予備試験に合格した私だから伝えられる!法学の基礎基本!

予備試験・司法試験の合格を目指していた私が法学の基礎基本とは何か…ということに悩み苦しんだ結果、たどり着いた答えを書き綴っていきたいと思います!難しい論点を解説しようとはしていません。法律の資格試験に合格するのに必要なことは法学の基礎基本を見極め、理解することだけです!

令和2年公法系第一問の採点実感を読んでみた~その4~ 憲法のヒント最終章

ナンバリングも気にしてほしい

 

令和2年司法試験の採点実感(公法系科目第1問)

 

(中略)→その1、その2、その3へ

 

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(赤字は筆者コメント)

第3 規制②について

1 移動の自由について

憲法第22条第1項が一時的な移動の自由を保障するかが問題となることは大半の答案で言及されていたが,単なる「移動」が「移転」に含まれるかは自明ではないのに,特段説明なく同自由は同項により保障されるとする答案が多かった。

→「特段の説明なく」済ませたことについて意識的であったか無意識的であったかは、大きな差である。私の経験上、答案を読み進めていけば、当該省略が「戦略」だったか、「実力不足」だったかは、次第に明らかになってくる。「条文から考える」という基本姿勢を理解しているか否かが、結局は実力の差になるのである。論点知識の量は、実のところ、あまり大きな問題ではない。

 

⑵ 規制②は,憲法第22条第1項の保障する自由に対する制約として構成する見解も,憲法第13条の保障する自由に対する制約として構成する見解も成り立ち得る。しかし,検討の手順としては,実体的に関係の近い個別的基本権である憲法第22条第1項の保障対象に含まれるかを検討し,含まれない場合には包括的自由権の一内容として保障されるかを検討すべきである。

→条文相互の関係性は、憲法に限らず、全ての法で問題となる(ちなみに、判例「法」と言えることからすると、判例相互の関係性も問題となる)。22条1項と13条との関係性という一知識として終わらせてはいけない。法を理解するための重要な視点として、常に意識しなければならない。この意識の違いが法の体系的理解につながるからである。

 

違憲審査について

⑴ 規制②の違憲審査の判断枠組みについて,それが経済的自由だから緩やかな審査で足りるという図式的な議論をした答案はさすがに少なかった。

→「少なかった」ということは、わずかながらいたということである。

 

⑵ 移動の自由が精神的自由の側面を持つとして,そのことを審査基準の設定に当たり考慮すべきだとした答案や,居住移転の自由に精神的自由や人身の自由と関わる側面があることを理由に比較的厳格な審査を基礎付ける答案があったが,こうした側面を抽象的にではなく,本設問の事情を考慮して具体的に論じた上で,審査基準を定立することが求められる。

→「本設問の事情を考慮して具体的に論じた上で・・・」の意味がわからない受験生が多いようである。これは、実際に書いた答案の中で具体的に指摘されないと気付けないことである。ただ、法的三段論法を正しく身につけていれば、自然とクリアできるようになる問題でもある。「具体的に論じなきゃ!!」ではなく、「基礎基本を身につけられているか」である。

 

⑶ 本設問の事情として考慮すべき点としては,例えば,移動,特に車による移動が種々の理由から様々な規制に服すること,規制②は,エリアと時間帯を限った上で,自家用車による乗り入れを規制するものであり,移動に対する規制の強度は強いものではないこと(常識で考えても,歩行者天国に伴う車両の乗り入れ禁止など,同種の規制は存在する)等を挙げることができる。これらの点に言及した答案は少数であったが,事案に即した検討として高く評価される。

→「あてはめ(事実を拾い、評価し、規範とのつながりを説明すること)」の問題である。「あてはめが苦手」と悩む受験生は意外と多い。そして、その解決のためのアプローチを知らない受験生も多い。「高く評価される」答案を書くポイントは、特別な知識や練習ではない。基礎基本に沿って、当たり前のことを当たり前に出来るようにする延長線上にしかない。繰り返しになってしまうが、法的三段論法を完璧にマスターできているかという話である。

 

⑷ 移動の自由を一般的自由にとどまるとしながら,厳格な審査基準を導いている答案は,学説の基本的な理解に問題があると言わなければならない。

→「学説の基本的な理解」という表現から、「知っているか知らないか」の問題だと思われるかもしれない。しかし、これは「人権感覚」の問題だと思う。重要な人権が厳しく制限される時は、違憲性を厳しく審査すべき(違憲判断を出しやすくすべき)である。一般的自由の制限にとどまるなら、違憲審査を緩くすべきである。具体的な「感覚」を持ちながら、目の前の事実を分析できているか。その「感覚」があれば、通常あり得ないミスをすることはないはずである。繰り返しになるが「間違いを犯さない」ように身につけてほしいものである。

 

⑸ 罰則があるので緩やかな基準を採れないという答案があったが,審査基準は権利に対する制約の態様,強さで定立されるべきである。罰則の有無は目的達成手段の審査において考慮されるべき事柄であると思われる。

→審査基準定立の段階(規範定立の段階)、目的達成手段審査の段階(あてはめの段階)という階層を意識して論述できていれば、罰則についてどの段階で触れていたかは、大きな差になっていないだろうと思われる。それは上記の指摘のうち「・・・考慮されるべき事柄であると思われる。」という表現にとどまっていることからうかがえる。細かい点に注力することも大事だが、それ以上に大筋(法的三段論法の構造)を整えておくことが大事だと思う。

 

3 その他

自由権と平等原則の関係については,(ア)専ら自由権の侵害を問題にすべき場合,(イ)自由権侵害に加えて,自由に関する別異取扱いが固有の憲法問題を生じさせており平等原則違反をも問題にすべき場合,(ウ)自由権侵害が問題にならず,専ら平等原則違反を論じれば足りる場合とがある。今回の規制②の憲法上の問題の所在は明らかに(ア)にあり,多くの答案もそのように論じていた。平等原則違反も論じた,あるいは専ら平等原則を論じたという答案は,そもそも自由権と平等原則の基本的な関係について理解が不十分であると言わざるを得ない。

→(ア)~(ウ)を事前に知っておく必要はないと思う。大事なことは、自由権と平等原則との関係性(条文相互の関係性)である。適用対象が広い条文は、適用対象が狭い条文に比べて弱いのである(特別法は一般法を破る)。そして、人権侵害の違憲性を主張したいのであれば、それが認められそうなポイントをきちんと論じるべきである。「下手な鉄砲かずうちゃ当たる」という答案が評価されるはずがない。センスがないことが明らかであるからである。前述した「感覚」が身についていないと言ってもいい。(ア)~(ウ)のいずれの場合にあたるかが正しく判断できなかったのは、知識不足ではなく、学習の姿勢に問題がある。

 

⑵ 規制②が憲法第29条の保障する財産権の制限に当たるとする答案も見られたが,的を外した議論である。

→選択する条文を間違えることは自殺行為であると心得てほしい。条文は命綱である。

 

⑶ 刑罰に関する明確性の原則について論じている答案が見られたが,問題の所在を理解していないものと思われる。

→司法試験の問題で「明確性の原則」に触れようとする答案は、基本的な法的センスがないと思う。他に書くべきことが山ほどあるからである。「明確性の原則」に触れたくなる受験生は、その筋の違憲主張で他人を納得させられるか、今一度考えてみてほしい。論述の目的(違憲性の主張)を果たしやすい筋を見極められない法律家に勝機はあるのだろうか。

 

第4 形式面での注意点

1 判別が困難な筆跡の答案が依然として少数ながら散見される。

→その通り。ただ、判別が困難な文字を書いてしまう受験生の気持ちは痛いほどよくわかる。

 

2 誤字には十分注意すべきである。特に,「必要不可決」や「幸福追及権」等は論外である。

→いい答案に誤字はない。おそらくこれは偶然ではないだろうと思う。一見して明白な誤字脱字に気付かないような注意力のなさでは、精緻な論述を組み立てられるはずがないからである。

 

3 答案の構成として,第1,第2,・・(1),(2)・・と内容に応じて項目を立てて論じることは内容を正確に伝えることに資すると思われるが,それ以上にわたって,改行するたびに,ア,イ,ウ・・や,a,b,c・・などと全く必然性がないのに細かく記号を付してブツ切りの論述を行うことは避けるべきである。求められているのは,内容が論理的に明快な論述であって,表面的に整理された形式ではない。

→前述した通り、ナンバリングを含む答案の構成は、解答者の理解度を表すと思っている。いい答案かどうかは、ナンバリングを見ればだいたいわかる。ナンバリングを意識するだけで、法律論を構造的にとらえられるようになる。構造を組み立てられれば、そこにあてはめるべき要素も自ずとはっきりしてくる。要素がはっきりしてくると、法知識と具体的事実とのつながりが見えてくる。答案作成の過程一つ一つに意味がある。それを丁寧に意識し、積み重ねることでしか真の実力は身につかないと思っている。

 

(次は公法系第二問(後日公開予定))

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