令和2年民事系第三問の採点実感を読んでみた~その1~ 論理に盲目な人は落ちる。
「科学的なエビデンス」で安心する人は、本質を見誤る。
今日から民事系第三問の採点実感を読んでみたシリーズに入ります。
タイトル等の言葉は、最近気になっていることです。
この世の中に絶対的なものなんてないはずです。
「法学の基礎基本」を除いては・・・(笑)
(赤字は筆者)
令和2年司法試験の採点実感(民事系科目第3問)
1 出題の趣旨等
民事系科目第3問は,民事訴訟法分野からの出題であり,出題の趣旨は,既に公表されている「令和2年司法試験論文式試験出題の趣旨【民事系科目】〔第3問〕」のとおりである。本問においては,例年と同様,受験者が,①民事訴訟の基礎的な原理,原則や概念を正しく理解し,基礎的な知識を習得しているか,②それらを前提として,設問で問われていることを的確に把握し,それに正面から答えているか,③抽象論に終始せず,設問の事案に即して具体的に掘り下げた考察をしているかといった点を評価することを狙いとしている。
→上記①の基礎的な原理原則は、主に短答過去問でその範囲を特定できる。短答過去問演習は必須。②は、①を前提として問題の意図を把握できるかがポイント。問題を解くためだけでなく、問題を正確に把握するためにも①が大事。③は、質の高い論文添削を受けて「具体的に」検討するとはどういうことか理解することが必要。合格答案や参考答案等で「わかった気になる」のではなく、自分自身の答案を使って「具体的に」答えるイメージを育てよう。
2 採点方針
答案の採点に当たっては,基本的に,上記①から③までの点を重視するものとしている。本年においても,問題文中の登場人物の発言等において,受験者が検討し,解答すべき事項が具体的に示されている。そのため,答案の作成に当たっては,問題文において示されている検討すべき事項を適切に吟味し,そこに含まれている論点を論理的に整理した上で,論述すべき順序や相互の関係も考慮することが必要である。そして,事前に準備していた論証パターンをそのまま答案用紙に書き出したり,理由を述べることなく結論のみを記載したりするのではなく,提示された問題意識や事案の具体的な内容を踏まえつつ,論理的に一貫した思考の下で端的に検討結果を表現しなければならない。採点に当たっては,受験者がこのような意識を持っているかどうかという点についても留意している。(下線部は筆者)
→上記①~③はいわば法的思考を展開するにあたって基本となる「当たり前」の話。採点実感で書かれているから大事だ、という話ではない。また、各下線部は、答案作成において注意すべき点。正しい法的思考につながるポイントである。そして、「意識を持っているかどうかという点も留意している」との指摘には特に注目してもらいたい。その「意識」の違いは、日頃の学習への取り組み方の違いを如実に表すものだからである。日頃の「意識」の違いは、「無意識」にも影響する。「無意識」に書いている部分にも、当然その解答者の実力が反映されている。
3 採点実感等
⑴ 全体を通じて
本年の問題では,例年同様,具体的な事案を提示し,登場人物の発言等において受験者が検討すべき事項を明らかにした上で,訴えの利益,心証形成の資料,共同訴訟の類型,訴えの取下げの効果等の民事訴訟の基礎的な概念や仕組みに対する受験者の理解を問うとともに,事案への当てはめを適切に行うことができるかどうかを試している。
→問われた事項について、全く知らないという受験生はいないはずである。誰もが一度は学んだことがある事項について、その理解の深さを問う問題だと思う。もちろん、使うべき規範(判例等)を覚えておくことが前提である。本年度問われた知識は、民訴法上の問題としてよく問われるものばかりである。知識が足りなかったと感じるのであれば、そもそも、知識に対する「意識」が足りなかったというべきだろう。
設問3について,時間が不足していたことに起因すると推測される大雑把な内容の答案が一定数見られたものの,全体としては,時間内に論述が完成していない答案は少数にとどまった。しかし,検討すべき事項の理解を誤り,検討すべき事項とは関係ない,又は不要な論述を展開する答案や,検討すべき事項自体には気が付いているものの,問題文で示されている事案への当てはめによる検討が不十分であって,抽象論に終始する答案も散見された。また,基礎的な部分の理解の不足をうかがわせる答案も少なくなかった。
→時間不足になったのは、おそらく知識や理解の不足が原因だろう。何を書いていいかわからないまま、時間だけが過ぎてしまうのも実力不足である。何を書いていいかわからないときでも、具体的事実関係を改めて整理しなおす、条文を読み直すなどして、論点をあぶりだせることは少なくない。その練習を日頃からしておくことが必要であるし、そもそも、どういう時に論点になるのかをパターン的に整理しておくことも有益である。この辺りの準備の差は、「法律問題を解くためにはどうすればよいか?」という意識の持ち様と関わっている。
なお,条文の引用が当然求められる箇所であるにもかかわらず,その条文を引用していない答案や,引用条文の条番号が誤っている答案も一定数見られた。法律解釈における実定法の条文の重要性は,改めて指摘するまでもない。また,判読が困難な乱雑な文字や略字を用いるなど,第三者が読むことに対する意識が十分ではない答案や,特に刑事訴訟法との用語の混同など法令上の用語を誤っている答案,日本語として違和感を抱かせる表現のある答案も一定数見られた。これらについては,例年,指摘されているところであるが,本年においても,改めて注意を促したい。(下線部は筆者)
→下線部はいずれも「意識」次第で改善できるはずであるし、合格答案を作成するために改善しなければならない基本的な問題である。当たり前のこと過ぎてあえて指摘されていないこともあるのかもしれないが、改善できることを改善することは、その時点ですぐに改善できないことを改善する礎になる。一事が万事である。添削指導でも特に注意している。
※全ての添削に根拠を示す添削指導はABproject。