行政法課題テスト② 「エビデンス至上主義」だからわからない
エビデンスは一つの指標にすぎないのに・・・
私は「そう考える根拠は?」という問いに疲れました。確かに学問を深化させていくためには、精緻な論理の積み重ねが必要で、そのために逐一根拠を求めることは大事なことだと理解しています。
しかし、納得できる(批判できない?多くの人に支持されている?)根拠があるからその答えが正解だとは限りません。あくまで答えを支える「基盤の頑丈さ」という程度問題であって、絶対不変のものではないのです。
「エビデンス至上主義者のエビデンスに対する信仰心(妄信?)には、成長を妨げる大きな問題があるのではないか?」というのが今回からのテーマです。
・法的根拠は覚えるもの?
エビデンス至上主義者は、信頼できるエビデンスがないと不安になるという心理の下に行動していると感じます。法学の世界で見ると、ある論点についてすぐに通説・判例を頼り自説を持たない人は、典型例だと思います。
エビデンスを妄信するあまり「学説・判例に対してどう思うか?」「学説・判例がなぜそう考えるのか?」という理解のプロセスを看過し、すぐに暗記に走ってしまう。これは、効率的な学習方法のようでそうではないように思います。
確かに目の前の論点を(とりあえず)解決できる知識を身につけるためには、その論点に対する学説・判例を覚えてしまえば足りるでしょう。
しかし、長く法学習を続けていくと、学ぶべき論点はとてつもなく膨大であることがわかります。各論点について逐一「学説・判例のエビデンスがないと不安」という姿勢で勉強していると(ほとんどの方は。一部例外もいるでしょう。)いつか必ずパンクしてしまうでしょう。
一方で、ある程度、法的根拠づけの仕方を学んでいくと、そこには一定の思考パターンや見方・考え方があることがわかります。逐一学説や判例の見解を求めなくても、一定の解答を自分の力で導く方法が見えてきます。
知識としてのエビデンスがなくても、自らの思考・経験からエビデンスを導くことが出来るのです。「現時点での」一つのエビデンスに過ぎない学説・判例に縛られず、多様な見解がありうることを受け入れられれば、妄信的な暗記学習から逃れ、もっと楽しく学べるのではないかと思います。
ちなみに、学説・判例の知識を軽視してもいいと言いたいわけではありません。「他者の意見・自分の意見とのバランス」を大事にした方がいいのではということです。「至上主義」が最高の結果を導くことはあまりないように思います。
※判例・学説との向かい方についてはこちらの記事を参照ください
abproject.hatenablog.jp
それでは行政法課題テスト②の問題を公開します。
○注意書き
・参照可→六法等
・制限時間なし
・解答は記述式
・記述の構成要件→①正誤②条文の適示③問題となる要件④問題の所在
・5問中4問正解で合格
問1
行政機関は、行政指導が出来る旨を規定した明文の規定がない場合でも、行政機関の任務ないし所掌事務の範囲内であれば、行政指導をすることが可能であり、行政指導がされていることを理由として確認処分を留保することは、直ちに違法になるとは言えない。もっとも、相手方が確認処分を留保されたままでの行政指導には応じられない旨を真摯且つ明確に表明して建築確認申請に直ちに応答すべきことを求めた場合には、原則として違法の評価を免れない。
(正誤)
(理由付け)
問2
墓地埋葬等に関する法律第13条に関して、他の宗教団体信者であることだけを理由とする埋葬拒否は、「正当の理由」によるものとは認められないと解釈した通達について、この解釈を誤りと考える寺院は、通達の内容に拘束されず、同条違反を理由とする刑事訴訟において、その通達の適法性を争うことができる。また、取消訴訟でその通達の適法性を争うことも可能である。
(正誤)
(理由付け)
問3
パチンコ球遊器について約10年間にわたり非課税の取り扱いが続いていた後に、法定の課税対象物品に該当する旨の通達が発せられた場合、通達の内容が法律の正しい解釈に合致するとしても、通達が発せられた後にされる課税処分は、非課税の継続に寄せられた納税者の信頼を損なうものであるから、信義則に反し違法である。
(正誤)
(理由付け)
問4
裁判所は、行政庁に裁量権が認められる場合、判断過程において考慮すべき事情を考慮していないことを理由に、その決定内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くとして、処分の違法を認めることができるが、そもそも、法律上不利益処分をすることが「できる」と規定されていても、当該行政庁に裁量権が認められるとは限らない。
(正誤)
(理由付け)
問5
ある産業廃棄物処理施設の建設計画があることを知った地方公共団体が、規制対象事業場に認定された処理施設について一定区域内におけるその操業を禁止する水源保護条例を制定した上で、当該処理施設を規制対象事業場に認定した事例において、最高裁は、認定前における事業者との協議規定が条例に盛り込まれていることなどに照らすと、当該地方公共団体には事業者と十分に協議し、事業内容の変更など適切な行政指導をして、その地位を不当に害することのないように配慮する義務があると判断した。
(正誤)
(理由付け)
行政法課題テスト②の正解は明日2021年1月2日予定です。
暗記学習に頼らない、自分で考えられるにはどうすればいいかを追求した学習方法がここに!!