ABprojectはなぜ基礎基本にこだわるのか? 法学習の正の連鎖は知っていますか?
刑訴法の添削例を公開 法学の基礎基本を押さえれば、正の連鎖が始まる?
今回は、刑訴法の答案添削例を一部公開したいと思います。添削したのは、司法試験・予備試験の過去問ではなく、某法科大学院の過去問です。
ABprojectでは法科大学院生・法学部生の課題サポート等も行っております。ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
さて、話がそれてしまいましたが、刑訴法の答案添削例を公開するといっても伝えたいメッセージは、刑訴法分野にとどまらないものです。
以下の添削例では、あてはめがうまくいかない受講生に規範の理解をきちんとするよう厳しく求めています。このような指摘は以前ブログで紹介した他の添削例でも見られます。つまり、答案を書くときの基本というのは、どの科目でも同じということです。
各科目に共通する基本部分が分かるとどの科目も同時に実力が上がっていきます。理解度が上がると知識の吸収力も上がっていきますので、各科目相互の関連性に気付きやすくなり、同科目内の相互理解も飛躍的に高まっていきます。まさに正の連鎖が始まるのです。
ここまで来ると、勉強はだいぶ楽になります。ある特定の科目を勉強しながら、他の科目の実力までアップしていくという未体験ゾーンはぜひ体感してもらいたいものです。
まず、被制約利益に関するあてはめはどうすればいいのか?という質問についてお答えしますが、そもそも、その疑問が出てくるあたり規範に対する理解が不十分だと思われます。当該規範は判例を意識されたものだと思いますが、かの判例は、捜査機関側の利益と捜査対象者側の利益を比較考量した上で、捜査機関側の利益が捜査対象者側の利益を上回るのであれば捜査の相当性を肯定し197条1項本文に基づく捜査の適法性を認めるという考え方です。被制約利益の問題は、捜査対象者側の利益を示すものなので、(その存在を当然の前提としたうえで)その内容及びその軽重について論じればいいと考えます。あてはめの仕方に迷ったら、まずは規範の知識不足を疑いましょう。
続いて必要性・緊急性の当てはめをしている部分についてですが、それぞれ分けて当てはめてください。「それに対し・・・」の部分は、当てはまっているようで全然当てはまっていません。事実と要件(考慮事情)との対応関係が不明だからです。あと、殺人事件がなぜ重大事件と言えるのか理由づけられていると丁寧です。DNA鑑定で一致しているという記述については、もう少し具体的な内容に触れ、かつそれがどう要件と結びつくのかを説明できるといいですね。言いたいことはわかりますが、要件該当性の説得力に欠ける印象です。
ちなみに、捜査の相当性を判断する考慮事情として「必要性・緊急性など」と挙げられていますが、その意味を考えていますか?上記の通り、当該規範の核は比較考量論です。よって、その考慮事情は、対立利益間の考量を適切かつ公平になしうるものを挙げなければなりません。本件で「緊急性」って要りますか?(要否に正解はないと思いますが、判例の事案と本件とでは状況が異なるので、その点をどう考えるかが問題です。)被制約利益に触れたいなら、「など」とごまかさず、それを考慮事情に入れることを明示してもいいのではないでしょうか?
「もっとも」以下ですが、結論部分は適法ですか?それとは別に被制約利益に対する著しい制約があると言えるでしょうか?被制約利益の指摘はありましたが、それに対してどのような制約があったのか、その態様が著しいと言えるか、という点について検討がありませんでした。そして、規範はどういうものでしたか?規範とあてはめは、完全一致を目指してください。