法とは(2)
法的利益を見極める
さて、前回は、司法権、法律上の争訟の説明から出発し、法の勉強は、法的利益により紛争を表現すること、法の適用により紛争を解決することを学ぶのだという話を書きました。
今回は、法的利益という部分をもう少し掘り下げていこうかと思います。
というのも、法的利益をきちんと見極めることは、非常に重要だと思うのですが、意外とこれを疎かにしている予備試験・司法試験の受験生が多いと思うからです。
例えば、刑法の問題を例に挙げてみましょう。
Aさん「その携帯電話、貸してくれる?」
Bさん「いいよ。」
Aさん「ありがとう。」
Aさんは、Bさんから携帯電話を借りパクしてしまいました。
これ、窃盗罪ですか?詐欺罪ですか?
論点の話をしたいわけではありませんので、詳しい解説は割愛しますが、ここで何を考えるかというのは、結構重要なことだと思います。
「Aさんは、貸しただけなんだから詐欺にはならないよ」とか、「刑法なんて基本条文の要件に当てはめとけば、答え出るんだから、簡単じゃん」とか、いろいろ考えることはあると思います。
ですが、そもそも、法律問題の条件の一つは、法的利益によって紛争を表現できることでした。
上記の事例でも同様ですから、まずは、そこをきちんととらえるようにすべきだと思います。
特に刑法は、どのような法的利益(保護法益)が、どのように侵害されたか、によって成立する犯罪が変わる(=科される刑罰が変わる)という点で上記のポイントがわかりやすいです。
窃盗罪と詐欺罪の比較でみると、いずれも人の財産を守ろうとするものですが、それを「盗み取る」という形で侵害しているのか、「騙し取る」という形で侵害しているのか、という点の違いを意識したいですね。
それが「欺いて」(刑法第246条1項)、「窃取」(刑法第235条)といった構成要件の解釈の違いにつながってくるからです。
また、その法的利益の侵害に違いがあることは、刑罰の違いにもつながっています。
で、結局何が言いたいのかという話ですが、ポイントは2つです。
まず、法律問題は、全て法的利益をめぐる紛争を解決するものなので、法の解釈論(教科書・基本書等で長々と説明される部分)の基礎には、常に法的利益がどういうものかという意識があるということです。
つまり、法的利益の存在をイメージできていないと、法解釈論を理解できないということになります。
次に法的利益が何かということとそれに対する解決策には、ある程度の関連性がありますから、法的利益をきちんとイメージできていれば、当該論点について知識がなくても、それに気づき、自分なりの解決策を見出せるようになります。
つまり、初見の問題にも対応できるようになるということですね。
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