司法試験予備試験過去問添削実施中! うまく書けないのは簡単な基礎基本を理解してないから
前回に続き平成30年予備試験憲法の添削例をご紹介します。
憲法答案で多くの人が悩むのは「原告と被告の主張で何をどの程度書けばいいのか」という点です。ABproject では、議論の基本的な枠組みをわかりやすく紹介しながら、何をどの程度書くべきか、ズバリ指導しています。
1・(1)で主張内容を簡潔に示し、採点者に予測可能性を与える書き方はいいと思います(憲法上の根拠条文もここで示してくださいね。あとは「制約」と「侵害」という言葉を意識して使い分けれるといいと思います。「制約」されても合憲という結論になる場合もありますので)。ただ一方、1・(2)は、もう少し書いてほしいところでした。反論部分で「思想及び良心の自由」の意義について触れられていますが、これをXの主張の中で書いてほしいです。原告になるであろうXが自分の利益を主張する以上、Xが自らその根拠を説明するのが訴訟を提起する上でのルールだからです。その相手方は、原告側の主張を前提にして反論を組み立てます。
本問で考えると、Xが「思想・・・自由」の意義(規範)及びその主張利益が憲法上の利益として保障されること(あてはめ)を主張したことを前提に、議会側が「・・・核心にあたるものではない」としてあてはめ部分に反論を立てるのが筋だと思います。もちろん、原告の主張する規範と被告の主張する規範の違いを対立点として設定する論述も有り得ると思いますが・・・。法的な議論の組み立て方も徐々に慣れていけるといいですね。要件事実論の話になるわけですが、法的思考を成熟させていくためには、結構大事なポイントです。
あとは参考までに書いておきますが、私は本番でこの問題を解いたとき、「法律上の争訟性を満たさない」との理由を付した上で、処分1についての検討を省略しました。出題趣旨を読む限り必ずしも得策だったとは言えないかもしれませんが、A評価でした。こういうパターンはあまり出題されないと思いますが、書くことが多くなるそうなときは、法律上の争訟性や権利保障性等、議論の初期段階で結論を出してしまうのも一つの手だと思います。
2・(1)は、憲法の条文と制約の文言に意識がいっていれば、パーフェクトでした。2・(2)は、「表現の自由」についてその意義を明らかにした上であてはめしてほしいところでした。表現の自由の重要性についての説明は、簡潔に書くのであればこれで十分かと思います(議員という身分が憲法上どうなっているのか、条文の指摘は欲しいところですが・・・。「市民の意見を市政に反映する」役割が憲法上重要だと言えることは、Xの主張利益を憲法上尊重すべき根拠になります(15条あたり))。ただ、今後司法試験を受けるということも想定するのであれば、「自己実現・自己統治」がどういう意義を持つのかなど、より内容の具体性を持たせる余地がある点も認識しておいてほしいです。
紙幅の関係上、もう書けないというところかもしれませんが、違憲審査基準は書きたいですね。「権利保障性→制約→審査基準」の内容をそれぞれ明らかにさせた上、どこかで対立点をつくるというのが憲法の典型パターンだと思います(三段階審査論)。権利の重要性だけを説明しても、憲法論の枠組みにあてはまるだけの論述に足りないので、あまり評価されないと思います。