商法課題テスト④ 「学問に王道なし」とは言うけれど・・・
別に人と同じ方法で学ばなくてもいいのでは?
今回も「論語」の一節から始めましょう。
「子曰く、異端を攻むるは、斬れ害あるのみ。」
これは、孔子が学問に関して始めにその王道を学ぶことの大切さを説いた一節です。
「学問に王道なし」ということわざと同じ意味だと考えていいと思います。
ちなみに「学問に王道なし」とは、学問に安易な道はなく、誰が学んでも等しく経なければならない過程が存在するという意味です。
こちらのブログで何度も指摘しているように、法学においてもまずは基礎力をしっかり固めるという王道があると思います。基礎力の養成には相当の時間がかかりますが、それを省いてしまうと、結局合格するために備えるべき実力は付かないまま終わってしまうと思います。
もっとも、基礎力を身につけるために全ての人が同じ方法で学問を進めていくべきかというと、そうではないと思います。人それぞれ、その能力や知識レベルなど、学問を深める以前に持っているバックグラウンドが違うからです。
例えば、ABprojectでは法学習を進める際の指針となるように「法学のコンパス」を提供しています。これを作成したきっかけは、従来の法学習に限界があると感じたからです。
従来の法学習は、様々な科目を一通り勉強してみることで、おぼろげながら見えてくる全体像を掴み、さらにはその根底にある「法学の基礎基本」をとらえていくという方法でした。言うまでもなく「様々な科目を一通り」というのは、普通以下レベルの知能の人間には想像を絶する量です。一通り学び終わる頃には過去に学んだ知識を忘れてしまい、それらを整理して理解すること、その根底にある「法学の基礎基本」をとらえることは、誰にでもできることではないと思います。
ところが残念なことに司法試験業界には、知能レベルが高い人達(≒偏差値が高い人達)が相当数います。その結果、膨大な情報を記憶しつつ、それを整理し、その核心をとらえていくという高度な学習方法が成立してしまうのです。現在のロースクール教育が典型です。
仮にこれが王道を通る唯一無二の手段であり、他に選択肢がないなら、正直なところ「司法試験への道はノーチャンス」という方が相当程度出ると思います。つまり、従来の法学教育は、地頭の良さに頼るという限界があったように思うのです(実際のところ、この問題を完全に解消することは難しいと思いますが・・・)。
しかし、「必ずしも正攻法で王道を通る必要はない。」「真正面から進んでいく力がなくても、工夫すれば通り抜けられる方法があるのではないか。」と考えた結果が、先の「法学のコンパス」です。「各科目を一通り学んで初めてとらえられる『法学の基礎基本』を先に提供してしまえばいいのではないか?」という発想がその根幹にあります。
「法学のコンパス」を片手に法学習を進める場合、その学習過程は、全てが「法学の基礎基本」に結びつける作業になります。従来の「知識のインプットを通して、法学の基礎基本を学ぶ」という方法から、「すでに知っている法学の基礎基本を確認するために、知識に触れる」という方法への転換です。
換言すれば、幹(法学の基礎基本)から枝(各法律知識)への学習を可能にするということです。
「学問に王道なし」とは言いますが、それが個々の可能性をつぶす言葉になってはいけないと思っています。学問は、全ての人に開かれた存在であるべきだからです。
それでは、商法課題テスト④の問題を公開します。
○注意書き
・参照可→六法等
・制限時間なし
・解答は記述式
・記述の構成要件→①正誤②条文の適示③問題となる要件④問題の所在
・5問中4問正解で合格
問1
取締役の業務執行に対する委縮を防ぐためその地位を厚く保護することは重要であるから、株主総会が取締役の解任決議をするには正当な理由が必要とされており、またその解任の決議要件は監査役の解任決議よりも厳格に定められている。
(正誤)
(理由付け)
問2
取締役設置会社の代表取締役が取締役決議に基づかないで株主総会を招集し決議がされた場合、及び招集通知に記載されていない議題について決議がされた場合は、いずれも株主総会決議取消しの訴えを提起することができる。
(正誤)
(理由付け)
問3
取締役の第三者に対する責任は、その責任を特に加重した法定責任としての法的性格を有するから、その要件として第三者に対する加害について悪意又は重過失が認められなければならず、また第三者に過失があっても過失相殺をすることができない。
(正誤)
(理由付け)
問4
取締役が自己のために株式会社と取引をし、それによって当該株式会社に損害が生じた場合、当該取締役は任務を怠ったことがその責めに帰することができない事由によるものであることをもってその責任を免れることができないが、取締役設置会社の取締役が取締役会の承認を受けて会社事業の部類に属する取引をし、その取引によって当該会社に損害が生じた場合、当該取締役は会社に対する責任を負わない。
(正誤)
(理由付け)
問5
判例によれば、取締役選任の株主総会決議の取消訴訟において、当該決議により選任された取締役は、被告である会社の共同訴訟人として共同訴訟参加をすることもできるし、当該会社を補助するために共同補助参加をすることもできるとされている。その理由は、訴訟参加に対する当事者の意思を尊重するためである。
(正誤)
(理由付け)
商法課題テスト④の正解発表は、明日2020年12月15日予定。
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