短答対策と論文対策は異なるのか?? 不合格者の勘違い
予備試験・司法試験合格者のシンプルな視点
今回は、前回からの続きのような内容になります。
短答対策と論文対策についてです。
タイトルに「不合格者の勘違い」とあえてショッキングなワードを使ってみましたが、この勘違いは、予備試験・司法試験の問題の本質ではなく形式にこだわってしまっている人にありがちです。
「短答プロパー」とか「短答対策」とかいう言葉が大好きな受験生、予備校関係者は多いと思いますが、私に言わせれば、「試験中毒」です。
そもそも、予備試験・司法試験には、法律家の卵を選抜していくだけではなく、育成していくことにもその存在意義があると思っています。
試験対策という目先の利益ではなく、法律家に求められる素養を養成していけば、必然的に合格は近づいてくるものだと考えています。
短答式、論文式の形式にとらわれず、法律問題という本質に目を向けるようにしましょう。
例えば、令和元年の司法試験民法短答式問題第3問アは、受験生の法的思考を図る良問だと思います。
「Aの代理人Bがその代理権の範囲内でAのためにすることを示さずにCと契約を締結した場合、Cにおいて、BがAのために契約を締結することを知っていたのでなければ、AC間に契約の効力が生じることはない。」
代理人Bが非顕名代理をした場合の本人相手方間の代理の効力の問題です。
とっても基本的な問題だと思いますが、この問題をどこから考えるかという点で予備試験・司法試験合格者かそうでないか、がある程度見極められると思います。
この問題を「民法第100条」から考え始めた人は、不合格者の法的思考です。
合格者の多くは、「民法第99条第1項」を出発点とします。
Aの代理人Bがした法律行為の効力がAC間に生じるためには、Bの代理行為が有効であることが大前提となるからです。
「民法第99条第1項」から導かれる代理の要件として「顕名」があり、それがなされていない場合にどう処理するかが「民法第100条」で規定されているのです。
この問題は、正誤を誤る人は少ないと思いますが、その思考過程をきちんと整理するのに非常にいい問題だと思います。
ちなみに、思考過程をきちんと整理できていない人の特徴として、初見の問題に弱いということがあげられます。
解いたことがある過去問の正答率は高いが、初見の問題だと正答率が下がるという人は、思考過程まできちんと整理する勉強を心がけてみてください。
特に民法は、思考過程の整理が正答率の安定につながりやすい科目だと思います。
このように短答式の問題も正誤に直接つながる知識だけにとどまらない奥深さがあります。
短答が知識重視(暗記重視)であることは否定しませんが、論文式問題と同じく法律問題であるということを今一度意識し、法的思考に基づいて一問一問丁寧に解き進めていくことをお勧めします。