなく多くの科目で失点する可能性があるということである

 

他方で本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を採る答案も少なくなかったこの結論であっても評価に差異はないことは上記のとおりであるがその根拠を十分に論証する答案はほとんどなかったため本件訴訟が通常共同訴訟であるとの結論を採る答案と比較すると相対的に低い評価となった本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を採る場合には例えば訴訟法的観点から判例の結論とは差異があることを踏まえつつ合一的確定の必要と訴訟共同の必要があることを説得的に論証することなどが必要となるしかし本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を採る答案においては単に合一的な確定が必要である。」等の結論を示すだけのものが多かったこれでは説得的な論証とは言い難い

→401項の合一にのみ確定すべき場合とはどういう意味なのか同項は何を定めた規定なのか今一度考えてもらいたい条文の機能に関する一般論が見えてくるはずである

 

また実体法的観点からこれを基礎付けようとする答案も一定数あったがこのような答案は総じて本件建物の明渡義務が不可分債務であることを根拠とするものであったしかし上記のとおり本件建物の明渡義務が不可分債務であることは本件訴訟が通常共同訴訟となることの根拠となるものであってこれにより本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を基礎付けることは困難である。「不可分という語の語感に引きずられたのではないかと推測されるが実体法の基礎的な知識の欠落があるのではないかとの危惧を禁じ得ないまた本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を採る場合には法第40条を指摘した上で一部に対する訴えの取下げは全員の当事者適格を失わせることとなるためその効力を生じないことを指摘する必要があるがこの点の論証を欠く答案も少なからず見られたこのような答案は固有必要的共同訴訟という概念自体の理解が十分ではないのではないかと懸念される

この点の指摘を受ける答案は規範定立あてはめに関する瑕疵若しくは判例の理解に関する瑕疵又はその両方に問題があるいずれにせよ大失点である

 

このほか本件訴訟が固有必要的共同訴訟であるとの結論を採るにもかかわらず,Y2に対する訴えの取下げができるとするもの固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟の区別をすることなく必要的共同訴訟かどうかを論ずるもの本件訴訟が類似必要的共同訴訟であるとするものなども少ないながらあったこれらの答案の評価は低いものとなる

→401項には必要的共同訴訟としか書かれていない。「固有類似の区別は理論上の区別であるつまり条文の定めを前提に更に法理論を学ぶことで必要的共同訴訟制度に対する理解をより深めていくことが出来る段階を踏んでいくことが体系的理解のコツである

 

なお本件訴訟が通常共同訴訟である又は固有必要的共同訴訟であるという点を示すのみであり,XY2に対する訴えの取下げができるかどうかについての結論を示さない答案も一定数あった尋ねられたことに対して解答しなければ評価されないことは当然である

→「問いに答える当然の話である

 

イ 課題について

設問では次に課題として,Xが適法にY2に対する訴えのみを取り下げたという前提の下において,XY1のみの訴訟において本案判決がされる場合に取下げがされる前の期日においてY2が提出して取調べがされた本件日誌の証拠調べの結果を事実認定に用いてよいかどうかの検討が求められているここでは,「共同訴訟における証拠調べの効果それが訴えの取下げによって影響を受けるかどうかという問題文中で示された二つの視点を踏まえつつ検討を進める必要がある

いずれも一定の訴訟行為の効果を検討するものである法効果を考える時のポイントはその存在内容範囲である

 

このうち一つ目の視点すなわち共同訴訟における証拠調べの効果についてはまず通常共同訴訟においては共同訴訟人独立の原則により共同訴訟人の一人の訴訟行為は他の共同訴訟人に影響を及ぼさないことを述べた上でその例外として共同訴訟人の一人が提出した証拠から得られる証拠資料はその援用がなくとも他の共同訴訟人に関する事実認定にも用いることができるという証拠共通の原則の意義やこれが認められる根拠を説明することが求められる相当数の答案において共同訴訟人独立の原則やその例外としての証拠共通の原則について指摘することができていたが証拠共通の原則の意義を論ずるに当たり誰と誰との間の規律であるのかという視点が明確に示されていない答案も一定数あったまた証拠共通の原則が認められる根拠については例えば歴史的に一つしかない事実についてはその認定判断も一つしかあり得ないことからこれを認めなければ裁判所に対して矛盾した判断をさせることとなり自由心証主義の不当な制約となること共同訴訟人の一部が提出した証拠であっても他の共同訴訟人がその証拠調べの手続に関わる機会があることから他の共同訴訟人の手続保障も図られていることなどを指摘して論ずる必要があるもっともこれらを過不足なく論じた答案は僅かであり多くの答案は前者のみを指摘するものであったまたそのような答案においては単に歴史的に事実は一つ」,「自由心証主義からなどとのみ述べる答案も少なくなかった時間の不足に起因するものであるとも考えられるがこのような答案は論証としては十分なものとは言い難いことに留意が必要である

原則と例外の視点例外の理由付けの方法必要性と許容性など基本的な法的視点は、「法学のコンパス1」で学んでほしい証拠共通が誰と誰との間の規律であるのかという問題は法効果の範囲の問題

 

次に二つ目の視点すなわちそれが訴えの取下げによって影響を受けるかどうかという点については訴えの取下げがあった部分は初めから係属していなかったものとみなされる法第262条第という訴えの取下げの効果を指摘することが必要となるがこれを条文とともに的確に指摘することができた答案は多くはなかったこの点は課題が検討を求める問題意識の前提となるものでありこの理解を欠く答案の評価は低いものとならざるを得ない

→2621項を当たり前に指摘できるかどうか意識しなくても出来る受験生は難易度の高い問題に挑戦する実力のある受験生である実力の有無はだいたい当たり前が出来るかどうかを見ればわかる

 

そして以上の二つの視点からの論証を通じ,XY2に対する訴えの取下げがY2の申出により取調べがされた本件日誌についての証拠共通に影響を与えるのではないかという問題意識が導かれることとなる

論点自体知らなくても、「訴え取下げの効果提出された証拠は?」という問題意識を持つことはできるのではないか訴え取下げの法効果をどれだけ具体的にイメージできているかが分かれ目になっているように思う知らない論点でも気付けるかどうかは法的思考力を測る一つのポイントである

 

これが課題における主要な検討事項となる本件日誌を証拠として用いることができるとの結論を採る場合にはその根拠として例えば判例最高裁判所昭和3225日第三小法廷判決・民集111143によれば証拠申出の撤回は証拠調べの終了後においては許されないとされておりその結論は相手方に有利な証拠資料が得られている可能性があることを考慮すると是認されることや,Y2の申出によりされた証拠調べの結果は証拠共通の原則によりY1との関係においても心証を形成する資料となっているところそれは係属が消滅した訴訟における訴訟行為に基づく訴訟法律関係とは別個の訴訟法律関係が生じていると言い得ることから訴えの取下げによってもその効果は維持されるべきであることなどを指摘することが考えられるこれに対し本件日誌を証拠として用いることができないとする結論を採る場合にはその根拠として例えば訴えの取下げの結果当事者の訴訟行為によって形成された法律効果は全て消滅することを前提とし証拠申出の撤回は弁論主義に照らし相手方の同意があれば許されるとした上で,XY2に対する訴えの取下げをしたことにより実質的にはY2の証拠申出とこれに基づく証拠調べの結果の消滅に同意をしているものとみることができることなどを指摘することが考えられよう課題についてはいずれの結論であっても評価に差異はないが論理的かつ説得的な論証が求められるもっとも以上を適切に論ずる答案はどちらの結論であってもほとんどなかった多くの答案においては上記のとおり前提となる訴えの取下げの効果を指摘することができていないためそもそも課題が求める問題意識自体を正しく把握することができておらず訴えの取下げの効果を指摘することができているものであってもかろうじて一度形成された心証は消せない。」といった理由を述べて本件日誌を証拠として用いることができるとの結論を採るものが一定数あったほかは結論のみを述べるもの根拠となり得ないものを述べるものなどであった

要件効果の積み重ねから論点は生じるものである本問はそれを理解させる良問である未知の論点であり論証自体は難しいかもしれないが奇問難問の類だとは思われない解けなかった受験生は、「なぜ解けなかったのかを見直すことをおススメする他の問題でも活かせる法的思考のヒントを得られるはずである

 

ウ 設問のまとめ

 

※法律問題の解き方を意識するのはABprojectだけ。

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令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その3~ 採点実感が繰り返し伝えていること

採点実感の読み方を伝え、意識すべきポイントを共有したい。

 

採点実感・出題趣旨は、多くの受験生が読んでいると思います。

しかし、それが身になっている受験生は、多くないのでしょう。

一緒に読みましょう。

(赤字は筆者)

※その1、その2もぜひご覧下さい。

 

イ 課題の採点実感

設問では次に課題として敷金に関する確認の訴えにおける確認の利益の検討が求められているここでは本件建物の明渡し前における敷金関係の確認の訴えにつき確認の利益の一般的指標とされる確認訴訟という方法を選択することの適切性確認対象の適切性即時確定の必要性に従ってあるいは確認訴訟における権利保護の資格と利益に沿って,Y2の立場から確認の利益が肯定されるように説得的な立論をすることが求められる

ここまでは多くの受験生が書けるはずただし確認の利益の一般的指標は決して条文に定められた事項ではないことに注する必要があるつまりこの指標はあくまで一般的なものであって絶対的なものではない。「確認訴訟のときはいつもこれだから今回も書こう!!」程度にしか認識していない受験生は一旦立ち止まり確認の利益を判断する3要件の理解を確認してもらいたいこういう部分の見直しが論点主義を脱するためのポイントである

 

特に敷金返還請求権が設問の課題では将来の給付訴訟の対象と性質付けられていることとの関係をも踏まえつつどのような確認対象又は権利保護の資格であれば即時確定の必要性又は権利保護の利益が肯定され基準時に確定する必要が認められることとなるのかについて理解を示す必要があるその際には賃貸借契約継続中における敷金返還請求権の確認の利益を肯定した判例最高裁判所平成1121日第一小法廷判決・民集53のように確認対象を現在の権利又は法律関係と位置付ける立場のほか将来の権利又は法律関係と位置付けた上で確認対象となり得ると解する立場もあるどちらを採るかにより評価に差が生ずるわけではないが前者については敷金返還請求権を単に条件付債権と位置付けるにとどまらず将来と性質付けた給付訴訟との違いを示し本件の紛争状況から見て確認の利益が肯定される対象を具体的に検討することが期待されるまた後者については,Xの支払った金銭は敷金でないと争っているなどといった具体的な事情をできるだけ挙げた上で将来具体化する対象であっても即時確定の利益又は権利保護の利益が現在認められることを本件に即して説得的に論ずることが求められる

ここは確認の利益の3要件を軸にしつつその要件該当性の検討を問題とするところである上記判例要件該当性判断において参考にできる先の将来の給付の訴えに関する判例に関しては特に規範定立の重要性を指摘したが要件該当性も同じく重要である判例を学ぶ際には規範定立について学んでいる要件該当性について学んでいるなど法的思考の構造を意識しながら情報を整理することが必要であるこうすることで判例を覚えるだけでなく、「法的思考力を鍛えることが出来る。「意識の持ち方次第で学習の密度は大きく変わるそして、「本件に即して説得的に論ずることが出来るのは高い学習密度を保ってきた受験生だけである論点主義の暗記学習と真の法律学習の違いに気付いてもらいたい

 

まず確認の利益の一般的指標については大半の答案が確認訴訟という方法を選択することの適切性確認対象の適切性即時確定の必要性の三つの指標を指摘していた

もっともその具体的な当てはめにおいては十分ではないものや不適切なものが散見された課題の中心的な検討事項となる確認対象の適切性を論ずるに当たって判例のように現在の条件付きの権利である敷金返還請求権と捉える答案は一定数あったところでありこれらは相応の評価に値するものではあるが更に進んで将来の請求と性質付けた給付訴訟との違いを意識的に論じたものはほとんどなかった他方でそもそも敷金に関するどのような法律関係を確認対象と考えているのかがあやふやなまま検討を進める答案や,「敷金を差し入れたこと」,「敷金契約が成立したことなど過去の事実や過去の法律関係を無留保で確認対象とするものも少なくなかったこのうち過去の法律関係を確認対象とすることについてはそれが常に不適切であるというものではなく基礎的な法律関係であって判決において端的に確認対象とすることにより確認訴訟が有する紛争の直接かつ抜本的な解決の機能が果たされることなどを併せて論ずるものである限り一定の評価の対象となり得るがほとんどのものにおいてこのような検討はされておらずその多くにおいては自身が過去の事実や過去の法律関係を確認対象として論じていることについての自覚がないままに論述しているものと推測された以上のような答案の評価は低いものとならざるを得ない

→「もっともその具体的な当てはめにおいては十分でないものや不適切なものが散見された」「ほとんどのものにおいてこのような検討はされておらずその多くにおいては自身が過去の事実や過去の法律関係を確認対象として論じていることについての自覚がないままに論述しているものと推測されたそうである言われなくてもそうだろうと思う先述した学習の密度の問題を振り返ってもらいたい兎角民訴法の理論は難解なものが多く1回読んだくらいではとても理解できないものが多いだからといって、23回読んだらわかるのかと言うとそうでもない難解な理論を吸収するためにはその下準備が必要である法的三段論法を身につけていることや正しく法的思考を組み立てられることなど行き詰った時には一度基礎基本を見直してもらいたい理解できない原因はそもそも見るべきポイントが見えていない可能性が高い

 

また確認対象の適切性を検討するに当たっては即時確定の必要性との関係にも留意する必要があるここでは原告が保護を求める法的な地位すなわち確認対象の適切性において検討した権利又は法律関係が十分に具体化現実化されているかということを指摘しつつ被告の態度や行為の態様が原告の法的地位に危険や不安を生じさせているかその危険や不安を除去するために確認判決が必要かつ適切であることを論ずる必要があるそして多くの答案において被告の態度や行為の態様が原告の法的地位に危険や不安を生じさせているかという点に言及することができていたが確認対象となる権利又は法律関係との関係や確認判決の必要性なども含めて多角的に論証していた答案は少なかったまた過去の事実や過去の法律関係を確認対象とする場合には上記のような論証から直ちに即時確定の利益が肯定されるとは言い難いにもかかわらずこの点の意識がされたものはほとんどなかった

確認の利益を認める要件として即時確定の利益を指摘する答案は多いがその意味するところが何かという点まで理解できている答案は多くないこの辺りが採点の分かれ目である要件を立てたらその意味するところを確認するのは法律学習において当然であるそうでなければ正しくあてはめられないからである上記で指摘されているあてはめの不十分さは基本的な法知識の理解不足に起因するものと思われる

 

課題の結果からも受験者が定型的な論証パターンを暗記するだけという学習をしているのではないかと懸念された

すでに指摘した通りである

 

ウ 設問のまとめ

 

※大事なことは繰り返し伝えるABprojectの添削指導

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令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その2~ 知識不足は基本的に責めない

「知らなくても解ける問題」を如何に増やすかがABprojectのテーマ。

 

実務家になれば「知らない問題」に直面し、自分の力で道を切り開かなければならないこともあるでしょう。

先を見据えた勉強の工夫も必要です。

(赤字は筆者)

※その1もご覧ください。

 

設問について

ア 課題の採点実感

設問ではまず課題として,Xが本件契約の締結時にから交付された120万円について敷金であることを否定し,Y1との間の本件契約の解約の合意を争って本件建物の明渡しを拒んでいるという事実関係の下において敷金の返還を求めるY2の立場から本件建物の明渡しをしないままの状態でこれを求める将来の給付の訴えの適法性についての検討が求められている

何気なく「Xが・・・Aから・・・、Y1が・・・などと書かれているがこれはまさに具体的検討である生の事実を的確に指摘しそれについて検討をしようという手間を惜しんではいけない時間制限等の関係で簡略化する必要性がある場合も否定できないが、「何が具体的検討かを知っていて何を簡略化しているかを認識している状態で答案作成をすることは大切であるその意識を欠く答案は単に雑なだけである

 

ここでは敷金返還請求権が目的物の明渡しを条件としてそれまでに生じた敷金の被担保債権一切を控除した残額につき発生するため本件建物の明渡し前には請求権の成否及び額が明確に定まらないことそのため本件訴訟はその事実審の口頭弁論終結基準時には訴訟物である請求権の成否及び額が具体化しない将来の給付の訴えであることを踏まえ民事訴訟以下という。)135条の将来の給付の訴えの利益に言及した上で将来の給付の訴えの適法性につき検討する必要があるそして法第135条についてはほとんどの答案において指摘することができていた。(下線部は筆者

下線部を説明し、135条の問題であることを指摘できる答案はいい答案である問題を読めば、135条を適用すべきことは多くの受験生が気付くはずであるその中でなぜ135条なのか?」を説明できるか否かそもそも説明しようとするか否かという点に、「意識の違いがあるこれは正しい法的思考を身につけそれを意識できているかという問題に他ならない

 

また既判力の基準時までにその成否及び額が定まらない請求権を行使する将来の給付の訴えの適法性については例えばいわゆる権利保護の資格請求の適格と狭義の権利保護の利益とを分けて前者の問題として論ずる考え方や将来の権利発生の蓋然性と現在これを行使する必要性とを総合的に判断するとの観点から論ずる考え方など判断の枠組みとそのような権利の性質の位置付けに関していくつかの考え方が成り立ち得るいずれの考え方であっても評価に差異はないが設問において敷金返還請求権の特質のほか当事者間の衡平の観点から将来の給付の訴えの適法性が認められた場合における被告の負担を考慮することが求められているとおり今後の賃料の滞納の可能性や明渡しの時の原状回復の必要性によってその額はもちろん成否さえも不明であるという敷金返還請求権の特質や敷金返還請求権の発生要件である本件建物の明渡しは債務者(X)ではなく債権者特に本件では主としてY1)に依存していることなど本件における当事者間の争いの状況を踏まえ将来における権利発生の蓋然性や将来の強制執行に対する防御のために請求異議の訴えを提起しなければならなくなるかもしれない被告の負担につき論ずる必要があるまたその際には判例最高裁判所昭和561216日大法廷判決・民集35101369大阪国際空港事件),最高裁判所昭和6331日第一小法廷判決・裁判集民事153627頁等が示した将来の給付の訴えの適法性についての判断基準(①請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在しその継続が予測されるとともに,②請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られ,③これについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない場合以下「3要件という。)を用いることが適当かどうかも意識して検討することが期待される下線は筆者

上記判例135条を学ぶ際には必ず目にするはずの判例であるこれらは、135条の適用にあたり必要不可欠な規範を示したものである。「規範の重要性は今更言うまでもないがそれにもかかわらずきちんと覚えていないというのであれば、「意識が低いと言わざるを得ない。「なぜその判例を学ぶのか?」という点を意識できていればその内容を覚えておくべき必要性の高さに思い至るはずである

判例の知識等から導かれた要件を前提に下線部の情報を整理する必要がある問題文による誘導も法的思考の大枠が整っているからこそ論理的に一貫した形で整理できるのである。「要件を具体的に明らかにしないまま敷金返還請求権の性質や当事者間の衡平等を書き連ねてもあまり意味のない論述に終わるまた整理すべき具体的状況も検討すべき要件があるからこそその整理の方向性を見定められる正しい法的思考の順序を身につけてほしい

 

もっとも以上を適切に論ずる答案はほとんどなかった多くの答案においては請求の適格と狭義の権利保護の利益とを分けて前者の問題として論ずるという考え方を採った上で,3要件を用いて検討をしていたがそのうち大半の答案においては,3要件が本問のような敷金返還請求においても同様に当てはまるかどうかという点についての意識を有していないことがうかがわれたまた②3要件を用いて検討する答案であっても具体的な事案の当てはめにおいて敷金返還請求権の特質が適切に意識されたものは多くはなく敷金返還請求権の特質への言及がされているもののそれが結論を導き出すに当たってどのように考慮されているのかが不明なものやそもそも敷金返還請求権の特質が意識されていないもの何らの具体的な根拠を示すことなくが請求異議の訴えの負担を負うことが不当である又はないという結論だけを示すものなど当てはめにおける検討が十分ではないものが多かったまた当てはめの内容が不適切であって自身が用いた要件の意義を正しく理解しておらずその表面的な文言を暗記して記述しているだけであると判断される答案も散見されたこのほか④3要件とは内容や表現が若干異なっており,3要件を提示したいという趣旨であれば不正確であるものさらには,3要件の意味合いが異なるものとなってしまっていると考えられるもの),法第135条のあらかじめその請求をする必要と請求の適格の関係が曖昧であるものなども一定数あったこれらの答案からは受験者が定型的な論証パターンを暗記するだけという学習をしているのではないかと懸念されるこのほか何らの基準も示すことなく漫然と問題文中の事実を摘示しただけで結論を導く答案も少数ながらあったこのような答案は論理を示したものとはいえず評価されない

→①判例の射程の問題と理解できようかもっとも根本的には本問がなぜ135条の問題なのか?」という説明が必要だという話上述と同じである本問と135要件定立の根拠とのつながりも敷金返還請求権を問題とする本問と判例(3要件の根拠とのつながりもその説明が必要な間隙があるこの辺りは説明する意識がないと説明できるようにならない説明すらするようにならない

敷金返還請求権を巡る事例と将来の給付の訴えの論点を考えたことがない受験生には難しい問題かもしれないしかし要件を把握できているならばあてはめの巧拙は日頃の演習の成果が試されるところである。「あてはめの検討が不十分な原因は要件に関する理解が不足しているかあてはめにおいてきちんと説明する意識が希薄であるかのいずれかである闇雲にあてはめの練習をしないことが大切である点数が伸びないのは原因がある

③④インプットのし直しが必要な例である覚え直せばあてはめもグッとよくなるケースが少なくない

知識不足だったのだろうかそれなら仕方ないもう一度勉強のし直しである一方で、「これでいいと思っている受験生がたまにいる条文の文言を書き写し問題文の事実を書き写すだけのような答案は原則として論外である条文の解釈や事実の評価等があって初めて隙間のない精緻な法的検討が成立しうる法的思考の基本に関わるポイントである

 

※脱暗記、法的思考重視の添削指導はABproject。

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令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その1~ 論理に盲目な人は落ちる。

「科学的なエビデンス」で安心する人は、本質を見誤る。

 

今日から民事系第三問の採点実感を読んでみたシリーズに入ります。

タイトル等の言葉は、最近気になっていることです。

この世の中に絶対的なものなんてないはずです。

「法学の基礎基本」を除いては・・・(笑)

(赤字は筆者)

 

令和年司法試験の採点実感民事系科目第

出題の趣旨等

民事系科目第問は民事訴訟法分野からの出題であり出題の趣旨は既に公表されている令和年司法試験論文式試験出題の趣旨民事系科目】〔〕」のとおりである本問においては例年と同様受験者が,①民事訴訟の基礎的な原理原則や概念を正しく理解し基礎的な知識を習得しているか,②それらを前提として設問で問われていることを的確に把握しそれに正面から答えているか,③抽象論に終始せず設問の事案に即して具体的に掘り下げた考察をしているかといった点を評価することを狙いとしている

上記の基礎的な原理原則は主に短答過去問でその範囲を特定できる短答過去問演習は必須。②、①を前提として問題の意図を把握できるかがポイント問題を解くためだけでなく問題を正確に把握するためにもが大事。③質の高い論文添削を受けて具体的に検討するとはどういうことか理解することが必要合格答案や参考答案等でわかった気になるのではなく自分自身の答案を使って具体的に答えるイメージを育てよう

 

採点方針

答案の採点に当たっては基本的に上記からまでの点を重視するものとしている本年においても問題文中の登場人物の発言等において受験者が検討し解答すべき事項が具体的に示されているそのため答案の作成に当たっては問題文において示されている検討すべき事項を適切に吟味しそこに含まれている論点を論理的に整理した上で論述すべき順序や相互の関係も考慮することが必要であるそして事前に準備していた論証パターンをそのまま答案用紙に書き出したり理由を述べることなく結論のみを記載したりするのではなく提示された問題意識や事案の具体的な内容を踏まえつつ論理的に一貫した思考の下で端的に検討結果を表現しなければならない採点に当たっては受験者がこのような意識を持っているかどうかという点についても留意している下線部は筆者

上記①~③はいわば法的思考を展開するにあたって基本となる当たり前の話採点実感で書かれているから大事だという話ではないまた各下線部は答案作成において注意すべき点正しい法的思考につながるポイントであるそして、「意識を持っているかどうかという点も留意しているとの指摘には特に注目してもらいたいその意識の違いは日頃の学習への取り組み方の違いを如実に表すものだからである日頃の意識の違いは、「無意識にも影響する。「無意識に書いている部分にも当然その解答者の実力が反映されている

 

採点実感等

全体を通じて

本年の問題では例年同様具体的な事案を提示し登場人物の発言等において受験者が検討すべき事項を明らかにした上で訴えの利益心証形成の資料共同訴訟の類型訴えの取下げの効果等の民事訴訟の基礎的な概念や仕組みに対する受験者の理解を問うとともに事案への当てはめを適切に行うことができるかどうかを試している

問われた事項について全く知らないという受験生はいないはずである誰もが一度は学んだことがある事項についてその理解の深さを問う問題だと思うもちろん使うべき規範判例を覚えておくことが前提である本年度問われた知識は民訴法上の問題としてよく問われるものばかりである知識が足りなかったと感じるのであればそもそも知識に対する意識が足りなかったというべきだろう

 

設問について時間が不足していたことに起因すると推測される大雑把な内容の答案が一定数見られたものの全体としては時間内に論述が完成していない答案は少数にとどまったしかし検討すべき事項の理解を誤り検討すべき事項とは関係ない又は不要な論述を展開する答案や検討すべき事項自体には気が付いているものの問題文で示されている事案への当てはめによる検討が不十分であって抽象論に終始する答案も散見されたまた基礎的な部分の理解の不足をうかがわせる答案も少なくなかった

時間不足になったのはおそらく知識や理解の不足が原因だろう何を書いていいかわからないまま時間だけが過ぎてしまうのも実力不足である何を書いていいかわからないときでも具体的事実関係を改めて整理しなおす条文を読み直すなどして論点をあぶりだせることは少なくないその練習を日頃からしておくことが必要であるしそもそもどういう時に論点になるのかをパターン的に整理しておくことも有益であるこの辺りの準備の差は、「法律問題を解くためにはどうすればよいか?」という意識の持ち様と関わっている

 

なお条文の引用が当然求められる箇所であるにもかかわらずその条文を引用していない答案や引用条文の条番号が誤っている答案も一定数見られた法律解釈における実定法の条文の重要性は改めて指摘するまでもないまた判読が困難な乱雑な文字や略字を用いるなど三者が読むことに対する意識が十分ではない答案特に刑事訴訟法との用語の混同など法令上の用語を誤っている答案日本語として違和感を抱かせる表現のある答案も一定数見られたこれらについては例年指摘されているところであるが本年においても改めて注意を促したい下線部は筆者

下線部はいずれも意識次第で改善できるはずであるし合格答案を作成するために改善しなければならない基本的な問題である当たり前のこと過ぎてあえて指摘されていないこともあるのかもしれないが改善できることを改善することはその時点ですぐに改善できないことを改善する礎になる一事が万事である添削指導でも特に注意している

 

※全ての添削に根拠を示す添削指導はABproject。

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