司法試験過去問添削実施中! 令和時代の合格者を創造する添削指導
今回は令和元年公法系第2問の添削例をご紹介
令和元年の行政法は設問1で違法性の承継が出題されました。
司法試験受験生ならだれでも知っているであろう基本論点についてどう書くべきか、他の受験生に差を付けられてはいけない部分だからこそ理由付けの仕方まで厳しく指導が入っている点に注目してください。
・違法性承継の理由付けについて
本件取消訴訟において本件権利取得裁決の先行処分にあたる本件事業認定の違法性を主張できるか、すなわち違法性承継の可否がこの設問の問いでした。その点については、把握できていると思います。もっとも、違法性承継を認めることの理由付けに説得力がない(不十分)と思いました。問題文の誘導によって論点が分かりやすくなっているときほど、その理由付けの十分さが求められます。なぜなら、論点を把握できたか否かという点では、受験生間に差ができないからです。
違法性の承継は、本来先行処分に対する抗告訴訟において主張すべき違法性を後行処分に対する抗告訴訟において主張できるという一種の法理論です。そして、これが公定力を根拠とする原則(原則の理由付けも大事です)に対する例外にあたることは、本答案でご指摘の通りです。とすると、ポイントとなるのは2つです。まず、違法性の承継について明文規定はないということです。「明文規定がないのに、それを認めていいのか」という問題提起は、科目を問わず、法学の基本的な論理として問題となります。次に例外を認めるときの理由付けの仕方も大切です。前回の商法でお伝えしましたが、例外を認める場合は、必要性と許容性(相当性)の両面から理由付けするのが基本です。違法性の承継の場合、先行処分に対する手続保障の必要性及び先行処分と後行処分との一体性ゆえに違法性の承継を認めても法的安定性を害しないという許容性が認められるからこそ、例外の扱いを認めるのです。ここは、きちんと論じてほしいところです。特に明文規定がない部分で例外を許容するというのは、法の趣旨を逸脱するおそれもある危険な行為ですから、それを安易に認める姿勢は、法律家としての資質を疑われます。
それから、本答案の冒頭で「事業認定も処分である以上・・・」(1ページ3行目)との指摘がありますが、これは少々雑な書き方です。よく出題される事業認定は「土地収用法の事業認定」だと思いますが、これは「事業認定」という名がついているから「処分」(行訴法3条2項)なのではなく、土地収用法に基づいておりその法効果等、行訴法にいうところの処分性の要件を満たしているから処分なのです。土地収用法上の事業認定の処分性は容易に認められますが、事業認定というだけでは何の事業認定なのか不明のため当然にその処分性を肯定することはできません。細かいですが、「処分性」という重要な法概念に関わることなので意識しておいてください。