法的なものの見方・考え方(1) 原則・例外パターン
原則と例外
さて、今回から数回にわたり法全般に共通する見方・考え方について書いていこうと思います。
どれも当たり前の話だと思われるものばかりだと思いつつ、あえて書きます。
当たり前のことが当たり前すぎていつか意識されなくなると問題が難しくなった時に急に路頭に迷うことになるからです。
当たり前のことをちゃんと意識できていれば、一見難しい論点や解説も意外とすんなり理解できることは多いと思います。
勉強し始めの受験生もだいぶ勉強が進んできた受験生もぜひ一読いただければ幸いです。
さて、今回は原則・例外についてです。
原則とは、多くの場合に適用される基本的な法則を言います。
例外は、原則に当てはまらない場合のことを言います。
まず押さえておきたいのは、原則があれば必ず例外が有り得るということです。
例えば、株主平等の原則(会社法第109条)というものがありますが、これは「原則」という名がついています。
ということは、原則として株主をその株式の数・内容に応じて平等に扱うのですが、例外的に株主を不平等に扱うことも有り得るということがわかります。
原則という言葉を見たらその例外にまで思いをはせる意識は、法を構造的に理解するのに役立つと思います。
また、原則が原則足り得るには、訳があります。
そこには、まず念頭に置いておくべき法的利益の存在が垣間見えます。
他方、例外が例外足り得ることにも、訳があります。
多くの場合、例外は、少数派の利益保護につながっています。
つまり、当事者間の公平を図る(対立利益を守る)という視点を垣間見ることができます。
このように原則・例外をその根拠とともに理解することにより、それまで見えなかった法的利益がはっきりと浮かび上がってくるのです。
これが法的紛争解決に向けた第一歩になるというのは、これまでも繰り返し説示してきたとおりであります。
ただ、「原則と例外をいちいち確認するって面倒くさいよー」とか思いませんか?
私自身も、そう感じていた時期があります。
何が原則で何が例外でというのをいちいち覚えていたら、どんどん覚える量が増えるのでとっても嫌でした。
でも、そう感じる方には、正直「まだ勉強が足りてないのか?」と思ってしまいます。
どういうことかというと、原則と例外という形で理屈を整理しておくと、実際の問題処理がとっても楽になるのです。
問題が複雑になればなるほど、原則・例外パターンを意識できていることが、間違いのない問題処理に役立ちます。
答練等を受けていると、くどいくらいに「原則・例外を分けなさい」と言われると思います。
そのアドバイスは、点数を挙げるという目先の利益だけでなく、適切かつ迅速な問題処理という法律家としての将来の利益にもつながる非常に大事なものなのです。
「法は道具である」とこれまで繰り返し述べていますが、ここでも法が道具足り得るために設けられている仕組みを見ることができますね。