行政法課題テスト①正解発表 自分といかに向き合うか~適度な自意識~
自意識の高さは成長を助ける
昨日のブログより「自意識」をテーマに書いております。
特に日本人は自意識が強くなる傾向があると言われています。和や礼儀を重んじ、他を尊重するという文化が強く影響しているのかもしれません。自意識過剰という自覚がない方も気を付けた方がいいかもしれません。
もっとも、「自意識が高い」ことは決して悪いことではありません。「自分」という存在を強く意識していれば、他人に流されることなく自分の理想や信念の実現に向けて努力を続けることができる側面もあります。自意識が「高すぎる」結果、人生に不都合が生じていることが問題なのです。何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」ということですね。
さて、そこで「適度な自意識」を維持することが自分との向き合い方としてとても重要になります。今回は、そのヒントをご紹介できればと思います。
①何事もまずは「ありのまま」を受け入れる努力をする
自意識過剰になってしまうのは、意識の中で「何もかもを作り上げてしまう」からです。
「起こった出来事=失敗」と考えるのは、自分自身の評価の結果です。「他人からダメだと思われているのでは?」と考えるのも、自分自身の評価の結果です。そうしたものの積み重ねによって「自分はこうだ」と考えるのも、自分自身の評価の結果です。
自分で勝手に作り上げた「現象(≠現実)」が自分自身を苦しめているのです。まずは、「評価」を取り除き、ありのままの現実を捉える努力をしましょう。予備試験・司法試験で学ぶ「あてはめ」の技術は、上手く生きるための技術にもなります。
②目の前のことに没頭する努力をする
人は何かに没頭している間は、自分を邪魔する余計な心理にとらわれません。没頭する時間が長ければ長いほど、「自意識過剰な自分」からも長く逃れることが出来ます。その積み重ねは、緩やかに適度な自意識を形成してくれるでしょう。
ちなみに、「自意識過剰を克服しようと『無理して』没頭する状態を作ること」はお勧めしません。例えば、暇だと考えこんでしまうから休みの日にも予定を詰め込もうとするのは、逆効果になる可能性があります。あくまで、心の余裕を大事にしながら「没頭する時間」を作ってくださいね。勉強だけでなく、趣味や掃除、皿洗いなど、「何となく」できるものがおすすめです。
③世は諸行無常であることを知る
「自分」にこだわってしまうのは、「自分」を失うことが恐いからです。命を失うわけではなくても、「かつての自分」と「今の自分」が一致しないのは、「自分が知っている自分」を失うという点で死に近い恐怖を感じるかもしれません。
「他人の目」が気になるのも「今の自分」と「評価を失った将来の自分」との不一致が起きてしまうことの恐れが原因だと考えられます。
とはいえ、世は常に移り変わっていきます。仮に評価を失っても将来回復できるかもしれません。また、自分の意思に関わらず、日々自分は変わっていきます。
「これまでと同じように過ごしていれば、現状維持できる」という考えは、ある意味幻想かもしれません。諸行無常を知り、頑なな自分を少しだけ柔らかくしてみてはどうでしょうか?
それでは、行政法課題テスト①の正解と出題者の一言です。
まだ問題を解いていない方は、こちらから。
問1→×
(出題者の一言)ある行為の適法性を判断する場合、その法的根拠を確認することは、当然の話です。論点であるから覚えるのではなく、法律論として当然考えるべき問題としてとらえられるようになるといいですね。
問2→×
(出題者の一言)問題の所在を適切に細分化できることは、法律問題解決の第一歩です。本問では、権限委任の問題と指揮監督関係の問題が全く別の問題であるとわかればオッケーです。
問3→×
(出題者の一言)本問も問題の細分化が一つのポイントになります。細分化した問題を適切な順序で検討することも時に大事なポイントです。判例・学説の知識がないと解答が難しいかもしれません。公法の特徴がよく表れた問題だと思います。
問4→×
(出題者の一言)法律に基づく行政の原理は、とってもとっても重要です。当原理を知識として知っている人は多いかもしれませんが、使えるレベルで理解している人は少ないように思います。行政法分野全般に渡って問題になる話なので、常に意識しておいてください。
問5→×
(出題者の一言)「法律に基づく法規創造力」の意義に関する理解を多面的に問う問題です。定義は当然覚えていると思いますが、使えるレベルで理解したと言えるためには、具体的な制度との関連付けをしておかないといけません。これを機に、インプットのポイントを押さえてみてください。
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次回行政法課題テスト②は、2021年1月1日(元旦)です。
テスト範囲は、以下の通りです。
1・行政作用法
・行政立法とは
・法規命令及び行政規則とは
・委任命令及び執行命令とは
・通達及び要綱とは
・行政行為(≠行政の行為)とは
・下命、許可、免除、特許、認可、代理、確認、公証、通知、受理とは
・行政行為の瑕疵とは
・公定力とは
・違法性の承継とは
・行政行為の取消しとは
・行政行為の撤回とは
・行政行為の付款とは
・付款の許容性と限界とは
・行政裁量とは
・裁量権行使の違法性判断基準
・行政上の強制手段とは
・行政執行とは
・即時強制とは
・行政調査とは
・行政罰とは
・行政計画とは
・行政契約とは
・行政指導とは
・行政手続とは
・行政手続法とは
・情報公開法とは
行政法課題テスト① 自分といかに向き合うか?~自意識過剰について~
自意識過剰になっていませんか?
・自意識とは
自意識とは、「自分」という存在に対して持つ意識のことです。人として生きていく上で、自意識を欠くことはできません。
※仮に自意識を限りなくゼロに近づけるとどうなるか?
⇒限りなくアホになれるそうですよ。
・自意識過剰とは
自意識を捨ててしまうと社会で生きていくことが難しくなることもあるので、それはそれで考えものですが、自意識を持ちすぎてしまうことも問題です。
いわゆる「自意識過剰」問題です。
例えば、
・面接などでは緊張しすぎて頭が真っ白になる
・周りに人がいる環境では集中できない
・自分自身の変化を嫌う
・自分以外の人の意見を受け入れられない
・「世の中はこんなものだ」が口癖になっている
などといったポイントに当てはまる人は、自意識過剰を疑った方がいいと思います。
・自意識過剰だと何が問題なのか?
①努力が実らない
自意識過剰の人は、「他人の目」を気にしすぎるあまり、ありのままの自分を表現することが苦手です。せっかく努力して実力をつけてきたのに、本番では「他人の目」が気になって実力を発揮できなかったということも起こるでしょう。
力を発揮すべき場面には「他人の目」があることがほとんどです。自意識過剰を克服しない限り、夢を叶えることはできないかもしれません。
予備試験の口述試験で苦労している方を時々見かけます。
②他人の目が気になって集中できない
上記の例では、物理的に「他人の目」が気になって集中できないケースを挙げました。もちろん、そういう場合もありますが、「他人の目」を想像することで集中力を失うケースもあります。
例えば、「不合格になったら、周りからどう思われるか?」「こんなことを聞いたら、バカだと思われるかも」など、思い当たる節はありませんか?
③成長の種を見逃す
人も物も日々「変化」していきます。世は「無常」です。これは自分自身も例外ではなく、毎日五感を通じて色々なものを感じ、心身で様々なことを考えるうちに「変化」しているはずです。これに気付くか気付かないかは、また別の話です。
自意識が過剰になっていると、今捉えている「自分」を常に追いかけようとしてしまいます。実際は変化しているにもかかわらず、それを看過して「昔の自分」をいつまでも「今の自分」だと認識してしまうのです。変化する「自分」に追いつけず、「自分」を見失ってしまうのが恐いからです。
ちょっとした「変化」を感じることが、努力のモチベーションにつながったり、軌道修正のヒントになったりするのですが、その変化に鈍感なため「成長の種」をみすみす逃してしまいます。
④成長のチャンスを逃す
③と似ていますが、こちらは、自らの意思で成長を放棄するというパターンです。
自意識過剰の人は、自分が変化することを嫌います。「自分自身の変化」とは、すなわち、「成長」と考えることもできます。
自分自身の変化を受け入れることが出来なければ、「成長」もありません。
⑤自己肯定感が育たない
「他人の目が気になる」「変化を嫌う」という特徴は上記で挙げたとおりですが、それゆえに、「新たな挑戦をしない」「ありのままの自分を受け入れられない」というのも自意識過剰な人の特徴に挙げられます。
新たな挑戦をしなければ自己肯定感を育てるのに必要な小さな成功体験を得られませんし、ありのままの自分を受け入れられないと、一生、自己肯定感は育ちません。
後日のブログでも引き続き「自意識」をテーマに記事を書いていこうと思います。
それでは、行政法課題テスト①の問題を公開します。
○注意書き
・参照可→六法等
・制限時間なし
・解答は記述式
・記述の構成要件→①正誤②条文の適示③問題となる要件④問題の所在
・5問中4問正解で合格
問1
上級行政庁は、その一般的な指揮監督権に基づき、法律の特別の根拠がなくとも、下級行政庁の権限を当該下級行政庁に代わって自ら行使することができる。さらに、その一般的な指揮監督権に基づき、下級行政庁が行った違法・不当な行為の取消し又は停止もすることができる。
(正誤)
(理由付け)
問2
法律の規定に基づいて上級行政庁から下級行政庁に対して権限の委任が行われた場合、当該権限の行使については法律に基づく規律が図られるから、両者の間に指揮監督関係は存在しない。また、法律上の根拠なく権限を委任することは適法であり、この場合は、委任庁・受任庁の間に指揮監督関係が発生すると解される。
(正誤)
(理由付け)
問3
公法上の法律関係について本来私法上の法原理である信義誠実の原則を適用することは可能であるが、課税をめぐる法律関係おいては、平等原則に劣後すると解される。よって、所得税に関する更正処分を受けた場合、信義則違反を理由とする処分の取消しが認められる余地はない。
(正誤)
(理由付け)
問4
法律に基づく行政の原理は、自由主義と民主主義の観点から基礎づけられる。その内容の一つである法律留保の原則から考えると、法律に違反する侵害行政活動は許されないと言える。例えば、侵害留保説は、課税処分に法律の根拠が必要となると考える。
(正誤)
(理由付け)
問5
法律の法規創造力の原則から考えると、国民の権利義務に関する一般的・抽象的規律を創造する力は、法律に独占されていると解される。とすると、地方公共団体が独自に条例を定めることは許されず、かつ、行政機関が法規を制定することは認められないと言える。
(正誤)
(理由付け)
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行政法課題テスト直前記念 「あてはめ」がわかれば、「生きる意味」もわかる
意味は「ある」のではなく、「与える」もの
行政法課題テスト直前記念ということで、予備試験・司法試験の論文式試験においては(短答式試験でも「あてはめ」の意識を持っていないと、知識偏重の弊害に窮することがあります)避けて通れない「あてはめ」をテーマにブログを書こうと思います。行政法においてはもちろん、他の科目でも使える情報ですのでぜひ全ての法律系資格試験の受験生の皆様にご覧いただきたい内容です。
・意味は「与える」もの
早速ですが、「なぜ生きるのか?」という疑問について考えたことはありますか?
・人生の目的を見つけるため
・あなたは人生の意味を問われている
・魂の成長のため
・生きることに理由などない
などなど、色々な見解があると思います。
私自身、その答えを知っているわけではありませんし、自分なりの答えを見つけられたわけでもありません。そもそも、今回のブログではそんなことどちらでもいいのです。
ここで言いたいことは、意味は「そこにある」ものでもなく、「与えられる」ものでもなく、自ら「与える」ものであるということです。
人生の「意味」も自分以外の誰かが教えてくれたり、決めてくれたりするものではなく、最終的に自分自身で与えなければならないものなのではないでしょうか。
・意味を「与える」前提には必ず基準点がある
「意味を『与える』」という視点に立つときには、2つのことを考えなければなりません。
①意味を与えるか否か
②(意味を与えるとして)どのような意味を与えるのか
ということです。
例えば、「生きる意味」について考えた場合、「生きることに意味なんてない」という主張が必ず出ます。これは、①の話です。
一方で「生きることに意味はある」という風に考えれば、その意味の内容について考えないといけません。この時、自分の中に何ら確固たるものがない人は、「わかりません・・・」ということになるでしょう。人は、何かを考える時、必ずよって立つ基準点があるのです。
例えば、「人生の目的を見つけるため」「魂の成長のため」という風に意味づけをするなら、人生や魂という存在がその人の思考の基準点になっています。その基準点から「『生きる』という行為に意味を与えている」わけです。
このように意味づけは、主観的にあるいは客観的に設定されたある基準点からしか与えられないものなのです。基準点がない場合には、何にも意味は与えられません。「ただそこにあるだけ」です。
・法的三段論法における「あてはめ」
前置きが長くなりましたが、小括すると
「意味は『与える』ものであること」
「意味は、『ある基準点から』与えるものであること」
がポイントでした。
これは、法的三段論法におけるあてはめを理解する上で、大きなヒントになります。
例えば、作業着を着た大工風の男性がノコギリが入ったカバンを持って歩いていたとしましょう。ノコギリの刃は、カバンから少しはみ出ており、少し離れたところから見てもそれがノコギリであることが分かる状態だったとします。
公道でその男性とすれ違った人は、その男性を全く気にしないかもしれません。では、パトロール中の警察官がその男性を見た場合はどうでしょうか?
「犯罪を未然に防止する使命」を基準点にすれば、ノコギリを持った男性は、危険人物という風に見るかもしれません。その男性を危険人物とみることは、客観的事実を評価した(意味づけをした)ことに他なりません。
では、状況を少し変えましょう。カバンの中にノコギリを忍ばせた男性が大勢の人が集まるコンサート会場に入っていこうとしていた場合、上記の警察官は何を考えるでしょうか?
犯罪を未然に防止するために職務質問や所持品検査をしたいと考えるかもしれません。この場合、当該警察官が忘れていけないのは、「法に則って動く」ということです。いくら犯罪を未然に防止するという「大義」があっても法に反する公権力行使は許されないからです。
少し刑事訴訟法の話に入ってしまいますが、当該警察官が「急いでいるので」などと言いその場を立ち去ろうとする男性の手を掴むなどしてその場にとどまらせることは、一定の要件を満たさなければ違法な行為になります。
そのため、当該警察官は、当該男性が大勢の人が集まるコンサート会場に似つかわしくないノコギリを持っていることなどの客観的状況を前提に、自身が行う行為を評価する(意味づける)必要があります。この時、評価の基準点になるのは、法解釈から導かれる「一定の要件」(必要性・緊急性など)です。
そこで、当該警察官の行為の適法性を判断するために「一定の要件」に従ってその行為を評価します。
具体的には、
・コンサート会場に向かうノコギリを持った男性の腕をつかむ→殺傷事件を起こす危険性があり、男性が同会場に向かうことを阻止するため(意味づけ)=必要性がある
・男性が「急いでいるので」などと言い、当該警察官の制止を振り切ろうとした→腕をつかむ以外に男性の行動を制止する手段がなかった(意味づけ)=緊急性がある
などと考えることが出来ます。
意味づけは、いずれも「一定の要件」を満たすように自分なりに考えたものです。つまり、当該警察官の行為に「意味を『与えた』」のです。
このように「あてはめ」は、法律要件を満たすように客観的事実に「意味を与える」(事実を評価する)ことによって成立するものなのです。その作業は極めて能動的なもので、受動的にインプット学習しているだけでは身に付きません。アウトプットの訓練がいかに大事かわかりますね。
他方で、法律要件に沿うように事実に意味を与えなければいけませんから、「あてはめ」を上手くこなすためには、法律要件の理解が不可欠になります。「あてはめが苦手」という受験生は、往々にして法律要件の理解が不十分であることが多いです。法律要件⇔事実の相互関係を意識しないと、あてはめをマスターすることは難しいのです。
「あてはめ」をマスターするためには、第三者による厳しい添削を受けることは不可欠です。本気で論文対策をしたい方には、日本一丁寧な添削指導のABprojectをお勧めします。
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行政法課題テスト直前記念 行政法の攻略~事前準備の大切さ~
苦手な受験生が多い科目ほど狙い目
来週2020年12月28日から開始予定の行政法課題テストは全3回です。年をまたいでの実施となりますが、課題テストも残りわずか3回ですので、最後まで気を抜かずに頑張っていただきたいと思います。
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行政法課題テストのテスト範囲は以下の通りです。「⇒課題テスト○」までが一区切りとなっています。勉強のペースメーカーにしてもらえれば幸いです。
0・行政法の基本
・行政法とは
・行政とは
・公法とは
・法源とは
・法律による行政の原理とは
・法律の優位の原則とは
・法律の留保の原則とは
・法律の法規創造力の原則とは
・行政主体とは
・行政機関とは
・行政庁とは
・諮問機関、参与機関、監査機関、執行機関、補助機関とは
・指揮監督関係とは
・権限の代理とは
・権限の委任とは
・専決とは
⇒課題テスト1
1・行政作用法
・行政立法とは
・法規命令及び行政規則とは
・委任命令及び執行命令とは
・通達及び要綱とは
・行政行為(≠行政の行為)とは
・下命、許可、免除、特許、認可、代理、確認、公証、通知、受理とは
・行政行為の瑕疵とは
・公定力とは
・違法性の承継とは
・行政行為の取消しとは
・行政行為の撤回とは
・行政行為の付款とは
・付款の許容性と限界とは
・行政裁量とは
・裁量権行使の違法性判断基準
・行政上の強制手段とは
・行政執行とは
・即時強制とは
・行政調査とは
・行政罰とは
・行政計画とは
・行政契約とは
・行政指導とは
・行政手続とは
・行政手続法とは
・情報公開法とは
⇒課題テスト2
2・行政救済法
・行政不服審査法とは
・行政事件訴訟法とは
・国家賠償法とは
・損失補償とは(憲法の復習)
3・地方自治
・憲法の復習
⇒課題テスト3
さて、今回は行政法攻略というタイトルですが、行政法攻略のポイントに関してはこれまでも当ブログ内で何度も行ってきました。
これもひとえに行政法を苦手とする受験生が多いからです。ABprojectに寄せられる添削指導のご依頼も憲法に続いて行政法が多いです(憲法はとりあえず一科目という時に目を付けられる科目のようです・・・)。
確かに行政法の問題はややこしく感じますね。その原因はいくつかあると思います。
①事務処理量が多い(特に司法試験)
議事録や参考資料なども含めれば他の科目に比べて処理しなければならない分量が圧倒的に多いことは、特に制限時間の厳しい司法試験において受験生を悩ませます。
②勉強時間が短い
行政法は、他の科目に比べて後回しにされる傾向があるようです。その結果、試験直前になっても未だ不安感をぬぐえない受験生が後を絶ちません。
③判例知識がやっかい
この点は、憲法と共通すると思います。行政法分野は長年判例法の蓄積や条例によって対応してきた部分が多く、それに追随する形で法整備が進められてきたという背景があります。そのため、どうしても判例に学ばなければならない部分が多くなり、その点が受験生を苦しめているようです。
こうした行政法の難点をどうクリアしていくかが問題です。
ただ、絶対に忘れてはいけないのは、予備試験・司法試験(特に論文式試験)は相対評価だということです。完璧に問題を理解し解くことが出来なくても、周りの受験生の出来次第で、優秀答案になることはあります。
「ちゃんと理解しないと・・・」「いい答案を書かないと・・・」と完璧主義になる必要はありません。むしろ、過度なプレッシャーで自滅したパターンが毎年発生するようなのでお気を付けください。
・対策その1~必要な情報を集めるための事前準備~
上記①の通り、司法試験行政法の特徴は事務処理量の多さです。私自身も司法試験対策を始めた当時一番戸惑ったのは行政法でした。しかし、最終的にはA判定でフィニッシュしています。そのカギとなったのは、事前準備と問題を解くときの情報の集め方です。
行政法の問題には、とても2時間では処理できないほどの情報量が散りばめられていますが、答案に書ききれない分の情報は無視して大丈夫です。「要件効果」の視点にこだわって、「『主体的に』情報を集める」姿勢がポイントです。
・対策その2~添削指導を通じて「法とは何か」を理解する~
判例が苦手な受験生の多くは、「法とは何か」という点の理解が不十分であることが多いです。 判例は、特定の法律(条文)に関連して裁判所の見解を示すものですが、そもそもの取っ掛かりである「法」というものを捉えられていないために、判例が何を言いたいのかもつかめないのです。
この点は、自分で法を使う経験を増やしていくと次第に解消されていきます。条文解釈・あてはめの訓練を通じて、法と具体的事実、相互の関係性を体得すると、抽象的だった概念が次第に具体化してくるのです。
個別法の読み方に戸惑う受験生も多いようですが、個別法を完璧に読み解かなければ解けない問題は出題されないはずです。それよりも、個別法で目先を変えられても動じない基礎力を身につけておくことが大切です。
添削指導を通じて、条文解釈・あてはめの暗記ではなく「理解」を深めておけば、司法試験・予備試験本番で無駄に慌てることはありません。
司法試験・予備試験の過去問対策は、ABprojectの添削指導なくして始まりません。
法学の基礎基本に徹底的にこだわって「自分の力で学び、成長していける力」を養います。
商法課題テスト⑦正解発表 なぜ選択科目の添削指導をしないのか?
基本7科目をきちんと書けるなら選択科目も怖くない
ABprojectは、予備試験・司法試験の過去問添削を中心に添削指導を継続的に行っています。
その間、多くの方から「選択科目の添削指導はしてもらえますか?」というお問い合わせを頂きました。今回は、この場をお借りして、改めて回答したいと思います。
結論としては、「選択科目の添削指導は一切行っておりません。」ということになります。その理由は、2つあります。
①選択科目の問題はそれほど難しくない
添削指導の意義は、文章の書き方や解答の流れ、題意の把握、あてはめの是非等、教科書を読むだけでは理解が至らない部分を補充していくことにあると考えています。
選択科目は、基本7科目(憲法・行政法・民法・商法(会社法等)・民訴法・刑法・刑訴法)に比べ、問題の難易度が落ちます。司法試験が受験生の法的基礎力を試すことを主眼に置いていることから当然です(2022年からは予備試験でも選択科目が導入される予定ですが、この点は同じでしょう)。
そのため、基本的な知識さえインプット出来れば、論文テクニック的なことを度外視しても合格点は確実にとれると思います。あえて高い添削料を支払って教えを受ける必要性は、低いのではないでしょうか。
②基本7科目を通じて「論文の書き方」をきちんと身につけていれば当然書ける
選択科目は、結局のところ、基本7科目の延長線上にあるものです。異なる法律なので新たに知識をインプットする必要はありますが、その根幹にある「法的思考」は、全く同じです。従って、選択科目でやるべきことは、基本7科目を通じて盤石にした「法的思考」に新たな知識を乗っけるだけということです。
これは、司法試験合格後、実務家になった場合にすべきことと全く同じです。皆さんが目指す実務家は、日々変わっていく世の中のルールを常にアップデートし、必要に応じて学んだことがない特別法にも手を広げなければなりません。そこで頼れるのは、司法試験に合格するために身につけた「法学の基礎基本」です。
「選択科目」というと特別な感じがするかもしれませんが、どれだけ目先を変えられても基礎基本が盤石であれば何も恐れる必要はありません。仮に「『選択科目』になると途端にどう書いていいかわからなくなる」というのであれば、選択科目の知識不足か、法学の基礎基本が身についていないかのどちらかです。
法学の基礎基本というのは、そういうものです。
※番外編~選択科目は何を選ぶべきか?~
個人的な話で恐縮ですが、私は選択科目として「国際私法」を選びました。
前評判で覚えることが少なく予備ルートの受験生向きと言われていたのが、興味を持った理由です。もっとも、決め手になったのは、国際私法の「条文の使い方」が面白いと感じたことです。長らく私のマイブームは「条文操作」にあるわけですが、国際私法の思考スキームは、そこに新たな視点を加えてくれる気がしました。
「条文の使い方」という法学の基礎を徹底的に信仰するなら、国際私法はいい科目だと思います。
予備試験終了後(11月頃)から国際私法の勉強を開始し、5月の司法試験に挑みました。国際私法を本格的に勉強し始めてからわずか半年足らずでしたが、50点は超えていました。「他の科目に比べて覚える量が少ない」というのは確実に言えると思います。正直、法の適用に関する通則法(通則法)の使い方(=新たな条文適用の形)さえわかれば、7割方勉強は終了したようなものだと感じました。
ちなみに「本格的に」と言っても使った本は一冊だけです。基本書等を眺めて見たりもしたのですが、「わずか6か月の間に読めるわけない」と早々に手放してしまいました。
他の科目と比較して考えたいという方はこちらのリンクを参考にしてみては??
ABprojectの添削料は、少々高めですが、その分選択科目突破にも通ずる確実な論文力の養成をサポートできるよう日本一丁寧な添削指導をしています。Abprojectの基本理念でもある「基礎基本の徹底」がいかに大事かを実感して頂ければと思います。
それでは、商法課題テスト⑦の正解と出題者の一言です。
まだ商法課題テスト⑦の問題を見ていない方はこちら。
問1→×
(出題者の一言)法律用語は正確に覚えたいですね。面倒ですが、コツコツ覚えた知識(定義・趣旨・規範等)は、絶対に自分を助けてくれます。
問2→○
(出題者の一言)「条文の定めがない(=明文の定めがない)」ことは、論点創出のきっかけになります。「条文がないからどう処理するべきか判断できない」というわけです。従って、ある問題に関して適用できる条文があるかないかは、常にチェックしておく必要があります。
問3→○
(出題者の一言)似て非なる制度を比較して整理することが大事です。そして、似て非なる制度があるのは、そうするべき必要性があるからです。それを意識するところに、理解のポイントがあります。
問4→×
(出題者の一言)吸収合併と事業譲渡のもっとも重要な違いを問う問題です。また、対抗要件の問題も忘れないでください。権利変動が生じた場合には、必ず対抗問題の存在を疑う必要があります。
問5→×
(出題者の一言)行政法分野における論点とつなげてみました。異なる法分野では、似たような問題でもその処理方法が異なることがあります。その背景には何があるのかを知ると、当該法分野の本質により近づけるかもしれませんね。
これにて商法課題テストは終了です。
行政法課題テストは、2020年12月28日開始予定です。
テスト範囲は近日中に公開します。
課題テストの添削指導で論文基礎力と基本的な法知識を身につけよう!!
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商法課題テスト⑦ こんな人は司法試験に受からない!!
ワーキングメモリの働きと認知負荷とは?
知り合いの司法試験合格者が受験勉強の他に「脳トレ」を努めてやっていたという話を聞いたことがあります。
その動機を聞くと、司法試験の論文試験の問題を解いている際、問題文の後半に差し掛かると問題文の前半に書いてあったことを忘れてしまうことが度々あり、「これではダメだ!」と思ったからだそうです。
これは、脳の「ワーキングメモリ」のお話です。ワーキングメモリとは、一時的に情報を脳に保持し、処理する能力のことです。
ワーキングメモリが十分に鍛えられていないと、上記の司法試験合格者のように情報処理に手間取ることが多くなります。特に司法試験は、問題文が長く、情報処理能力の差がそのまま点数の差につながると言っても過言ではありません。下記の項目に心当たりがある方は、情報処理能力を鍛えることを考えた方がいいかもしれません。
・ふと考え事をすると、何をしようとしていたのか忘れてしまう
・2つ以上のことを同時にできない
・電話番号レベルの少ない情報ですらすぐに忘れてしまう
※ワーキングメモリを鍛える方法
ワーキングメモリと関連して重要な認知の問題として、認知負荷というものがあります。
認知負荷とは、簡単に言うと、ワーキングメモリの活動にかかる負荷のことです。ワーキングメモリの限度を超える認知負荷がかかってしまうと、上記に挙げたように情報処理がうまくいかない事態に陥ることになります。
また、記憶という面でも、この認知負荷を意識することが重要です。人間の記憶は、ワーキングメモリにある情報が長期記憶のスキーマ(脳内にある情報整理の枠組み)に統合されることによって形成されるからです。そもそも、ワーキングメモリの保存容量を超えてしまった分の情報は、記憶として保存される前にこぼれ落ちていきます。
机の上に散らばった本や資料を棚に整理する場面を思い浮かべてください。小さな机に載せられないくらいの本や資料が集まってしまったら、机から落ちて散らかってしまいます。棚にしまうのが遅くなってしまうのは当然です。
このような状態を解決する方法は2つです。
①机を大きくする(ワーキングメモリを鍛える)
②机から棚に移動させる時間を短縮する(記憶への移行時間を短くする)
①は、上記のリンク記事をご参照ください。
②に関しては、脳のスキーマを整理しながらインプットする工夫が大事だと思います。基本的なことを学んだ後、応用的なことを学ぶというように学習の順序を工夫したり、情報の枠組みとなる知識を先に学んで、その知識にタグ付けするように新たな情報をインプットするようにしたりすることが考えられます。
また、一度に多くのことを覚えようとしないことも大事です。どこまでいっても机の大きさ(ワーキングメモリの容量)には限界があるからです。
法学習に行き詰っている方には、「法学のコンパス」を使って法知識のスキーマを作ることをお勧めします。これは、膨大な情報量に圧倒され何度も挫折を経験した私自身の経験から生まれたものです。法学の見方や考え方をシンプルにまとめ(A4サイズ7ページ)、膨大な情報とどう向き合えばいいのか、その指針を示すものです。
ワーキングメモリの容量が少ない方でも、無理なく合格への第一歩を踏み出せるような内容になっています。
※法学のコンパス(新版)発売開始!!
○注意書き
・参照可→六法等
・制限時間なし
・解答は記述式
・記述の構成要件→①正誤②条文の適示③問題となる要件④問題の所在
・5問中4問正解で合格
問1
資本金の額とは、設立又は株式の発行に際して株主となる者が会社に対して払込み又は給付した財産の額のことを言い、その額は登記事項であるとともに、定款記載事項である。
(正誤)
(理由付け)
問2
分配可能額を超える剰余金配当の法的効力については明文の定めがないのに対して、その会社の純資産額が300万円を下回る場合には、剰余金配当をすることができない旨の明文の定めがある。
(正誤)
(理由付け)
問3
吸収合併においては、吸収合併消滅会社の債務は当然に吸収合併存続会社に承継されるが、事業譲渡においては、譲渡会社が債権者の承諾を得て譲受会社に免責的引受けをさせない限り、譲渡会社の債務は存続する。
(正誤)
(理由付け)
問4
事業全部の譲受けをした会社が当該譲受けに関わる財産の移転につき第三者に対抗するには、個々の財産について対抗要件を具備する必要があり、この場合、事業の全部を譲渡した会社は、もはやその実体を持たないから当然に消滅する。
(正誤)
(理由付け)
問5
吸収分割をめぐって重大かつ明白な違法があった場合、その手続きは当然に無効と解されるから、株主は、特段の手続によらず、吸収合併存続会社に対してその無効を主張できる。
(正誤)
(理由付け)
商法課題テスト⑦の正解発表は明日2020年12月22日予定です。
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予備試験・司法試験の論文試験対策は、過去問添削指導なくしてはじまりません。
商法課題テスト⑥正解発表 わからないことは一旦諦めなさい
勉強していないときも脳は勝手に動いている
【速報!!法学のコンパス新版が発売されました】
私自身、勉強していない間に脳が勝手に情報処理してくれていることは、何となく気付いていました。
・昨日、覚えようとしていたものの何だかうろ覚えだったことが翌日にはクリアに記憶出来ていた
・数か月前に死ぬほど理解に苦しんだ論点が、すんなり理解できた
といった経験が何度もあったからです。
これは、心理学者も認めるところのようです。立命館大学総合心理学部の服部雅史教授が、下記の記事の中で「意識と無意識の相互作用」について説明されていました。
要は、「意識して」考えたけどわからなかった問題については、その問題が意識から離れている間に無意識が答えを導きだしてくれることがあるということです。
ここでのポイントは、意識して(一生懸命)考えたという点です。この点は、無意識の性質から納得できます。そもそも、無意識は、抽象的な概念を嫌う性質があり、シンプルかつ具体的な指示を受けないと効果的な働きができないからです。
つまり、「意識して考える」という行為は、無意識に答えを導くための情報を与えるとともに、答えを出したい方向性を指し示すという意味があるように思います。
勉強のコツである
・全体像を把握する
・目的意識を持つ
といったポイントも、実は無意識を上手く働かせるための工夫だと言えるかもしれません。
さらに、松下幸之助氏の言葉もあります。
「何としても二階に上がりたい、どうしても二階に上がろう。この熱意がハシゴを思いつかせ、階段を作り上げる。上がっても上がらなくてもと考えている人の頭からは、ハシゴは生まれない。」
「わからない」は、あくまで現時点での話です。また、自分の行動のわずか5%程度しかコントロールできない意識の中での話です。私たちには、長く続く「時間」があり、意識の及ばない広い範囲に大きな可能性があります。
一生懸命考えてみてわからなければ、潔く諦めることも、時に大事な勉強のコツだと気を楽にしてもらえたら幸いに思います。ちなみに、「諦める」の語源は、「明らむ」、つまり、つまびらかにする、明らかにすることだと考えられているそうです。
「『諦める』ために研究する」というのは、とてもいい表現ですね。
それでは、商法課題テスト⑥の正解と出題者の一言です。
まだ問題を見ていないという方は、先に問題を見てみましょう。
問1→×
(出題者の一言)「株式割当て」(会社法204条等)の法効果を問う問題です。非常にシンプルな問題ですが、この問題をきっかけに、どのような法効果が生じるかを権利義務の視点から整理する習慣をつけてもらいたいと思います。
問2→×
(出題者の一言)条文を見つけられれば、答えは出せますね。体系的理解のために、民法における相殺の規定との関連もぜひ整理してほしいと思います。なお、株式会社による相殺の主張が許されるかという論点もあります。
問3→×
(出題者の一言)社債はあまり問われることがありませんが、一応テスト範囲なので出題してみました。原則例外の関係性が出てきたら無意識にチェックしてしまうくらいになってほしいと思います。
問4→×
(出題者の一言)募集社債の発行要件(=法律要件)について問う問題です。どの分野のどの問題も結局は、要件効果につながっていきます。自分で要件効果の形を整える力を身に付けられれば、未知の法分野を学ぶことも怖くありません。
問5→○
(出題者の一言)前半は、募集株式発行差止請求の法律要件に関する理解を問うています。他方、後半は、新株予約権無償割当の差止請求ではどうなるのかを問うています。いずれも重要な論点ですが、特に意識してもらいたいのは、条文の使い方です。条文の使い方さえ身についていれば、頑張って覚えることは、自然と減っていきます。
課題テストの添削指導、予備試験・司法試験過去問の添削指導は、随時受付中です。「わかっているつもり」を無くし、着実に実力アップを図りましょう。
次回商法課題テスト⑦は、2020年12月21日公開予定です。
テスト範囲は、下記の通りです。
22・剰余金の配当
・剰余金の配当とは
・違法配当とは
23・会社の基礎の変更
・合併とは
・合併自由の原則とは
・吸収合併とは
・新設合併とは
・反対株主の株式買取請求権及び新株予約権買取請求権とは
・債権者保護手続きとは
・吸収合併及び新設合併無効の訴えとは
・簡易手続及び略式手続による合併とは
・事業譲渡とは(商法の営業譲渡参照)
・簡易手続及び略式手続による事業譲渡等とは
・会社分割とは
・吸収分割とは
・新設分割とは
・簡易手続及び略式手続による分割とは
・株式交換とは
・株式移転とは
・親子会社とは
・定款変更とは
・組織変更とは
24・持分会社
・合名会社とは
・合資会社とは
・合同会社とは