刑法課題テスト① 早く一周すればいいという話ではない
一周やって法律の筋が分かるのは、一部の限られた人だけです。
法学習の鉄則として「教科書等を何周もすること」、「とにかく早く一周すること」が挙げられます。確かに、これらは大事です。なぜなら、法学習の深化は、らせん構造状に進んでいくからです。様々な分野を行ったり来たりすることでわかることはたくさんあります。
しかし、「一周したんだけど、さっぱりわからない」「問題集3周したけど、論文全然書けない」という人が続出しているのが現実です。司法試験界には勉強が得意な人が相当数いて、また法教育に携わるのもそのような人が多いため、「とりあえず『効率的な勉強』をする」だけで法律がわかるようになるような神話が独り歩きしている気がします。
心配いりませんよ。「法律が分かるようにならない」のは、自分の能力が低いからとか自分の努力が足らないからではありません(努力が足らない人はいるかもしれませんが・・・)。
「法律とは何か?」「何を学べば法律が分かるようになるのか?」「教科書に載っていることを全て覚えなければならないのか?」という疑問を解消しないまま、何となく勉強を続けているからです。「何となく」やってても、いつの間にか出来るようになってしまう勉強が得意な人の例に惑わされ、道を見失ってはいけません。
「早く一周すること」も大事ですが、立ち止まってみることも必要かもしれませんね。
さて、刑法課題テスト①は、以下の通りです。
○注意書き
・参照可→六法等
・制限時間なし
・解答は記述式
・記述の構成要件→①正誤②条文の適示③問題となる要件④問題の所在
・5問中4問正解で合格
問1
甲は、乙所有の材木を自己所有物であると偽って、情を知らない丙にその材木の搬出を指示した。丙がその指示に従って材木を搬出した場合、丙の行為について窃盗罪の成否が問題となる。仮に丙に窃盗罪が成立しないとすると、甲は窃盗罪の単独正犯となりうるところ、甲自身は搬出行為に一切関わっていないから、不作為による窃盗罪の成否が検討されなければならない。
(正誤)
(理由付け)
問2
甲は、乙所有の自動車を盗み出すために、不正に入手した同自動車のスペアキーを使い、駐車場に駐車してある同自動車の運転席のドアを開けた。甲が運転席に乗り込む前であっても窃盗罪の実行の着手が認められる。他方、同じくスペアーキーを持った甲がガレージに停めてある乙所有の自動車を盗み出すために、深夜、無人のガレージに侵入したが、運悪く家主に見つかった。この場合、未だ甲が同自動車に触れていないとすると、窃盗罪の実行の着手は認められない。
(正誤)
(理由付け)
問3
憲法の下に定められる刑法は、憲法理念に基づき法益保護機能と自由保障機能が与えられていると解される。不真正不作為犯の成立要件として作為義務を必要とする見解は、結果発生を回避すべき義務を負わない者が不作為犯の主体とならないことを認め、その成立範囲を限定するものであるから、刑法の自由保障機能に沿う妥当な解釈であると解される。
(正誤)
(理由付け)
問4
甲は、偶然乙の右ポケットの外側に触れた際、乙が同ポケット内に財布を有していることに気付いた。そこで、甲は乙の財布を窃取しようと機会をうかがったが、結局同財布を盗み取ることはできなかった。ポケットの外側に触れる行為が窃盗罪の着手にあたるとする判例があることを考慮しても、この場合も窃盗罪の着手が認められない。
(正誤)
(理由付け)
問5
甲は乙に執拗に暴行・強迫を加えた結果、同人を精神的に支配し、自ら死を選択する以外に方法がないと信じさせた。その後、乙は、甲の指示に従って、自ら海中に飛び込み溺死した。この場合、甲は、自ら殺人の実行行為をしたとは言えないから、殺人罪の正犯とはならない。
(正誤)
(理由付け)
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