刑訴法課題テスト③ 法的思考プロセス=仕事ができる人の思考プロセス?!
思考の端緒(問い)と結論を矛盾なく結び付ける作業
「いわゆる仕事ができる人は、普通の人とは違う頭の使い方をしている」そうなのです。
それはいったいどんな思考方法なのか?と興味を持って読んでみたのですが、法律家が日常的にしている「法的思考」とかなり近いものだったのでここでシェアしておきます。
仮説思考とは「おそらくこうなるかな」と先を見通していく思考法です。やみくもに情報を収集し答えを探すのではなく、「仮の答え」を設定しそれに合わせて情報を収集していくという思考プロセスです。
その利点は、スピーディーに質の高い答えを出せること+間違いを修正しやすいことにあります。詳しくは上記リンクをご覧ください。
仮説思考のプロセスは下記の通りです。
(画像は上記リンクから引用)
これを法的思考と比較してみましょう。
⓪目的(問い)を押さえる=法律問題を把握する
試験問題を解く場面を想像してください。まずやるべきことは、「問いを把握すること」です。それができなければ何も始まりません。
もっと細分化すると
「何を問われているか理解すること」「法的な問題の所在を特定すること」
がここでの課題です。
①目的に対する仮説を立てる=とりうる結論を想定する
この点はあまり教えられないかもしれませんが、短い試験時間の中で効率よく答えにたどり着くためには、大事なスキルです。
例えば、Xが何者かの行為により財産的損害を被ったという事案で「Xは何ができるか?」という問いがあったとしましょう。
この場合、「Xが被った財産的損害」を何とかしようという視点から、「何ができそうか」を考えます。「不法行為?債務不履行?いずれにしても『損害賠償請求』の方法を考えないと!」と思いつければ、「損害賠償請求ができる」(場合によっては「何もできない」という結論もありうるかもしれません)という仮の答えを設定して、それに向かっていくことになります。
②データを収集する=仮の答えを基礎づける法的根拠を探す
具体的には条文・判例・学説などを見つけるということです。
仮の答えを思いつく段階である程度、条文等も頭の隅には浮かんでいるはずです。①と②との関連性についてはまた後日言及出来ればと思います。
③分析により仮説を確かめる
論文式試験の答案でメインどころとなるのは、この部分でしょう。
問題提起をした後、「条文適示→規範定立→あてはめ→結論」という過程を経て、正しく規範定立・あてはめをしながら、結論(仮の答え)にたどり着けているかを確認します。仮の答えと実際に至る結論がどうしても一致しないのであれば、仮の答えを修正する必要があります。
いかがでしょうか?
法的思考は、まさに多くのビジネスパーソンが身につけるべき思考方法と重なります。法学習はやはり「最良の自己投資」であると思います。
次回のブログでは、できるビジネスパーソンがしている仮説思考の鍛え方が法的思考の鍛え方と共通していることについてお伝えしていきたいと思います。
それでは、刑訴法課題テスト③の問題を公開します。
○注意書き
・参照可→六法等
・制限時間なし
・解答は記述式
・記述の構成要件→①正誤②条文の適示③問題となる要件④問題の所在
・5問中4問正解で合格
問1
公訴の提起は、原則として起訴状を提出して行うが、詐欺罪の公訴提起にあたり、被告人が詐欺罪により既に2度処罰を受けたものである旨を起訴状に記載した場合、公訴提起は違法無効となり、裁判所は免訴判決をしなければならない。また、公判手続開始後に公訴提起を取り消す場合は、被告人の同意を得なければならないとするのが実務上の取り扱いである。
(正誤)
(理由付け)
問2
裁判所は、窃盗の罪に問われている被告人甲(A県内に住居有り)から保釈請求があった場合、甲が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がない以上、保釈を許さなければならず、これは、甲を懲役に処する実刑判決宣告後、判決が確定する以前でも同様である。ただし、甲が被害者等の身体財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為を行う恐れはないものとする。
(正誤)
(理由付け)
問3
脅迫の罪に問われている被告人甲は、その刑事裁判に際して、法律上必ず弁護人を選任しなければならないことから、弁護人Aを選任した。弁護人Aは、被告人甲の代理人としての地位にあるものであるから、その明示の意思に反して訴訟行為を行うことはできず、被告人の意思に反する保釈請求や被告人の意思に反する証拠調べ請求は、いずれも違法無効となる。
(正誤)
(理由付け)
問4
「令和2年4月10日ころから4月20日ころまでの間、京都府の被告人宅において、自己の身体に覚せい剤を注射又は服用して施用し」とする覚せい剤使用の訴因の記載は、覚せい剤使用罪の訴因の特定に欠けるから、違法である。仮に当初の訴因の記載が「令和2年4月10日午後5時ころ、京都府の被告人宅において、覚せい剤を服用し」であった場合、「令和2年4月10日午後7時ころ、京都府の被告人宅から2㎞の距離にある乙宅において、自己の左腕部に覚せい剤を注射し」とする覚せい剤使用の訴因へ訴因変更することは適法である。
(正誤)
(理由付け)
問5
公判前整理手続における証拠開示に関して、裁判所は、検察官が刑事訴訟法第316条の15第1項に基づき証拠開示すべき証拠について当事者間に争いがある場合は、被告人もしくは弁護人の請求又は職権により、決定で当該証拠の開示を命じなければならない。なお、この決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(正誤)
(理由付け)
課題テスト③の正解は明日2020年11月17日発表予定!
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