憲法課題テスト③ なぜ判例が苦手なのか?
判例に対する理解力≒法に対する理解力?
憲法を攻略するにあたって避けては通れないのが、判例です(他の科目でも判例は重要ですが・・・)。しかし、これが苦手で苦手でしょうがない人が多数いるのが現実です。ABprojectにもお悩みの声が多数届いております。
今回は、判例の理解につまづく隠れた原因を紹介したいと思います。
①読み込み不足
シンプルな理由ですが、意外と多いです。判例の読み込むは「苦行」という側面もあるかもしれません。「こんなのわかるはずない」と投げ出しなくなる気持ちもよくわかります。
しかし、一回読めばわかるという重要判例はない、と言っていいでしょう。問題を解きながら何度もつまづき、その度に復習し、その繰り返しの中で理解は深まっていくものです。「意識の中で」理解するということの前段階として、「無意識の中で」理解するという段階があるのかもしれません。脳の深くに浸透していくよう、粘り強く繰り返し触れることは判例攻略に不可欠です。
②その判例の理屈を整理する前提知識の不足
判例百選を読み込めば理解できると思っている方がいるようですが、それは間違いです。百選に載っているのは、ある論点のハイライトだけですから、それを理解するためには、そこに至る過程をも含めて押さえる必要があります。
例えば「在留外国人に憲法21条1項に基づく政治活動の自由は認められるか?」という論点があります。なぜこれが問題になるのかと言うと、条文上、不明だからです。
「条文上不明だから考えよう(論点出現)」→「じゃあ、どうやって考えるの?(考える材料を探す)」→「そもそも、日本に在留する外国人の法的地位とは?」「国民主権原理って重要だよね?」・・・→「じゃあ、結論はどうなる?」という形で理屈が展開していきます。
そもそも、法律問題は、当該事例を条文に照らし合わせることから始まります。その過程で「論点」が出現してきます。このような前段階をすっ飛ばして判例を読んでもチンプンカンプンになるのは必然です。
③自分で考えて読み解く癖がついていない
残念ながら判例は誰でも簡単にわかる平易な日本語で書かれていません。判例を理解するには、「裁判所は何が言いたかったのか?」をきちんと読み取る姿勢が必要です。しかし、判例が苦手な方の多くは、「教えてもらう」意識が強く「読み取る」意識が弱いように感じます。それまでの勉強では、教わる時間・覚える時間が長かった弊害かもしれません。判例を理解するには、まさに「読解力」が必要とされるといえるでしょう。
④演習不足
このブログでも「法は道具である」ということに度々言及しています。判例は、まさに裁判所が法を道具として使った結果を文章にしたものだと思います。
私自身もある程度勉強をしてわかったことなのですが、論文問題を解いたりして法律を「使う」経験が増えると、なぜ当事者はこの点を争っているのか?なぜ裁判所がこのような見解を示したのか?を「裁判所や当事者の立場」に立って理解することができるようになってきます。
いわば「当事者意識」が芽生えるということです。「裁判所の悩み」「当事者の言い分」を受け止められるようになると、それまで無味乾燥だった判例が急に血の通った存在に感じられるようになります。ここまで来ると、判例を読むのが楽しくなってきます。
原因がわかったところで一朝一夕に判例を攻略できるものではありません。コツコツ読んでいきましょう。コツコツが報われるのが法律の良さでもあると思います。
さて、憲法課題テスト③の問題を発表します。
○注意書き
・参照可→六法等
・制限時間なし
・解答は記述式
・記述の構成要件→①正誤②条文の適示③問題となる要件④問題の所在
・5問中4問正解で合格
問1
一般人の筆記行為の自由は、報道機関の取材の自由と同様に、憲法第21条の精神に照らして十分尊重に値する。よって、一般人の傍聴者が法廷でメモを取る行為を禁じ、司法記者クラブ所属の報道機関の記者が法廷でメモを取る行為を許可する措置をとることは、合理的理由を見出すことができない。
(正誤)
(理由付け)
問2
最高裁判例によれば、憲法第23条は、狭義の学問の自由とともに、大学の自治を保障する。これは、制度的保障を図る趣旨であり、その主体は、教授その他の研究者の組織及び学生である。
(正誤)
(理由付け)
問3
憲法第19条の思想・良心の自由は、人の内心における精神活動の自由を保障したものであり、人の内心は何らかの形で外部に表明されない限り誰も知ることができないものと言いうるが、思想・良心の自由が絶対不可侵とまでは言い切れない。
(正誤)
(理由付け)
問4
判例によると、患者が、輸血を受けることは宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、医師は、手術に際して輸血以外の救命手段がないと判断したときは輸血するとの方針を採っていることを患者に説明し、手術を受けるか否かをその意思決定に委ねるべきである。医師がこれを怠った場合、不法行為責任を負いうる。
(正誤)
(理由付け)
問5
判例によると、国家公務員の政治的中立性を損なうおそれのある政治的行為を禁止することは、強い政治性を有する意見表明そのものを制約する規制であり、場合によっては、特定の内容の表現を禁止することも可能である。また、公共施設における集会の自由を制限する際には、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避、防止することを目的としても、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される必要がある。
(正誤)
(理由付け)
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憲法課題テスト③の解答発表は、明日2020年9月26日!!